小川副社長就任、89年年初経営会議でMD社ソフト披露
小川はフィリピンODA.LTDの業務をM物産フィリピン支社の経営企画部長だったヘンリーに引き継いだ。ヘンリーはフィリピンODAの常務執行役員とした。
ヘンリーはフィリピンの大学を優秀な成績で卒業して給料の良い三友物産フィリピン支社に就職した。様々な部署を経験し、その都度に業務の改善点を指摘していた。経営企画部に配属されると、各部署の連携を高めて統率した。小川はフィリピンODA.HDの仕事の引継ぎをヘンリーに任せた。引継ぎの際、小川はヘンリーに強い口調で命令した。
「リリー奥様の妹のナンシー様とルーシー様もODA様の奥様だ。シンガポール駐在の麗子さんと東京駐在の瑠美子さんもおそらく奥様だ。だからその方達にも忠誠を誓え!」
「誓います」
「ODAに敵対する者は潰せ。但し、決してODAの名を汚すな!」
「元より、そのつもりです」
「フィリピンにいる俺たちの願いは、ODAがフィリピンでだけはなく世界のODAになることだ。そのためにはODAに忠誠心のある優秀な社員が必要だ。ODA学園は、フィリピン全土からギフテッドのみの生徒が選抜され、世界最高水準の教育が施される学校だ。費用のことは考えずに運営には注意を払え、以上だ」
「ヘンリーのシンガポールODA.HDの待遇は執行役員にする。俺の使っていた自家用ヘリコプターを使ってくれ」
小川はODA.HDの副社長に就任して、シンガポールに赴任した。
ODA.HD本社最上階の懐石料理の料亭で昼食を兼ねた会議を行うことになった。
会議にはODA.HDの100%子会社になったマジックウィンドウズ社のジム・ゲイト社長、COO、OS担当の副社長が呼ばれていた。3人はワシントンからジム・ゲイト専用のプライベートジェットでシンガポールに到着した。3人は事前に予約していたホテルの部屋に荷物を置いてODA.HD本社の社長室に向かった。ホテルは3部屋ともスィートルームでロールスロイスのファントムの2台が迎えにきていた。本社ビルは普通のビルだった。外見は普通のビルだが内部は超一流ホテルの内装だった。受付から案内されて豪華なエレベーターで最上階に降りると分厚い絨毯が敷いてある広いロビーがあり、前方に日本庭園が広がっていた。社長室の重厚な扉が開けられ、中に入るとODA社長が大きなマホガニーのデスクに座り、隣に金髪のモデルのような美人の秘書が控えていた。
「よくおいで下さいました。ゲイトさん」
ODA社長が明るい声で言った。
「とんでもないです。私のことはゲイトとお呼び下さい」
「なんだかそっけないですね。私としてはジムと呼ばせてもらえると嬉しいんですが」
「もちろん構いません」
「社長!私もファーストネームで呼んで頂けないでしょうか」
2人がすかさず言った。
「わかりました」
「この女性は私の義理の妹でナンシーです。フィリピンODA.LTDの副社長をしています。本社では常務です。副社長の妻のリリーはニューヨークに滞在して支店の開設準備をしています」
「ナンシーです。ジムさんのことはユージ兄様から聞いています。お会い出来て光栄です」
「とんでもないです。ジムとお呼び下さい。よろしくお願いします」
「今日、3人を呼んだのは、ODA.HDの副社長の小川さんが本社勤務になったのと病気の全快祝いにしようと思いまして、いい機会ですので3人を仲間に紹介しようと思って来てもらいました」
庭園に面した広いオープンスペースの会議室に入った。役員以上が座れる大きなテーブルとスタッフ用のテーブルのスペースに別れていた。3段高くなった役員用のスペースはスペースの角にあり全体が見渡せる配置になっていた。マジックウィンドウズ社のCOO、OS担当はスタッフ用のスペースにあるテーブルに案内された。
俺(ODA)が役員用のテーブルに近づくと全員が立ち上がった。
「マジックウィンドウズ社のジム・ゲイト社長だ。小川さんの本社赴任に合わせてワシントンから来てもらった」
「副社長の小川です。貴方が噂のジム・ゲイトさんですか、よろしく頼むぞ」
「常務の高山です。ゲイトさん、よろしく」
「飯田です。私もどんな人かお会いしたかったです。よろしくお願いします」
「ジム・ゲイトです。この席にお呼び下さいましてありがとうございます」
全員がテーブルに着席した。テーブルには、前菜と飲み物が置かれていた。
「小川さんの全快祝いと晴れて当社の副社長就任を祝って乾杯!」
俺が日本流に乾杯の挨拶を行った。
