19, 何から始めようか。
改めに改めての仕事の確認。
今回の仕事は、
『ゲレティスで詐欺と人身売買と横領のトリプルを踏み抜いてる商人の捕縛。協会側で犯人は特定してあるから、自分たちが行わないといけない作業工程は、二つ。完全に逃げられない証拠を集めてそいつを捕縛するだけ。』
その商人のことを資料や街に来てからの噂を踏まえてざっと説明すると、
生まれはこの町1番の商家。
どうやら先々代が商人として大いに活躍し、この街の商業の歴史にその家名を刻んだようだ。しかし、その家自体はすでに没落済み。今は男はただの商人として家名を使っているだけのようだ。
先々代が隠居し、先代があとを継いでから汚職は始まったらしく、密偵が集めた資料の最も古い記録は十数年前まで遡る。
何故そこまで証拠が集まってそいつを捕縛できないのか。この資料には明記されていないが恐らく⋯⋯⋯。
(いや、所詮仮定だ。今詳しく考えたって確証は持てない。)
ミュシュラは紙を元々挟んでいたノートに戻した。
「やっぱり紙を隠すなら紙にってね。」
「みゅーら?」
「なぁにケイト?お腹空いた?」
「んーんー。」
足元まで歩いてきたケイトを抱きかかえてくるりと一回転すると、ケイトはコロコロとした可愛らしい笑い声を部屋に響かせた。
「さぁて、愛しい愛しいマイ・エンジェル。
私は何から始めたらいいでしょうか?」
「ケイトね、この絵本読んでほしい!!」
「了解しました。私があなたの尽きること無き知識欲をひととき満たして差し上げます。」
(どうせ夜になるまで何もできないし、今はまったりタイムが最優先。)
ミュシュラは本を開いた。
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