フィリピンメシア教の凋落、テオの入信
フィリピン最大手のテレビ局のプロデューサーだったダニーをそのテレビ局の社長に抜擢した。ODA真理の熱狂的な信者になったダニーは、ODA真理の布教に人生をかける情熱が凄まじかった。テレビメディアを使って誤った宗教の歴史感を正し、ODA真理の布教に邁進した。テレビ局の社長になると、15世紀のスペインによる侵略の際にフィリピンで実際に起こった略奪、陵辱、原住民を奴隷化した残忍な行為が行われる中、耐え忍び逞しく生きるフィリピン人家族の姿を長編ドラマ化してテレビ放映した。ローマ教皇は、原住民に対して行われる残虐行為を神により許された行為であり、無知な原住民をメシア教徒にするために必要なことだと説いた。教皇は宣教師を派遣して植民地統治を有利に進めた。使命に燃えた宣教師は布教活動をする一方、フィリピンの婦女を奴隷としてヨーロッパ諸国に人身売買で売っていた。無知なフィリピンは、人口の90%がメシア教徒になった。こうした状況を赤裸々に長編ドラマ「サンパギータ」が明らかにしていった。
「サンパギータ」とはフィリピンを代表する白い花。ドラマは、奴隷として売られた若い少女マリを恋人のペペが奴隷船から救い出し、逞しく生きる姿を描いた。その子孫の数世代にわたる長編ドラマになる予定だ。劇中ではマリが奴隷船で犯される場面、マリの子、孫の婦女も犯され、庇った家族は理不尽な暴力を奮われる事が描かれていた。ぺぺと同性の子孫のペペが苦労の末スペインからの独立を果たす数世代にわたる長編英雄伝である。
テレビ放映を視聴したメシア教徒の国会議員、財界の要人や高所得者は、テレビ局とODA真理教会を糾弾した。また首都マニラにあるODA真理教会とテレビ局が襲撃される事件が発生した。フィリピンODA.LTDはテレビ、新聞、雑誌のマスメディアを独占している。ここぞとばかりメシア教徒の襲撃を一面で糾弾した。植民地時代の蛮行をまた繰り返すのかと報じた。ODA真理教会は農村部から始まったが、豊富な資金量で都市部にも開設され、組織的にその数を増加させていった。各ODA真理教会にはテレビを設置して録画したドラマ「サンバギータ」を連日放映した。フィリピンでテレビ持つ富裕層の家庭は全体の2%にすぎない。娯楽の少ない98%の貧しい国民は、ODA真理教会の集会場に殺到してテレビ、特に「サンパギータ」を視聴した。そうして急速にODA信者が増加していった。特に農村部では貧困に喘いでいるのは、メシア教徒による支配だという風潮が強まっていった。
「サンパギータ」の最初の場面は、メシア教の宣教師が言葉巧みに天国のような国で幸せに暮らせます、親には支度金を払いますと言って、多くの婦女が奴隷船に運ばれていった。婦女達が入船すると毎夜、船員達の陵辱が始まった。
「助けて〜、お母さん、お父さん」
「バシッツ、バンッツ」
「うるせえ、静かにしろ!」
「股を開けっつんだよ」
「痛いよう〜〜」
「ウ、グウウ〜」
「もうやめて〜、助けて〜」
船底で泣き叫ぶ少女達の悲痛と、抵抗する少女を叩く音、男達の荒々しい息遣いがしていた。
テレビの放映や録画をODA真理教会で見ていたODA信者達は怒りを抑えきれなくなった。今までどれだけ長く騙されていたんだ、と思った。
「ふざけんな!」
「何が神の国だ」
「宣教師は悪魔の使いだ!」
「おはようございます、ODA様」
早朝、訪問する小学校のエリアを持つ拠点のヘリコプター発着場の着くと、テレビ局の社長になったダニーと新聞、雑誌の持ち回りで参加する社長が待っていた。全員片膝で首を垂れていた。大型ヘリコプターと小型ヘリコプター1機ずつをマスメディアに、ODA学園にも同様にヘリコプターを配置させていた。通常はこれらのヘリコプターが訪問先の小学校をエリアに持つ拠点に集合する。しかし、訪問する小学校にヘリコプターの着陸できる場所が狭い場合は、メディアと学園関係者は事前に拠点から車で小学校に到着することになっている。今回はメディアと学園関係者のスタッフは事前に車で小学校に向かった。ODAと同行を許された社長達が発着場で待っていた。
「ダニー、元気そうだな」
「はい、ありがとうございます」
「今日は中継地点で燃料を補給して、さらに奥地の小学校を訪問する予定だ」
「君らも私のヘリに乗りたまえ」
「はい、ありがとうございます」
ダニーと新聞と雑誌の社長が嬉しそうに答えた。
ルーシーが操縦するユージ専用の豪華大型ヘリコプターの室内にはメイド兼CAが1人いるだけでだった。ダニー達が同乗することも多かった。各社の記者が集めた情報をヘリコプターで聴くことはユージにとってもありがたかった。
ダニーがテレビ局を代表して、また新聞社と雑誌社の代表は毎回持ち回りで参加していた。フィリピンODA.LTDでの待遇は、新聞社と雑誌社の会社は赤字なのでその社長の待遇は本社では係長である。係長では直接ODA社長に直接に会う機会は通常ない。メディアの社長はODA社長に会う事ができることで、仕事に誇りを持っていた。
「テレビ局に続いて今度は雑誌社に爆弾騒ぎか、メシア教会もなりふり構わずテロ行為をするとは、けしからん」
「メシア教会が異教徒には何をしてもいいと扇動していない事を祈るよ」
「死傷者はどうした?」
ODA社長が言った。
「テレビ局では受付に銃を所持した警備員を配置しています。警備員が犯人を取り押さえる際に手榴弾を正面玄関に投げ込まれましたが、社員は避難したので負傷者はいませんでした」
ダニーが答えた。
「私の出版社では事務所の入り口から手榴弾を投げられて、女性事務員の1人が死亡し・・・・・、
2人が重症を負いました」
週刊誌の出版社の社長が怒りを露わに言った。
ユージはデイバックの中から便箋と財布を取り出した。亡くなった方と負傷した社員宛に見舞金を入れた。負傷した社員にはフィリピンの相場の5倍の金額を、亡くなった方の家族にはその社員の年収の金額を入れた。便箋にはODAのサインを入れた。
「これを見舞金として渡して下さい」
「ありがとうございます」
「亡くなった社員は家族に生活費を入れていました。彼女には弟がいます。彼を会社で雇いました」
「それは良かったですね。きっといい記者になりますよ」
フィリピンODA.LTDは関係会社を含めて給料が外資基準だからフィリピンでも最優秀な人間だけが就職できた。フィリピンにおいてはエリート集団なのだ。ダニーは課長で、その他の社長は係長は待遇だが、係長の年収は350万円で、フィリピンの平均年収が10万円以下であることを考えると相当高額な年収になる。
小学校に到着すると、ODA真理教会の代表役員になった元小学校校長のルーカス達が待っていた。(宗教法人の代表役員とは事務を総括する者を指す) ODAの周りに、周辺地域から集まった人達でごった返ししていた。学校と真理教会のスタッフが道を開けた。集まった多勢の人達の思いが俺に押し寄せて、俺のエネルギーと反応して自然と身体全体が発光していた。壇上に上がると訪問した小学校の校長からODA達を紹介した。その後宗教法人の代表役員のルーカスがODA真理教会の教えと、聖者であるODAが小学校を訪問している趣旨を説明した。放っておくと何時間でも話すので、あらかじめ話す内容の論点を纏めておく様に指示した。そうしないと子供達や集まった人達が日射病で倒れてしまう。ルーカスが話したので俺は何も話さなくてもいいので、その点は助かっていた。
小学生と親が連れてきた子供達からギフテッドの子供を選出した。最近は効率が良くなった。フィリピン全土で始まった小学校就学時の知能検査で、出来のいい子供を持つ親が、評判を聞きつけて遠くからも自分の子を連れてきていた。毎回、20〜30人のギフテッドの子供達を発掘する事ができた。
(フィリピンODA.LTDの費用で全国の小学校の就学時の子供達が知能検査を受けていた)
農村部の住民は貧しい、貧しさから抜け出す手段がない。病気や怪我は自然治癒で済ましてしまう。訪問した場所地域には鉱山があり多くの鉱山労働者が来ていた。鉱内で落盤・落石事故があれば、死亡する事が多かった。運良く生き残っても骨折する者もいた。骨折すれば仲間内で添木を当てて治すが、曲がったまま骨が接合する事が多かった。
教壇の上から見渡すと、手足が曲がった者が8人もいた。全員を再生治癒する事にした。
「鉱山事故に遭い手足が曲がった人達がこの中にいます。その人達の手足を再生します」
俺が指さすと、指先から可視化した光の粒子がレーザー光線の様に手足が曲がった者を指し示した。硬気功で使っていた技を可視化した光の粒子で応用したのだ。スタッフ達が8人を教壇まで誘導した。教壇の上に置かれた椅子に座らせて、気絶させて曲がった部位の骨を一度分解して正しく再生していく。最近は手際が良くなって、どんどん治癒再生していった。集まった人達は、周囲に光を照射して治癒する俺に、片膝をついて祈っていた。
治癒が終わると、ODA真理教会の教本が置かれたテーブルに人達が殺到して用意した数千冊の教本があっという間に無くなった。ODA真理教会への帰依、学園、関連会社の就職希望者が数百人が校庭に残っていた。俺は知能レベルと善人か否かをオーラで見て、ルーカスとダニーに指示をした。
