9, 晩食
「よし、これくらいか。」
アオはケイトの背中に湿布を貼ると、そう言って立ち上がった。ケイトはブルブルと震えたあとにギューッと目を瞑る。
「せなか、ひやい⋯。」
「ははっ。そりゃあそうだ。その傷薬は腐らねぇように氷の魔石を使って低温保管してあるんだ。」
「まぁ、本当はしなくても大丈夫なやつだけどね。」
「夏だから怖いだろ?ただでさえコイツは緑のネバネバだから、腐ってても気付きにくい。」
「大丈夫なように昔の人が知恵を絞って作ったものがその薬だがね。まぁ、冷やしても特に弊害はないし、君のやり方に文句は言わないでおこう。」
「あんがと。」
アオはケイトを抱き上げると、部屋の扉へと向かった。
「アオ。どこ行くの?」
ケイトはアオを見上げてそう問いかけた。ちなみに、結局呼び方は本人の希望で呼び捨てに決定した。本人曰く、
『満面の笑みでにーたんとか、破壊力ヤバい。呼び捨ての方が⋯ケイトの目には優しいだろうな。』
らしい。
「何か用事かい?ケイトは置いていってほしいのだが⋯。」
「ちげぇよ、晩飯。どーせ、ボスたちまだ食べてないんでしょ?ボスは別に食べなくても死なないけど、子供には空腹なんてさせられねぇ。」
「食べさせるものには気をつけまえよ~。ケイトは育児放棄のせいで、極度の少食⋯。胃が弱いし、あんまり濃い味付けだと胃もたれとか腹痛とか全部吐く可能性もあるんだから。」
「はぁ~、過保護なことですね。文句は一切ないから良いけど。」
「今言ったのは実際過去に助けた子が起こしてた症状だからね。」
「じゃあ、パン粥とか、薄味の野菜スープとかか。俺は、野菜スープ無理だけど⋯。」
「りんごのすりおろしとかもアリだね。」
「蜂蜜持ってないから無理。あれ高いし地味に人気だからさ。薬にも使える、お菓子作りにも使える、アレってまさしく自然が作り出した万能の趣向品。」
「はちみつ?」
「金色の半透明のあまぁ~い液体。ドロっとしてる。」
「へぇ~、おいしいの?」
「甘い。好き嫌いはあるだろうなぁ。」
「たべてみたいなぁ。」
多分、ケイトは言ってみただけなのだろう。知らない味を知りたい。そんな知識欲から来た言葉。
「⋯みんなと合流する前に養蜂の街に寄ろうか。」
「この辺なら⋯、ムーヴァのフォン領が果樹栽培が盛ん。」
「う~ん、そこなら、往復で2週間くらいかな。」
「弱った子供にさせるには少し長い旅路だな。」
「国境と山地に森林を避けての遠回りだからねぇ。」
「しかも、どちらかと言うとフグラとか、ルーディアとか、西側の方が良質だよな。」
「仕方ない。蜂蜜は元気になってからだね。」
「うん!がんばる!」
「「⋯(可愛い。)」」
3人は気を取り直して食堂へと向かった。
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