第12話 机上の裁定
(父・ルーカス視点)
執務室には、すでに灯りが入っていた。日が落ちるのが早くなり、窓の外は薄く暗い。机の上には、処理待ちの書類がいくつも重ねられている。どれも急を要するものだが、順序は崩れていない。
扉が、短く叩かれた。
「入れ」
返事を待たず、扉が開く。書類を抱えた補佐官が一歩入り、静かに歩み寄った。
「現地から、正式な報告です」
差し出された封筒は、公式の印で閉じられていた。 急ぎの処理であることは、はっきりしている。それでも、書類は過不足なく整えられていた。
机の上に置かれた紙の束は、静かだった。ルーカスは、それを手に取る。
椅子に腰掛けたまま、視線を落とし、 一枚ずつ、頁を送る。 補佐官は、何も言わない。説明も、補足もない。 部屋の中に、紙の擦れる音だけが残る。
やがて、最後の頁に至る。ルーカスは、すぐには手を離さなかった。書類を閉じ、端を揃える。 それから、他の書類の上に重ねた。
「……正式な対応として扱う」
声は低く、簡潔だった。補佐官は一瞬だけ頷き、「承知しました」 とだけ答える。それ以上の言葉は交わされない。
補佐官が下がり、扉が閉まる。執務室には、また静けさが戻った。
ルーカスは席を立ち、窓際へ歩く。外はすでに暗く、王都の灯が点々と浮かんでいる。
しばらく、何もせずに立っていた。やがて、机へ戻る。書類の山の一角を整え、 次に回すべき束を、手前に引き寄せる。
作業は、滞りなく続いた。 夜は、深くなっていく。




