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フィリピンパブ、ガールズバー、バーラウンジを展開

 9月にビルを渋谷3棟、青山1棟、赤坂1棟を購入したので、どれかにフィリピンパブ、スナック、バー、を作ろうと思った。問題は働いてくれる女の子の確保だ。日本人は求人情報誌、劇団に求人広告を出そうと思った。俺の希望は、渋谷にフィリピンパブ、ジャズフュージョンのパブ、キャバクラ、青山にレストランバー、赤坂にアイリッシュバー、会員制バー、ラウンジバー、六本木に会員制バー、アイリッシュバー、と言った感じだが、儲けよりも趣味だ。自分の女がいる行きつけの店が欲しい、我儘な男の夢だ。キャバクラは将来儲かるが、対象顧客がサラリーマンだ。俺の周りにはいい女がいるので、あまり行きたいとは思わない。実験的に渋谷でやってみよう思う。これらはすぐやれる訳ではないので、少しづつ増やせばいい。下品と思われているフィリピンパブだが、植民地時代のスペイン、ポルトガル領にはハーフが多くて、世の中から埋もれた美人がいる。ブラジル、コロンビアに美人がいるのは知られている。数は少ないかもしれないが、フィリピン美人のレベルは高い。


 さて、リリーが東京に戻ってきた。俺はリリーの渋谷の4LDKのマンションで待っていた。

「ピンポーン」

 チャイムが鳴った。ドアの鍵はかけてない。

「ユージいるの?」

 俺は玄関に迎えに行った。

「ただいま」

「お帰り」

「ユージ、会いたかったよ〜」

「俺もさ」

 久し振りにリリーを抱きしめた。リリーの顔が近くにある。笑顔なのに目に涙が浮かんでいた。美しい、なんていい女なんだ。両手でウェストに手を添えた。なんて細いんだ。リリーのボリュームがある胸の膨らみが俺の胸板に密着している。俺はリリーのデカい尻に両手を回した。張りのあるデカい尻、これがリリーだ。俺を見つめるリリーの唇にゆっくり俺の唇を合わせた。

 

「なあ、店を持つとして、新宿の店でリリーが目をかけた女の子って何人いる」

「ううん、8人かな」

「店を辞めさせるには多いいな、トラブルになるよな」

「辞めさせるには、2、3人がいいとこだ。辞めさせられるか?」

 俺は言った。

「時間をかければ大丈夫だと思うわ。でも借金が残ってるわよ」

「金のことはいいけど、女の子とのコンタクトはどうするんだ?」

「お店に出る前に食事を取るんだけど、決まったレストランがあるのよ。そこが女の子の溜まり場になってるの」

「じゃあ、早速段取りをしよう」

「うん」


 リリーを辞めさせた時は、俺が店長に意識誘導して辞めさせている。

「今まで店のためによくやってくれた。がんばってな、俺も応援してるからな」

 店長がこころよく辞めさせてくれていた。


 女の子の溜まり場のレストランにやってきた。リリーには変装させた。ブレスレットで念話ができるようにした。

「どの子だ?」

「あそこに3人いるでしょう」

「名前は?」

「ルルとベルとベッキーよ」

「外の自販機の前で待っててくれ、行かせるから」


「自販機で飲み物買ってくる」

 ルルが席を立ってリリーのいる自販機にやってきた。

 ベルとベッキーが、

「あたし達も飲み物買ってくるね」

 遅れてベルとベッキーがやってきた。

「お久しぶり、元気にしてた?」

 リリーが帽子とサングラスとマスクを取った。

「リリー姉さん、どうしてここに?」

「みんな、どうしてるかな〜って」

「もう、リリー姉さんが辞めてから最悪、もう辞めたい!」

「アフターでセックスさせて、手数料を取られるんだ」

「じゃあ、辞めれば?」

「でも、借金があるから」

「どれくらい残ってるの?」

 ルルが120万円、ベルが130万円、ベッキーが160万円だった。

「あたしが貸してあげるから辞めちゃいなよ」

「今度、店を出すから、あんた達手伝ってくれない?」

「本当?、行くよ、絶対行くから」

「例えば今日、借金返せば すぐ辞められる?」

「今日、店長に辞めますって言ってみる」

「そしたら借金返せっていうはずだから」

「その金額を耳を揃えて返せって言うと思うの」

「そこで返せばいいと思う」

「ちょっと待ってね、うちの人呼ぶから」

「よっつ」

「ユージ?」

「うちの人って、ユージなんだ」

「今日、開店前に言っちゃいなよ」

 リリーが言った。


「弁護士の先生を用意してるから紹介するよ」

 俺が言った。

「弁護士の田島です。私も一緒に行きますからご心配なく」

「田島先生、3人一緒に辞めさせられませんか」

「お任せ下さい」

「ここじゃあ何ですから、他のところに行きましょう」

 3人が溜まり場に戻って

「あたし達、買い物してくるから、じゃあね」

 ベッキー達が子分の女の子達に言った。


「行きましょうか」

 俺が言った。瑠美子が運転するファントムに、俺と田島先生が乗った。麗子が運転するランドローバーにリリーと3人が乗った。京王プラザホテルのスィートルームを事前に予約してあった。