「社長、2度までも命を助けて頂いて有難う御座います。この小川、命をかけて会社に尽くす所存でございます」
「小川さん、あんまり気を詰めて病気にならないで下さい」
「ワハハハハ、そうなったら社長にまた直してもらいますよ」
「副社長、以前とまるで違って若返っていますが、これも社長のお力ですか?」
高山が聞いた。
「私も不思議に思っているんだが、その通りだ」
小川が答えた。
一通りの料理を堪能し歓談した。コーヒーがテーブルに運ばれた。可動式のパーテーションが運ばれて、役員用のスペースとスタッフのスペースが区切られた。折りたたみの椅子が運ばれてテーブルの周囲に置かれた。マジックウィンドウズ社の3人と望月、主だった部長が呼ばれて折りたたみ椅子に座った。会議が始まった。
「高山さん、会社の状況を説明して下さい」
ODA社長が言った。
「かしこまりました」
「お配りしたレポートをご覧下さい。現在、東京に赴任している財務担当常務の麗子さんが作成した資料です」
「当社は投資会社です。88年末時点の社長個人からの借入金は59兆8430億円、この資金を下に日経平均225採用銘柄に41兆4000億円運用して88年末の時価は78兆2867億円になり、評価益は26兆8867億円になります。現預金は1兆1270億円、昨年の税引後に受取配当金は6654億円。東京での不動産収益は手取り約200億円となります。マジックウィンドウ社の買収資金4000億円とその費用が100億円になります。フィリピンを含む会社経費が約200億円で税引後の年間利益は6554億円となります」
(資料は英語で書かれており、通貨はドル表示で円で別表示されていた)
「毎年多額の利益が発生していますが、社長個人からの借入金の金利をゼロにして頂いているから実現しています」
「飯田、不動産の投資状況を説明してくれ」
小川が飯田に言った。
飯田が配布したイラスト付きの資料を説明した。
「シンガポール本社ビルの建築計画とシンガポールの不動産状況について説明致します。シンガポール本社ビルのコンセプトはフィリピンODAビルと概ね同じになっています。法令で定められた上限の高さ280メートルの本社ビルを含めて3棟になります。本社・賃貸オフィス、ホテル・商業施設、アパートメントになります。総合プロデュースを三友不動産が行いますが、ビルのデザインと設計はリッツカールトンを運営するマリオットグループに依頼しました。世界一の高級ホテルのコンセプトでデザインを依頼しています。完成後のホテル運営はリッツカールトンに委託します。基礎工事がもうすぐ完了します。尚、シンガポールの不動産投資はまだ行っていません」
「私が説明する。シンガポールの不動産投資を中断させたのは私だ」
ODA社長が理由を説明した。
「シンガポールは経済成長の条件が整っている。
1.法人税、所得税の税金が低い
2.英語圏である、3.1と2の理由で外資が誘致されやすい
4.金融立国になる(キャピタルゲインが非課税だから)
5.海外移住しやすい(相続税.贈与税が非課税、治安がいい、教育水準が高い)
6.エリート教育をしている
以上の条件に加えて国土が狭いので経済成長に伴い不動産が高騰する条件が揃っている」
「しかし、不動産利回りが低い。従って不動産を保有している企業への買収を中心にすることにする。不動産利回りを超える配当利回りが見込める企業を優先的に買収する。該当企業が少なければビルの買取も併行して行う」
「かしこまりました」
小川、高山、飯田が言った。
望月は頭を下げていた。
「望月、ニューヨークの不動産取得の状況を説明しろ」
高山が指示した。
「昨年、ニューヨーク支店開設準備室を設立致しました。現在は支店として業務を行なっています。社長よりセントラルパークに面するビルを買い占める様指示されました。リリー奥様がニューヨークにいらっしゃいましたので、今年に入り10棟の買付が終了しております。セントラルパークの西側に面するビルを仮の支店住所とし、これも仮ではありますが社長と奥様のアパートメントも合わせて建築中です。支店ビルの建設予定地を現在北側の隣接するビルの4〜5棟を絶対に購入したいと奥様が希望されましたので、ビルに営業する企業の立ち退きを含めて買付の交渉中ですが難航しております。眺望が素晴らしく他にない場所ですので、買収金額は時価の数倍になると思います」
「他の場所もニューヨークの土地の地価よりも高く、費用が大幅に増加します」
