待って勇者さま(コンティニュー)(2)
最初の村を旅立つ前に、まさか村長から痛恨の一撃をもらうとは思ってもみなかった……。
「すみませんでしたニャ。たしかに私、あなたのことを誤解していたニャ。友だち想いのいい人だったニャ……」
彼はただの駄作家ではなかったのだ。
「賢者はときとして愚者を演じるもの、でしたニャ? ……私、すっかり村長に騙されてましたニャ」
私は丁寧に頭を下げた。
「フッ……たしかにワシはお主の言うとおり、賢くない賢者かもしれぬ……」
あれ? いや、それ言ったの私じゃなくて自分じゃね……?
「じゃがのう。こんなワシとて友のためとあらば……さらにもう一段階バカにもなろうぞ!」
ん……? もしかして何か深いことを言おうとしたのかな……?
やっぱり彼は駄作家ではないふりをした真の駄作家なのかもしれない。
最後こそ意味のわからないことを言って締まらなかったが、一方で、たしかにそれでは私にセツを咎める権利などありはしないと思わされていた。
だけど……。
「ごめんなさい……それでも私、ナオト様を追いかけることにしましたニャ」
私にはまだ諦めきれない気持ちが残っていた。
「なにぃ!? お主、ワシの話を聞いておったのか!? お主が長く隣にいればいるほど、真実を知ったときのナオトの傷が深くなるのじゃぞ!?」
「それでも……私はもう少しナオト様と冒険がしたいのニャ!」
「まさか九条財閥の財産目当てで近づこうとしているのではあるまいな!」
「違うニャ!」
「童貞をからかって嘲笑っているのではあるまいな!」
「違うニャ!」
「ならばなぜじゃ!」
「わかんないニャ!」
私は正直に答えた。
「……でも、ナオト様はなんか危なっかしくて放っておけないニャ」
「お主がいたところでキメラの脅威に変わりはないのじゃぞ?」
「怖いのはキメラだけじゃない……それが今、村長の言葉でよくわかったのニャ……世界中が動画配信を見て笑って、ナオト様を騙そうとしている……それはとっても怖いことニャ。もちろんそのなかで一番悪い存在は私なのかもしれないニャ……でも、私も今、ナオト様には傷ついてほしくないと思ってるニャ……」
「矛盾しておる……お主が隣にいればいるほど……!」
「わかってるニャ……でも、私は……ナオト様が真実と向き合ったそのときに、彼を支えられる存在になれたらいいなと思ってるのニャ……」
「まさかお主、本気で昨日初めて会ったばかりの童貞ニートに好意を持ったなどと言うまいな! やはり本心では金か!? 遊びか!?」
「……せめてもの罪滅ぼし、なのかもしれないニャ。ナオト様を巻き込んでしまった以上、私にはその責任があるし、彼がどんなに酷い言葉で私を罵ろうとも、私にはそれを受ける義務があると思ってるニャ」
「……当然じゃな」
「今はまだ、ナオト様のために何ができるかなんてわからないけど……でも、少なくとも私は彼を傷つけようだなんて思ってないニャ。だって私、ナオト様のこと、嫌いじゃないニャ……」
「嫌いではない、か……」
セツは少しだけ遠い目をして語気を緩めた。
「だからもう少し、私を信じて見守ってほしいのニャ」
「このワシに、お主を信じろ、とな……」
それきりセツは少し沈黙した。
「よかろう……お主のことはともかく、お主のことを信じるナオトのことなら信じてやらんでもない」
「村長! それじゃあ……!」
私はパッと笑顔でセツを見た。
「うむ。ナオトとの旅を認めよう……早く追いかけてあげるとよい」
「あ、ありがとうございますニャ!」
私は演技でもなく、セツにお礼を言っていた。
「そうじゃリリアンや……どうせ勇者を追いかけるならば、つい先ほど渡しそびれてしもうた物があっての……ワシの家にあるから、ついでにそれも持っていってもらってもよいかの?」
「もっちろんニャー!」
私は笑顔で答え、ナオトを追いかけるための準備を整えたのだった。
私が一生懸命に走ってナオトを追いかけると、ちょうど村の門を潜ろうとしている彼の姿を見つけた。
「おぉ~い! ナオト様ぁ! 待ってニャ~!」
「リリアン!? もしかして俺を追いかけてきたのか!?」
「私、ナオト様について行きたいのニャ!」
「大丈夫なのか!? 村での大切なお役目があるんじゃあ……」
「どうしても、どうしてもナオト様について行きたくて、ぜーんぶ抜け出してきちゃったニャ!」
私は少し上目遣いでナオトを見上げる。
「ナオト様……私を一緒に、つれてってニャ……?」
出発前にもなんだかんだあったが、結局最後には追いかけてきて一緒に旅をすることになる。
そんなラノベ的展開を演出した形に落ち着いた。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
せっかくですが次話以降は数ヶ月も空いてしまうかと。
決して「ぽこあ」と7月「カルドセプト」のコンボで帰ってこれないとか……ゲフンゲフン。
さて、その間に別の作品でもどうでしょう?
『現実世界に追放された悪役令嬢はモブを育てる』 第3巻(完結)
2026年3月3日 アマゾナイトノベルズさま より!
悪役令嬢が現代日本に逆転移!?
戸籍も、頼りも、お金も、住処すらない絶望的な状況。
しかも「人を一生愛せない呪い」まで掛けられていて……。
ぜひぜひ応援よろしくお願いいたします!










