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入社した高山さんとマリーが結婚

 ベルのマンションに来ていた。ベッドの上でベルを抱いた余韻に浸っていた。

「高山さんが会社をクビになるそうだな」

「はい、自宅も出てマンションを借りて住んでいます。仕事もなくて途方に暮れているみたいです」

「ベルはどう思う?」

「私のせいで会社をクビになったので、申し訳なく思っています。高山さんは50歳くらいで私の親の様な年齢です。優しくて好きですが、お父さんの様な感じに思っています。能力は高い人だと思うので頑張って欲しいと思っています」

 俺は少し安心した。高山さんのことをお父さんの様に思っていることに。俺はベルのことが好きなんだと気がついた。

「俺は高山さんのことを高く評価している。高山さんが日本での仕事ができない様なら、俺が海外に連れて行こうと思う。海外の不動産投資をしたいからな、高山さんなら上手く手伝っくれるだろう」

「海外での不動産投資の責任者になってもらうつもりだ。当然社長だ。間違いなくベルを欲しがるだろう」

「高山さんは社長になるけど、ベルはどう思う?」

「バン、バン、バン、さっきお父さんだって言ったじゃないですか」

 ベルが俺の胸を叩いた。

「私は社長とリリー姉さんのために頑張って、同伴もしてきたんです」

「私が好きなのは社長なんです。酷いです!本当に酷い!」

 ベルが俺の胸を叩きながら泣いていた。

「ごめん、俺が悪かった」

(ああー、俺はダメな奴だな。ベルが不憫で、可哀想で、可愛く思えた)

(本当にダメな奴だ。この状況でまた抱きたくなってきた)

 俺の心の中で、ベルが部下ではなく俺の女になった。俺はベルの給料を200万円に引き上げて、専属の運転手を付けた。せめて金銭面では苦労をさせない。


 ベルから高山さんの電話番号を聞いて、俺が宿泊しているニューオータニのバーに呼び出した。

「織田様、お久しぶりです」

 高山さんは俺より早く着いて待っていた。

「お久しぶりです。高山さん、大変でしたね」

「はい、お恥ずかしい限りです。自業自得です」

「今はどうされているんですか?」

「就職活動をしているんですが、なかなか雇って頂けるところがないんです」

「この間、山根さんにお会いしました。高山さんのことを高く評価されていて、残念がっていました」

「山根さんによると、不動産業界や建設業界は難しいんじゃないかとおっしゃられていました」

「やはりそうですか。私の人生も終わりの様なものですね」

「高山さん、もしよろしかったら、私のところに来ませんか?」

「会社をシンガポールに移して不動産投資を始めたところなんです」

「でも私はもう50歳ですし、海外経験もないですし、できるでしょうか?」

「ベルは中学卒業で、日本語もわからず連れてこられて、まだ20代でも立派に店の経営をしていますよ」

「そうですね、こんな弱気ではベルに笑われますね」

「わかりました、こんな親父ですがお役に立たせて頂きます。宜しくお願いします。社長!」

「はい、よろしくお願いします」


 高山さんとベルが話し合ったそうだ。ベルが正直に高山さんのことを「優しいお父さん」の様に思っている事を話したそうだ。高山さんも気付いていたそうだ、ベルがあまりに優しくて、いい女なんで溺れてしまったそうだ。

 ベッキーに言って日本語が堪能な女の子を高山さんの秘書兼通訳に付けさせた。2人に早速シンガポールに来てもらった。高山さんがシンガポールに来て、会社として機能していないことにビックリしていた。会社の体裁をまず整える事を優先させるそうだ。

「すみませんね高山さん、苦労をおかけしますが頑張って下さい。好きな様にやっていいですから。でもレポートにして報告して下さい。人も好きに雇って下さい。費用はいくらかかってもいいですよ」

(ああ〜、良かった。これで楽ができる。投資は好きだが経営は面倒くさいからな)


 ジョージパパはバイクのある納屋で寝起きをしていた。夜に盗まれるかもしれないし、バイクを見ながら飲む酒が好きだった。ジョージパパとマリーママは家庭内別居の状態だった。息子のウィルがアメリカに留学することになってマリーが同行した。ジョージパパは家で1人になった。農業の休みの日にはマニラにあるバイクショップに行って、バイク仲間が集まって話をするのが何よりも楽しみだった。仲間でツーリングをする様になった。ツーリング仲間が若い可愛い子を連れてきていた。バイク好きの女の子も多く、バイクでツーリングすると言うと簡単に集まるそうだ。ジョージパパは親父だが、当時の世界最速のバイクを持っていた。そのバイクに憧れる女の子がたくさんいた。中古のバイクに乗っている仲間の中でダントツに目立つバイクだった。

