勇者よりイケメンしてる人(2)
「あ~! リリアンちゃん、ボクにも気持ちわかるっしょ~。ロイヤってば超高スペ男性って感じだもんね~!」
マフォーがケラケラと笑った。
「ねぇねぇロイヤくん! ロイヤくんは彼女とかいるの~?」
そして机に身を乗り出すようにマフォーは食い込む。
「あはは……オレ、今はあんまり彼女とか考えられないッスね……」
「え~? どうして~? 絶対モテるっしょ~?」
「とんでもないッス。オレ、しっかりお金稼がなきゃだし」
「ウッソでしょ!? 九条財閥の黒子衆なんて、いったいいくら貰ってんのって話っしょ?」
「こらこらマフォー。ロイヤとはアタイらも初対面なんだ。ちょっと深く踏み込みすぎさね」
グイグイと食い込んでいくマフォーの首根っこを掴んでイスに引き戻すネルク。
どうやら裏方三人組とロイヤも初対面らしい。
「あっはは~。ごめんなさいっしょ~!」
マフォーは笑って誤魔化していた。
「いやしかし、拙者もまさか黒子衆の人間がこんなに明るい好青年とは思わなかったでござる」
「あ! それ私も思ったニャ! 九条財閥に隠密組織があるってことにも驚いたけど、そんな黒子衆がこんなにあっさり顔を出していいのかニャ?」
私たちの興味は初めて見る黒子衆の甘いマスクに集中していた。
「だーいじょぶッス! 言わなきゃ誰も黒子衆とは思わないッスから! イースには先輩たちは誰も来てないし、オレだってたまには羽を伸ばしたいってもんスよ!」
ロイヤはケラケラと笑っていた。そのたびにキラキラとした雰囲気がまとわりついて見えるのは天然の光魔法でも使っているのかとも思う。
「本当に明るい青年さね……黒子衆ってのはほかの人もみんなそんな感じなのかい?」
「いやいや、オレが一番新入りなんスけど、先輩たちは基本、あんまり自分や家族のことを話したがらないッスね~。意外と危ない仕事なんで。あはは」
とてもそんなふうに軽く笑える仕事とも思えないんだが……?
「ふ、普段はどんな仕事をやってるニャ?」
「ん~、知りすぎちゃった人を消したりとかッスね」
「「えっ!?」」
「うそッス!」
ロイヤは悪びれた様子もなく、舌を出して明るく笑っていた。
「でもま、あんまり大きな声で言えるような仕事でもないから、そこは秘密ッスね!」
私と裏方三人組は苦笑いで互いの顔を見合った。
「きっとものすごく大変な仕事なんだろうニャ……」
私は少し自分が恥ずかしい思いだった。ラクな仕事で割りのいいお給料なんて甘く考えてたツケが今日の事態に繋がっているわけだし。
だが当のロイヤはちっとも辛そうな気配を感じさせなかった。
「ま、そのぶん報酬もいただけるんでオレとしてはありがたいッスけどね! イースでのお仕事もメッチャ報酬がいいんで、オレ、自分から志願したんスよ!」
私には少しロイヤの笑顔が眩しすぎるところがあった。
「ロイヤ殿は報酬で仕事を選ぶタイプでござるか?」
「いやぁ、そうでもなければこんな危険な仕事引き受けないッスよ」
「割り切ってるでござるな~。しかして、それはなんでまた?」
「ひと言で言えば、家庭の事情ってやつッスね!」
考えてみれば勇者に代わって命掛けでキメラを処分する役割はロイヤだ。ときにはライオンキメラ等の猛獣とも戦うことになるだろう。そんな危険を顧みず、お金のために働くというからにはそれなりの理由があるのだろう。
「オウフ……拙者としたことが野暮のことを聞いてしまった……申し訳ないでござる……」
スムスは少し気まずげに詫びた。
「あ! いえいえ! みなさんが気にすることはないッスよ! ただちょっと身体の弱い妹が施設にいるんでオレが代わりに稼がないとってだけで」
「「勇者かっ!」」
私たちは揃って声を上げていた。
「妹、天使みたいなんスよ~! だから辛い仕事もぜんっぜん苦にはならないッス!」
マジかよ……こんな完璧超人なのに驕ってないし、家族のために働くとか健気すぎて勇者の称号でも与えなきゃやりきれんだろ……!
これで身体を張ってモンスターを倒しても全部がナオトの功績になってしまうとか報われなさすぎだろ……。
おそらくその場の誰もが気の毒に思っていたことだろう。
「あっヤベ! オレのせいで暗くなっちゃうッスね! 代わりになんか一発芸でもやるッス!」
そう言ってロイヤはテーブルの上に出されていたピザを空中に投げ、ナイフで素早く切りつけたかと思えば、それを見事に私たちの取り皿に分けて着地させた。
「「お、おおお~……!」」
これにはさすがに私たちも感嘆するしかなかった。
「ささっ! みなさん今日はお疲れでしょうから、楽しく食べて飲んで、盛り上がっていくッスよ~!」
「「おー!」」
ロイヤの明るい笑顔を見て私たちは応えざるを得ない。大変な境遇にあるのだとは思うが、それをおくびにも出さない彼は本当にできた人なんだと思った。
「その若さで立派さね! アタイ、あんたのこと気に入っちまったよ!」
「拙者もイケメンはみんな敵かと思っていたでござるが、ロイヤ殿は別格でござるな……全力で応援するでござるぞ!」
「ボク、もっとロイヤくんのこと知りたくなっちゃたっしょ~!」
裏方三人組からも好意的に迎え入れられ、ロイヤはますます明るい笑顔で場を盛り上げていた。
そんなこんなで、二日目の夕食はナオト抜きの裏方仲間とともに楽しく過ごしたのだった。
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