今回訪問した地域には鉱山労働者、港湾労働者の住民が多い。フィリピンは埋蔵量で世界有数の資源国と言われているが、国土の1.5〜2.0%しか開発されていないし、将来もその状況は変わらない。フィリピンのGDPを増加させ国民を豊かにする、もちろんODA.HDの利益を上げるには、未開発の鉱山開発が最も有効な手段である。ODA.LTDには、資金、政府とのパイプがある。あとは近代的な私設の軍隊があれば可能だった。無法地帯の鉱山開発に伴う障害は、ゲリラ、中国共産人民軍、地方政府の議員と役人、フィリピン地方軍と紛争することは避けられなかった。また、道路、水道、ガス、電気、港湾施設といったインフラ整備は、本来国の公共事業として行うべきだが、ODAが負担すれば膨大な費用が必要で未来永劫利益は望めない。
俺はフィリピンが抱える最大の問題点である鉱山開発が進まない理由を話して、鉱山労働者と港湾労働者の人には帰ってもらった。その他の人達の中で有望な人材はODAの関係会社、宗教法人で雇うことにした。
マニラに戻ってから大学の講堂、体育館に集められた首都周辺から集まったIQ140以上の子供達を観察して、ほとんどをODA学園就学を認めた。こうした努力で1学年の1000人の定員は埋まっていった。
爆破テロで負傷した2人の女性社員の見舞いで、彼女達の住む会社で用意した女子社員寮を訪問した。日本のワンルームマンションだが、台所と風呂はなく、シャワー、トイレ、クローゼット、ベット、机が置ける間取りになっていた。東京の女子寮と同じルールを徹底させている。ラブホテルではないので男子禁制だ。十分な給料を支給しているが、夜のバイトをしている娘もいるそうだ。ODA.LTDの社員数は1万人を越えて増え続けている。うちの男性社員を客にとったらどうするのだろう、と思う。生来の女好きの俺は、周囲の目が合って女遊びができない。東京では少しはできるが、調子に乗って愛人を作りすぎたと反省している。
負傷した女の子は、顔と肩に傷ができた娘と足の傷を負っていた。どちらも酷い傷だったが、熟練した再生治療の技で簡単に直してしまった。2人とも「一生、聖者様にお使いします」と言ってくれたが、「その感謝の言葉だけでいいよ」と断った。
マニラでは大学の講堂か体育館を借りて、ODA.LTD常務のヘンリーとODA真理教会代表のルーカスが協力して集めた首都周辺ギフテッドの子供達を俺はオーラで検証した。事前に知能検査でIQ140の子供達だったのでオーラ検査で問題がなかったので約200名を全員合格した。学園スタッフが就学準備を保護者に説明した。
休憩を挟んでテレビ、新聞、雑誌のCM広告、小学校訪問時の募集でODA企業グループに入社応募してきた1000人を超える人間のオーラ検査をした。フィリピンは失業率が高いことと、ODAの給料がフィリピンの相場よりも相当な高額なので、転職を希望する人間も多かった。ODA学園では、実社会で将来トップクラスになる人間を養成している。法律と会計は、実社会ではどの業種の仕事に就いても知っておくと便利な知識だ。この2科目を中学校では必須科目にして、社会で活躍している弁護士と会計士を教師として採用した。特定業種として軍人と警察官も応募してきた。応募要領には詳しく記載しなかったが、特殊作戦部隊が欲しかった。肉弾戦ならば八島流空手の上級者の方が硬気功が使える分強く持久力もある。しかし武器を使った戦闘技術を持たなかった。また、要人警護のシークレットサービスも持ちたかった。こういった戦闘隊員を少しずつ採用していった。
一般人の応募は、A:IQ140~、B:IQ130~140、C:110~130の3グループに分けた。Aが役員候補生、Bが幹部候補生、Cが一般社員という感じだあとは、その人物の好きな職種、経験を踏まえて会社を割り振っていく。この割り振り方法は各会社の人事担当者が欲しい人材をスカウトしていって決める。調整役はODA.LTDの人事課長が行う。スカウトされなかった人達は待機人員になった。
教会職員に応募してきた者はオーラの色で俺が判断した。あとはルーカスの仕事だ。ODA真理教会の本部はODA学園内にある。しかしルーカスはマニラに住んでいる。教会の設置、職員の募集といった実務はODA.LTD常務のヘンリーと打ち合わせて行う必要があった。
「フィリピンのODAの社員は、今何人になっている」
ODAが聞いた。
「おおよそ1万人です。各子会社が独立採算制で運営していますが、赤字経営でも規模拡大を優先しているので、急速に規模が拡大しています。統制をしなければ10万〜20万人まで膨れ上がってしまいます。業種ごとの市場規模から算出した適切な企業規模を想定しますと、2万人が限度です。中期計画で4年後に赤字を脱却する予定です」
「大学の教授や講師の募集は上手くいってるかい?」
俺がルーカスとヘンリーの前で聞いた。
「社長が重点を置く数理統計学、情報科学、経済学の学部の教授、講師は、社長の期待するレベルの人材はフィリピン国内にはいません」
「やはりそうか」
この道の専門家に相談しようと思った。
年間においてフィリピン滞在期間が1番多い。最初はリリーをフィリピンの女帝にする事が目標だったが、フィリピンに関わるうちに、金さえあれば何でもできるなら、日本でできない事をやってみようと思った。言わば好奇心からスタートした。自分でもどうなって行くのか興味があった。フィリピンに来た理由はもう一つある。義理の妹のルーシーに会いたかった。ルーシーはリリーを可愛い娘にした感じで、快活で明るかった。会うとリフレッシュした気分になった。明るい娘がSEXになるとエロくなり乱れる。美人で可愛い顔が乱れてイキ顔になって、何度も絶頂を味わっても中断する事なく何度でもイキ続けるのだ。男にとって感じ易く乱れる女がいいに決まっている。リリー3姉妹、実は母親のマリーも同じタイプだった。女性経験が多い俺でも1発でのめり込んでいった。
※大航海時代と呼ばれる15世紀半ばから17世紀半ばまでのヨーロッパ人、主にポルトガルとスペインよるアフリカ・アジア・アメリカ大陸への大規模な植民地獲得競争。
※ODA真理が説く善悪の考え方はその原理を説くもので、それまでの宗教とは全く異なっていた。宇宙意識を神をするならば、悪、悪者も宇宙の一部である。なんの罪もない者を殺すことが悪ならば、感情を持つ動物、例えば豚や牛を人間は殺して食べている。弱肉強食の世界のライオンは他の動物を殺して食べている。なんの罪のない者を殺している。これは「悪」なのか「悪者」なのか、違う。人間にとって病原菌は悪だ。しかし地球という惑星にとって人間の存在はどちらだろう? どちらも宇宙の一部だ。
肉体という物質の身体から抜け出すと、魂を含む霊体は様々な粒子の波動で構成されている。同じか近い波動でなければ交わることができない。人間が死ぬと天国か地獄に行く。天国に行きたければ、自分の霊体の波動を天国の世界の波動に近づけなけれな行けない。自殺、殺人は自分の波動を地獄の世界の波動に近づけてしまう。審判があるわけではなく、自分自身の波動が、死後、自分に合致した世界に導くのである。
現存する宗教の全てを否定しているわけではない。宗教で教える地獄に行く方法、天国に行く方法、これらのことは正しい。好きに信仰してもいいが、過去の歴史が示すように排他的で、他の宗教の信者ならば殺しても、奴隷にしてもいい、そう言った宗教の根本的な思想に反する行為は正さなくてはならない。
ODA真理教会に対するテロ行為は組織的なものと思われた。ODA真理教会代表のルーカスが襲撃された。自爆テロに加えて2箇所から狙撃された。ODA真理の信者の中には、警官、軍人もおり、ルーカスには彼らの護衛が付いていた。ルーカスは無事だったが、護衛の2名が死亡した。犯人を捕まえることができなかった。
首都にある小学校でギフテッドの発掘を行うことにした。半径500メートル内の狙撃可能のビルが4〜5箇所あり、聴衆に紛れれば、自爆テロ、拳銃で射撃することも容易に行えるリスクが高い場所だ。俺は囮なることにした。
小学校の校庭には2000〜3000人の聴衆が集まっていた。いつもの様に教会代表のルーカスが話をしてくれた。ルーカスの紹介で俺が教壇に上がった。俺は指先から可視化した光の粒子をレーザー光線にしてギフテッドの子供を指し示した。
「うちの子が選ばれたぞ!」
「アタシの子よ!」
会場がどよめく中、
「バンッツ、バンッツ」
大きな銃声が響いた。集まった聴衆に混じって前方の左右2箇所から銃弾が放たれた。一般人に装った2人の男達が拳銃を撃ったのだ。銃を構える姿勢が訓練を受けたことのある人間だった。
「ダ、ダ、ダ、ダ、ダ、」
「ドキューン、ドキューン」
「ガッシャーン、パリン、パリン」
「バ、バ、バ、バ」
続け様に何十発もの銃弾が俺目掛けて撃ち込まれた。
「キャー、助けて〜」
「逃げろ!」
「ウウェーン、エ〜〜ン」
「もう、ヤダー」
聴衆者に紛れた犯人の2発の発砲が合図になったかの様に、様々な場所から一斉射撃があった。教壇の後ろの教室の窓ガラスが割れ、コンクリート製の校舎の壁に銃弾の穴がいくつもできていた。
100〜200メートル離れた2箇所のビルの屋上と最上階の部屋からM16の連続射撃が撃ち込まれた。また約300メートル離れた2箇所のビルの屋上から徹甲弾を使った大型ライフルが撃ち込まれた。