「開店前に、3人で店を辞めに行きましょう。私も同席しますからご心配いりません」

 弁護士の田島が言った。田島は元検事の弁護士(ヤメケン)だ。

 開店前に店長のいる事務所に4人が入っていった。 

「どうしたお前達、早く着替えて準備しろ」

「私達、お店辞めたいんです」

「何言ってるんだ、借金が残ってるんだぞ」

「借金は返します」

「返せるわけないだろう」

「失礼します、私がお話しします」

「彼女達、本日返すそうです」

「はあー、じゃあ耳を揃えて返してもらおうか」

「借用書を見せて頂けますか?」

「今、見せてやるよ」

「これですか」

「ああそうだ」

「ちなみにおいくらでしょうか?」

「ルルが500万円、ベルが600万円、ベッキーが800万円だ、どうだ」

「借用書の金額と違いますが」

「利息が付いたんだ、当たり前だろう」

「金利は年何%なんですか?法律で定めて金利を超える分は無効になりますよ」

「色々経費があって膨れたんだよ」

「彼女達が言うには毎月返済してるそうですが」

「だからそれ以上に経費がかかってるんだよ」

「経費の明細はありますか?」

「細かい計算があるからすぐに出せるわけないだろう」

「そもそもこの借用書には、金額のみで金利のことは記載されてませんね」

「借用書の日付だと、彼女達が契約した時は未成年ですよ」

「外国人だからいいんだよ」

「外国人でも日本にいる以上、日本の法律が適用されますよ」

「未成年者が単独で成した行為は、事後成人しても取り消しできますよ」

「この借用書は日本語で書かれていますが、訪日した時、読めますか?」

「話すことも難しいのではありませんか?」

「騙して契約すれば、詐欺罪ですよ」

「あんた素人だから知らないだろうが、この業界ではいいんだよ」

「借用書の金額を払えば、借金は返済されて辞められますね」

「1900万円ならな」

「彼女達は店に強要されて売春していたと言ってるんですが」

「そんな事知るかよ、勝手にやってるんじゃないか?」

「店に手数料を取られていたそうですが」

「未成年に売春させていたら、風営法違反になりますよ?」

 風営法違反はまずいなと店長は思った。

「借用書の金額でいいから、早く出て行ってくれ、アパートも今日中に出て行け!」

 田島が借用書の金額を机の上に置いた

「借用書に返済完了と明記して下さい」

「あと領収書もお願いします」

「なんだとう!」

 結局、店長が渋々行った。

 借用書と店長が押印した領収書を持ってきたカメラで撮った。

「もう2度と来るな!」

 店長が怒鳴った。


 店を辞めたルル、ベル、ベッキーが渋谷にあるリリーのマンションに居候する事になった。

「リリー姉さん、すごいところ住んでますね」

「もう、びっくりしました」

「本当そう」

「リリー姉さん、あたし達を救ってくれてありがとうございます」

「リリー姉さんに一生付いて行きます」

「お願いします」

 3人が言った。

「そうねえ、でも決めるのはユージだから」

「それまではわからないわよ」

「うちのボスはユージだから、ユージに絶対服従だよ、わかった?」

「わかりました」

「ボスの言う事なら、なんでも従います、絶対服従します」

 3人は俺からのエロい命令を想像していた。

「それから、麻薬は厳禁、暴力団の男も厳禁、タトゥー禁止だからね!」

「タトゥーもですか?」

「ユージがタトゥーがあると、いかにも風俗嬢に見えるし、暴力団の女みたいで嫌いなのよ」

「あんた達タトゥーあるの?」

「はい、あります。ビザの更新でフィリピンに帰った時少しだけつけました」

「見せてごらん」

 バラの花弁、バタフライ、ハートマークだった。

「今日の夜ユージが来るから、その時判断してもらうから」

「雇うかは、その時までわかんないわよ」

「ところで」

「今度出す渋谷の店は内装も済んで、家具やお酒の準備もできてるから、女の子達がいれば、すぐ始められるのよね」

「女の子が足りないわよね」

「妹達を呼ぶしかないかなあ」

 リリーがナンシーとルーシーのことを思い浮かべた。

「あんた達、フィリピンから何人呼べる?」

「10人くらいなら、呼べると思います」

「あたしも」

「あたしも大丈夫です」

「でも呼び寄せる費用がないですよ」

「それは大丈夫よ」

「結局ユージをフィリピンに連れて行くしかないか」


 雄治がリリーのマンションにやってきた。玄関に女の子達4人で出迎えられた。

「ハーレムだな」

 雄治は思った。


 毎日、バーやスナックを飲み歩いていた。流行っている店の市場調査と女の子のスカウトのためだ。うちの女の子を連れて行けないので、初めは楽しかったが、全然面白くなくなってきた。なまじ相手の感情がわかってしまうので、気持ちのこもってない営業スマイルを毎日接していて疲れたのである。

「もう、求人広告で募集しよう」と思った。まあ、東京中の店を制覇してからだな。


「よう、どうだ、3人の様子を見にきたんだが」

「リリー姉さんが、とっても親切にしてくれてます」

「ユージさん、ボス、助けて頂いてありがとうございました」

 3人が深くお辞儀をした。

「私達、ボスの言う事でしたら、なんでもします。絶対服従します」

(おい、すごい事言ってるぞ)

「あのねユージ、この子達、タトゥーをしてるのよ、どうする?」

「まあ、見てから判断するよ」

 3人が服を脱ぎ始めた。俺に気に入られて雇ってもらうために、3人も必死だった。

(えっつ、タトゥーの場所じゃないの?」

 3人が男の気をそそる脱ぎ方でゆっくりと微笑みながら、順番に脱いでいった。素晴らしくエロいじゃないか、さすがリリーが推薦するわけだ。

「ルルからだ」

「はい」

ルルが俺の前にきた。ルルは160センチくらいのラテン系の可愛い子だ。顔が幼く可愛いが、身体のバランスがいい。万人向けの可愛い子だ。でもエロい身体をしている。

ルルのタトゥーは下腹部にあった。バラの花弁だ。

「ああ、いいんじゃないか」

「次はベルだ」

 ベルは165センチくらいのモデル体型だ。肌が白くて白人の血が濃い。ヨーロッパ系のハーフと言われればそう思うだろう。ベルが俺に近づくと後ろを向いた。ヒップとウェストの間にバタフライがあった。俺は思わず唾を飲み込んだ。

「いいんじゃないかとっても」

「次はベッキーだ」

 ベッキーは165センチくらいだ、肌の色は褐色だ。バスト、ウェスト、ヒップが、ドン、キュ、ドドンと日本人にはないすごい体型だ。顔はメキシカンぽい感じがした。脱ぐと圧倒的に美人になる。ビーチコンテストに出られそうだ。ベッキーも後ろを向いた。ピップとウェストの間にピンクのハートマークがあった。俺の心臓の鼓動がドク、ドクしてきたのがわかる。もうタトゥーのことは忘れてしまった。