 フィリピンは日本よりも暑いが、バイクに乗ると直接風が当たって涼しくて気持ちがいい。女の子達はジョージパパを見ると厳つい親父だが、最新式の最速のバイクを見るとジョージパパをカッコよく見えている様子だった。バイク仲間を見ると、後ろに乗っている女の子の髪が風にたなびいていて、ジョージは青春を取り戻した気持ちになった。ツーリングの後はみんなでホテルに入る。バイクに乗せたお礼に、身体に乗せてくれるのだ。バイクと女、なんと素晴らしい。

 ジョージパパは若い愛人の様な関係の女の子が数人できた。自分の娘達の年頃の女の子だった。

 ウィルが高校に入学してマリーママがフィリピンに帰ってきた。ウィルが母親との同居を嫌がったのだ。ジョージマリーがフィリピンにもどると、パパの浮気がバレた。2人ともリリーの会社の社員で、お金に困っていないのですぐに離婚してしまった。

「冗談じゃないわよ。私はウィルの世話をしてアメリカまで行っているのに、自分は若い子と遊びまくって愛人まで作っていたのよ!」

「そうよね」

「ママみたいに美人の奥さんがいるのに酷いわ」

 リリーとナンシーも怒っていた。

(ユージも愛人をたくさん作ってるのよね)

 リリーがため息を吐いた。


 俺はマリーママをシンガポールに呼んだ。シンガポールのホテルのスィートルームをとっておいた。

「よく来たねマリー」

「はい、いつ呼んで頂けるか待っていました」

「ウィルは元気か?」

「高校に入ってから彼女ができて、ママ早くフィリピンに帰ってと言われて追い出されました」

「高校はどんな調子なのかな?」

「母親に学校の様子なんか教えてくれませんよ。でもユージ様がおっしゃっていたハーバード大学に入るんだって勉強していますよ」

「俺もリリーからしか聞かないけど、インペリアルバンク社に就職してもらいたいと思っているんだ」

「リリーから話せばいいと思います。あの子はリリーには素直ですから」

「ところでどうして私をお呼びになったんですか?性欲処理ですか?なんでもおっしゃって下さい」

「まあ、それも魅力的なことだと思うけれど、ちょっと違うんだ。マリーはジョージと離婚したんだってな、ジョージは若い女の子達と楽しくやっているそうだけど、マリーにも幸せになって欲しいと思っているんだ」

「東京から優秀な男を連れてきている。高山といって年は50歳だ。この男も離婚したばかりの独身で、フィリピンの女がとても好きな男なんだ。その男とお見合いをしないか?」

「ユージ様の性奴隷でいいんですけど」

「俺はリリーとナンシーとルーシーと付き合っているんだぞ、その母親のマリーと付き合えるはずないじゃないか」

「高山さんは不動産開発のプロ中のプロだ、俺の手の内に入れておきたい。それにマリーの事を必ず好きになるはずだ。優しい男だからマリーのことも大切にしてくれると思っている」

「それは命令ですか?」

「命令じゃないが、俺からのお願いだ」

「わかりました。お見合いします」

「それでな、マリーに俺の施術を行って磨きをかけることにする。今でも魅力的だが、せっかくだからさらに磨きをかける。俺の施術は独特だから文句を言わずに従って欲しい」

「わかりました。どうぞお好きになさって下さい」

「じゃあシャワーを浴びて化粧も落としてきてくれ」


 マリーが全裸でベッドに横になった。俺はマリーのお腹に手を置いた。太り気味だがウェストはクビれていた。元々のスタイルがいいのだ。たるんでボッテリついた脂肪を分解していく。

「ユージ様の手が熱いです。でも気持ちがいいです」

 腹の脂肪を分解すると皮膚の皮がたるんでいるので切除して修復していく。切除の瞬間に修復を行うので出血はほとんどない。切除した皮膚を用意したタオルの上に置いた。

 1時間ほどすると疲れるので俺は睡眠をとることにしている。

 施術を午後の4時間ほどするが、体力的に限界だ。

 夕方、会社に戻る頃にはもうヘトヘトだ。高山さんから今日の報告を聞いて、麗子とルーシーとステーキを食べてから自分のペントハウスの部屋に戻ってすぐに寝てしまった。

 5日間かけてマリーの爪先から手の先、尻のたるみ、秘所の周りも念入りに行った。脂肪を落として肌の張りも戻した。お腹周りは腹筋が見えている。フィットネスコンテストに出れるレベルの芸術的なプロポーションになった。

 6日目、1日かけて首から上を施術する。首、目の下、頬のたるみを脂肪を分解して余った皮膚を切除する。ほほの骨格を少しスマートにする。少し垂れた目元を少し上げる。顔の皮膚を左右、上に引っ張ってたるみをなくす。額が少し後退しているのを戻す。俺の理想の美女に段々と近づけていった。顔を念入りにに骨格まで修正を行った。もうこれ以上はできないほどの美女が完成した。

