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26/26

26, 空気を掴んでいるような。

攻撃しても攻撃してもゆらゆらと避けられ続けることに苛立ったのか一人の男が奴隷たちの方へ向かった。


「きゃあぁぁぁぁぁあ!!」


斧の標的にされた女は叫び後ずさる。しかし、少し前まで拘束されていたうえ、恐怖に震え強張った身体がとっさに動くわけがない。そこにいた誰もが今度こそ、その斧によって犠牲者が生まれてしまうと思った。


「だめだよ。その人たちを襲っちゃ⋯。」


神父が悪いことをした子供を諭すときのような口調だった。口調が優しいだけで、己は許されない禁忌をおかしたのだと錯覚するような冷徹さを帯びた声。

それと同時に響いたのは野太い男の叫び声。

肩を押さえる指の間からはタラタラと血が流れ、男の腕を伝って床を赤く染めた。

男の方に傷を付けた男はニコニコと嗤っていた。


「いいの、いいの。アレッスォロが出てきてくれないなら、出てきてくれるように、出てきてくれるまで……、頑張るだけなの。」


◈◈◈


「ガネイシャ。」


アオを呼んで帰ってきてみると、思いの外綺麗な部屋がそこにはあった。ガネイシャと呼ばれた男は振り返ると狂喜的な笑みをそのまま柔らかなものに変え、まるで飼い主の元へ帰る犬の様に意気揚々と自分の元へ走ってくる。


「リーダー、おかえりなさい。」

「うん。アオ、さっき指示した通りによろしくね。その商人の身柄を憲兵に突き出して、商人ギルドの支部に連絡を入れてこの人たちの保護を頼むんだ。」

「あぁ。」

「僕は寝てるケイトがを見ないとだから後ろにいる。戦闘とその事後処理は本職の方に任せるね。」

「久しぶり、アオ。」

「ガネイシャお前…………はぁ゙ぁ゙、いや、今はそんなことよりさっさとここ片すぞケイトの成長に悪ぃ。あんま部屋を汚さなかったのは褒めてやる。」

「ふふふ〜ん♪」

「ふ、ふざけるなよミュシュラとやら!!よくも騙してくれたな!!お前の名は覚えたからな!!」

「は?細っこいだの骨だの言ってバカにしてた男に縄でぐるぐるまきにされてるくせに何言ってるの?ね」

「ガネイシャ、一旦落ち着こうか。」

「はぁい!!」


縄で縛られている男たちの中から怒りに任せた野太い叫び声が響く。覗いてみれば周りの同じような格好の男達とは違い、より一層縄でぐるぐるまきにされた男が叫んでいた。


「あら、商人様。よくお似合いでございます。」

「うるさーい!!いいから俺を離せ!!」

「ダメですよ。あなたは憲兵に突き出さないと。」

「何をした!!証拠がどこにあるというのだ!!」

「この状況で言い逃れはできないですが、まぁいいでしょう。ガネイシャ。」

「はい。」


ガネイシャはどこからか革張りの分厚い本を取ってくると、ミュシュラにそれを手渡した。


「んなっ!?」

「君が私の()()()に手を出さなければ、まだ大人しく告発するつもりだったんですよ。」


男と視線を合わせるように屈み、その本を見せつければ男はギリリと歯ぎしりをする。


「すべてわかっているのですよ?」


男は身体から空気が抜けたみたいに項垂れると、それ以上の抵抗をするのを止めたようだった。

ようやく全てが終わったのかもしれない。捕まっていた人々は涙を流し喜んだ。


「リーダー、これどうする。」

「それはね…」


アオに連れられて人々は館から離れ、ミュシュラやガネイシャは摘発のための証拠を集めるために意識を逸らした。

その一瞬、項垂れている男の口は弧を描く。


(過去の資料やここ数日の調べでわかっている。()()()、ね。仕事がこれで終われば早いのに。)

ここまで読んでいただきありがとうございます。

長らく更新止めてすみませんでした。また不定期に更新します。

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