「とっても、いいんじゃないか」

「ああよかった」

 3人がほっとして喜んだ。

 リリーが俺のことをずっと見ていたようだ。不機嫌な顔で俺を見つめている。俺はリリーの目を見るのが怖かった。

「まあ、喉が渇いたから、酒にしようか」

 リリーが立ち上がって、キッチンに行った。ウィスキーとアイス、ミネラルウォーターとグラスを4つ持ってきた。つまみは、簡単な乾き物だ。

 3人が着替えて戻ってきた。

「リリー姉さん、すみません」

「お手伝いもしなくて」

「気にしないでいいわよ」

 リリーが不機嫌そうに言った。

 リリーが俺の横に密着して右手を俺の腿の上に置いた。

「水割りにしてくれ」

 俺がいった。

 ルルが入れようとすると、リリーがルルの手を退けて、俺のグラスに氷を入れてカナディアンクラブの12年を注ぎ、少し水を入れた。

「ユージの好みがあるから、ユージのはあたしが作るからいいのよ」

「はい」

 ルルが返事をした。

 リリーが俺に肩に頭を寄りかかっていた。それはいいんだけど、前の3人がミニスカートで、多分パンティを履いていない。わざと大きく組み替えて、中が見えるようにゆっくり組み替えるのだ。

 大好きなカナディアンクラブの12年を飲んでも、ソワソワして落ち着かない。この状況どうすればいいんだ。

(抱きたい、でもリリーの目が怖い)

思い切って言った。

「実は最終試験があってな、うちの実情を知る幹部は俺の女だけなんだ。セックスの相性があるから、それを確かめて幹部にしてるんだ。君らはリリーの推薦があるから、社員にはするけど、その上の試験を受けるかい?」

「やっぱりそうなるのよね」

 リリーが残念そうに言った。

「諦めてくれ」

 俺が言った。

「受けるか?」

「受けます、受けます、受けます」

「わかった」

「でも、恋人を作っても構わない、結婚しても構わない、だけど優先するのは俺だ、俺に絶対服従を誓ってもらう」

「そのつもりがあるなら、最終試験を受けさせる」

「受けます。絶対服従します」

 3人が答えた。

「俺も忙しいにのでな、その時は電話をする」

「リリー今日は外に行くぞ、支度をしてくれ」

「はい」

(よし、切り抜けられたぞ)

 その夜はリリーとホテルに行って愛し合った。


82年11月下旬、新宿のフィリピンパブに警察の強制捜査が入った。

「フィリピン人の未成年を詐欺同然に入国させて売春行為を強要していたフィリピンパブ店長・・・・、とその指示役の暴力団幹部・・・・とその部下が・・・・・が逮捕されました。警視庁は余罪があると見て捜査を継続しています」

 テレビのニュースが放映された。

「田島弁護士がリークしたんだな」

 俺は思った。


「ニュースを見たか?」俺はリリーに電話をした。

「見たわ、自業自得よ、ルルとベルとベッキーに女の子達のところに向かわせたから」

「何かわかったら、南青山に連絡してくれ」

 広尾ガーデンヒルズのペントハウスは、今模様替えの工事を行なっていた。

数時間後

「女の子達のところにも警察が入って連れて行かれたそうよ。事情聴取から帰って来た子の話では売春容疑だって」

「店から強要されてたから、彼女達も被害者だから大丈夫だろうけどな」

 俺は田島弁護士に電話して事情を話した。事務所の若い弁護士に電話が代わった。

「川島でございます。私がお話しを伺います」

「おそらく今後のことを考えますと、身元保証人が必要になると思います」

「そうですかー」

 リリーに電話した。

「アパートに行ってくれ、リリーが見ていいと思った子を、一旦リリーのマンションに連れて来てくれ、暴力団の彼氏がいる子やタトゥーのある子はダメだぞ」

 リリーとルル、ベル、ベッキーがタクシーでアパートにやって来た。もう夕方になっていたので、女の子達はアパートに戻っていた。

 3人組が自分の気に入ってる子を連れて来た、訳ではなかった。警察から帰って来たばかりで不安な女子達だから、ゾロゾロみんなついて来てしまった。リリーは近くのレストランに行こうと思っていたが、こんな人数では入れない。大衆居酒屋に行った。時間が早いから、全員入れた。

「いいかい、今日はリリー姉さんが奢ってくれるそうだ、3人づつ呼ぶから挨拶に来な、酒は姉さんに挨拶が済んでからだぞ」

ハートのベッキーが英語で言った。

 全員立ち上がってリリーにお辞儀をした。

「ありがとうございます、リリー姉さん」

全員合唱だ。リリーは気分が良くなった。一気にボスになった気分になった。麻薬、暴力団の男、タトゥー(男の名前、ドラゴン、ドクロでなければ、よしとした)を確認して、ユージに判断してもらおうと思った。連れて行くのは初めは5人くらいと思っていたが、見捨てられなくなって結局18人の面倒をみようと思った。