聖者様の身体に弾丸が撃ち込まれるたびに真っ白な長袖シャツとズボンが血に染まり、聖者様の身体がビクンと反応した。聖者様は何10発も銃弾に撃たれてもそれに耐えて、苦しい顔をなさって立っておられた。銃弾に撃たれた聖者様は出血で全身が血まみれになった。激しい銃弾の一斉射撃が終わった。
「ガハッツ」
「ズダーン」
聖者様は口から血を吐き出して、後ろに大の字に倒れた。時間にして数秒のことだった。
護衛の人達がすぐに駆け寄り、数人で聖者様を抱えて運びだした。警官が人垣をかき分けて道を作った。
「聖者様〜、聖者様〜」
「神様、どうか聖者様をお救い下さい」
一目、聖者様を見たい者、祈りを捧げる者達で校庭はごった返していた。
「バンッツ」
「バンッツ」
突然、また銃声がした。運ばれる血まみれの聖者様に銃弾が撃ち込まれた。人をかき分けていた左右にいた2人の警官が拳銃を発砲したのだ。
「ボンッ」
「ボンッ」
発砲した2人の警官の頭が爆発した。八島流空手の八島と近藤が硬気功を放ったのだ。
八島達が大型SUV車両に聖者様を運び込んだ。
犯人達の司令室があるビルの一室
「A班狙撃成功しました。B班狙撃成功。C班狙撃成功。D班狙撃成功」
「各班、直ちに帰還せよ」
「ラジャー」
ユージとリリーのコンドミニアム
10数人の医師の一団が医療器具を運び込んでいた。医師団に偽装した陸軍特殊部隊隊員達で、対テロ組織の武器、センサー等を持ち込んでいた。
「あ〜、サッパリした」
シャワーを浴びた俺がバスローブ姿で会議室に入ってきた。
「師匠、お怪我はありませんか?」
「あるわけないだろう」
ゆったりした長袖と長ズボンの下には、あらかじめ血糊を仕込んでいた。皮膚の外側に硬気功のバリアーをしていて、全くのノーダメージだった。頭部への銃弾は念動力で軌道を変えていた。
「ダニー、しっかり録画できたか」
「バッチリです。校庭の4箇所から望遠、また私が近くから直接ODA様を撮りました。撃たれた時の織田様が歯を食いしばった苦悶の表情、みんなでODA様を車に運ぶ最中に、あろうことか護衛の警官がODA様に発砲した瞬間、八島先生達がテロ警官の頭を吹っ飛ばす瞬間、全て完璧に録画しました。緊急ニュースで各局が全国、全世界に向けて放映します」
「ご苦労、群衆に紛れて発砲した二人の犯人は拘束したか」
この部屋には首都警備の陸軍少佐、国家警察中佐がいた。フィリピンの軍隊、警察は腐敗にまみれ、職業、地位を利用して汚職をする者が多い、しかし、この2人は八島の弟子でODA真理の信者だ。
「はい、現在留置場に拘束しています」
「警備には陸軍の兵士がついています」
「警備の者は全員ODA真理の信者だろうな」
「もちろんであります」
「ダニー、拘束した犯人2人の事情聴取を録画しろ。今、留置所で、正義の天誅を加えた、と喚いているぞ。夕方のニュースに間に合わせるんだ」
「かしこまりました」
「次にこれからのことを説明する」
「今夜未明、深夜にメシア教会に依頼されたアメリカの特殊部隊の攻撃がある」
・・・・・・・・
次にその対応策について指示する」
・・・・・・・・
俺を乗せたヘリコプターがODA学園のヘリポートに着陸した。ヘリコプターは2機だ。フィリピン特殊部隊の隊員がヘリコプターから降り立った。
「君らは私が戻るまで学園で待機だ」
「かしこまりました」
数時間前、米軍基地から飛び立ったヘリコプターからパラシュートで米軍特殊部隊隊員10名が降下した。
「隊長、全員集まりました」
「今回の任務はA班はODA学園の爆破及び生徒を含む全員の殺害、B班は宗教施設の爆破及び施設内関係者の殺害だ。施設と人間全てを殲滅せよとのことだ。抵抗する人間はいない。子供達も全て殺せ、いいな」
「21時に攻撃開始、30分で作業を終了し、この場所より北東5km地点の空き地にアメリカ軍の車両が待機している。22時30分までに集合しろ。以上だ」
「隊長、子供も殺さないといけないんですか?」
「悪魔の宗教に染まった子供達だ。正しく天国に行ける様に俺達が導くんだ」
「わかりました」
俺は全身黒の衣装に頭部を全て隠すマスクを被った。目だけが空気に触れている。
「では行ってくる」
オーラを薄く広く展開する。西の方角10kmほどに戦闘服を着た男達を発見した。
「なるほど、子供達も皆殺しするつもりか」
男達に注意を向けると、まるで俺がそこにいて、手に取るように声が聞こえて、考えることもわかる。俺は暗闇の中を飛ぶ様に走った。葉が生い茂ってない地面から大きな木へと飛びながら走るのだ。1回の跳躍で30メートルくらいを念動力を使って平行に飛んでいった。A班の7人から約400メートルまで近づいて一旦停止した。俺のことは気づいていない。空中を音を立てずに浮遊して移動していく、猿、鳥が俺に気づいて声をあげて逃げると音がしてしまうので、オーラで確認して即死させて行った。念動力で音を立てない様にそおっと地面に降ろしていく。100メートル付近まで近づいた。
※即死させる方法、気絶させる方法はギャング相手に実験しており熟練している。延髄の神経を切断すると一瞬で脳死する。しかし心臓は動いている。心臓を念動力で破壊することができるがスマートでない。何回も試して心臓を石の様に硬直させることができる様になった。確実にスマートに殺すため、延髄の神経を切断すると同時に心臓を停止させた。因みに気絶させる場合は、脳に送る血流を止めればいい。念動力で血管を傷つけない様に圧迫し血流を止めると1秒以内に気絶する。本人の意識にリンクさせると、少し気が遠くなったと感じて突然、目の前が真っ黒くなって電気のスイッチを切ったかの様に、バンッと意識がなくなる。全く痛みを感じない。血流を止める時間が短いと身体が崩れ落ちた時の痛みの電気信号が脳に送られて気がついてしまう。気絶した人間の頬を叩いて起こすのはこのためだ。だから気絶させる場合は10秒ほど血流を止めることにしている。
A班の7人が密林を進んでいた。
「子供を殺すのは気が進まないぜ」
「俺もだ。俺にも子供がいるからな」
「ドサッ、ドサッ、ドサッ、ドサッ」
突然A班の屈強な男達が一斉に地面に倒れた。俺は木の上から音もなく降り立った。特殊工作員の無線のスイッチを切っった。俺はプラスチック爆弾と起爆装置が入ったリュックを背負った。次にB班の3人をこの場所から即死させた。
B班の3人が倒れていた。俺は木の上から音もなく降り立った。無線のスイッチを切った。ここでもプラスチック爆弾と起爆装置の入ったリュックを奪って背負った。学園の子供達を皆殺しにしようとした男達で、生かしておく利用価値もなかった。
「戻ったぞ、地図に印をつけておいた。ここにアメリカ軍の特殊部隊の死体がある。最新式の装備を剥ぎ取って、死体の処理をしてから帰還しろ、装備は八島の道場の倉庫に置いておけ」
「八島とお前」
八島と弟子のフィリピン特殊工作員を指差した。
「スチュワートと申します」
「お前達2人は、俺について来い。テロの指揮官を捕縛する」
俺はODA学園からでも特殊工作員を即死させることができる。あえて俺が彼らの所に赴いた理由は、この後にもやることがあって、短時間に処理するのは俺しかできなかった。そしてプラスチック爆弾と起爆装置が欲しかったからだ。
首都マニラ、フィリピンメシア教会本部所有のビルの一室、テロ組織の指揮官がいた。この国でメシア教会に盾をつく人間はいない。バックにアメリカ本土の教会、政府関係者もついているのだ。このビルも治外法権の場所で、フィリピンでは教会本部の次に安全な場所だ。
武器、無線装置等の武器類を処分させ、旅行カバンにラフな私服に着替えた男が、ソファに座り葉巻を燻らせていた。迎えの車の運転手を待っていた。これからマニラからロサンゼルス直行便に搭乗するのだ。
「ピンポーン」
「来たか」
「お邪魔するよ」
「お前達!」
男は懐の拳銃に手を・・・・伸ばせなかった。全身が硬直して指先一つも動かせなかった。
「お前、何故生きている」
「質問するのは俺だ、黙れ」
男は声を出すことも口も動かせなかった。目だけを動かせた。
「お前は誰だ」
ユージの質問が始まった。
・・・・・・・・・
「お前は誰の命令で俺を殺そうとした」
・・・・・・・・・
「わかった。もういい」俺は指揮官の男を気絶させた。
「八島、この男を担げ、荷物は俺が持つ」
うちのビルの地下に監禁する
「押忍」
ODA真理教会マニラ支部、教会施設、集会場、ルーカスが寝起きする宿泊施設があった。
深夜1時、サイレンサー付きM16機関銃を持った男、サイレンサー付き拳銃を持つ男、プラスチック爆弾を背負う者といった4人がODA真理教会裏口門から入って行った。
(よし、行け)ハンドサインで命令した。4人が自分の持ち場に散って行った。
アメリカの特殊工作員の1人が教会の裏口に近づいた。教会の屋根、15メートル上空から黒ずくめの男が音もなく飛び降りた。
「ゴツッ、ドサッツ」
男の踵が工作員の頭骸骨を粉砕した。
・・・・・・
・・・・・・
「他も終わった様だな」
「ダニー、撮れたか?」
「暗視カメラをセットしていたんですが、動きが早くて、それに全身黒なので撮れてませんね」
「しょうがない、撤収だ」
アメリカ特殊工作員を殺したのは、硬気功を習得した八島の弟子達だった。
ユージとリリーの住むコンドミニアムのあるビルの地下駐車場に警備会社の車2台が止まった。カバンを持った4名の警備員が車から降りた。ビルの扉を偽造したカードキーで開けてエレベーターに乗り込んだ。最上階のボタンを押した。
