ヒロインは主人公が好きなのか(3)
「私が見たところ、ナオト様にはただならぬ気配が漂っているニャ。何かお心当たりがあるんじゃないかニャ?」
私はそれを促すように尋ねる。
ナオトに対して多少の感傷を抱いてしまったばかりではあるが、それはそれとしてでも私には押し進めるべきシナリオでの役割がある。
ナオトは少し困ったようにはにかみながらも、やがて話してくれた。
「その……実を言うとさ。俺、どうも勇者ってヤツらしいんだよな……」
「そ、それは本当かニャ!?」
私は気分の切り替えも兼ねて、少し大げさに驚いて見せた。
「たぶん。……って、いきなりこんなことを言ってもリリアンに信じてもらえるかはわからないけどね」
「信じるニャ!」
私は両手でナオトの手を取った。
「おいおい……リリアンはもう少し人を疑うことを覚えたほうがいい……これで俺が悪人だったらどうするつもりなんだよ?」
それ、おまいう。
「大体、俺自身もまだ半信半疑なんだからさ……いきなり勇者とか言われたところで、証拠は? とか思うだろ普通」
ここだ! と私は思った。
「証拠だったら問題ないニャ! 勇者様には特別な力が宿っていると聞くニャ! だからナオト様が勇者なら、それはご自身が誰よりもわかっているハズなのニャ!」
「それって……もしかしてステータス画面のこと、かな?」
会話が既定路線に乗った!
私はいっそうの笑顔を作って、この好機を逃すまいとナオトに迫った。
「ニャア! もしかしてナオト様、ステータス画面が見えるニャ?」
「実は見えるんだ。……って言っても、ほかの人に見せられないんじゃ証拠にはならないんだけどさ」
「じゃあ……じゃあ……試しに私のステータスを見てみるニャ?」
「いいの?」
「もちろんニャ! もしそれでナオト様が知らないはずの私の秘密を見破ったら、それはもう勇者ということで確定なのニャ!」
「そう? それじゃあ遠慮なく……ステータス・オープン」
ナオトは私には見えないステータス画面を開いた。だが、ここから先の流れは完全なる既定路線。
表示される私の秘密とは、すでに設定として定められている情報であり、スタッフ間では共有事項だった。
「鑑定……リリアン・ドゥ。獣人族、女、レベル4、年齢二十一歳」
本当の年齢は二十六歳だが、少しでも純真なネコ耳娘を演じられるようにと、私の意思とは関係なく五歳もサバを読まされております。
「ニャッ!? 年齢までわかっちゃうニャ!?」
私は飛び上がって驚いて見せる。
「HP52、MPは10、筋力12、知力10、素早さ22……」
設定として知らされているとおりの情報を読み上げていくナオト。
「そ、それは私も元々の数値を知らないニャ……」
「趣味はお散歩、ひなたぼっこ……」
「ニャ!? そんなことまでわかっちゃうのニャ!?」
驚いたふり、驚いたふりだ。
それも全部ナオトをいい気持ちにさせるために仕組まれた設定と演技。少しおバカっぽく見せるための趣味も、実際の私の趣味とは関係がない。
そして極めつけは……。
「え!? 好きな人……九条ナオト……?」
「ニャアアアッ! そ、それは読んじゃだめニャアァァァ! うそニャ! それは嘘ニャアアアッ!」
そこで私はナオトに飛び掛かって彼が見ているだろうステータス画面を掻き消した。
その反応こそが真実であるとナオトに刷り込むため計算された演出だが。
要は、女性にモテたことがないだろう彼に、女性から好かれているという自信をつけさせたいという九条専務の計らいであり、同時にこれをもってリリアンがナオトを勇者と確信する実績が作り上げられたわけである。
これにて本日のミッションは完全コンプリート。
だが、私は心のどこかで素直に喜べない自分がいることにも気づいてしまっていた。
最近、悠久幻想曲がリメイクされたせいか、リリアンがメロディに思えてきました。
わかってしまった人は高評価とブクマ不可避ですね。
「メロディの勝利なのだぁ!」