 酒の強いフィリピーナだ、物凄い勢いで飲み始めた。もう宴会だ。リリー姉さんが何とかしてくれる。警察に呼ばれて不安だった彼女達から見たら、リリーは救世主だ。


 リリーがユージに公衆電話から電話をした。

「あのね、気に入った子を連れ出そうとしたらね、みんなついて来ちゃった」

「何人だ」

「18人なの」

「・・・・わかった、1時間後にまた電話をしてくれ」

・・・・

「明日、瑠美子が弁護士の川島先生を連れて行くから、一緒に警察に行ってくれ」

「警察で身元保証人が求められるから、リリーがなってくれ」

「印鑑は持ってるな、この間作ったからな」

「それから女の子のリストがいるから、全員のパスポートを預かって来てくれ」

「わかった、あたしできるかな〜」

「警察には俺も行くから心配するな」

「うん」


「パンッツ、パンッツ、パンッツ」ベッキーが強く手を叩いた。

「みんな聞きな、おい、そこうるさいぞ」

「リリー姉さんが、お前らのために警察で交渉して下さるそうだ、今からアパートに帰ってパスポートを持ってくるんだ、わかったか」

「おい、返事は!」

「イェッサー、ベッキー姉さん」

「よし、行って来な」


 ベッキーがみんなからパスポートを集めた。

「よろしくお願いします」

 一人一人がベッキーに懇願するようにパスポートを渡した。ベッキーが集めたパスポートを恭しくリリーの手元に置いた。

「よし、リリー姉さんの許可を頂いた、飲んでいいぞー」

 リリーが完全にボスになった。

「ギャングのボスってこんな感じなのかな」

 リリーが思った。


新宿警察署 担当の警部が出て来た。

「お話は伺っています。身元保証人にはどなたがなるのでしょうか?」

「彼女がなります」

 俺が言った。

「代理人の弁護士の川島です」

「何かありましたら、私に連絡して下さい」

 川島が答えた。

 弁護士の田島が後輩の検事に言って、事前に話を通していた。後輩の検事が警察署長に命令していたのだ。弁護士の田島と川島も検事も警察署長も皆、東大法学部出身者で、検事は警察署長の先輩だった。


 翌々日、チャーターしたマイクロバスで、ベッキー達がアパートで待機していた18人の女の子達を迎えに行き、新宿のビジネスホテルの会議室に女の子達が集められた。

「みんな静かに!、今からリリー姉さんからお話がある」

「姉さん、お願いします」

 ベッキーが司会をした。

「警察に行ってきました。私があなた達の身元保証人になって、話を通してきました」

「あなた達は今後、私の店で働いてもらいます。住むところはそれぞれが1人部屋のマンションです」

「高級住宅地にあるマンションなのでルールをきちんと守ってもらいます」

 そこまで英語で説明された。

「マンションの管理をして下さる浜田さんです」

(日本語で)「浜田さん、お願いします」

ルルとベルが全員に資料を配った。

マンションと部屋の説明と注意事項、大事なゴミ出しの注意事項が説明された。リリーが英語に通訳した。

「最後にオーナーからお話があります」

 座っていた3人がザッと立ち上がって直立して、俺にお辞儀をした。

 俺が英語で話した。

「オーナーのユージ・オダだ。もう一枚のペーパーを見てくれ」

「君らがこれから入るマンションは高級住宅地にある」

1、ゴミは決まった日に、綺麗にビニール袋に入れて出すこと、ビニール袋にはマジックで部屋番号を書くこと

 管理人の浜田さんがチェックするからな

2、マンションは男禁止だ。家族はいいがそれ以外の男を入れたらクビだ。出ていってもらう。ここはラブホテルじゃないからな。

3、大きな音を出すな、特に夏場は窓を開けると音が外に漏れる。音楽を聴く時はイヤホンで聴け。

4、毎日、朝、交代でマンショの周りと隣の家まで掃除をしろ。近隣の人に会ったら、「おはようございます」、と日本語で笑顔で挨拶にしろ。道で会ったら、会釈をしろ。

5、マンションの家賃は給与天引にする。ぼったくらないから安心しろ。収入が足りないと思うから、店が終わったらガールズバーを用意したから、そこで働いてくれ。店としては売春は禁止だ。しかし自由恋愛はいい。その辺のことは3人に聞いてくれ。

6、タトゥーをこれ以上入れるな。ギャングやヤクザの女みたいで嫌いだ。

7、太ったらクビにする。

8、マンションのルール1一人でも破れば、チーム全員の給与を減額する。チーム編成は後ほど話があるそうだ。

「俺の話は以上だ」

 俺とリリーと3人が退室して別の部屋に入った。


「こんなすごいところ住めるの?」

「夢みたいだよ」

「よし、あたし、気合い入れるぞー」

「家具とか、洋服どうしようかな、お金ないし」

 女の子達が話していた。


「3人はマンションの3階の部屋だ。3階は幹部だけだ」

「3人の部屋には、電話を入れてある」

「女の子達は、1階と2階だ、売上成績が良い者を2階にしてくれ」

「ガールズバーを3店舗用意する」

「チームで競わせるんだ、利益が出たらチームにボーナスを出す」

「店ごとに制服を変える、パブはスリットの入ったものにしろ。チラリズムが男の欲望をそそる」

「ガールズバーはカウンターでの接客だ。客の横に座っての接客は風営法に引っかかるから禁止だ」

「ガールズバーの制服は、思いっきりミニスカートにしろ。だから太った女はクビだ。誰もブタの脚は見たくない」

「3人には給料として30万円を出す」

「それから、俺からのご祝儀だ。家具でも買ってくれ」

 封筒にそれぞれ30万円を入れて渡した。

「女の子達も家具やら洋服やら必要だろう。ここに500万円ある。リリーから金を貸してやってくれ。英語と日本語で書いてある借用書(金銭消費貸借契約書)だ、年利7%にしてある。印鑑を持ってない者には母印を押させてくれ」

「俺は用事があるからこれで失礼する。3人は聞きたいたい事があれば、リリーに相談してくれ」


「リリー姉さん、ボスは若いのにすごいね」

「そうなのよ」

 リリーはうっとりした表情で言った。

 

 渋谷のフィリピンパブの開店の目処がついた。ボーイ兼用心棒の男が必要になったので、フルコンタクト空手道の本部にやってきた。総務課に行って従業員の募集をしたいとお願いした。プロを目指す道場生はラーメン店などの飲食店、警備会社のバイトをしていることが多く、時給を聞くと800円くらいとのことだった。それを聞いて、時給2000円、7時〜12時の1日1万円で募集をかける事にした。

