10, タハド観光
ミュシュラは肩から鞄を下げて、中身を確認する。
(止血薬に、解毒薬。縄にガーゼに包帯に。あとはお金と少しの筆記具と⋯町中だし、これだけあれば十分かな?)
人生何があるかわからないからね。急に迷宮に転移しても切り抜けるくらいの準備はしておかなきゃ。
(まぁ、どう考えても絶対にそんなこと無いけど。)
迷宮なんて、自分から扉を潜るしか入り方は無い。しかも、普通は冒険者以外は入らない。入るなんて、よほどの命知らずか、路頭に迷った自殺願望者だろう。
(じゃなくて⋯)
「そろそろ行こうか。」
「うん!」
「案内を頼むよ、アオ。なんせしばらく来ていなかったからね。だいぶ変わったところもあるだろうさ。」
「ぁいよ。」
アオに選んでもらった新しい服を着てご満悦のケイトに手を差し伸べる。
今日はせっかくのいい天気だから、3人でタハドを見て歩くことになったのだ。
アオはぶっきらぼうに返事をすると、じゃあまずは⋯と口を開いた。
「タハド名物、商人ギルド見が」
「それを楽しいと思う子供が居ると思うかい?」
「ぶっちゃけ思わねぇな。」
「ぎるど?」
「商人のための問題処理班さ。俺の仕事を増やしてる原因でもある。」
「わるいひと?」
「全然。むしろ良いところ。」
(というか、ここに来たなら一回ギルドマスターに顔を見せたほうが良いのかな?)
「?」
「じゃあ次は、⋯闇オー」
「ケイトの目に悪い」
「武器屋」
「さっきからふざけてる?」
「じゃあ、ボスは逆にどこなら良いんだよ?」
眉間にしわを寄せながらニコニコ(?)の笑顔でアオはミュシュラに問いかけた。
「ふむ。そうだね⋯⋯。」
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