「ODAの女房と妹を殺すのはもったいないですよ。拉致しませんか。身代金をせしめられるし、女房もその妹もいい身体をして物凄い美人です。みんなで楽しみましょうよ」
「ダメだ。今回の犯行は共産ゲリラの仕業だ。俺たちはどう見てもアメリカ人だ。交渉で身を晒すのは危険だ。命令通り殺害して速やかに離脱する、いいな」
「そうでしたね、わかりました」
「チンッツ」
コンドミニアム最上階でエレベーターが止まった。
ユージ達のコンドミニアムの玄関ドアの前に着いた。
警備員の4名は、カバンから暗視スコープ、サイレンサー付き拳銃、ハンドライト、ナイフ、防弾チョッキを取り出して装着した。
(開けろ)
リーダーがハンドサインで命令した。
「カチャ」
偽造したiC内蔵のルームキーをドアに通すと簡単にロックが解除された。
暗闇に中、暗視ゴーグルをつけた男達は部屋に入っていき、広いリビングのあるドアの前に着いた。ファイバースコープカメラをドアの下から入れて内部を小型モニター画面で確認した。薄暗い中、ソファーに座った男がタバコを吸って夜の街を見ていた。
リーダーの男が手で合図した。ドアが開けられ、4人の男がハンドライトを照らして入ってきた。
「ドサッツ、ドサッツ、ドサッツ、ドサッツ」
4人の男達が突然倒れた。ユージが気絶させたのだ。
ユージがリビングの照明をつけた。
「終わったから、来てくれ」
隣のコンドミニアムに待機している者達に電話をした。
「師匠がやると、あっけないですね」
八島が言った。
リリー、ナンシー、ルーシーがリビングに入ってきた。
「本当に私達まで殺しに来たのね。メシア教会の命令なのよね」
「信じられないわ、神の理を説く宗教家にあるまじき悪魔の所業よ」
・・・・・
リビングにはフィリピン陸軍特殊工作員の隊員が揃っていた。全員がODA真理の信者で八島流空手の門下生だった。
「テロ組織の襲撃を未然に防ぎ、犯人一味を逮捕した功績は、フィリピン陸軍特殊部隊と国家警察が共同した成果としてくれたまえ」
「外国の特殊部隊を八島流空手門下生のフィリピン特殊部隊が制圧したと報告してくれ」
「ダニー、報道を頼む」
「本当にいいのですか?ODA様と八島先生達の手柄を取ってしまいますが」
「問題ない」
「それと私からの提案だが、今回作戦に参加した特殊工作員達は私の会社の社員になってもらいたい」
「なります」
「なります」
「自分もなります」
「自分もです」
フィリピンODA.LTDの社員になると、給料が数倍になり、八島流空手の高段者への可能性が広がるのだ。フィリピンにおいて、フィリピンODA.LTDの社員はエリート中のエリートである。
「ODA様、自分も社員にして下さい」
陸軍少佐が懇願した。
「君には陸軍で出世することをお願いしたい」
「そうですか」
陸軍少佐がガックリ項垂れてしまった。
「君らには今回の作戦に参加した褒美を私からやろう」
「一列に並べ、私の見えている世界の一端を見せることで褒美とする」
「リリー、照明を消してくれ」
ユージが八島と近藤の眉間に人差し指を当てた。ユージの人差し指と彼らの眉間が光っていた。
「オオオオー」
「す、す、素晴らしいです」
八島と近藤は硬気功を習得しているので、暗闇でもある程度、周囲を見ることができた。しかし、今見ている光景は圧倒的な迫力があった。視界が一気に明るく鮮明に、しかも立体的に見える。ビルの上空から首都マニラの全域をネオンをつけるビル、道路、歓楽街の照明、道を歩く人々だけではない、ビルの中の隅々まで、全てが見えるのである。ビルのどこに隠れようが全てが見えるのだ。
「オオオオー」
「すごい」
・・・・・・
順番に俺の見ている世界の一端を男達に見せた。
「君らが見た光景は、私が見る光景の一端でしかない。八島流空手を精進していけばその過程でたどり着く境地である。八島と近藤はその入口に立っている。君らもいずれ入口に立ち、扉を開けるだろう」
「では、君らにはまだやることがある。それを説明する」
・・・・・・
「了解しました。ODA様」
その場にいる家族以外の全員が跪いた。
「番組の途中ではありますが、臨時ニュースをお送りします。マニラ市街の小学校を訪問していたODA真理教会のODA教祖が講演中に銃撃されました」
全身から光を照射する眩い姿のODA教祖の指先からレーザーの様に光の光線が子供達を指していく。
「キャー、選ばれたわ!」飛び跳ねて喜ぶ母親。
「オオオオー、やったぞ!」ガッツポーズの父親。
「小さい拳を握り締める」幼い少女。
「うっしゃー」拳を上げるガキンチョ。
「バンッ」
「バンッ」
「キャー!」
「この野郎!」
「こいつだ!」
逃げ惑う聴衆達、拳銃を構える犯人の男に飛びかかる男達。聴衆に混じってキャップを深く被った2人の犯人の男を、前方の2箇所から脚立に乗ったカメラマンのカメラが録画していた。
別のカメラが望遠で教壇の上に立つ教祖のODAを撮影していた。
「ダ、ダ、ダ、ダ、ダ、」
「ドキューン、ドキューン」
「ガッシャーン、パリン、パリン」
「バ、バ、バ、バ」
続け様に何十発もの銃弾がODA様目掛けて撃ち込まれた。
「キャー、助けて〜」
「逃げろ!」
「ウウェーン、エ〜〜ン」
「もう、ヤダー」
教壇の後ろの教室の窓ガラスが割れ、コンクリート製の校舎の壁に銃弾の穴がいくつもできていた。聖者様の身体に弾丸が撃ち込まれるたびに真っ白な長袖シャツとズボンが血に染まり、聖者様の身体がビクンと反応した。聖者様は何10発も銃弾に撃たれてもそれに耐えて、苦しい顔をなさって立っておられた。銃弾に撃たれた聖者様は出血で全身が血まみれになった。激しい銃弾の一斉射撃が終わった。
「ガハッツ」
「ズダーン」
聖者様は口から血を吐き出して、後ろに大の字に倒れた。時間にして数秒のことだった。
教壇の脇にいたビリーがカメラを持ってODA教祖の側に駆け寄った。
全身血まみれんのODA様が苦悶の表情をなさっている。口から血が流れ落ちていた。ビリーが緊迫した状況を手に持ったカメラで撮影していた。
護衛の人達がすぐに駆け寄り、数人で聖者様を抱えて運びだした。警官が人垣をかき分けて道を作った。
「聖者様〜、聖者様〜」
「神様、どうか聖者様をお救い下さい」
ダニーがODA様に付き添っていた。
一目、聖者様を見たい者、祈りを捧げる者達で校庭はごった返していた。
「バンッツ」
「バンッツ」
突然、また銃声がした。運ばれる血まみれの聖者様に銃弾が撃ち込まれた。人をかき分けていた左右にいた2人の警官が拳銃を発砲したのだ。
ODA様の胸と腹に銃弾が撃ち込まれて、血が跳ねた。ODA様が苦しそうな表情で目を瞑っていた。もう死んでしまわれてしまった。このフィリピンの光を当てる存在が失われてしまった。
「ODA様〜〜」
「聖者様〜」
「ボンッ」
「ボンッ」
発砲した2人の警官の頭が爆発した。八島流空手の八島と近藤が硬気功を放ったのだ。
八島達が大型SUV車両に聖者様を運び込んだ。
「大変なことが起こりました。ODA真理教会の聖者、ODA様がテロ集団から襲撃されました。この非道な行為を我々フィリピン国民は許す事はできません」
「ODA様は腐敗に満ちた、貧しいフィリピンを救って下さる唯一の存在です。我々フィリピンに光をお与え下さる神の如き尊い方です。皆さん、ODA様がご存命であることを祈りましょう」
涙ながらのアナウンサーが報道をした。この報道はフィリピン全土、世界に発信された。
フィリピンメシア教会本部
司教と司祭達数人が集まってテレビの緊急ニュースを見ていた。
「ODAは始末出来たな。今夜、ODA学園の爆破及び学園生徒の粛清、ODA真理教会本部及びODA真理教会マニラ支部の爆破、フィリピンODA.LTD幹部でありODAの家族の殲滅が行われる予定だ。今夜でODAの全てがフィリピンから消えるのだ。明日のニュースが楽しみだ、諸君」
フィリピン・メシア教会本部のある司教が言った。
「さすがアメリカの特殊部隊工作員は優秀ですな」
「軍隊への報酬はどうなさるのですか?」
「アメリカの教会本部から支払われることになる。しかし、フィリピン支部がアメリカ本部から借入した形になる」
「ことが落ち着いたら、政府を通じてフィリピンODA.LTDを解体させて、我々に一旦払い下げさせてから、財閥に高く転売しようと思っている。アメリカ政府から圧力をかけさせれば、なんとかなるだろう」
「さすが次期大司教様です」
※教会の地位 教皇ー大司教ー司教ー司祭ー助祭 一般的に司祭が神父と呼ばれる
翌日の午前中、小学校の校庭から群衆に混じってODAに発砲した2人の犯人が留置されている警察にリリーが訪問した。八島とカメラを持ったビリーを伴っていた。
「リリー奥様、今日はどう言ったご用件でしょうか?」
警察署長が聞いた。
「犯人の事情聴取をさせて下さい」(リリー)
「奥様、危険ですよ」(署長)
「問題ありません」(リリー)
「署長、俺がついている」(八島)
「わかりました。先生。私も護衛させて下さい」(署長)
「わかった」(八島)
「おおおー、いい女だなあ。1発やらしてくれたら、何でもしゃべるぞ」
「ODAへの発砲は神の天誅だそうですね」
「おお、その通りだ。神の天誅だ。俺は正しい行為をしたんだ」