「みんな応募するんじゃないですか」と総務のおじさんが言った。ボーイ兼なので威圧感のない一見華奢なタイプの男を雇いたいと相談した。

「じゃあ私が紹介してあげますよ」

 総務のおじさんが親切に言ってくれた。

「多分道場にいると思うので、一緒に見に行きますか?」

 道場に着くと入門希望者だと思われてしまった。俺は185センチの体格してるからな。

「体験入門者か?」

 いかにも強そうな黒帯の指導員が聞いてきた。

「入門希望者じゃあないんですが、体験はしてみたいです」

「いえ、ボディガードを雇いたいってきた人ですよ」

 総務の人が説明してくれた。

「まあいいじゃないですか」

「いい身体しているから、やらないなんて勿体無いぞ」

「君、道着は持ってるかい?」

「持ってないのでTシャツとスラックスではいけませんか?」

「神聖な道場だからダメだ」

 道着を買う事にした。

「君、経験は?」

「少しあります」

「じゃあ、相手は茶帯でいいか」

「始め!」

 相手が右手で正拳突きをしてきたので、左に移動して空いている左手脇腹を怪我をさせないように平手で叩いた。

「パンッ」

 振動のダメージで相手が蹲って動かなくなった。骨は折れてないから大丈夫だよね。 

「次・・・・」

「次・・・・」

「次・・・・」

 30人ほど倒したら。周りが騒然としてきた。

「次・・・・」

「次・・・・」

「次・・・・」

 50人倒した。

「おい、道場破りらしいぞ」

「丁度いい、百人組手で潰そうぜ」

 ちょうど今日が、世界大会優勝者の八島が100人組手に挑戦する日だった。近郊の道場から黒帯が集まっていた。50人を倒したから、ここからは同じ黒帯でも地区大会出場経験者になった。

「ローキックだ」

「ローキックで足腰を立てなくしろ」

 周りからの応援が熱くなってきた。太ももの同じところをローキックで蹴り続けて、俺の足の筋肉断裂を狙っているのだ。

「なんだか楽しくなってきたぞ」

戦国時代の武将だった頃の霊体意識が蘇ってきた。

(そういうつもりなら、俺もやってやるよ。恨むなよ)

「始め!」

「ズバーン」

 相手が道場の端まで吹っ飛んだ。脚を抱えて悶絶している。

「次・・・・」

「次・・・・」

「次・・・・」

 そこらじゅうに足を抱えて悶絶している者がいた。

「医者のところに連れて行け!」

 審判の指導員が指示した。

後輩の肩を借りてビッコをして道場を次々に退出して行った。

 70人を倒していた。

「上からの正拳突きで鎖骨を砕くけ!」

「脇腹の骨を折ってしまえ!」

 俺は試合でよくみられる光景を想像した。

「いくらやっても無駄ですよ、10人いっぺんでいいですよ」

「ふざけた事抜かして、いいのか?」

「メッタ打ちにしてやれ!」

「よし、10人だ」

 指導員が言った。俺を10人が囲んだ。

「相手は1人、一回の攻撃で1人しか倒せん、周りから一斉に蹴りを叩き込め!」

 審判の指導員が言った。周りの音が消えて、スローモーションになった。100分の1くらいだ。周りの人間が俺に一斉に近づいて前蹴りを放とうとした。相手が蹴れる距離は俺の間合いでもある。俺はジャンプして、足刀蹴りで左右の相手の頭を注意して軽く蹴った。蹴った反動を利用して空中を維持していた。左右の男が道を開けるようにゆっくり真横に飛んでいく。

 目の前のやつの右足が上がってきた。俺は左足で奴の右足を踏み台にして右足で顎を「トン」と蹴って、そのまま後方に宙返りした。

 今度は後方の奴の頭を踏み台にするように蹴った。後ろにスローモーションで吹っ飛んでいった。さっきの宙返りで、顎を蹴った奴の後ろにいた、今、前方2メートルにいる奴のところまでジャンプした。あまりの展開にビックリした奴の頭を右足で踏み台にして蹴った。近づこうとしている左後方の1メートルの奴の頭に左足の足刀蹴りを軽く当てた。前と左後方の奴がスローモーションで吹っ飛んだ。俺の周りが一瞬で吹き飛んだ。周りの敵が居なくなって、残りの4人がばらけて立っていた。

 少し離れた場所に前転して着地した。4人程度ならどうにでもなる。俺はゆっくり近づき1人ずつ1撃で倒していった。

 あと20人、何人でも同じだ。残りの20人は地区大会優勝者で世界大会出場者だ。

「次は残り全部で来ていいよ」

「いや、次も10人だ」指導員が言った。

・・・・

「先輩、もういいでしょう。俺が行きますよ」

 なるほど、真打の世界大会優勝者だな。

 (いいねえー)

「先輩がんばれ!」

「ぶちのめしてください」

「や、じ、ま!」

「や、じ、ま!」

全員の応援が始まった。

「始め!」

 俺はあえて仁王たちで動かない事にきめた。硬気功のバリアを世界大会優勝者で試してみたかった。

(こいつで大丈夫なら、誰でも大丈夫だ)