「まずいかもしれない。いや絶対にまずい」

 俺はそう思ったが、もう修正はできない。


 フィリピンにいるリリーにルーシーから電話がかかった。

「ユージ兄様がおかしいんだ。マリーママを呼び寄せたはずなのに、毎日クタクタになって帰ってくるんだ。麗子姉さんやアタシを抱かずにすぐ寝ちゃうんだ。絶対に女ができたに違いないのよ」

「ええー、嘘でしょうー、ナンシー、シンガポールにすぐ行くわよ」

 俺とマリーは、スィートルームにあるソファーの上でまったりしていた。

「ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン」

 荒々しくチャイムが鳴った。リリーとナンシーとルーシーが鬼の形相で部屋に入ってきた。ソファーに座っている女を見つけた。

「ユージ、これはどういう事なの、ハッキリと説明してちょうだい。ママを放り出して女を連れ込んでいたなんて!」

 リリーが鬼の形相で目に涙を一杯に浮かべていた。

 マリーが立ち上がって俺の横に座って寄り添った。

「くっつくんじゃないわよ!」

 ナンシーが言った。

「どけ、この女!」

 ルーシーが怒鳴った。

「ユージ、どこの女なの?」

 リリーが泣きながら怒った。

「いや〜ね〜、みっともない、マリーお姉さんよ〜」

 マリーが俺に身体をくっつけて寄り添った。

「リリー姉さんにそっくりだけど、リリー姉さんに姉がいたの?」

「いる訳ないじゃない!」

 リリーが言った。

「でも、リリー姉さんに似てるよ、リリー姉さんの3〜4歳上の姉がいたのかも、それとも従姉妹かも」

「いや〜ね〜、言ってるじゃない、マリー姉さんだって」

「何ママの名前を言ってるのよ、盗人猛々しい!」

 ナンシーが怒鳴った。

「いいから離れろ!」

 ルーシーも怒鳴った。

「ユージ酷いじゃない、アタシに似た女を連れ込んで。それにママはどこに行ったのよ!」

「この人がマリーママです」

 俺が指差した。

「ママは太ってるし、44歳よ。こんな若くて痩せてないわよ」

 リリーが言った。

「麗子姉さんやアタシが近くにいるのに、女なんか作って、もうヤダー」

 ルーシーが怒って言った。

「酷いわ、太ってるなんて、こんなにスタイルがいいのよ」

(マリー、頼むから挑発しないでくれ)

「だから、マリーママなんだよ、俺がタトゥーを消したり、治癒できることは知ってるよな。だから、マリーの脂肪を分解して、たるんだ皮膚を切除して、顔も整形したんだ。俺の理想の女をイメージしてやってたら、リリーにそっくりになったんだ」

「本当にマリーママなの?」

 リリーが言った。

「そうよ、マリー姉さんと呼んでね」

「嫌に決まってるじゃない、今更呼べないわよ」

「高山さんを東京から呼び寄せたのは知ってるよな。最近離婚して独身なんだ。マリーもジョージと離婚しただろう。ジョージは若い子と楽しんでいるようだし、マリーにも幸せになって欲しくてな、高山さんは優秀だし、大のフィリピン女好きだ。2人が結婚すればいいなと思ってマリーを呼び寄せたんだ。マリーは元々美人だし、磨けばもっと光ると思って俺なりの整形をしたら、リリーそっくりになってしまった。もう戻せないんだ」

「本当の親子だし、似ててもいいじゃないか」


「ママは高山さんと結婚したいの?」

 リリーが聞いた。

「結婚はしたいわよ、でも高山さんに会ったことないし、あってから判断するわ」

「ねえねえ、ユージ兄様、アタシも整形できる?」

 ルーシーが聞いた。

「お前は若いし、するところないぞ」

「ねえママ、よく見せてよ、服も脱いでよ」

 ナンシーが興味深く言った。

「俺は隣の部屋に行ってるよ」

「これ見てくれる?お腹の脂肪がなくなって、腹筋が割れているのよ」

 マリーが自慢した。

「ママすごいよ、お尻も見せて」

「ほら、よく見てね」

「垂れてないじゃない、ピチピチだよ」

「なんだか自分の身体を見せられている様で恥ずかしくなるわ、ユージがアタシの身体を想像してやったのよね」

「リリー姉さんのお腹も見せてよ、腹筋割れてるの?」

「割れてないわよ、アタシよりスタイルがいいんじゃないかしら」

「でもさ、あたし達が歳を取ったらこういう風に整形してもらえるよね、みんなリリー姉さんにそっくりになったりして」

「もーやだ〜、ルーシーたら」


 ホテルのレストランで高山さんとマリーママがお見合いをすることになった。

「社長、マリーさんはどこにいるのでしょうか?」

 社長の奥様のリリーさんがいらっしゃるが、その隣にも絶世の美女が座っている。リリーさんより3〜4歳年上だと思う。リリーさんに似ている美人だ。映画に出てくる女優よりも美人で色気があった。

