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あなたを勇者にしてあげる 〜転生したと勘違いしている御曹司と偽世界を冒険中。なお全世界配信されてるから迫られても困ります〜  作者: nandemoE


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ヒロインは主人公が好きなのか(2)


 私の家はシンプルな木造の小さな一軒家だった。そこには私と両親が住んでいた設定でリビングのほかに部屋が二つあるが、これはナオトと私が別々の部屋で寝るための設定であり、ナオトから何か事情を聞かれたら、両親はある日モンスターに……と涙ぐんで見せることに決まっていた。


 ただ、実はこの家を使用するのは今日だけである。


 このあとナオトは勇者であることが判明し、明日の朝には村に伝わる伝説の剣を引き抜いて旅に出ることが決まっている。


 今日の残りのミッションは、明日のために伝説の剣へと繋ぐ道筋を作っておくことだった。


 そのためには勇者だけが見られるステータス画面をナオトが見れることを会話のなかで引き出す必要があった。


 夕食を食べ終えたあと、私たちはリビングのテーブルで団欒の時間を設けていた。


「完全に日が暮れたか……どうやらイースでも俺が元いた世界とそう変わらない時間のサイクルがあるようだ」


 実はイースじゃなくて地球(アース)だからな~……と思いながら聞き返す。


「ナオト様の世界はどんな世界だったニャ?」


「見たところイースとあまり変わらないよ。一日は二十四時間、一年は三百六十五日で、毎日毎日、東から日が昇って西に沈んでの繰り返し」


「ニャ? それはイースとおんなじニャ」


「本当? そりゃあ感覚が狂わなくて助かるな~」


「どうしてイースに来ちゃったのニャ?」


「う~ん……ちょっと理由は言いにくいんだけど、死んじゃったんだよね、俺」


 そういえば実の兄に殺される形で、高笑いされながら意識を失っているんだよな、この人……。


 そのとき、私はこのふざけた設定だらけのイースのなかで、初めて少しだけ真面目な感傷をナオトに向けた。


 人を信じられなくなって引きこもったとは聞いているが、そのうえさらに兄にまで殺されたと思っているならば、どれほど信じる気持ちが減退していることだろうか。


「ニャ~……それはとっても悲しいニャ~……」


 そこは私にも共感を寄せる以上のことはできない。


 だが、意外にもナオトは朗らかに笑っていた。


「でも、それはもういいんだ。たしかに俺にも悪いところはあったし、やり直したいとは思っても、現実には難しい問題が積み上がってしまっていたし……」


 あ、そこいいんだ~。殺されちゃったのに別にいいんだ~。


 ナオトの表情には少し自嘲めいた寂しさが浮かんでいるように見えた。


「そのせいかな? 死んじゃったことにも、その原因となった兄にも、不思議と悲しいとか苛立ちとか、嫌な気持ちが湧いてこないんだ」


 私はそのとき、この人、本当はすごく心根のまっすぐな人なのではないだろうかと思った。


 人を信じられないと聞いていたわりには、人を疑うような雰囲気がない。


 それはもしかしたら、ここを違世界だと偽ろうとしている私たちにとって都合のいいことなのかもしれないが、そのとき、私はハッキリと自分が罪悪感を抱いていることに気づいた。


「もしかしたら、俺、心のどこかでは現状をリセットできるきっかけを望んでいたのかもな……」


 その罪悪感とは、少し鈍く胸の奥に走る痛みだった。


「ナオト様は、元の世界に帰りたいニャ?」


 私が問うと、ナオトはそれまで見せていた寂しさを隠すように優しく微笑んだ。


「いいや。……思い残すことがまったくないわけではないけど、これもまた一つのリセットだと思って、前向きにやっていこうかなって、今はそう思ってるかな。もしかしたらまだ実感がないからかもしれないけど」


「そうだったニャ……」


「はは……リリアンがそう悲しそうな顔をすることじゃないだろ? 俺だってこうなってしまったら、もうこっちの世界で何かすべきことがあるんじゃないかって、そう切り替えていこうかと思ってるんだからさ」


「……ナオト様はやっぱり強い人だったニャ」


「ハハハ……それがレベルのことなら、実はまだ1なんだけどな~」


 ナオトはまた少し自嘲気味に笑った。


「そうだリリアン。レベルと言えば、この世界、イースにはモンスターがいるってことでいいんだよな?」


「はいニャ! でも、元々この辺りにはそれほど多く存在してないハズだったニャ……」


 モンスターたちは島の中心にある遺伝子研究施設を中心に溢れた。つまり島の中心に近づくほどにモンスターの密度は濃くなるわけである。


 事前に研究施設の周囲一定区画を封鎖してはいるが、囲いきれなかったモンスターを掃討し、スタッフ居住区の安全性を高めていくのが当初の行動原則となる。


「時間経過でモンスターの脅威が増してきているってこと?」


「私にはよくわからないけど、もしかしたらそうなのかもしれないニャ」


「それだと、みんなが困るよな、きっと」


「はいニャ……だからこの村では、勇者様が現れるのをみんな心待ちにしているのニャ」


「勇者……か……」


 ナオトは自身のことを名乗るべきかを迷っているようだった。



別ルート会話

「一日は二十四時間、一年は三百六十五日。太陽は東から西」

「それはイースも同じニャ」

「じゃあ太陽が月に隠れたりする現象は知ってる?」

「ニャ? (知らないふり)」

「イクリプス!(キリッ!)」

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