原作99パーセント改変の駄作家(1)
二日目の朝、ナオトと顔を合わせる前に私はお化粧を済ませていた。
本日も予定がたくさん詰まっている。
初日は服を脱がされかけたり色々とトラブルもあったが、今日は順調に進行するといいな。
「よ~し! 今日も頑張るニャ~!」
私は気合いを入れ、本日のスケジュールを確認する。
まず勇者であることが判明したナオトを村長の元へ連れて行き、モンスターを駆除しながら研究施設へ向かうためのストーリーを聞く。
その後、勇者にしか抜けないという伝説の剣を抜かせ、活動拠点となる北の街に向けて旅立たせる。
本日の予定ではいきなり街までは着かず、途中の宿場町で寝泊まりする予定になっていた。
「さて、そろそろナオト様と朝食の時間ニャ~」
ゆっくり食べてから村長の家に行こ~っと。
そんなとき、九条専務からの連絡が入った。
「大変だリリアン君。村長役が老齢で倒れた。すまんが時間を稼いでくれ」
いきなりフザケんな!
本日の予定、その最初から狂いが生じたシナリオに私は焦っていた。
「リリアン。今日はなんだかソワソワしてない?」
朝食をともにしているとき、ナオトはそんなことを言った。
「ニャ、ニャアア……ゆ、勇者様が隣のお部屋で寝ていると思ったら、ドキドキしちゃってよく眠れなかったニャ……」
本当は上手く時間稼ぎができるか不安で仕方がなかっただけなのだが。
「そんな……ここはリリアンの家なんだから気にしなくてもいいのに……」
「それだけじゃないニャ……? ナオト様、昨日はステータスで私の気持ちを知っちゃったから、その……襲われちゃうかと思ったニャ……」
「えっ!? いや、その……別に、俺はやましいことは考えてないんだぜ……?」
ナオトは明らかに動揺して変な口調になっていた。
「し、信じてるから大丈夫ニャ……」
そう簡単に襲われてたまるか!
しかし一方で、私は頬を赤らめて上目遣いでナオトを見る。
ナオトは無言で俯いていた。
あれ? 案外これで照れさせておけば無限に時間稼ぎができるんじゃね?
私は少し気がラクになった。
そんな私の努力もあってか、しばらくして再び九条専務からの連絡が入った。
ナオトとの朝食を終え、村長宅へ出発する前に準備をするとして一人で自室に戻ったタイミングだった。
「ありがとうリリアン君。キミが時間を稼いでいるうちになんとか村長の代役を見つけることができた」
「それはよかったニャ……イースではみんな何かしらの役割があるから代役探しも大変かと思いましたが、さすがは九条専務ですニャ」
「一人だけ決められた役割がなく、かつ村長の役割をすべて把握している人物がいたのだよ」
「へぇ~。そんな人がいたのニャ~。いったいどんな方なんですニャ?」
「当プロジェクトのシナリオ担当でもある花鳥雪月花……彼はラノベ作家だ」
それはラノベにあまり詳しくない私でも知っている有名な作家の名前だった。
「えっ!? 花鳥雪月花先生!? このプロジェクトのシナリオ担当って、あの花鳥雪月花先生だったんですかニャ!? すっごい売れっ子作家さんじゃないですかニャ!」
「ああ、そうだな……原作を99パーセント改変して超売れまくっている作家だ」
「すご! ……って、ん? 原作を99パーセント改変とニャ?」
ほぼ全部書き直してんじゃねーか!
「そうだ……クソつまらない作品しか書けんので内容を99パーセント改変して売り出している」
私は急激に眉をひそめた。
「……なぜニャ?」
「実は花鳥雪月花、本名、風間セツはナオトの高校時代の友人でな……引きこもったナオトを九条家がなんとか再起させようとしていた頃、同年代の友人が活躍していると知ればナオトもやる気を出してくれるのではないかと考え、九条財閥の金の力で売り出すことにしたのだ」
くだらねー!
金持ちは! これだから金持ちは!
しかも私には当然の疑念が浮かんでいた。
「ていうか、友人だとしたら普通に顔バレするのではないかニャ?」
「そこはまぁ、村長として老人メイクを施すからなんとかなるだろう」
九条専務、肝心なところがけっこう適当なんだよなぁ……。
「仮に正体に気づいたとしても記憶喪失だとか適当な言い訳をすればいい」
「普通の人がそんなに都合よく記憶喪失になるかニャ……?」
「なにを言う。違世界では記憶喪失の一つや二つ、日常茶飯事だ」
「……そういうところからプロジェクトにほころびが生じても責任は取れませんからねーニャ」
私は呆れてため息をついた。
誰か私の作品も改変して名作にしてくれ……!
たのむ、ガチで99パーセント改変でもいいんだ……
それがダメなら高評価、ブクマでも……










