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09「動き出す破棄案件」

 私はメイドと共に衣装を扱うお店を何軒か回りました。マルゲリット様の姿を思い出し騎士のイメージを払拭します。そして正装の兄の横に配置。どのようなお姿が人目を引いて感心を集めるか難解なパズルを解いていきます。

 何よりも、ここは兄の好みが最優先。あの(・・)凜々しさの先にどのような美しさを演出しようかと頭を悩ませました。貴重品倉庫の棚を開けて、母親と共にアクセサリーを選びクリーニングに出します。身に付ける女性が新しい主になってくれればと願いながら。

 夜会のお手伝いは良い気分転換となりました。出席などできない私の代わりに、楽しんできて欲しいとの気持ちで一杯になります。


 そしていよいよマルゲリット様がバシュラール家の屋敷へとやって来ました。私と母とメイドたちでお出迎えいたします。

「ご無理なお願いをいたしまして、申し訳ございません」

「いえいえ。こちらこそ、無粋(ぶすい)者の息子を引っ張り出していただき感謝いたします」

 母のバシュラール夫人に、マルゲリット様は丁寧に頭を下げるました。母も私も丁寧に頭を下げさせていただきます。兄上関係の令嬢が我が家を訪ねるなど初めての快挙なのですよ。大事件です。

「さあ。準備は出来ておりますわ。どうぞこちらへ」

 私と母で選んだ五着ほどを屋敷に運んでもらっておりました。一流衣装店のスタッフ二名が手伝いに来てくれています。

 社交界で着飾るドレスはレンタルが一般的です。デザインやサイズを直し、小物などを使い皆が最先端と伝統を競い合うのです。


 扉がノックされました。開けますと、騎士正装姿の兄がおります。

「どうぞ。お兄様」

 入るなり兄は無言で驚いたような表情になります。ふふふ、どうですか?

「おー。馬子にも衣装ですねえ……」

 おっと、その言いようは――。でもお兄様の表情からは、照れ隠しと読み取れます。やっぱりとんでもない無粋(ぶすい)者ですね。

「とても失礼ですわよ。お兄様」

「いや。素直に美しい、と言わせてもらうよ」

 それでよろしいのですよ。お兄……。

「照れくさいですね……」

 そう言ってはにかむ女流騎士様です。なんて可愛らしい姿なのでしょう。これは本番が楽しみです。


  ◆


 翌日、政務庁舎にある私たちの部屋に行くと、マリエルが一人ポツンと座っていました。

「どうしたの?」

「これよ。ちょっと読んでみて……」

 私はテーブルの書類に目をやりました。政務庁舎の正式な書式です。

「本日の職務は休止とする。午前中は執務室で待機し、正午には退庁せよ?」

 リュシーもやって来ました。私はその書類を差し出します。

「ふ~ん。今日がお休みなら、昨日のうちに言ってくれれば良かったのに~」

「この時期に組織改編なんてあるのかしらね」

 書類がないのではなく、上で止まっているのです。マリエル言った理由は妥当ではありますが、たぶん違うでしょう。

 もうこれ以上、親友たちに黙ってはいられません。裏切りになってしまいます。

「実は……」

「ん?」

 リュシーが私の顔を覗き込みます。もう告白するしかありません。

「私はビュファン・アルフォンス殿下に、婚約破棄を言い渡されました。たぶんそれが原因でしょう」

「「……」」

 二人は口をぽかんと開けて私を見ています。マリエルが立ち上がって私に歩み寄りました。

「なんてことですか……」

 そのまま私を抱きしめてくれます。リュシーも寄り添い私の体に手を添えました。

「気が付かなくて、ごめんなさい。そんなことになっていただなんて――、知らなかった……」

 そして唇を噛みしめます。

「正式な発表前に口にするなど、殿下に対する不敬ですから……。だから黙っていましたが、あなたたちにも迷惑をかけてしまいました」

「いっ、いいのよ……」

「そんなの、ひどいよね……」

 マリエルとリュシーと共に私もまた泣きました。


 正午になり女性事務員が指示書を持ってやって来ました。本日は退庁せよとあります。ただし責任者である私には話があるとのことでした。一応このボランティア活動では私がリーダーとなっております。


 そして案内された応接室には、あの(・・)人が待っておりました。


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