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あなたを勇者にしてあげる 〜転生したと勘違いしている御曹司と偽世界を冒険中。なお全世界配信されてるから迫られても困ります〜  作者: nandemoE


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ヒロイン辞令は突然に(1)


今作は久々にエンタメ重視で地文も少なめ調整です。

異世界メタの現実モノで、類のないコメディでランキング狙いたい!

ぜひぜひ応援、よろしくお願いします!



 幼い頃、私は大きな公園で迷子になって野犬に襲われたことがある。


 そのとき助けてくれたのは、名前も知らない少し年上の男の子。


 自分だって怖いはずなのに、震える手で木の枝を握りしめて私をかばってくれていた。


 そんな子どもの世界の小さな物語ではあるのだけれど、私にとって彼は紛れもなく勇者であって、手に持った木の枝はまさしく伝説の剣だった。


「ナオく~ん、待ってよぉ!」


「遅いぜリリ! 勇者は立ち止まれねーんだ!」


 野犬を追い払った彼は得意げに木の枝を振り回し、私を両親のところまで連れていってくれた。


 結局、彼とはそれきりになってしまったけれど、彼と歩んだ公園の景色は大人になった今でも冒険の記憶として残っている。


 あのときの勇者は、今どこで何をしているのだろうか。


 今もまだ、どこかで勇者をしているのだろうか。


 なぁんて、大人になっても勇者のままなんてないことくらい、私にだってわかっている。




 ◇




 あまりの恐怖せいか、私は野犬に追い詰められたときのことを思い出していた。


 まさか取締役会で断罪される事態になろうとは。


安藤梨里(あんどう りり)くん……この責任をどう取ってくれるつもりかね?」


 私はまさに蛇に睨まれた蛙だった。いや、まな板の上の鯉か。


 数人の偉い人たちに囲まれ、私は震えながら直立していた。


「この件が明るみに出れば、九条財閥は世界中から非難されることだろう」


 つい先日のことだ。九条財閥のとある研究施設が突如、音信不通となった。


 それは天才科学者、八雲セラ(やくも せら)が率いる遺伝子工学の研究施設であり、遺伝子に関するあらゆる研究で世界を牽引する世界最高峰の施設だったのだ。


 そこは自然豊かな島をまるまる一つ買い取って作られており、世間には存在すら認知されていない実験施設でもある。


 そんな孤島のなかで起きていた異常事態――それは遺伝子を組み合わせて作られた複数の人工合成獣(キメラ)が施設の外に漏れ出してしまったということだ。


「幸いなことに島には関係者しか居住していないため問題は表面化していないが、これは由々しき事態だ」


「これを見たまえ」


 プロジェクターで投影された写真に映るのはライオンの身体に大きな翼と蛇の尾を併せ持つキメラ。


 そんな化け物が森の中を闊歩している写真なのだ。


 よく見れば画面の端に液体が丸く形を成している異形――スライムの姿も映っている。


「こんなモンスターを生み出していた企業だなどと世間に知られるわけにはいかない」


 このプロジェクトを担当していたのはほかでもない私――安藤梨里、二十六歳。


 世界の九条財閥と言われる大企業において『この若さで大抜擢』と言いたい気持ちもないわけではないが、正直なことを言えば近年、目立った動きもない当プロジェクトの管理役をなかば押しつけられる形で一任されていただけだった。


 最初はただ進捗管理をしていればいいお給料……だなんて軽く考えていたときもあった。


 だが今は……。


「もはやキミのクビ一つでどうにかなる問題でないことはわかるね?」


 私は追い詰められ、言葉を失っていた。


「ご両親が知れば、さぞ心を痛めることだろうねぇ……」


「そ、それだけは……!」


「なぁに、まだ挽回のチャンスはある……もちろん、キミに何か良い解決策が出せればだが……」


 そんなに簡単に思いつくはずがない。


「話は変わるが、たしかキミのご実家は地方で和菓子屋さんを営んでいたね?」


 普通、ご立派な肩書きの人たちがそんな不安を煽るような言い方をする!?


「そ、そうですが……それが何か……?」


 私は不安げに上目遣いで問うた。


「いや、ちょうどその辺りで道路の拡張予定があったのを今、思い出してね」


「そっ、それは!」


 この人たちにかかれば私の実家など簡単に吹き飛んでしまうだろう。


「私も今でこそこんな立場にいるがね……昔はよく現場でロードローラーを運転したものさ」


 ひ、酷い! 私の実家をロードローラーで踏み潰すつもりだ!


「ありますっ!」


 私は考えもなく、咄嗟に答えてしまっていた。


「ほう……? あるとは? いったい何があるのかね?」


「作戦です! この状況を逆手に取ってしまう一発逆転の手が!」


 にわかにザワつく取締役会の面々。


「そう簡単に思いつくとも思えんが……一応、聞いておこう。キミの考えた作戦とはいったいどんなものなのかね?」


 ええい! どうせもうクビみたいなものなんだ! どうにでもなれぃ!


 そう思って私は好き勝手言ってやることにした。


「島を丸ごとファンタジー風の別世界に仕立て上げるのです! そしてそんな現実とは異なる世界を夢見る冒険者たちを集め、彼らにモンスターを掃討させるのです!」


 取締役会の場に、どうにも重苦しい沈黙が訪れた。



 『現実世界に追放された悪役令嬢はモブを育てる』 第3巻(完結)

 2026年3月3日 アマゾナイトノベルズさま より!


 悪役令嬢が現代日本に逆転移!?

 戸籍も、頼りも、お金も、住処すらない絶望的な状況。

 しかも「人を一生愛せない呪い」まで掛けられていて……。


 ぜひぜひ応援よろしくお願いいたします!


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