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夕闇怪異物語  作者: スイミー
幽世の国のアリス
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幽世の国に誘われて

 次の日、22時過ぎで退勤直後に来店してきたポッポさんを裏口から目撃し、僕は慌てて遺失物置場からスマホを取り出した。1人芝居をする大学生風男も、鼠の死骸を見ただけで吐き散らす高校生男子も、不気味な電波を発する幽霊系少女もいない。今日こそは大丈夫だ。


 僕は勇む足で大通りの向こうを歩くポッポさんを追いかけていった。


 だが、追いかけても追いかけても、走っても走っても通りの向こうを歩く彼女と距離が縮むことはなく、僕はその不可解さに首をかしげながらも息を切らして走った。


 遠近感が狂ってしまったのか。過ぎ去っていく周囲の景色とポッポさんまでの距離感が一致していない気がする。


 数十メートルの通り道が何百メートルと引き伸ばされているような。

 どこまで追いかけても決して届くことのない蜃気楼を追いかけているような。


 白ウサギを追いかけて不思議の国に迷い込んでしまったアリスのように、彼女の辿る軌跡はどこか異世界感じみている。不思議の国に導くポッポさんが白ウサギなら、それを追いかける僕はさながらアリス。にんまりとした笑みはないが、異様なまでの不気味さを放つ幽霊系少女はチェシャ猫といった配役だろう。


 可愛いウサギを追っている腹のたるんだ中年アリスがいてたまるかと一笑に流せないくらいには、気持ちの悪さが身体にまとわりついていた。


 次の日も。

 次の日も。

 彼女を追いかけてもその背中に手が届く気配はまるでなく。

 

 なんとか最後まで追跡を試みるも、以前幽霊系少女と接触した新幹線高架下の通りから伸びる路地裏で、霧散するように消えていなくなった。


 気力は失せていくが諦めるつもりは毛頭ない。そういえば、最近ポッポさんの顔をまともに見ていない気がする。最近はずっと彼女の背中ばかりを見ていた。ポッポさんの表情を思い浮かべるが、砂嵐が吹くように彼女の顔が思い出せない。


 思い出せなくなるほど昔の話でもないはずだが、明日、コンビニでちゃんとポッポさんの顔を見ようと思った。彼女の顔をちゃんと思い出せば気力もやる気も元気も漲ってくるのだ。毎日のように訪れる立ち眩みに耐えながら、明日こそはと祈るように目を閉じた。

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