「神の天誅の神とはメシア様のことですか?」
「メシア様がODAをお怒りになってるんだ」
「そんな事よくわかりますね。誰かが教えてくれたんですか?」
「ああ、メシア教会本部の〇〇神父様が教えてくれたんだ。メシア様がODAを怒ってるって、だから俺は正しい事をしたんだぜ」
「拳銃はどうしたのですか?」
「もちろん神父様が拳銃を用意してくださったんだ。ODAが来る小学校と時間まで教えてくれて、どの場所から撃てばいいですよって教えてくれたんだ。神から祝福されて天国に行けてよかったですね、と言われたんだ」
「あなたが死刑になったら残されたご家族は困りませんか?」
「俺はメシア様のように死刑になるが、英雄の家族は教会が面倒見ますって、〇〇神父様が保証してくれたから何の心配もいらねえんだ」
(ユージ、上手く行ったわね)
(俺の意識誘導は少ししただけだ。本人が言いたかった様だ)
リリーの左手にある水晶のブレスレットが光っていた。
「ダニー、録画できましたね」
「バッチリです。奥様」
「では、もう1人の事情聴取を済ませましょう」
午後、ユージとリリーのコンドミニアムを襲撃した特殊工作員4人が拘束されている留置場にリリー達がやってきた。
「署長、4人を同時に事情聴取を行いたいのですが、場所はありますか?」
「ありません。会議室があるのですが、彼らは特殊工作員です。危険すぎます」
「署長、私がいる」
「先生、拘束しているとはいえ、戦闘のプロが4人ですよ」
「お前、俺をバカにしているのか?」
「いえ、リリー奥様もおられるので、もしお怪我をなさったら大変ですので」
「八島、控えなさい」(リリー)
俺は霊体離脱した身体を光の粒子で具現化した。室内が眩い光で満たされた。俺は署長の前に立った。そこに居合わせた署長と警官達が跪いた。
「オオオオー、聖者様」
“私がいるので何の心配もありません”
“リリーの指示に従って下さい”
「かしこまりました」
警察署の会議室にリリー、八島、ビリー、署長がいた。部屋には長机が長方形に組まれていた。椅子が4脚置かれて机の上にはレポート用紙とボールペンが置かれていた。正面に椅子が1脚置かれていた。リリー達は1脚の椅子の左右に離れて立っていた。
「コンッ、コンッ」
4人の特殊工作員が入ってきた。手錠をしていない。彼らにはメシア教会が所有するアジトのビルの一室に見えている。
“ご苦労だった。首尾は上手く行ったか“
「はいボス、ODAの女達があんまりいい女なんで、みんなで輪姦してやりましたよ。初めは抵抗したんですが、ぶん殴ったら大人しくなったんで、たっぷり可愛がってやりましたよ」
「最後は首を絞めながらやってやりました」
「スゲーいい女だったな。締まりも良くてよ」
「俺は3回やっちまったよ」
「俺もだ、女房と妹2人の3人だから、1人1発づつだ」
”ほう、俺はすぐに始末しろと言ったはずだ“
「申し訳ありません」
”ところで今回の任務でメシア教会から特別ボーナスを出すそうだ。そこの用紙に、自分の所属、階級、氏名、今回の作戦の詳細を書いてくれ。報告書の内容によってボーナスの金額が変わるそうだ。メシア教会の連中はこういう報告書を読んだ事がないから、作戦の内容は細かく書いた方がいいぞ。もちろん俺の名前を含めて上官の名前も書く様に、以上だ“
”書けた様だな、では読み上げてくれ“
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
”よし、用紙はそのままでいいから部屋で待機しろ“
「イェッサー!」
4人はそれぞれの留置場の独房に帰っていった。
「ダニー、撮れましたか?」
「もう、バッチリです」
「それでは4人の供述書の原本は私が預かります。コピーを警察で保管して下さい」(リリー)
「かしこまりました。奥様」
翌朝、フィリピンメシア教会本部 司祭の数人が会議室に集まっていた。
「ODA学園とODA真理教会の爆破はどうなってるんだ」
「特殊部隊との連絡も取れていない」
「テレビをつけてくれ、何かニュースが入っているだろう」
「9時からODA真理教会のODA教祖の功績のドキュメンタリー番組を放送予定でしたが、フィリピン政府による会見が終わり次第に放送いたします」
「前日、ODA真理教会教祖並びにフィリピンODA.LTD会長であらせられる、国民から聖者と崇められるODA様が襲撃されました。同日夜半、ODA学園並びにODA真理教会本部の爆破を計画した特殊工作員10名、さらにフィリピンODA真理教会支部の爆破を企てた工作員4名、ODAの家族の住居に殺害目的で侵入した工作員4名の非道なテロ行為を、我が国の陸軍特殊部隊並びに国家警察が共同して撃退し、犯人を拘束しました。犯人達の供述呼び所持品からアメリカ陸軍特殊部隊隊員である事が判明し、フィリピンメシア教会の依頼によるテロ行為であると主張しております。フィリピン政府として、正式にアメリカ政府に対して謝罪をもとめ、先のODA様襲撃の際に死亡、負傷した我が国国民に対する補償を要求します」
テレビ局のスタジオ
「大変な事になりました。ODA様襲撃の黒幕はフィリピンメシア教会で、実行犯はアメリカ陸軍特殊部隊という事ですね」
「少々お待ち下さい。アッ、ハイ、わかりました。小学校校庭からODA様に拳銃を発砲した犯人が供述した録画を放映致します」
(ODA真理教会信者の)女性アナウンサーが言った。
画面が警察署の留置場に変わった。
「おお、その通りだ。神の天罰だ。俺は正しい行為をしたんだ
「メシア様がODAをお怒りになってるんだ」
「ああ、メシア教会本部の〇〇神父様が教えてくれたんだ。メシア様がODAを怒ってるって、だから俺は正しい事をしたんだぜ」
「もちろん神父様が拳銃を用意してくださったんだ。ODAが来る小学校と時間まで教えてくれて、どの場所から撃てばいいですよって教えてくれたんだ。神から祝福されて天国に行けてよかったですね、と言われたんだ」
「俺はメシア様の様に死刑になるが、英雄の家族は教会が面倒見ますって、〇〇神父様が保証してくれたから何の心配もいらねえんだ」
「番組を変更し、引き続きフィリピンメシア教会により依頼されたアメリカ陸軍特殊部隊によるODA様、ODA真理教会、ODA学園への襲撃について報道します」
・・・・・・・
フィリピン全土に号外が配布された。
「ODA様襲撃される!」
「黒幕はフィリピンメシア教会!」
「非道なフィリピンメシア教会!」
「フィリピン陸軍特殊部隊がアメリカ特殊部隊を撃退した!」
アメリカ特殊部隊の指揮官が拘束されているフィリピンODA.LTD所有のビルの一室に、重厚なデスクと革張りの応接セットが持ち込まれた。部屋の隅には、リリー、八島、カメラを持つビリーがいた。
俺は特殊部隊指揮官に強い意識誘導をし、上官に作戦が成功した報告をする場面を再現した。
「コンッ、コンッ」
“入れ”
特殊部隊指揮官が所属する部隊の上官の部屋に入った。
「お呼びでしょうか」
”軍の審査会から我々が金銭目的で私的に陸軍特殊部隊の隊員を使って今回の作戦を行ったのではないかと嫌疑がかかっている“
「本当ですか。将軍から直々に命令された作戦ですよ」
”その通りだ“
”しかし、軍の給料とは別にメシア教会本部から報酬が出るのも事実だ“
”弁明のために今回の作戦の詳細な内容、特に誰からどの様に命令されたかを記載した報告書を私は提出した。君の報告書も一緒に提出するのでここで書いてくれたまえ“
「分かりました」
自分の行いの正当化を弁明する報告書は、レポート用紙3枚にびっしり詳細に記載された。
”私の報告書と齟齬がないか確認するから、読んでくれたまえ“
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
”よろしい、メシア教会本部の依頼で軍の上層部が動いたのだ。メシア教会からも審査会に一言言ってもらうつもりだ。メシア教会本部は君の働きに感謝していると以前言っていたから大丈夫だ“
「よろしくお願いします」
”ご苦労、退室したまえ“
「失礼します」
特殊部隊指揮官がそういうと気絶した。
「ダニー、撮れましたね」
「はい、奥様」
「八島、監禁しなさい」
「かしこまりました」
後日テレビ局の報道番組
「予定していました番組を変更して、臨時ニュースをお伝えします」
「ODA学園およびODA真理教会の爆破未遂、ODA様家族の殺人未遂犯人の写真とプロフィールが公表されました。それに加えて事情聴取で述べられた自白した内容の録画が入りました」
「まず、ODA様家族殺人未遂犯人の供述です」
・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・
「犯人自筆の供述書です」
「次にご覧頂くのは特殊部隊の指揮官の供述です。政治的、宗教的な問題が含まれておりますが、国民の皆様には修正せず隠す事なく放映します」
・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・
「指揮官の供述によりますと、テレビドラマのサンパギータがフォリピンで放映されたことで、スペインの植民地だった頃、派遣された宣教師がフィリピンを隷属下する役割を担ってことが無知なフィリピンに知られてしまった。ODA真理教会を危険視したフィリピンメシア教会の一部過激派がODA様と関連する施設を地上から消し去ろうとした。そのため、アメリカのメシア教会本部の力を借りて陸軍特殊部隊を派遣してもらった。簡単に述べるとそういった内容になります」