こいつの攻撃はレンガを砕き、自然石を割り、バットをへし折ることができる。

「いいねえー」

俺は硬気功で全身の周りにバリアを張った。

「いいぞ、思いっきり来い!」

「もう、やる前に降参か?」

 周りからヤジが飛んだ。

「弱すぎるから、攻撃させてやる。俺を落胆させるなよ」

 俺は八島を挑発した。相手が俺の胸、鳩尾、脇腹をメッタ打ちにした。俺は微動だにしない、なんとも感じないのだ。右回し蹴りが俺の左頬にクリーンヒットした。

 俺は「ニヤッツ」と笑った。

「もう終わりか?」

 俺が前に出ると奴が後ずさんだ。

 俺が前に出る。奴が後ろに下がる。

 俺が前に出る、後ろに下がる。

・・・・・

「今度は俺がお前の腹を打つから、しっかり力を入れろよ」

 俺は一瞬で前まで行って、腹を20%くらいの力で殴った。

「ドンッツ」

 身長190センチ 体重100kgの男が10メートル吹っ飛んで、道場の端まで滑って止まった。

「いい運動になった。ありがとうございます」

「これ、治療費の足しにして下さい」

 俺は指導員に100万円の札束を渡した。

「あんた、何しに来たんだ?」

「さっき、総務の人が説明しましたよ」

「俺が経営しているパブのボーイ兼用心棒と運転手の募集ですよ」

「強い人がいいと思ってきました」

「時給2000円です」

「そうか、誰でも連れて行っていいぞ、多分文句を言う奴はいないと思う」

 スポーツの世界は強い奴が尊敬される。格闘技の世界は尚更その傾向がある。強い奴に尊敬と憧れを持つのだ。

「そうですか」

 俺は黒帯の中で華奢な男の前に立った。

「うちの店で働いてみないか?」

「7時から12時まで、時給2000円だから1日5時間で1万円になるぞ」

「どうだ?」

「やらせて頂きます」

「それはよかった」

「じゃあ、履歴書を持ってきたから書いてくれ」

・・・・

 さっき倒した世界大会優勝者が床を這ってきた。

「自分を運転手に雇って下さい」

「もちろん、いいよ」

「お前も履歴書を書いてくれ」

「その前に、上を向いて横になってみな」

 ダメージを受けた筋肉と内臓に光のエネルギーを集めて時間を加速した。

 完治に1週間かかるところを30秒で直した。

「もう大丈夫だから、立ってごらん」

「えっつ」

 八島が立ち上がった。

「もう、なんともないです」

「どうやったんですか」

「企業秘密だ」

「じゃあ、うちの会社に行こうか」

「あっつ、ボーイは3名欲しいんだった」

 華奢で黒帯の人のところに行ってあと2人を勧誘した。すぐに決まった。総務課で履歴書を書いてもらう事にした。


 八島の100人組手がそろそろ始まった頃だと、道場を見に総裁がやってきた。

「おい、黒帯の数が少ないじゃないか?」

 総裁が聞いた。

「押忍、ウォーミングアップで組手を始めたんですが、熱くなって本気でやり合ってしまいました」

「今いないのは、八島にやられて医者に行ってます」

「お前がいて、何をやってるんだ」

「申し訳ありません」

 指導員が土下座をした。

「今日の100人組手は中止にする」

「八島は今、どこにいる」

「押忍、総務課です」

・・・・

「おい、お前ら、今日に事は八島とあいつらが勝手に組手を行ったんだ、いいな」

「医者のところに行った奴らのところに行って、八島にやられたことにしろって言って来い」

 指導員が命令した。

「押忍」

 若い茶帯が走っていった。

 総裁が総務課にやってきた。

「八島、熱くなりすぎだぞ」

「今日の100人組手は中止にする」

「押忍」

 総裁はそれだけ言うと出ていった。


 瑠美子が運転するファントムに乗って、俺と八島か会社に向かった。

「お前には、この車を運転してもらう」

「あの〜、大変言いにくいのですが、申し訳ありません」

 八島がデカい声を出して、シートに頭をつけた。

「自分、運転免許持ってないんです」

「何〜、運転手が運転免許持ってなくてどうするんだ」

「クスッ」

 瑠美子が思わず笑った。

「自分、どうしてもついて行きたくて、申し訳ありません」

 八島がデカい声で言った。

「明日から教習所へ言って来い。金は俺が出してやる」

「瑠美子、悪いが教習所へ向かってくれ」

「はい、社長」

「とりあえず、30万円渡しておく、足りなくなったら言え」

「押忍、ありがとうございます」


 夕方、南青山の会社

「押忍、失礼します」

 190センチ、100kgの岩のような筋肉質の男がのそっと部屋に入ってきた。短髪で怖い顔をして、そこに存在するだけですごく威圧感を感じる男だ。

「何、何、」

 女の子達が怖がってしまった。

「おう、戻ってきたか、そこに座れ」

「失礼します」

「どうだった」

「押忍、教習所のパンフレットです」

「8時から19時までで12〜13時が昼休み、1時限が50分か」

「よし、」

「メモしろ」

「9〜12時の3時間、1時間昼休み、1時〜5時の4時間、1日7時間だ。夕食をとったら6時半に会社に戻って来い」

「7時から12時まで、リリーの店の雑用だ」

「金が足りなくなったら言え」

「店には、おいメモしろ!黒のスラックス2本、白のワイシャツ3枚、黒の革靴1足を今から買ってきて、店で着替えろ、あと10万円渡しておく」

「6時半までにここに戻って来い」

「押忍!」

 事務所で

「渋谷のパブの担当は誰だ?」

「今月は私です」

「今出ていった男を渋谷の店で雇う事にした。店まで送って行ってくれ」

「わかりました」


 18時30分ごろ

「押忍、ただいま戻りました」

「店には俺から連絡をしておいた」

「店長のリリーとチーママが3人いる。4人の命令に従え。4人とも俺の女だからな!」

 俺が少し威圧した。俺は威圧で相手の心臓を止めることができる。

「押、押忍、命令に従います」

(なんだ、この重圧感は心臓が止まりかけたぞ、やっぱり凄い人だ。この人に比べたら俺は大人と子供、いや赤ん坊だ)と八島が思った。


 リリーの店

「押忍、失礼します」

 ベッキーが出てきた。

「あんたが八島か、デカい図体してるじゃないか」

「こっちに来な」

「ここがお前のロッカーだ、ここに荷物を置きな」

「まだ開店の準備中だから、着替えなくていいよ、掃除をしてもらうから」

「ここの店長はリリー姉さんだ。リリー姉さんに失礼な態度を取るなよ」

「私ら、ここの店の女の子達はリリー姉さんに助けてもらって、忠誠を誓ってるからね」

「命令は絶対服従だよ」

「わかったかい」

「押忍、わかりましたl」

「じゃあ、リリー姉さんに挨拶に行くよ」

「姉さん、八島が来ました」

「押忍、八島と言います。よろしくお願いします」

「リリーよ、頑張りなさい」

(今まで見たことない、凄い美人だ)

