13, ご飯食べ終わるの、俺が一番遅くなるんだよね。
「ってことで明日、タハドを出るよ。」
「は?」
夜中にふらっと何処かへ出かけて行った翌日、昼食の場でミュシュラは俺とケイトに出国することを話した。ちなみに今日の昼食は屋台で買って来たタコスだ。
「みゅーら、みんな、おでかけ?」
「そうだよ〜。よく分かってて偉いね〜!!」
「『ってことで』って、どんなことだよ。ちゃんと説明しろ。」
「もー、ケイトもわかってるのになんでアオがわからないんだい?」
「絶対ケイトもわかってないだろ!?『明日この街出るんだーワクワクー!!』くらいにしか認識してないだろ?!」
本当のことを言うとなんとなくの予想はつくが、予想や思い込みで流すとここでは軽く死にかける。
『話が違う?確認しなかったのは君でしょ?俺はこのことに向けてずっと動いていたし、君も良いように動いてくれてたから分かっていたのかと。』
とは、新緑のポルカに入った直後に何回か言われたことだ。まぁ、確認してなかった俺が悪いのだが。その代償がデカすぎる。ちなみに少し話は変わるのだが、他のメンバーとかと話してるときでもいつの間にかソイツの地雷踏み抜いて殺り合いになるなんてことは多々ある。
「一体何処に行くんだ?」
「ゲレティスに戻るよ。」
「ゲレイス?」
「そーそー。」
「もとのお国?」
「よくわかったね〜。ケイトは賢いね〜。本当にね、
戻る気は無かったんだけど⋯、仕事が入っちゃって。」
「どんな?」
タコスを早々に食べ終わり、拭くものがなかったから仕方無く手に付いたソースをペロと舐めながら問う。ミュシュラは俺に手拭きを渡しながら答えた。
「詐欺と人身売買と横領のトリプルを踏み抜いてる商人を捕まえるだけの簡単なお仕事だね。個人は特定してあるから、あとは証拠を固めるだけ。協会はその証拠集めに苦戦してるみたいだけど。」
(また、随分と都合の良い奴が居るモンだな。)
アオは何処からか湧いて出てくる仲間に肉片にされるであろうそいつを思い、同情でもするつもりだったが特に何も思わなかった。
「協会も、助けるフリして俺等が少ォ〜し遊んでんの分かってるだろうにさ。結局俺等頼るしかねぇって可哀想だよな。」
基本的に狂ってるくせに無駄に有能な奴の集まりの新緑のポルカ。こいつもミュシュラに拾ってもらったのか程度の仲間意識しかない闇の住人の集まり。そんな奴らがハルバルの団員として表世界を生きるのは、かなりの鬱憤やストレスが溜まるだろう。そんな謎視点のミュシュラの気遣いから、この協会へのお手伝い活動は始まった。
(俺は周りのやつほど酷くねぇけど、まぁ、そういうのあるに越したことねぇし。)
この仕事の難易度がまた、暇潰しには丁度いいのだ。ミュシュラは俺等とは違い、表世界の人間のくせに謎に俺等の感覚が解ってる。
(ちょっと裏に入っただけのちっちゃなヤツがコツコツ頑張って積み上げてきたものをバーンって崩してくの、地味に癖になんだよなァ⋯⋯⋯。)
まぁ、大抵翌日にはその感慨とかは全て無くなっているが。
よくあるだろう。見つけた嬉しさで買ったものが後々考えると案外要らなかったり、とか。
とにかく、その瞬間だけの高揚感や暇潰しを得るのには向いてる。
「彼等が自分たちの罪を供述しやすくしてあげているのだから、協会も感謝こそすれ、怒られることは何もないよ。」
思案に耽りそうになったところでミュシュラがまた話し始めた。
膝の上ではアオによって耳をふさがれたケイトがキョトリと首を傾ける。
「純粋無垢な子供の前で話すことでも無いか。まぁ、アオも準備しておいて。」
「わかった。」
ミュシュラは「ごちそうさま」というとゴミをまとめて部屋から出ていった。
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