「ほら、リリーの隣に座っているのがマリーですよ」

「社長、ちょっと、ちょっと、待ってください」

 高山さんが俺の上着の袖を引っ張った。

「無理ですよ、あんなに若くて絶世の美人ですよ、私みたいなしょぼくれたジジイなんて、絶対に無理です。マリーさんに失礼ですよ。申し訳ないですよ」

「まあ、まあ、落ち着いて下さい。マリーは男運がなくて苦労していますから、外見で男を判断しませんよ。マリーが求めているのは男の優しさなんです。高山さんがマリーに愛を尽くせば、必ず答える女の人ですよ」

「マリーは若い頃から大変苦労していますから、学歴がありません。政治や経済のことも知らないと思います。でも性格はいいと思いますよ。リリーの母親ですから」

「日本語も全くわかりませんから、高山さんが英語を学ぶしかありませんね」

「わかりました。こんな美人に出会える幸運が、人生の最後の方に残っていたことに感謝したいですね」

「高山さん、私もリリーもサポートしますから、頑張って下さい」


「高山と申します。あなたの様なお美しい方と出会える幸運に感謝しています。私の様なジジイで申し訳ありません。せめて、このお食事の時間だけでもお付き合い下さい」

 高山さんが慣れない英語で話した。さすが将来の三友不動産の社長候補と言われただけの秀才だ。おそらくギフテッドだろう。

「いいえ、高山さんはただのジジイではありませんよ。大変魅力的なジジイですよ」

「ママ、やめてよ、高山さんのこと、ジジイだなんて」

「奥様、ジジイで結構ですよ、本当にジジイなんですから」

 奥様と呼ばれて、リリーの頬が赤く染まった。

「私、仕事のことが全然わからないのです。よろしかったら、雑用で結構ですので高山さんのお仕事のお手伝いをさせて頂けませんか?」

「いいですけど、つまらないですよ。いいんですか?」

「リリー達がユージ様のお手伝いをしていると聞きました。リリーはユージ様の仕事のサポートもしています」

「何もできないですが、お手伝いさせて下さい」

 俺たちのそばのテーブルで、麗子、ナンシー、ルーシーが座って聞き耳をたてていた。

 その後、バーに行って4人で飲んだ。

 

 高山さんとマリーの付き合いが始まった。マリーは仕事ができないが、お茶だしとか、コピー取り、シュレダーとか雑用を行っていた。高山さんが嬉しそうだった。一緒にランチに行ったり、仕事の帰りに食事に行っていた。 付き合い始めて3ヶ月経っても手も握れず、キスもしていなかった。マリーがルーシーに相談をした。

「高山さん、まだキスもしてないんですか」

 俺が高山さんに言った。

「なんだか怖くて、嫌われたらどうしようかと思って、勇気がでませんでした」

「高山さん、ダメですよ、マリーが高山さんに嫌われたかもしれないと、ルーシーに相談していましたよ」


 高山はマリーとバーで飲んだ後、自分のアパートメントに誘った。アパートメントに着いた。高山は緊張していた。もの凄い美人だ。一緒に飲んでも、道を歩いても男達が振り返った。その横を歩くのは、どこにでもいる日本人のジジイだ。釣り合うはずがない。高山は自信がなかった。

 アパートメントの中に入った。

「マリーさん、好きです、愛しています」

 高山は女性経験のない高校生の様に緊張して、マリーに口付けをした。高山は強く抱きしめた。マリーの両手が高山を抱きしめた。高山はこのまま死んでもいいと思える気持ちになった。

 そのまま、マリーを寝室に連れ込んだ。

「マリー、君はなんて美しいんだ。私はマリーのことが好きで好きでたまらない。マリーに嫌われたらどうしようと思っていた臆病者だ。でも、たとえ嫌われてもいい、マリーを抱きたいんだ」

 高山はマリーの全てが愛おしかった。

・・・・・・・

 翌日 2人でモーニングのコーヒーを飲んでいた。

「すみませでした。ムードのない状況でプロポーズをしてしまいました」

「幻滅ですよね」

「いいわよ、その代わりしっかり私を幸せにしてちょうだい!」

「いいのかい、こんな私で、必ず幸せにして見せる。私が死ぬまでの残りの人生をマリーに捧げるよ」


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