※当時の商業地域の最高土地価格は、東京を100とするとニューヨークは7.6にすぎない。(不動産鑑定評価協会の調査)
「わかった、買収できるところから買い取れ、北側の場所の買取は遅れてもいい。リリーの欲しい場所は想像できるが、あまり高値で買付するとセントラルパークの土地の相場を上げてしまうから注意してくれ。望月の腕の見せ所だな、頼むぞ」
「リリーには俺から言っておく」
織田が言った。
「かしこまりました」
「当初は予算1兆2000億円、50〜100棟を計画しましたが、予算を大幅に上回ると思われます」
「問題ない。思い切って買い進め!」
「香港に不動産投資のプロジェクトチームをシンガポール本社内に作り、香港については現地スタッフのオフィスがあり、買収に動いていますが成約には至っておりません」
飯田が補足した。
「社長が言われた様に不動産投資は会社の買収を含めて検討が必要だ」
小川が言った。
「今日はマジックウィンドウズ社の3人に来てもらった。ジム、説明を頼む」
ODA社長が言った。
マジックウィンドウズ社の中期計画書が配布された。買収金額4000億円と大型買収だ。当初黒字だったが買収した昨年88年に赤字に転落している。5年の中期計画では90年に収支トントン、91年から売上が右肩上がりになり黒字転換する計画になっていた。
ジム・ゲイトが説明した。
「90年より業績が拡大する理由は、MD3.0の開発が完了して90年より随時世界で販売する予定です。日本へはNECを通じて91年発売予定です。これで他社を凌駕します。NEC製パソコンとMD3.0を持ち込んだので、実物で説明します」
ODA社長が説明を補足した。
「オリーブ社はOVソフトの過剰在庫で業績が悪化した。マウスを主張した創業者で開発者のジョーンズ氏とCOOのスカリー氏の意見が対立し、独善的だったジョーンズ氏を取締役会議で追放した。それでマウスを使ったソフト開発が中断された。ジョーンズ氏はジムと同じく天才だ。マウスの将来性とジョーンズ氏を追放したオリーブ社の重役連中は気づいていないが痛恨のミスをした。OVが過剰在庫になったのはOVにパソコンの能力が追いついていなかっただけだ。これでパソコンのオフィスアプリ市場はジムのMDの独壇場になると私は確信している」
ODA社長が自信を持って言った。
「社長、ありがとうございます。期待に必ず応えて見せます」
嬉しそうにジム・ゲイトが言った。
「社長、今後のご方針をお聞きしたいのですが?」
小川が質問した。
「ODAは多国籍企業として世界進出をする。
成功の条件は、
1.有価証券と不動産への投資会社であること、
2.最先端のテクノロジー会社への投資、
3.能力の高い社員、
4.資金量、
簡単に言うとこの4つだ」
「直近の方針は、投資の中心である日本株式を89年年央まで買い進めるが、89年年末までに全てを売却する。日本の不動産の大半も89年、90年に売却をする。この作業に常務の麗子と瑠美子を東京に駐在させ、三友不動産から社員もスカウトした」
「世界経済の中心はアメリカだ。本社は税金の安いシンガポールだが、今後の業務の主力はニューヨークになると思う。投資先は時期を見て指示を出す」
「私の個人資産は高金利で安全資産で運用する。通貨は短期的にはドル、長期的には円高を予想するので円での運用が中心になる」
「社長、どうして円なのですか?」
高山が普段から疑問に思っていることを聞いた。
「アメリカは日本の経済力を脅威と見做した。技術力はあるが単に360円/ドルの固定相場に保護されて貿易黒字が継続しただけだ。アメリカは日本の経済の弱体化と隷属化を狙って、次世代戦略物質である日本の半導体産業を壊滅させるべく日米半導体協定を締結させた。作るな、売るな、研究するな、の三重苦で日本の半導体産業は競争力を失い壊滅する。それだけではない、日本の輸出産業そのものに打撃を与えるため、考えられない円高に誘導するだろう。生産拠点を海外に分散できない会社は淘汰されるはずだ。これ以上の円高になり徹底的に日本の輸出産業に打撃を与えると考えている」
「日本経済は長期に衰退するだろう。資源のない島国である日本は貿易立国、金融立国を目指すべきだ、そのために必要なことはシンガポールの様に税金は低くしなくてはならない。日本人ならわかるだろう、戦国時代に織田信長がした楽市楽座だ。関所をなくして税金を安くし流通量を増加させた。しかし大蔵省は世界一高い税金を課すだろう。そして不動産バブルが崩壊して金融機関が破綻のリスクに晒される。経済の潤滑油が滞ってしまう。日本の経済の舵取りをする大蔵省が自らの首を絞めることになる」
