誓ひの日
〈闇鍋と云ふ程もない集ひ哉 涙次〉
【ⅰ】
「この儘ぢや朱那ちやんが可哀想だわ」と佐武ちやんが云ふのである。怪盗もぐら國王と情婦・中目朱那の事である。「國王ちやん國籍はあるんでしよ? この儘籍も入れないんぢやあねえ」-安保さん「ところが朱那、もぐらの奴の情婦の儘でいゝ。だうせ惡党との事だもの、つて云ふんだよ」佐武ちやんと安保さんは、仲人道樂が髙じて、「くつつけ會」などゝ名乘つてゐる。カンテラと悦美を結婚させたのも、彼らなのだ。「ぢやあせめて、内々のパーティでも開いて、彼女一筋なところを見せて貰ひたいわ」-「確かに。* 枝垂くんの前例もあるしなあ」-枝垂、何処かで嚔をしてゐる筈である。
* 當該シリーズ第98・99話參照。
【ⅱ】
と云ふ譯で、半ば無理矢理、國王と朱那の「誓ひの日」なるパーティが、國王行き付けのステーキハウス「柊家」プロデュースで行はれる事になつた。國王ばかりやる氣滿々で、朱那は醒めてゐたのだが-
折しも、ジョージア・オキーフの小品が或る画廊に展示されてゐると云ふ。オキーフの繪は朱那、大好きなのだ。國王、朱那へのプレゼントは自腹で、と決めてゐたのだが、オキーフの作品ともなると、小品でも髙価過ぎて手が出ない。それを、「誓ひの日」の朱那へのプレゼントとして、國王、心に決めてゐたのである。こゝは、矢張り盗むしかないか-
【ⅲ】
で、カンテラ・じろさんコンビを用心棒に付けて(テオが、「絶對ルシフェルが邪魔立てする」と云ふので)、國王、その画廊に忍び入つた。流石のテオの讀みで、確かにルシフェルは使ひの【魔】を2名ばかり、画廊に張り付かせてゐた。「魔忍」と云ふ名の彼らは、その名の通り魔界の忍者なのである。ともあれ、カンテラとじろさんの敵ではない。じろさんが「魔忍」2人同時に投げを打つと、カンテラが撫で斬り。「しええええええいつ!!」‐國王、オキーフの繪を首尾良く頭陀袋に入れた。
「誓ひの日」当日- 朱那は綺麗だつた。* 謝遷姫も斯くや、と云ふ眞つ赫なチャイナドレスで装ひ、國王は白のタキシード。2人は國王のビッグバイク・ヤマハVMAX1700にタンデムしての登場。朱那は所謂「お嫁さん坐り」で、國王が男前なところは、認めざるを得なかつた。會場のホテルの宴會場の壁に、例のオキーフの繪が飾られてゐる。集まつたカンテラ係累の者逹、やんやの大喝采である。尚、メンバーは大人だけ。朱那の意向で、子供の來場は断つた。「ほら、國王ちよつと格好いゝところあるから、子供が眞似すると、困るでしよ」との事。何だかんだ云つてお惚氣である。
* 當該シリーズ第93話參照。
※※※※
〈コンビニのイートインにて中華まん頰張れば我が自由なりけり 平手みき〉
【ⅳ】
然し、招かれざる客、と云ふのはゐるもので、ルシフェル、こゝにも「魔忍」を配置してゐた。彼らは報道陣(顔を伏せて、假名での報道なら良い、との確約をしてゐた)の振りをしてゐたのだが、カメラ代をルシフェルがケチつたせゐで、杵塚にその道はトーシロだと見拔かれた。「魔忍」としたら、これは盲點であつた。が、一味としては、どの道、ルシフェルがこの會も邪魔して來るであらう事は既に織り込み濟みだつた。
【ⅴ】
自棄になつた「魔忍」のリーダー格が、正體を露はにした。他の者もそれに倣ひ、自ず誰が(この場の)惡玉なのかゞ、分かつてしまつた。こゝで時軸の登板。*「秘術・和合空間!」-これで全ての攻撃が凍結されてしまつた。無理に攻撃しやうとしても、躰が云ふ事を聞かない。カンテラ「麻、ナイス!」。時軸、指でOKマークを作つて見せた。時軸「パーティは和氣あいあい、行きたいもんですよね!」
* 當該シリーズ第155話參照。
【ⅵ】
水晶玉で見てゐたルシフェル、「ぐぬゝ、時軸麻之介めー!」。一度ならず、時軸の「和合空間」に苦杯を舐めさせられたので、怒り心頭。だが、時軸にとつて彼・ルシフェルは*「母ちやんの仇」である。これぐらゐで濟んで倖ひ、とするべきだつたらう。
* 當該シリーズ第154話參照。
※※※※
〈一點の三日月冬を牛耳れり 涙次〉
で、「魔忍」逹をさて置き、會はその式次第を終へた。最後は國王と朱那、2人のキスで終はつたのだが、國王、「ジョージア・オキーフの繪に誓つて、絶對に浮氣はしません」と「誓ひの言葉」。會場で、枝垂が大きな嚔をしたとさ・笑。お仕舞ひ。




