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あなたを勇者にしてあげる 〜転生したと勘違いしている御曹司と偽世界を冒険中。なお全世界配信されてるから迫られても困ります〜  作者: nandemoE


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賢くない賢者


 初見の挨拶から村長役である風間セツの正体がバレてしまったとあっては、私は心臓が止まったかのような思いでその場に立ち尽くすほかなかった。


「はて……? 勇者様はワシのことを何かご存知なのかな……?」


 だが、正体が見破られても取り乱すことなくセッカこと風間セツは演技を続けていた。


「いや、知ってるもなにも……俺たち友だちだよな? なんでこんなところにいるんだ? 違世界だぞ、ここ」


「はて……? すまんが、ワシにはお主に関する記憶がなくてのう」


「人違いか……? いや、でも、俺にはどう見てもセツが老人に扮しているようにしか見えないんだが……そういう奴だったもんな、お前」


 どんな奴だったんだよ風間セツ!


 そんなふうに私が二人のやり取りを静観していると、ネコ耳型インカムを通じて九条専務の指示が来る。


「いいかリリアン。すぐに私の言うセリフをそのまま言いたまえ」


 不安しかないが、ほかに良い手段も浮かばないので私はそれに頷き、九条専務の言うとおりに言葉を紡ぎ出す。


「ニャア。もしかして村長、むかーし昔にやってきたとおっしゃったのは、ナオト様とおんなじ世界からだったニャ?」


 なるほど、と私は思った。


 たとえ同じ時代から違世界転移してきたとしても、イースに来た時代が違ったと言いたいわけなんだろう。


「もしかしてセツ……こっちの世界では、もう何十年も生きてきたってことか?」


 ナオトもナオトで受け入れるの早ぇな、っていうか疑う気配すらねーのな。


「たしかにワシはもう長いことここに住んではおるが……」


「マジかよ……セツ、俺のことを覚えていないのか? ナオトだよ、九条ナオト!」


「はて……?」


 そこで私が九条専務の指示に従ってセリフを紡ぐ。


「ナオト様……実は村長、あんまり昔のことは覚えていないようなのニャ……」


「マジかよ……記憶喪失ってやつか……」


 すげーな……どう考えても困難だと思われた説明内容なのに、ナオトのなかで勝手に都合よく補完されていくのが逆に恐ろしいくらいだ。


 ……もしかしてこれが本当の違世界の思考回路?


「セツは今までどうやって暮らしてたんだ?」


「そうじゃのう……若い頃は冒険者をやっていたと日記には書いてあったがのう……」


「冒険者!? セツ、イースでは冒険者をやってたのか!」


「今となってはワシにも記憶がなく、日記のなかの記録でしかないがのう……」


「セツお前……メチャクチャ壮絶な人生じゃねーか……」


 実の兄に殺されて転生したナオトも大概だけどな。とか思いつつ、私は黙って聞いていた。


「とにかく勇者様や……こんな家の玄関で立ち話もなんじゃ。中でゆっくりと話をしようかのう……リリアンもせっかく来たんじゃ。よかったらゆっくりとしておいき」


「はいニャ!」


 そして私たちは村長の家の中へと招かれた。


 なんだ、一時はどうなることかと思ったが、意外となんとかなるものなんだなぁと私は感心していた。




 その後、私たちはセツが扮する村長セッカからイースに存在するモンスターが北方の研究施設を中心に生息している情報を予定どおりに聞いた。


「これが冒険者をやっていたときのワシが書き残した日記にあった記録じゃ」


 記憶喪失なのに都合よく覚えているわけにもいかないので、結果的に日記からの情報として誤魔化しているようだった。


「ふにゃ~ん。自壊コードってなんのことニャ~? 私には全然わからなかったニャ~!」


 チラッ、とおバカなふりをしてナオトを見る。


「簡単に言ってしまえば、その研究施設にある装置を起動しさえすればモンスターはみんないなくなるってことだよ、リリアン」


「さっすがナオト様ニャ! 今の説明で全部わかったニャ!? 天才ニャ~!」


 よっこらしょっと。


「リリアンはわからなくても仕方ないよ。たぶんこの話は俺たちの世界からやって来た人じゃないとわからないだろうからね……セツが大事なことを記録しておいてくれて助かったよ」


「ニャ~! 村長は冒険者だった頃、賢者って呼ばれてたらしいニャ~!」


 シナリオ上で必要な説明を終えればもうこの村長は用済み。


 このあと伝説の剣まで私たちを案内したあとは一切シナリオに出てこない役なので私も適当に設定を盛りつけてやった。


「はは。セツが賢者って……お前、そんなに賢いタイプじゃなかっただろ?」


「そうじゃ。ワシは賢くない賢者じゃ」


 私はさっそく適当な設定を盛るものではないなと反省した。


「さて、ワシからの話も済んだことじゃし、お次は勇者様を伝説の剣のところへでも案内しようかの」


「伝説の剣!?」


 ナオトは途端に色めきだっていた。


 男の子って、いくつになっても剣とか好きね~……。


 私はそんなふうに冷めながらも、ニコニコと笑顔のまま二人に続いて村長宅をあとにした。



伝説の剣って、なぜか抜き身で地面に突き刺さってるイメージですよね~?

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