 八島が思った。

「押忍」

「そうねえ、“オスッ”はやめてくれる、お客様が聞いたらおかしいでしょう?」

「返事は、“ハイ”にしてちょうだい」

「押忍、はい」

「ベッキー、面倒を見てね」

「はい、姉さん」

 女の子達も集まってきた。

「パンッ、パンッ、パンッ」

 ベッキーが手を叩いて集合させた。

「日本語が喋れる子はこっちに寄って」

 事務所からホワイトボードが持ち出されて。渋谷駅周辺の地図が描いてあった。

「渋谷駅の西口の①と②、東口の③と④、店の前⑤に3人ずつ行ってもらって、この割引券を配ってもらう」

「開店祝いだから、飲み放題で8時まで入店なら2000円、9時までなら1人2500円だ。ただし延長は3000円だ」「延長の時は延長料金のことも話すんだよ。なんだ2000円じゃないのかってゴネる客がいるからね」

「開店祝いの割引券を渡したら、そのまま店に連れて来るんだよ」

「お客さんを連れて来た子の補充は店から出すから」

「まだボーイがいないから、あたしとルルとベルがするからね」

「それからこれがボスのユージさんの運転手の八島だ、当分うちの用心棒をするから」

「空手の世界大会のチャンピオンだ、その世界では有名人らしいよ」

「ヤジマ、挨拶しな」

「八島です、よろしくお願いします」


「リリー姉さん、よろしいでしょうか」

「今日から開店します。割引の料金では赤字ですが、お客様の数を集めることを優先させます。店の外に出る子以外は事務所の電話でお客様に電話をして来てもらいなさい。今日は全員、お客様を連れて来るんだよ、いいわね」

「来てもらった人に名刺を渡すの忘れないでね」

「はい、リリー姉さん」

 全員大きな声で答えた。助けてもらった恩返しだ、女の子達達の気合いの入れ方が今までと違っていた。

「よし、お前とお前とお前は1番・・・」

 ベッキーが指示を出していた。

 渋谷はサラリーマンや学生が多い、この値段で飲み放題ならすぐに店はお客様で満員になった。


 初日は満員御礼になった

 リリーがルル、ベル、ベッキーを事務所に呼んだ。

「11時過ぎに、女の子達をチームごとに事務所に呼んでちょうだい」

「わかりました」

 1チーム8人が集められた。

「アフターを受けそうな子は手をあげて」

「そう」

「すぐに身体を許しちゃダメよ、チームに割り振れられたガールズバーに連れて行きなさい」

「月の給料は、この店とガールズバーへの貢献度で判断するから」

「チームを乱して自分勝手な行動をとらないこと」

「それから、11時過ぎに入店してアフターに誘う客はアフター禁止だよ」

「特に酒を飲んでない奴は、チンピラだと思いなさい」

「いいこと言って車に乗せられて、レイプされるのがオチだよ」

「そう言うことしたければ、店の開店前に同伴しなさい」

「わかった!」

「はい、リリー姉さん」

(ユージはあの時学生で、11時少し前に入店して、初めてあった日なのにアフターでユージに身体を許しちゃったのよね、人のこと言えないのよね)

 リリーは懐かしく思った。

 ガールズバーもそこそこ盛況だった。

 午前1時前にユージがフラッと店に入って来た。

「えっ、ユージ」

 リリー小走りにやって来て俺に抱きついた。香水とリリーのフェロモンが混ざったいい匂いがした。タトゥーの3人も笑顔で駆け寄って来た。

「どうだ、開店初日は」

「満員だったんだけど、単価が低いから多分赤字」

「まあ、気にするな」

「今、反省会をしていたところなの」

「そうか続けてくれ」

 リリーが水割りを作って来て俺の横にべったり密着した。反省会に参加する気がなくなったみたいだ。

「終わりました。明日リリー姉さんに相談します」

「金と伝票は金庫にしまったな」

 俺が聞いた。

「はい」

 リリーが答えた

「3人は5時に終わるガールズバーの売上と伝票をここの金庫に持って来るんだったな」

「はい、各チームリーダーも一緒です」

「明日経理の女の子を16時に来させるから、リリーとお前ら3人は、経理の女の子の質問に答えられるように16時前に集合しておいてくれ」

「3人は5時まで仕事だが、腹が減っただろう?」

「飯でも食いに行こう」

・・・・

 リリーの店に程近いビルのB1にやって来た。目立たないビルだった。打ちっぱなしのコンクリートの階段をユージが降りて行った。ビルの地下はB1までだった。靴音が階段に響いていた。階段を降りると、ビルに似つかわしくない重厚な扉があった。

 ユージが扉を開けると、フュージョン系の音楽が外に漏れた。店の中は年代も職種も多様な人達でいっぱいだった。静かなところから入ったので、音楽の音が大きく感じた。店内はミュージックとタバコの煙が充満していた。カップルや女の子同士もいる。多様な人達が思い思いに会話をし、酒を飲み、タバコを吸い、食事をしていた。訪れている客に共通しているのは、ジャズとフュージョンのミュージックが好きなことだった。

 ユージが店内に入ると、カウンターの中にいる店員が一斉にお辞儀をした。ユージは軽く手を上げて、挨拶に応えた。ユージがどんどん店の奥に入って行った。店の奥はVIP席になっていて、いかにも高級そうなソファーとテーブルがあって、テーブルの上には予約のプレートが置かれていた。

 ユージがメニューを女の子達に渡した。

「好きなものを飲んて食べてくれ」

「この店、俺の店だから」

 ユージの前にカナディアンクラブ12年のウィスキーと水割りを作るセットが運ばれてきた。リリーが水割りを作った。テーブルの上にメモ用紙が置かれていた。ユージがボールペンを渡した。注文を書くためだ。メモは音楽をリクエストする時に使うように、奏者と曲名が書けるようになっていた。

