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14, 草茅ウサギ

「みゅーら、晴れたねぇ!!」

「そうだね~、晴れたねぇ。」

「でもボス、あの雲があるから明日は雨になりますよ。」

「今日のうちに進めるところまで進んでおこうか。」


幌馬車の御者席の真ん中で手綱を握り操縦するミュシュラ、

そんなミュシュラの横で目をキラキラさせるケイト、

そんな彼を膝に抱きかかえるアオ。


国を出てすぐはミリ程度で魔物に気をつけたりもう少し緊張感があったものだが、それから半日経った今はもうそんなものは皆無だった。なんせ、まず危険な魔物が生息する森が近くに無い。そしてケイト可愛い。


「いつくらいに着くの?」

「すっっごく速くて国境を越えるのは明日の昼前くらいだね。」

「そっかぁ〜。」

「タハドへ向かったときと同じくらいかかるよ。あの街よりも更に国の中心へ向かうから、もっとかかるかも。」

「あー、街に着いたら俺はしばらく別行動で。」


『調査もあるし。』アオは頭をポリポリとかきながらそう言った。


「いや、でもやっぱ、ケイトを放っておけねぇから、一緒に行動します。」

「俺がいるから心ゆくまで単独行動しておいで?」

「ケイトの横がいいっつってんだろ。」

「熱烈な告白だねぇ〜。」


ミュシュラはからかうように隣をちらりと見る。家族に妹や弟がいた事もあり、見た目のわりに小さい子供に弱いのがアオだ。今もミュシュラに対して軽口交じりに文句を言いつつ、優しくケイトの髪のほつれを解いてあげているその姿は本物の年の離れた兄弟のよう。


(この子はからかいがいがあって楽しい。)


「ねちゅれちゅ?」

「なんだ?ケイトは熱烈な男は嫌いか?」

「ケイト、アオ、しゅき!!」

「⋯⋯⋯可愛すぎんだろ、この子供。」


アオは感極まってケイトを抱きしめる。ここまで純粋に好きとか言われると思っていなかったからだろう。もちろん抱きしめる腕に力は入っていないようだ。


「みゅーら、アオ、しゅき??」


ケイトが純粋な瞳で見上げて問いかける。


「だーい好きだよー。」


(子供ってたまに怖いこと聞くな。変な意味を込めてない純粋な問いかけだから尚更。)


「うわ、ボス、棒読みはねぇだろ。酷いわぁ。ボスに嫌われた〜。」

「え?アオは俺に心を込めて『大好き♡』って言ってほしいのかい?意外だねぇ。」

「いや⋯、()()()に殺されそうなんでやめときます。」

()()()が怒ったら俺は止められないからよろしく頼むよ〜。」

「ボスに無理なのに俺にできるわけねぇって。」


アイツ、あのコというのはハルバルの仲間の一人なのだが、まぁ、今は特に語らなくても大丈夫だろう。


(さて、このまま順調に進めば良かったけど⋯⋯。)


「アオ、多分、あそこの草むら居る。」

「あ?本当だ。りょーかぁーい、ボス。」

「?」


ミュシュラが示したのは10メートルほど前方の道沿いにある草むらだ。アオは草むらを確認した後ケイトを抱えて一旦幌馬車の中へと入っていく。そして縄のようなものが結ばれた、碇のような特徴的な形の短剣を手に持って戻って来た。


「簡単に結んだだけだからなァ。戻って来るか?これ。」

「降りるの面倒くさい?」

「いいや。」


そして、幌馬車が問題の草むらの横の道へさしかかったときだった。草をかき分けでてきたのは、額に角があり、成人男性の腰程の大きさのあるネズミ、草茅ウサギだった。


「こいつ、デケェな。」

「頑張れ頑張れ。君のおかげで今日の晩ご飯のおかずが増えるかもしれないよ。」

「わかってます⋯⋯。よっと。」


アオが襲いかかってきたウサギへ向かって剣を投げた。空中で貫かれたウサギは地面へ向かって垂直に落ちていく。


「ん、ちゃんと刺さった。」


御者席から降りて、縄をたどって歩いていくアオ。彼はしばらくすると、武器と草茅ウサギの死体とともに帰ってきた。


「血抜きしたいから、川探しません?」

「そうだね、一度休憩を挟もうか。」

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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