「仮にメシア教会とアメリカ陸軍の一部が関係しているとしたら、この先フィリピンはどうなるのでしょうか。我々テレビ局は分かり次第、国民の皆様にお伝えします」
「さて本日は、ODA真理教会のルーカス代表にお越し頂いております」
「身の危険のある中、ようこそお越し頂きました。ファーストネームのルーカス代表とお呼びしましたが、失礼でしたでしょうか?」
「とんでもないです。ODA様から親愛を込めて“ルーカス”と呼ばれるいますし、ODA真理教会でもルーカスと呼んで頂いておりますので、どうかルーカスと呼んで下さい」
「本日、ルーカス代表にお越し頂きました。お尋ねしたい事がたくさんあるのですが、ODA様の容態はいかがでしょうか?」
「ODA真理教会の信者にとって、その事が一番知りたい事ですね」
「ODA様はご存命です。何十発の弾丸をその身に受けたので、自己の再生治癒に時間がかかっているのです。間も無く皆様の前にお姿を現せて頂けます」
「・・・・、ウウウ、ウッツ」
「本当ですか。ああ〜、今日は祝杯をあげたい気分です」
女性アナウンサーが涙を堪えて報道を続けた。
「本当です。ODA様はフィリピンのことを愛しておられます。貧困と暴力と腐敗に満ちた社会ですが、フィリピンの力はこんなものではないとおっしゃって、ODA学園を創立し、様々な会社を設立しました。道半ばで倒れる訳にはいかないとおっしゃられました」
「ODA様はフィリピンに光をもたらす存在です。御存命であると聞いてほっとしました」
「失礼な質問なんですが、ルーカス代表も襲撃に遭われておられますが、テロ行為を行ったフィリピンメシア教会のことをどうお考えですか?」
「実は私もODA様に同じ質問をしました。ODA様は、テロに関係した者は罰せられる。しかし、メシア教会やメシア教徒を攻撃してはならない。メシア教徒の大半は善良な人々だ。15世紀にスペインがフィリピンを侵略した際、異教徒だから略奪しても殺人してもいいと非道な行いをした。もし、怒りに任せてメシア教徒を攻撃したら、異教徒という理由で攻撃したドラマサンパギータに出てくるスペイン人と同じになってしまう。とおっしゃられました」
「でも、私はメシア教徒を許せません」
女性アナウンサーが言った。
「私も実はメシア教が嫌いですよ。でも何もしていない善良な人に暴力を振るってはいけません。言い忘れましたが、無抵抗でいろ、とは言われてなくて、自己防衛、正当防衛の反撃は当然していいと言われてるから安心して下さい」
ODA真理教会の信者によるフィリピンメシア教会への糾弾が激しく行われた。
「メシア教会は悪の根源!」
「メシア教会はフィリピンから出ていけ!」
プラカードを掲げたデモがフィリピンメシア教会本部を取り囲んだ。
テレビのリポーターが教会を出入りする人間に取材のマイクを向けた。
「私にはわかりません。お答えできません」と答えるのが精一杯の様子だった。教会を出入りする人間は職員達だけではなく、神父が変装している事が多かった。
「会見を行いましょう」
メシア教大司教が配下の司教、司祭を前に言った。
「私にお任せ下さい」
教会内の過激派のリーダーが言った。
「事件がODA真理教会の捏造である証拠を掴んでおります。会見でフィリピンメシア教会の潔白を証明して見せます」
「本当かね、では宜しく頼みましたぞ」
メシア教大司教はその地位を人望によりついた人格者だった。フィリピン人で人の嫌がる仕事を自ら進んで行い、周りの人間による推薦で大司教まで出世した人物だった。過激派グループの中にも大司教に心酔する者がいた。
大司教の執務室に若い神父が訪問した。
「大司教様」
「何かね?」
メシア教が唯一の宗教であり他宗教を排除すべきと主張しているが、一方で大司教への尊敬の念が強い神父だった。
「ODA教祖の襲撃は事実です。アメリカの特殊部隊に依頼したのも事実です」
「証拠はあるのかね」
「いえ、ありません」
「めったなことを他で言ってはいけません」
「わかりました」
「まさかあり得ない事だと思うが、私の方でも調べておきましょう。わざわざありがとう。何かあったら教えてもらいたい」
大司教は過激派グループの中で自分が育てた神父に電話をして確認した。
「・・・・・その通りです。ご連絡を差し上げておらず申し訳ありませんでしたで」
「事実です。ご連絡をせず申し訳ありません」
「本当です。自分は止めさせようとしたのですが、ダメでした」
「ハ〜、なんという愚かなことをしたのだ」
大司教は頭を抱えてしばらく動けなかった。
フィリピンメシア教会の会見はメシア教会本部の大講堂で行われることになった。各局のテレビ局、新聞社等のメディアの席が用意されていた。テレビカメラ、多くのマイクが会見テーブルに用意されていた。最大手テレビ局社長のダニーが統括していた。ダニーは、当日午後の会見を前にメシア大司教の執務室を訪れた。
「本日のスケジュールです。ご確認下さい」
「いいでしょう。宜しくお願いします。ただ一つだけお願いしたい。私は会見場には出席しません。この執務室で行いますので準備をお願いします。私は1人で会見しますので、カメラマンも入れないで下さい」
・・・・・
「準備できました。このマイクのスィッチを入れるとカメラのスィッチも同時に入る様になっております」
「これですね」
メシア大司教の大きなデスクの上にマイクが置いてあり、前方にテレビカメラが設置されていた。
「時間になりましたので、これよりフィリピンメシア教会による会見を行わさせて頂きます。なお質問は会見後に時間を取りますので、会見途中はお控え下さい。質問する場合はマイクをお渡しするので、所属する会社名と氏名を述べてから質問をして下さい」
司会役のメシア教神父が言った。
会見会場で過激派神父のリーダーがマイクを前に話し始めた。
「テレビ局を中心としたマスコミによるフィリピンメシア教会に対して誹謗中小が続いており、フィリピンにおられるメシア教徒の皆様には大変不快な思いをされていたと推察致します」
「まず、ドラマ“サンパギータ”に描かれている教会が関与した非道な行ないは全くありません。教会は救世主メシア様が説く神の真理を布教し、フィリピンの皆様の道標となるべき献身的な行いをしてまいりました。あの様なメシア教会に対して悪意のあるドラマを信じてはいけません」
「次にODA教祖への襲撃について、捕まった犯人がメシア教会神父の指示で犯行を行ったと自供していますが、そもそもその様な神父はおりません。狂人による戯言です」
「また、他国の特殊部隊による襲撃について、フィリピンメシア教会の依頼でアメリカの特殊部隊のテロ行為だと報道されましたが、メシア教会は無関係で全くの事実無根です」
「それでは質問を受け付けます」
「小学校校庭より拳銃を撃った2人の犯人が神父の指示で行ったと自供しました。その神父が所属する教会に通う複数の信者にヒアリングして神父の存在が確認されて報道されております。それでもその神父はいないというのですか?」
「その様な神父はおりません。ヒアリングした信者も本当に教会の信者か疑わしいものです」
警察が確認したところ該当する神父のみならず、家族を含めた関係者の全てが行方不明になっていた。ヒアリングした信者も行方不明になっていた。
「テロ組織の供述によりますとメシア教会の依頼で行ったとしますが、教会はこれを否定しました。仮にテロ組織の供述が嘘だとしたら、彼らが嘘をつくメリットはなんでしょうか。またテロ組織を雇った者は誰だとお考えですか?」
「その様なことをメシア教会が知るわけがありません。全く無関係なのですから」
その時大講堂の照明が落され、設置されたプロジェクタースクリーンにメシア教大司教が映された。
「フィリピンのメシア教徒の皆様、誹謗中傷され不快な思いをされたこと、責任者として深くお詫びします」
「ドラマ“サンパギータが放映され、この様な非道な行いに当時の教会が本当に関与したのだろうかと私は疑問を持ちました。教会本部の書庫には歴代の大司教達の日記が保管されています。15世紀に初めて派遣された宣教師達は、神の真理を説くメシア教の教えを布教する事を誇りに思い、当時未開の土地であったフィリピンに赴きました。ほとんど同時にスペイン艦隊がフィリピンを侵略しました。軍隊によってフィリピン人に対して侵略、略奪、陵辱が行われました。派遣された宣教師達は神の教えに反すると抗議しましたが、聞き入れてもらえません。その行為をローマ教皇が許していたのです。宣教師達は葛藤しました。抗議した宣教師はスペイン本国に戻されるか行方不明になりました。その内イスラム教の国々で行ったことと同様に、フィリピン人を奴隷としてヨーロッパの諸国に売っていきました。それを主導したのがローマ教皇の命令を受けた宣教師達でした。“サンパギータ”に描かれたことは事実だったのです。私は歴代の大司教が懺悔した日記を読みました。悲しい内容でした」