 ユージがシガータバコのMOREを出して吸った。ライターはゴールドのカルティエだった。

「この店は俺の趣味で作った店でな。カウンターの後ろにレコードの棚があるだろう?」

「今は3000枚しかないが、5000枚まで増やそうと思っている、棚の右横にレコードが立て掛けられてるだろう?」

「あのレコードが今、店でかかってますよと、わかるように立て掛けられているんだ」

「音楽にはそれぞれの客の思い出があるから、ここにくれば必ず聞けるようにレコードを集めているんだ」

「ここに来るのは、音楽の趣味が同じ客だ」

「こう言う店は他にないだろう?」

 この時代はネットがないから、こう言う店が数少なかった。

「お前らにこのVIPカードを渡しておく。VIPカードがなければこの席に座れない」

「このVIPカードがあればこの店では、何を飲んでも、何を食べても無料だ。料金は会社が負担する」

「この店の営業時間は午後9時から翌朝の8時までにした」

「この店に連れて来ていいのは、チームリーダーだけだ」

「お前達がチームリーダーを連れてきてやれ、6人でガールズバーの反省会と情報交換をここでやれ」

「でもリリーには結果を必ず報告しろよ」

「お前ら3人はリリーが認めたから幹部にした」

「チームリーダーを俺はまだ認めてないからな」

「チームリーダーは仕事の内容を見て変更するからな」

「はい、わかりました、ボス」

(リリー姉さん、助けて、私達も首にならない?、自信がなくなってきたよ〜)

3 人が心の中で懇願していた。


 日本人のバーのママ、チーママが見つからない。単に俺の好みがいないのだ。募集すると素人っぽい子がいないのだ。当然だ、プロが募集してくるからだ。発想を変えることにした。日本人のバーとは別に、赤坂と六本木にアイリッシュバーを作る予定だが、ママをベルにしようと思った。ベルは白人系ハーフでアメリカ人に見えるから、いいだろうと思った。

 渋谷のリリーの店の開店前、タトゥーの3人に電話をして、夕方5時に集合させた。

 俺が店につくと、みんな緊張して待っていた。

 18人の中から、アイリッシュバーに出してもおかしくない女の子を探すためだ。

リリーとタトゥー3人を呼んだ。白人系のハーフの子を事務所に呼んだ、4人いた。自己紹介を日本語で喋らせた。

4人を残して全員事務所から出てもらった。4人に全員全裸になって、タトゥーを見せるよう言った。

1人ずつ部屋に入って全裸になってもらった。1人はタトゥーが太ももにあったから論外、手にある子も論外。

2人はタトゥーがなかった。

「まあいいだろう」

 もう1人も合格にした。だだし、1人がまだ日本語が不得意だった。日本語が不得意な子は待機にした。

 2人に名前が聞いたが呼びにくい。本名とは違うが俺が源氏名をつけた。エマとレミにした。エマを送り込む事にした。

 赤坂のアイリッシュバーの店長をベルにして、エマをチーママにすることにした。しかしエマはベル担当のガールズバーのチーママだった。同じ白人系のなので、ベルとエマは仲が良かった。ベルのガールズバーに二人の欠員が出てしまった。 

「リリー、妹のナンシーとルーシーの写真を持ってるか」

「あるわよ」

 2人の写真をみた。リリーがスペイン人のハーフ、ほとんどスペイン人と言えば誰でもそうだと答えるだろう。スペイン系のハーフの母親とスペイン人との間に産ませた子だからスペイン人の血が濃い。ナンシーとルーシーの父親はアメリカ人だ。見た目がアメリカ人だ。金髪がナンシー、赤毛がルーシーだ。キュートで美人の女の子が、ピースをして写真に写っていた。

(これはいけるぞ)

 俺は2人をアイリッシュバーで雇う事に決めた。

 事務所にリリーとタトゥーの3人を呼んだ。

「赤坂にアイリッシュバーを作る事にした」

「見た目が欧米系の美人だけがやっている店にする」

「店長はベルにやってもらう。チーママはさっき俺が名前をつけたエマだ」

「ベルの店の欠員が2人でる」

「ベルの店はルルにやってもらう」

「ルルの店はチーママを昇格させるつもりだが、幹部扱いになる」

「タトゥーチェックで合格しなければ昇格させない」

「ルルの店のチーママの名前はなんて言う?」

「〇〇〇〇〇〇です」ルルが答えた。

「長すぎて覚えにくいし、呼びにくい。とにかく部屋に呼んでくれ」

 それ以外の者は開店準備をしてくれ」

「ボス、失礼します」

「今日、お前のタトゥーチェックをする」

「全裸になれ」

「ハイ、ボス」

 ルナが全裸になった。スタイルがいい。ルルに似てラテン系の美人だ。

「タトゥーはあるのか?」

「ありません」

「なかなか、よろしい」

 ルナに大まかな説明をした。

「ルルが抜けた店の店長をお前に任せる。今日から幹部だ」

「それから、お前の名前は今日からルナにするからな」

「ハイ、ボス」

 嬉しくてにっこりと微笑んだ。

「リリーと幹部を呼んでくれ」

 部屋から出てきたルナは髪が乱れていた。抑えられない笑みを浮かべて出てきた。誰が見ても部屋の中で何が行われていたのかわかった。

「ルルの店をこのルナに任せる事にした、今日から幹部だ」

「ルナの店のチーママは、ルナが決めていい」

「ベッキー」

「ハイ、ボス」

「お前をこのリリーの店の店長代理にする」

「ハイ、ボス」

 ベッキーが直立不動になって返事をした。

「来月にフィリピンのリリーの実家に挨拶に行く、その間ベッキーに店を任せる事にする」

「ところで・・・、白人系の女の子をフィリピンから呼びたいんだが」

「麻薬、暴力団の男、タトゥー、太った女はダメだ」

「めぼしい子はいるか?」

・・・・・

「フィリピンから写真を送らせてくれ」

「それからリリー、悪いんだが、ベルの店の開店準備をしてくれ」

「わかった、ユ、ウ、ジ!」

 リリーがむくれた顔で言った。

「た、頼むな」

 俺は、怒ったリリーの目を見れなかった。

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