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夕闇怪異物語  作者: スイミー
夕闇鴉の怪(最終章)
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夕闇鴉の自殺

 ウチの学校内では今、こんな怖い噂が生徒の間で広がっている。


『逢魔が時に現れる夕闇さん。死んだ彼女は生きている私達を向こうの世界へ連れていく』


 夕闇鴉さん。3年生女子で占い部の部長を務めていたようだ。そんな彼女は齢17歳にしてホラー小説『令和怪異物語』を執筆し、見事に作家デビュー。親の代から執筆しているホラー小説のシリーズらしいのだが、彼女の出版した作品に限っては奇書として国内で反響を呼んでいる。

 

 それは、彼女が動画投稿サイトで生配信中、作品の宣伝をしてすぐに自殺を図ったことが大きな波紋を起こしているからだ。不可解な言葉を残して自殺をした理由は今でも判然としていないそうだが、どうやら彼女の執筆した作品の内容とリンクしているのが奇書たる所以であるとネットの掲示板では騒がれている。


 そんなミステリアスで異様な雰囲気を纏いながら亡くなってしまった夕闇さんは、幽霊となって誰かの目の前にふと現れるという噂が広まっている。誰彼構わずというわけではなく、夕闇さんが選ぶ人達にはとある共通点があるようだ。


 それは、生きることに希望を見出せない人達。

 そう、それは私のように。


 噂は本当だったのだと、駅のホームで電車を待つ私は夕日の眩しさに目を細めながら思った。家に帰りたくない私を、学校にも居場所がない私を、彼女は迎えに来たと言わんばかりに、黄色い線の向こう側、宙を浮きながら手を広げている。


――ただ苦しいだけの生なんて捨ててしまえ。


――幸福だった時の思い出を、幸せに感じる瞬間を、心に携えながら。


――ほんの少しの勇気でそこを踏み出せば、世界が変わる。


 今では何も感じなくなってしまった傷だらけの心に彼女の言葉がじんわりと温かみを帯びて広がる。


――身体に増えていく痣の痛みも。


――日ごとになくなる教科書と軽くなるスクールバッグも。


――憐憫と侮蔑にまみれた周囲の視線も。


――一切届かない、あなただけの閉じられた幸福な世界へと導いてあげる。


 彼女の誘う声は甘く優しくどこか切なく。

 私は迷うことなく彼女に向かって、駅のホームに飛び込んだ。

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