「騒動になっているODA真理教会のODA教祖襲撃、ODA学園とODA真理教会本部爆破、ODA教祖の家族殺害計画、について私なりに調査しました。かつての大司教達は懺悔しましたが、果たして懺悔すれば許されるのでしょうか?違います、正さなくてはなりません。一連のテロ行為にフィリピンメシア教会の一部が関与していたのは事実です。この様なテロ行為を神が許すわけがありません。アメリカ特殊部隊部隊を雇ったのも教会でした。テロ組織の犯人達の自供はおそらく正しいのでしょう。フィリピンメシア教会の一部が腐敗していたことの責任を痛感しております。フィリピン国民の皆様にお願いしたい。大多数のメシア教徒は極めて善良です。冷静な対応をお願いします」
照明が元の明るさに戻った。
「ふざけるな!」
「全部お前らのせいだ」
「私は関係ありません」
「逃げるぞ、捕まえろ」
メシア教会を取り囲んでいた群衆から、火炎瓶が投げ込まれた。
「ぶち壊せ!」
「ガッシャーン」
「ド、ド、ド、ド、ド、ド」
「バキ、バキ、バキ」
「やめてください!」
「バカやろう、ドケ、グシャ」
「キャー、なんて事を!」
建物の何ヶ所かで火炎瓶が投げ込まれた。30分もすると物凄い勢いで燃え広がっていった。教会はまるで巨大な松明の様に炎をあげていた。消防車が近くまでやってきたが、道路が群衆で溢れて中々教会に近寄れなかった。
大司教の執務室にも火の手が近づいてきた。大司教は責任をとって教会本部とともに焼け落ちようと思った。部
屋の木製の扉が燃え始めた。木製の壁から煙が出て今にも火を吹き出しそうになっていた。
耐えられない熱の痛みで目を瞑って、鼻からは空気を吸えない、鼻も口の中も高熱で痛い。熱から逃れようと床に這いつくばった。苦しい、痛い、耐えられない。
(助けて下さい。神様、早く死なせて下さい)
“助かりたいか、それともこのまま生きたまま炎に焼かれて死にたいか”
(痛くて苦しいです。この痛みから逃れたいです)
”お前には2つの道がある。一つはこのまま生きたまま焼かれ痛みをその身に受けた末に死ぬか“
”もう一つはODA真理に帰依してODA真理教会とODA学園に尽くす使命を全うして生涯を終えるか、どちらにする“
(私はODA真理教会の教本を読み、深い感銘を受けました。ODA真理に帰依し生涯をかけて布教に尽します)
“わかった、お前を助けることにする”
「ド、ド、ド、ドッガッガーン」
大司教を中心に周囲30メートルの焼けていた建物が吹き飛んだ。一瞬で冷たい空気が吹き込んできた。大司教は自分の顔を覆った焼け爛れた手を退けた。目の前に神々しい人形の光が立っていた。ユージが霊体離脱してそこにいた。
(オオオオー、神よ、有難う御座います)
「バッ、バッ、バッ、バッ、バッ」
上空からヘリコプターが近づいてきた。ホバリングするヘリコプターからワイヤーロープで降下した者が、焼け焦げた大司教にベルトを装着した。大司教がヘリコプターに吊り上げられた。
「救助しました」(八島)
「了解」(ルーシー)
地上からテレビカメラが撮影していた。
「あれはフィリピンODA.LTDのヘリコプターだ」
ダニーが気づいた。
「お前達は報道を続けろ。私はODA様のところに行く」
ダニーがODA様のコンドミニアムに到着すると救急車から医師たちが降りてきた。全員ODA信者の医師だ。ダニーは声をかけようとしたが、緊迫した状況なのでやめた。最上階のフロアに着くと、ODA様の隣のコンドミニアムに入って行くのでついて行った。いつもは会議をする部屋に入ると、中央に担架に乗せられた焼け爛れた神父にいくつもの輸血チューブが取り囲んでいた。ODA様が両手を患者に向けて部屋全体が明るくなる程の光を照射していた。
(私もこうやって助けて頂いたのだ。なんと神々しいお姿なのだ)
ダニーは驚愕の光景を前に、忘れていたカメラの録画を始めた。
「ODA様、輸血用の血液は今運んだ分で全てで御座います。マニラ中の病院から融通してもらって明日また参ります」
「わかりました。ご苦労様です」
「聞こえますか?」
「呼吸を楽にするため、焼け爛れた鼻腔、喉、気管支、肺を治療します」
(暖かい!鼻腔と喉と上の方から激しい痛みが和らいでいく。気持ちがいい。今、私は自分の身に起こる神の奇跡を体験しているのだ)
(御身のお名前をお聞かせ願いませんか?)
「ODAです」
(ODA様、御身を傷つけたメシア教徒をお救い下さり、申し訳ない気持ちと感謝で胸が一杯です)
「今もメシア教徒ですか?」
(とんでもございません。ODA真理の信者の1人でございます)
「宜しい」
・・・・・・
鼻から空気とともに光の粒子が入り込んできている。痛みが和らいでいく、すると消毒液の匂いを感じられる様になってきた。焼け爛れた細胞、炭状に焦げた細胞を分解して、内側から新たな細胞を再生されていく。神の身業を身を持って体験する貴重な体験を得ているのだ。この様な体験は人類でも数えきれない稀有なものだ。
「手足の血管が熱で破壊されています。このままでは、手足が壊死してしまいます。これから血管を修復しますが、痛覚が蘇る際に激しい痛みを感じますが、細胞が再生している痛みですので、我慢し下さい」
「わ、わかりました。この程度の痛みなど、どうぞお気になさらないで下さい」
「ウウウウ、ンンンンン」
・・・・・・
「今日はこの辺で終わります」
「ルーカス、後は頼むぞ」
「かしこまりました」
「ODA様、有難うございます」
医師が鎮痛剤と睡眠薬を注射した。
夜、キングサイズにリリーと一緒にベッドに横たわっていた。
「ねえユージ、あの神父をどうして助けたの?」
「彼は多くの人間をより良き道に導く者の資格を十分に持ち合わせている。そしてODA真理教会の教本を熟読し、その教えに心酔しているのだ。フィリピンメシア教徒の責任者の立場上、自分がODA真理に心酔していることを公にできなかったんだ」
「ふ〜ん。でも私たちを殺そうとした教会の責任者なのよ。フィリピン国民が見ている前で助ける価値があるの?」
「彼には責任がないんだ。善良で高潔な人格者だ。得難い人物だ」
「貴方がそういうならいいわ」
リリーが俺に覆い被さってキスをしてきた。下から見るリリーは女神の様に神々しく美しかった。
「お加減はいかがですか」
ルーカスはODA様から元大司教の面倒を見る様に言われていた。
「呼吸をするのに痛みがなくなりました」
「それはよかったですね。牛乳とチーズです。身体の損傷が激しく、ODA様が再生して下さっていますが。骨と細胞を形造るための栄養素には輸血をするのが一番いいそうですが、必要な血液が足りません。ですからタンパク質とカルシウムを含む牛乳とチーズを沢山とって下さい」
ルーカスはそういうと牛乳の入った水差しを持って飲ませた。チーズを口に持っていき食べさせもした。
「ルーカス様、有難うございます」
毎日、ルーカスは濡れたタオルで毎日身体を拭いてやり、便と尿で重たくなった大人用オムツまで替えていた。
ルーカスが部屋を出ると、我慢していた涙が溢れてきた。
「ODA様、ルーカス様、有難うございます」
数日が経過した。身体の損傷は全て癒やされ、新しい身体に生まれ変わった。残すは頭部のみとなった。顔の皮膚は焼けて骨や歯が見えていた、髪の毛はなく、顔の皮膚は溶けて癒着していた。映画で見るゾンビより醜悪な化け物の顔になっていた。ルーカスが大きめの鏡を持ってきて見せてくれた。この世の者とは思えぬ化け物の顔だった。
「最後に頭部の治療を行う」
みんなが見守る中、ダニーが録画をしていく。
「なりたい顔はあるか?」
「どの様な顔でも構いません」
「わかった」
強烈な光で包まれた。癒着した皮膚、その下の細胞が正しい位置に動いて行く。毛穴も再生して行く。頭部の皮膚も再生され、毛が生えていった。しかしヒゲの毛根はわざと再生していない。午前と午後に治療が行われ、3日の午前に治療が終わった。それまで自分の顔を確認させてもらっていない。
「再生治療は完了した。お前はメシア教徒からもODA真理教会信徒からも、双方から命を狙われる可能性がある。お前はこれより名前を“テオ”とする。自分の顔を見るとよい」
ルーカスが大きめの鏡を持ってきた。全くの別人がいた。60代の自分が40代になっていた。これこそ奇跡だと思った。
「テオ、お前をルーカスの従者とする。ルーカスがお前の師匠となる」
「ルーカス様、よろしくお願いします」
ルーカスが嬉しそうに何度も頷いていた。
「ODA真理教会の信者になるには、1か月間の研修を受けて面接に受からなければならない。面接は免除するが研修を受けてもらう。ちなみに研修内容はルーカスが作ったものだ」
「研修の初めはODA学園とODA真理教会本部の便所掃除から行うのだ。リリー掃除を指導してくれるか?」
「いやーよ」
「一番きっちりやるのはベッキーとリリーなんだから、頼むよ」
「私がODA学園に1か月間行くんなら貴方も行くのよ!勝手にどっかに行っちゃダメよ」
「もちろんだよ。小学校も訪問しないといけないしな」
「だったら私も行く」
ナンシーが行った。
「お前はフィリピンODA.LTDの仕事があるだろう」
「ユージ兄様、私はいいよね」
「ルーシーはヘリコプターの運転ができるからいいぞ」
「私だけお留守番なの、ユージ兄様、後でご褒美ちょうだい」
「わかったから、頼むよ」
(ODA様って、家族の中では普通の人なんだな)
テオは思った。
