25, 無意味
ガネイシャさんの独り言で終わります。ミュシュラさんアオさんの到着までしばらくお待ちください。
「?」
おかしい。緑髪の男が逃げたのは確認した。しかし、
斧の下で血まみれになっているはずの先ほどまで商品だった銀髪の男は斧の長い柄の先端に立っている。
「なっ!!」
「あなたは奴隷?奴隷じゃない?」
「は?」
男は身体を傾けて下から斧の男の目を覗き込むような動作をする。
「でも、隷属の魔法をかけられているようには見えない。」
「何を言って」
「目が生き生きとしています。きっとあなたはこう思った。『また俺の手で死人が増えてしまった。』それは己の勝利が確定したからこそ思う優越、おごりです。僕は捕まっている間あなたに何度もぶたれました。僕を囲んでいるあなたがた四人に何かしらされました。殴られました蹴られもしましたストレスの捌け口としてたくさん暴行されました。痛かったです。痛いです。身体も心も痛いです。でもそれは僕が愚図だからです。僕は恨みはしませんお荷物で存在自体が呪いで醜い僕は世界中の人々にぶたれて憎まれて殺されて当然だからです。僕はお腹が空きました。」
「はぁ?」
「何を言ってるんだこいつは。」
異様だった。彼は斧を持つ男に話しかけているはずなのに、その内容は脈絡がない。まるで思ったことを片っ端から口にしているだけのような、その独り言を大人数で黙って聞いているような気持ち悪さがあった。
「材料が手に入った時にアレッスォロが気が向いて作ってくれるパンケーキは美味しくて大好きです。アレッスォロはひどいです。僕が痛い痛いと助けを求めても助けてくれませんでした。彼は怒っています。笑っています。あなたはどう思いますか?なんで助けてくれないのか僕にはわかりません。アレッスォロは優しいです。頑張ったら褒めてくれます。彼はすぐに壊してしまいます。僕はすぐに壊れるらしいです。僕はアレッスォロが好きですが、彼が僕をどう思っているのか知ることはできません。寂しいです。アレッスォロのことを感じたくても、彼が出てきてくれないから怖いです。確かに彼は僕を壊すのが上手です。僕はアレッスォロに………………………………。」
彼は黙り込み下を向いた。
「は?」
「………ォロ。」
どれだけの時間が経ったのか誰も把握していなかった。だが、体感としては永遠のようだった沈黙を彼の弱いつぶやきが引き裂いた。彼はゆっくりと斧から降り、背中を向けて捕まっていた人々のところまで歩く。
「な、なにをしている、早くそいつを殺せ!!」
彼の異様さを気の所為と思うことにしたのか、それとも今をチャンスと解釈したのか、バッカスが声を張り上げた。巨体の男たちもその言葉でようやく正気に戻り、攻撃を再開する。
「ねぇ、君はどうやったらアレッスォロが出てきてくれると思う?」
「・・・・・・・・・・・」
「君はどう思う。」
「・・・・・・・・・・・」
男たちの斧を避けながら彼は問いかける。そのアレッスォロという人物にはどうしたら会えるのかと。
「なんでだれも僕の質問に答えてくれないの!!あぁもう違う違う違う違う!!アレッスォロが出てこない原因がわからないんだよ!!わからない自分が、自分のバカさが一番わけがわからないんだよ!!あぁ、アレッスォロ、なんで僕って……。」
突然銀髪の男は自分の長い髪をつかみ頭を振り乱してその場に座り込んだ。
攻撃していた男たちがもはや錯乱状態なのだろうかと一瞬心配になり攻撃をやめるか悩むほどだった。しかし、殺しやすいに越したことは無いと思い直し気味の悪さが拭えないまま攻撃を続ける。奴隷として捕まっていた人々の中にも、本当にコイツが自分たちを守ってくれるのかと不安な空気が流れ始める。
「僕が弱いから?だから出てきてくれないの?どうしたらいいの?」
「・・・・・・・・・。」
「・・・ょう。どうしようボスからここに居る捕まっていた人を守れって言われていたのになんで自分のことばかり考えて・・・・・・。きっとアレッスォロは僕がこんなだから嫌いになって出てきてくれなくなったんだ。あれぇ、そもそもなんで僕こんなところに居るんだろう。あ、ボスの命令だからだ。でも、ボスはこの地方周辺による予定はないって言ってたよね。ならあのボスは偽物?じゃあなんで僕の名前を発音できたんだろう。新緑のポルカのメンバーにしか名前を教えていないのに。まさかハルバルを潰そうとする商人のスパイでも潜り込んでいるのかなぁ。だとしたら誰?誰が裏切ったの?うぅ、それらしい人が思い浮かばないよぉ。」
ここまで読んでいただきありがとうございます。