「そろそろいいか、ジムMD3.0の説明を頼む」
役員用の会議室の隣のテーブルにデモ用のパソコンが用意されていた。役員全員が席を立ち上がって、パソコンの周りに立った。
ジム・ゲイトが説明に入った。
1. MDアプリで文字が縦倍角・横倍角・全倍角・標準の4つだけでなく、自由に10ポイントとかMSゴシックや明朝など自由なフォントを実現できる様になりました。しかしながら、やっとOVに追いつきました。
2. グラフと表が同時表示できます
表計算ソフトのエクセルでは表の下にグラフを載せて ”ここに注目” なんて文字を追加できます。
3.印刷のセットアップが簡単にでます。
DOS の時代はソフトごとにプリンターを設定する必要があったが、MDになってからは MDでセットアップしたものは MDのソフトですべて使えます。
(当時は新しいプリンターがでると ソフトウェアを FDD で取り寄せて組み込む必要があった)
4.CD に入れるだけで OK さえ押せばセットアップが完了します。
5.マルチタスクの登場
DOS の時代は一度終わらせないと、次のソフトが起動できなかったものが、MD は切り替えを可能にしたので他のアプリを止めずに別のアプリを起動して打ち込むことができます。
6.壁紙ができてスクリーンセイバーができます。
7.マウスで多くの人が感でパソコンを使えるようになりました。
8.MDが当初から搭載されたパソコンの機種を販売します。
「ジム、素晴らしい」
「パチパチパチパチパチパチ」役員から賞賛の拍手が送られた。
ランチミーティングが終わった。
「社長、よろしいでしょうか?」
「なんでしょう。高山さん」
「お恥ずかしい話しなのですが、最近男性機能が衰えていまして、強化できないでしょうか?」
「医者ではないですが、やってみます。そこのソファーに横になって下さい」
視床下部の細胞を再生して、細くなった血流を増やした。次に副腎を再生して、ここも血流を増やした。精巣を再生して、前立腺周辺の筋肉を再生して勃起力を強めた。
「考えられることをしました。後で結果を教えて下さい」
シンガポール本社の会議にジム・ゲイトを呼んだ際にMD3.0が披露された。前世の記憶通り90年に発売されることを確認できた。それまで使い物にならなかったMDが3.0でやっとOVの機能を上回った。オリーブ社の業績はこのMD3.0の登場で急速に悪化していく。その後に登場したMD95はインターネットが一般に広まり始めた時期に、業務用だけでなく一般家庭にも普及した画期的なOSでパソコンを爆発的に普及させる原動力になった。マジックウィンドウズはMD95で世界制覇したのである。
マジックウィンドウズ社は前世の2024年現在の時価総額が3兆1620億ドル、150円/ドルで換算すると473兆円にもなる。配当を支払った後の税引前利益は893億ドル、円換算で13兆3950億円と途方もない超優良巨大企業に成長する。MDはこの世界の基幹ソフトで競争者が現れる可能性は低い。安定して毎年巨大利益を計上するはずだ。マジックウィンドウズ社を買収したことで、自分の目標とする世界の実現性が一層高まったことに安堵した。もうすぐやってくるスマホ時代に現れる巨大先端企業を、ITの先駆者で第一人者のジム・ゲイトを使って買収することができるのである。俺の夢は大きく膨らんでいた。
ニューヨーク支店開設とセントラルパーク隣接のビル取得のため、リリーがニューヨークに滞在していた。買付目標は50〜100棟で、契約前に買収価格の妥当性と物件の下見をする必要があった。リリーが判断に迷った時には水晶ブレスレットで連絡が入って俺が判断した。世界経済の中心地のニューヨークがいずれODAの業務の中心になる。リリーにしか頼めない仕事だった。契約日を調整した空いた期間で、リフレッシュを兼ねて旅行するように言った。役職員の福利厚生を目的とした別荘を世界各地に確保しようと思うが、維持管理に人員と経費を割当てるよりも、風光明媚な場所に建つホテルを買収した方が手っ取り早いと判断した。リリーには単なる旅行ではなく、ホテル買収の下見をお願いしたのである。リリーは小型旅客機を改造した自分専用のプライベートジェットを購入した。広い寝室、浴室、トイレ、一流シェフ、メイド兼CA付きの豪華なプライベートジェットだった。買付費用は300億円だった。
