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あなたを勇者にしてあげる 〜転生したと勘違いしている御曹司と偽世界を冒険中。なお全世界配信されてるから迫られても困ります〜  作者: nandemoE


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待って勇者さま(コンティニュー)(1)


 勇者様カムバァァァーック!


 私は去っていく勇者ナオトの背が見えなくなるまで四つん這いになりながら手を伸ばしていた。


 しかしやがて力尽き、私は全滅した。


「……アルミニウム。鉄の約3分の1の重さ。合金化すると実用強度は十分。航空機にも使われる。錆びにくく、加工もしやすいため量産に向く」


「リ、リリアンや……? ど、どうしたのじゃ……?」


 私が呪文を唱え始めたのでセツが心配になったのか声を掛けてきた。


「導電性が高く、電磁波を遮る性質を持つ。磁石にはくっつかない非磁性であり、熱伝導性は高い。光の反射率も高く、軽いのでザコ勇者でも振り回せるが、剣としての強度はイマイチ……」


「リリアンが壊れてしもうたじゃ……」


「……ふふ、知ってますか? 一円玉ってアルミニウムでできているんですよ?」


「そ、それくらいは知っておるが……」


「友だちって素敵ですね……一円玉を握りしめた普通の人間を猛獣との戦いに送り出しちゃうんですから……あははは……」


「う……それはもしかしてワシのことかの……?」


「どうしてあんなふうにシナリオをねじ曲げてしまったのですか……?」


 私は冷たい横目でセツをなじった。


「まぁどうせ、ただのノリで何も考えずにペラペラしゃべってしまった結果なんでしょうけど……!」


「い、いかんぞリリアン。素が出ておる……イースではいついかなるときも己を見失うべきではない」


 今はそんなことを話している場合ではないのに。


「剣は抜いても気は抜くな……じゃ!」


 剣の抜けたそこの台座にお前の首を飾ってやろうか……!


「これ絶対ゲームオーバーなやつニャ~!」


 私は頭を抱えて嘆いた。


 九条財閥を敵に回して私の人生もゲームオーバーとかロードローラーとかやめてくれ!


「全部あなたがバカなアドリブをやらかしてくれたせいニャ!」


 私はその原因を作った男、セツを強く睨みつけた。


「……それは違うぞリリアンや。賢者はときとして愚者を演じるもの……お主、ちとワシを見誤ったな」


 だが意外にもセツは私を哀れむような目で見返してきた。


「たしかにお主からしたらワシが勝手なことをしたように見えるかもしれんがの……はたしてお主にワシが咎められたものかのぅ」


「……どういうことニャ?」


 意外にもシリアスに語り始めたセツの態度に私は眉をひそめた。


「大体、お主は案内役とか言うて戦闘に参加するわけでもなし、どちらにせよナオトのまわりには強力なサポートがついていく……お主がいてもいなくてもナオトの安全性に影響はないじゃろうて」


「だけど私は旅を盛り上げるためにも必要なヒロインであって……」


「それはシナリオの都合じゃろう?」


「ニャ? 逆に、それ以外に何があるのニャ?」


「ナオトの都合じゃよ……」


 セツの表情は少しもふざけていなかった。


「このシナリオは勇者が目的を果たせばハイおしまいじゃ……じゃがのぅ、ナオトの人生には続きがあるんじゃぞ……? シナリオをすべて完遂しても、お主はナオトをずっとイースに閉じ込めておくつもりかの?」


「そ、それは……」


「お主わかっておるのか? イースの真実はいつか必ずナオトにバレる。たとえすべてを隠したままシナリオを完遂しても、その先で必ず夢から覚める」


 私は何も言えなかった。


「人を信じられなくなったナオトにそんな事実を突きつけてどうする? 二度と立ち上がれなくするつもりかの?」


「もしかして、私をシナリオから排除したのは……わざとだったニャ……?」


 この人、実はバカのふりを演じて……!?


「最初から最後まで一緒に旅をしてきたヒロインが実はこのプロジェクトを提案した人間で、しかも一貫して自分を嘲笑っていましたなどとエンディングで知れてみよ……ナオトの精神が崩壊してしまうじゃろうが……! お主は自分がラスボスよりも質の悪い存在だということを認識しておるのか……!」


 間違いない。セツはわざと私をシナリオから切り離すように道化を演じて動いたのだ。


「ただ、ワシも九条財閥に恩のある身……今、現実に起きているキメラ問題を無視するわけにもいかん……じゃから形はどうあれシナリオは完結させるつもりじゃ……じゃがのぅ。ワシは友人として、その先まで続くナオト自身の物語も考えていかねばならぬ。じゃからここではナオトのダメージを最小限に抑えておきたいのじゃ……たとえシナリオがナオトを切り捨てる構成で作られているとしても、ワシは、ナオト本人の物語は再び人を信じられるまでの物語が描かれるべきだと考えておる……!」


 そうだったのか……セツはセツで友人として真剣にナオトのことを考えていたのだ。


「すべてを終えたらワシは全力でナオトに詫びるつもりじゃよ……? じゃが、ナオトの被害を最小限に抑えるためにも、はっきり言ってお主の存在は邪魔じゃ!」


 邪魔じゃ……邪魔じゃ……邪魔じゃ……!


 私の心にはセツの言葉が深くエコーのように突き刺さっていた。



まさか村長の攻撃! 痛恨の一撃!(ガフッ)

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