聖者を銃撃した特殊部隊の犯人は逮捕され、犯行が明るみに出たフィリピンメシア教会は壊滅的なダメージを受けた。暴力、汚職、麻薬、腐敗した社会にあって唯一の信仰の対象であるメシア教会の非道が明るみに出て、何を拠り所にしたらいいのか、自暴自棄になる者達が増えた。
聖者が復活して夜の8時にマニラの小学校を訪問するニュースが報道された。聖者が訪問する小学校は大勢の人間で埋め尽くされた。スポットライトに照らされる中、教壇の上でいつものようにルーカスがODA学園とODA真理教会の活動について説明をした。俺はあまり話すのが好きではない。ルーカスがいてくれて本当に助かる。ルーカスの紹介で俺が教壇に上がる。
「聖者様〜」
「ODA様〜」
数えきれない群衆が叫んでいた。
「有難うみなさん。またこうしてみなさんにお会いできて嬉しく思います。私はフィリピンの将来は明るいと思っています。その明るい未来への後押しができることが嬉しいのです。道半ばで私が倒れることはありません。みなさんに祝福あれ」
俺は両手を天に向けた。俺は時間をかけてフィリピン全土から光の粒子を小学校1万メートル上空に集めていた。それを小学校上空に移動させ、可視化して照射した。大量に光の粒子が瀑布となって降り注いだ。病気の者、身体に悪い者はあっという間に完治していった。この光景は遠く離れた場所でも見ることができた。各テレビ局が実況報道をしていた。
圧倒的な奇跡だった。小学校の校庭に入りきれない群衆、警備の警察、陸軍の兵士にも光の粒子が降り注いだ。光の粒子は根源的なエネルギーだ。
大統領府でテレビを見ていた大統領とゴメス国務大臣は、窓のところに行ってODA様がいる小学校の方角を見た。天から光が降り注いでいた。
「師匠!」
ゴメスの目から涙が溢れ出ていた。
「ODA様に相談したいんだが、大統領府にお呼びしてくれないか?」
「呼び出すのは失礼ですよ、大統領。こちらから伺いましょう。今、電話しましょう」
「カチャ」
「アッ、ナンシーさんですか?、師匠は明日ご在宅でしょうか?」
「ゴメスさん、どうしたの?」
「大統領と伺いたいのですが」
「ちょっと待って下さい。リリー姉様に聞いてみます」
「いいそうよ、でも何にもおもてなしできるものないわよ」
「お会いできるだけで光栄です」
アミン大統領とゴメス国務大臣がユージのコンドミニアムに来訪した。ナンシーとルーシーがコーヒーとクッキーを運んだ。ユージがリリーとやってきた。
「ODA様、回復おめでとうございます」
「お身体の方はもうよろしいのですか?」
「あの時は私に油断がありました。もう大丈夫です」
「全く問題ありません。今日はどういったご用件でしょうか?」
「アメリカ政府がテロ組織はアメリカ陸軍の特殊部隊隊員ではないことは明白だが、アメリカのパスポートを所持しているのならばアメリカで裁判を公正に行う。早急に身柄を寄越せと言っております。従わなければフィリピンへの支援は打ち切ると通告されました」
アミン大統領が説明した。
「予想通りですね。全員引き渡して下さい。どうせ死ぬ運命です。自分達で始末してもらいましょう。援助を打ち切られるのも困りますから」
「有難う御座います。ODA様に断られたらどうしようかと思っていました」
「政府としてODA様にお手伝いできる事はありますか?」
「ODA学園と首都と空港を結ぶ道路の整備と商業施設の建設を計画しています。また、フィリピンにいずれ工場建設をしたいと思っております。その候補地が国有地なので適正な価格で払い下げをお願いします」
「ナンシー、地図を持ってきてくれ」
地図に描かれた場所はフィリピン全土にラインマーカーで色が塗られていた。
「相当広大な土地ですね、空港と首都はわかりますが、こんな辺鄙な場所を開発するんですか?」
ゴメスは地方の陸軍基地の視察を行なっているので地理に詳しかった。
「今はODA学園と産業の各企業の設立に膨大な費用がかかっていて、いくら他国で利益を上げても足りないのが現状です。今は無理でも、必ず開発します。土地を所有しなければ計画を立てれません」
「わかりました。検討します。価格は政府で決めていいですか?」
「交渉はフィリピンODA.LTDのヘンリー常務が担当ですので、彼と行なって下さい」
その後、フィリピン経済の成長と阻害要因について会談した。
「本日は有難うございました」
アミン大統領が御礼を言った。
「師匠お願いがあります。稽古をお願いします」
「いいですよ」
「ODA様、私にもお教え下さい」
アミン大統領も申し出た。
「分かりました」
「ナンシー、シャンパングラス2本とティッシュ持ってきてくれるか」
「ゴメス、指先に硬気功を集めてごらん」
ゴメスが右手の人差し指に気功を集めた。オーラで見ると3cmの気功が出ていた。
「大統領、人差し指を出して下さい」
俺は大統領の指をゴメスの人差し指の先に近づけた。
「感じますか」
「はい、磁石の反発の様な何かがあります」
俺はシャンパングラスにティッシュを細く丸めて立てた。
「ゴメス、切ってご覧」
ティッシュは折れないがペコッと曲がった。
「凄いぞ、八島達の高弟でもできない者がいるのに、才能があるぞ」
「本当ですか!」
今度はゴメスの右手首を軽く握ってゴメスの気功を操作してダイヤの様に硬く剃刀よりも薄くして、ティッシュをそおっと切った。グラスの中に立てかけたティッシュを切ったのだ。
「今のはゴメスの硬気功を緻密に制御したのだ。私の力は加えていない」
「凄いです師匠!」
「大統領は気功が使えないので、私が大統領の気を指先に集めます」
俺は大統領の全身から気を指先に集めて硬質化した。そしてティッシュを切った。
「私の身体から熱い力が指先に集まったのが分かりました」
「ゴメスは出来のいい弟子ですので、もう一つ稽古をつけます」
「ナンシー、果物ナイフとフォークを持ってきてくれ」
「ゴメス、この右胸に気功のバリアーを作ってみろ」
「はい師匠」
「大統領、指で触って下さい」
「何かあります」
「大統領、フォークで刺して下さい」
「い、痛いです。大統領。もっとそおっとやって下さい」
「では、ゴメスの気功を制御します。今度はゴメスの全身から気を集めます」
俺はゴメスの胸の中央に手を置いた。ゴメスの右胸に気が集まり硬質化する。ダイヤモンドよりも硬くした。
「大統領、そこの果物ナイフで思いっきりここを刺して下さい」
「そんなの無理です」
「ではナンシー頼む、思いっきりやるんだ」
「ゴメスさん、死んでも許してね」
ゴメスが額に冷や汗を流した。
「師匠、大丈夫ですよね」
「大丈夫だ。刺さっても治してやる」
「行くわよ」
「パキン」
ナイフが折れた。
「ウッ、痛い、痛い、切れちゃった」
「エッ、ごめん、今直すから」
ナンシーの右腕に折れたナイフの先が飛んだのだ。俺が右手でサッと触ると元通りになった。
「兄様、痛いんだから、もー」
「ごめん、許してくれ」
「考えとく」
「ゴメスは優秀だ、毎月フィリピンには小学校を訪問してるからいつでも来ていいぞ」
「有難う御座います」
「私も一緒に行っていいですか?」
「大歓迎ですよ、大統領」
アメリカのメシア教会本部
「フィリピンはもうダメですね。どうしますか」
「若い神父を派遣しよう。今ある資金で地道にやってもらうしかないだろう」
「そうですな、貧しい国ですし、寄付金もあまり集まりません」
「ODA真理教会はどうしましょう」
「フィリピン国内だけなら問題ないが、アメリカ、ヨーロッパに進出したら問題だ」
「フィリピン政府も用心しているから表だった事(攻撃)はできません」
「CIAに頼んで事故に見せかけて暗殺しますか?」
「メシア教会に刃向かったのだ。報いは受けてもらう」
その時、
「うぐぐぐ〜」
「アガッガッっ」
「ウッツ、ウウウウ」
「ガッッッッガ」
“ゆっくり死ね”
アメリカメシア教会本部の幹部全員が心筋梗塞で死んだ。ODA真理教会への襲撃に関わったのは幹部だけではない。メシア教会の暗部は根深い。イスラム教などの他宗教徒の紛争に備えて実行部隊に相当する者達がいた。当然ODA真理教会を危険視する者から実行部隊の派遣が検討された。しかし危険視し、実力行使を目論んだ者達はことごとく自殺か心筋梗塞で全員が死んだ。
アメリカ国防省の幹部室
「ODA学園にミサイルをぶち込むか、原潜から発射して壊滅させてやる。中国の領海域の海中から発射して中国の仕業に見せかけければいいだろう」
「分かりました」
その時、
「ウッツ、ウウウウ」
「ガッッッッガ」
“ゆっくり死ね”
アメリカ国防省の幹部とその部下が心筋梗塞で死んだ。アメリカ国防省の幹部のオーラチェックからアメリカには「闇の政府」らしきごく少数の集まりがある事がわかった。中心人物はアメリカ産軍複合体の大御所だ。表面上は引退しているが強い影響力を保持していた。そして必要な時に金融業界の重鎮らが集まって計画を練るのである。彼らはCIAのスパイを使ってイラクのクウェート侵攻を計画していた。もし成功すれば、数百兆円の利益を得る事ができるのだ。
俺は前世の記憶でイラクのクウェート侵攻を知っていた。サダムフセインは何故無謀な戦争をしたのだ。アメリカの介入を本当に予測していなかったのか。日本はかつて世界連盟を脱退して第二次世界大戦でアメリカを敵に回した。その無謀な戦争のきっかけは「ハルノート」をアメリカから突きつけられたからだ。戦争をしなければならない切迫した事情が中東情勢に存在するのか思いを巡らせていた。