水晶ブレスレットはリリーの目を通して周囲を見ることや念話もできるので、遠く離れた場所でもビジネスには極めて有用だった。しかし弊害もあった。
「ご主人様〜、お願い〜」
リリーから念話が入った。ベッドの上で全裸のリリーがいた。秘所に2個の水晶球を貼り付けていた。念話のために俺のエネルギーをブレスレットに流すと、秘所の水晶球にもブレスレットを通じて俺のエネルギーが流れてしまい、ブレスレットと秘所の水晶球が共鳴して猛烈な絶頂感が生じてしまう。リリーの絶頂の感覚、俺を求める感情がブレスレットを通じて俺に洪水の様に逆流してきた。
(リリー!、待ってくれ、今、朝の会議中なんだ。後で連絡するから)
「ああああ、あた、しを遠くで、ひ、ひ、ひとりに、しいいい、てええ〜」
(わ、わ、わかっっっつた)
「ちょっと、か、会議、を、ぬううけま〜す。ナンシー、頼む」
俺は前屈みになって自室の方に走って行った。
「すみません、ニューヨークの姉に何かあった様ですので、私も会議を退席します」
「社長は最近、会議中によくああなりますね」
高山が言った。
「ニューヨークにいった方がいいじゃないかって、社長に進言したんだが、社長には考えがあるそうだ」
小川が答えた。
「姉さん、またなの〜、土日だけだって言ってるのに〜」
俺はベッドの上で全裸で大の字になっていた。
「ナンシー、頼む、早くしてくれ」
「いいわよ〜、兄様、私が欲しいんでしょう?」
「あああ、その、通りだ」
ナンシーがゆっくり着ている物を脱いだ。
「兄様、もう一度言って、ナンシーが欲しいって」
「ナンシーが欲しい〜」
・・・・・
水晶球による絶頂感は俺のエネルギーが供給されている限り続く。リリー姉妹の性欲は貪欲だ。
「リリー、もういいだろう?」
「ダアアメエ〜」
「行くぞおおお〜」
一気に強めにリリーのブレスレットにエネルギーを送った。少ししてブレスレットへの接続を切った。
「シンガポールとニューヨークの時差は12時間だから、ニューヨークの午前中に接続する様に言っとかないとダメだな。それとフィリピンの小学校を訪問している期間の平日も禁止だ。リリーには少しきつめに言っておく、いやお願いしよう」
本当は俺がニューヨークにリリーと行くべきなのはわかっている。だが、ナンシーの心のケアが必要だと思った。
89年は日本株式相場が12月29日の大納会の高値38957円に向けて急上昇する。このバブル期の最高値を30年以上抜くことはない。翌年の90年には大暴落する。89年の日経平均先物取引は9月末に売り埋めして終了させる。10〜12月はODA.HD保有の日経平均225銘柄を任天堂株を除いて全て売却しなければならない。営業日数で60日間で全てを売却するには1日に1〜2兆円分、1銘柄50〜100億円の売却が必要になる。まだインターネットがない時代、証券会社の店頭で株価ボードを見て、保有株数を計算しながら売却しなければならない。日本の証券会社は一任勘定取引が証券取引法で禁止されており、1銘柄ごとに発注しなければならない。俺が日本に直接行かなければ、全てを売却できないのは明白だ。
麗子と瑠美子には9月までに不動産の売却を行う指示をした。10月からは株式のみだ。あとはM不動産からスカウトした社員に任せればいいのである
俺はフィリピンの小学校訪問を9月まで行うことにした。ただし7〜8の2ヶ月間は基本的に休暇を取ることにした。
フィリピンには定期的に訪問していた。今回ナンシーはシンガポールに置いてきた。小川や高山さんの下で経営を学んでもらうためだ。マジックウィンドウズ社から発売前のMD3.0搭載のNEC9801が送られてきたので、社内のシステム、帳票管理をエクセルで統一することにした。ニューヨーク、東京、フィリピンも同様にした。言語は英語で統一した。マジックウィンドウズ社からExcelとWordの教師を派遣させて、1日3時間の交代制で社員研修をさせた。社員1人にパソコン1台を支給した。全世界の会社が一気に変わる。まだインターネットは普及していないが、データをフロッピーディスクで保存して、郵送、持参して遠く離れた会社で仕事が継続できるようになった。東京にはマジックウィンドウズ社から教師を2名派遣させた。日経平均採用銘柄225銘柄を3ヶ月の短期間に売却するにはExcelで管理する必要があった。




