フィリピンODA.LTD設立
売買契約のため不動産屋にくると、移転登記を代行すり司法書士もおり、残金を米ドルで約8万ドルを支払い、買付が完了した。
不動産屋にはコンドミニアムの管理契約、内装のデザインリフォーム、調度品の調達を依頼した。
司法書士にコンドミニアムの所有権移転登記、合わせて株式会社の設立登記を依頼した。
フィリピンでは外国人が法人を持つことに制限がある。出資比率の60%以上をフィリピン国籍のある者で、かつ法人の代表者はフィリピン国籍のある者に限られた。設立するフィリピンODA.LTDの出資比率をリリー60%、有限会社ユージ40%で、会社所在地はコンドミニアム、代表取締役をリリーにした。資本金は5万ドルにした司法書士に。日本の有限会社ユージの登記簿の写し、リリーのパスポートの写しを渡した。登記は2〜3日で終わるそうだ。
俺は、昨日潰したマフィアの城、子分の農場主の館の土地と建物を購入したかった。その不動産の情報があれば、東京の会社にFAXするよう依頼した。不動産の仲介手数料とは別に、謝礼とて物件価格の5%を支払う約束をした。担当課長は「必ず私が取りますから」と意気込んでいた。不動産会社の名前はDCMI社で最大手の総合デベロッパーで、担当者はロジャー課長だ。
12月19日の航空便をとっているので、コンドミニアムの登記簿とフィリピンODA.LTDの法人登記簿を受取ることができない。もう一度来るしかなかった。ロジャー課長に登記簿を預かってもらうことにした。フィリピンに不動産投資をしたいので、ビルとアパートメントの物件資料を集めて欲しいとお願いした。お見上げにロレックスを買いたいので、正規店を2店舗紹介された。1店舗はDCMI社のグループ会社の店舗だった。
金の延べ棒を5kg✖️13本=65kgを換金しにフィリピン最大手の店にやってきた。約78万ドルなった。現金の用意がないので小切手でもらった。今、ドルの現金42万ドル持っている。
BOD銀行にきた。リリーの口座に1200万ドルの入金処理が終わっていた。コンドミニアムの所有権移転登記は終わっていないが、売買契約書の写しで住所の確認書類ができるので、織田雄治の個人口座と東京の有限会社ユージの口座設定を行った。金を売却した代金の78万ドルの小切手を織田雄治口座に入金した。
1982年平均値より算出
375.85ドル(トロイオンス) 1トロイオンス=31.103g TTB 248.15円
金65kg= 375.85➗31.103✖️1000✖️215= 785,462ドル(1億9637万円)
リリーとロレックス正規店に来ていた。東京へのお見上げを買いに来たのだ。東京では正規店で買っていない、ブランドショップで買っていた。
俺の欲しい物は決まっていた。リリー、お袋、瑠美子、麗子にレディースデイデイトの金無垢、リングにダイヤがぎっしり詰まって、時刻を示すところにもダイヤが配置させているものだ。ベッキーには金無垢、リーダー3人にはコンビ、チーママ4人にはステンレス、ナンシーとルーシーにもステンレスのデイデイトだ。
俺はサブマリーナの金無垢の黒文字盤、コンビの青サブ、GMTの金無垢の黒文字盤。俺の親父はGMTの金無垢の白文字盤だ。正規店2店舗をまわって全部を揃えた。12万ドル(日本円で約3000万円)した。
※ 3000万円➗250(ドル/円)=12万ドル
ホテルで飛行機の機内に持ち込める小さいスーツケースを1人2ケースで合計8ケース買った。ロレックスのような高級品を預け荷物のスーツケースに入れたら、検査で開錠された時盗まれると思った方がいい。機内に手荷物で持ち込む必要がある。機内には1人2個(1個あたり7kg)まで持ち込めるのだ。
東京は真冬なので、ナンシーとルーシーに毛皮のコートを含めた冬物を買ってあげることにした。ミンクが高級だと思っていたが、セーブル、チンチラ、リンクスが世界三大毛皮だそうだ。俺的にはサファイアミンクが好きなので、価格を見たらミンクが三大毛皮の1/10くらいに安いのでびっくりした。ナンシーとルーシーがサファイアミンクで1着30万円を買ってあげた。
「あたし、毛皮のコートなんて初めて」
ルーシーが言った
「毛皮って色々あるのね」
ナンシーが高そうなのを選んでいた。
「お前達はこれにしとけ」
「うん、わたしそれがいい」
ルーシーは毛皮の種類ではなく、色で気に入ったみたいだ。
「じゃあ、あたしもそれでいい」
ナンシーは買ってもらうチャンスを逃したくないので、高いのが欲しかったようだ。
「あたし、これが欲しいな」
リリーが言った。
「ああ、いいんじゃないか」
「よく似合うぞ」
リリーが選んだのはロシアンセーブル(黒)で300万円だ。
「えっ」
ナンシーが羨ましく見ていた。
ナンシーとルーシーに冬物の洋服も買ったので合計400万円(1万6000ドル)した。
余ったドルを急いでBOD銀行の織田雄治口座に入金した。
マニラ空港のJAL サクララウンジ
「お前達、店に毛皮を着ていくなよ。リリーの妹だからって金持ちぶったり、偉そうにするなよ。
「店で働いている者は、みんなフィリピンから出てきて、親に仕送りもしている。貧乏から抜け出すために一生懸命だ」
「リリーの店は実力主義だ。さすがリリー姉様の妹達だと言われる様に頑張るんだぞ!」
「お前達はまだ稼ぎがないから下積みからやれ。一番下は便所掃除からやるんだ。店に行ったら、上の命令は絶対服従だ。特にリリーとその片腕のベッキー、チーママ、なんて言ったけ?」
「ベラです」
「もうやだ、ユージがベッキーの子分だから名前をベラにしたんでしょ」
「あっ、そのベラには絶対服従だ。
「店には汚れてもいい服でいけよ、リリーに選んでもらえ」
「いくらリリーの妹でも、実力があっても下積みもしなかったら、出世させないからな!」
「うん、わかった」
「ナンシー姐、ごめんね」
「なんでよ」
「あたし、一番になっちゃうから」
ルーシーが本心でそう言った。
「なに生言ってんじゃないよ!」
ナンシーが怒って反論した。
ナンシーとルーシーがリリーと一緒に渋谷のフィリピンパブに着いた。
「リリー姐様、お帰りなさいませ」
練習していたかの様に、全員が一斉にお辞儀をした。
「お持ちします」
ベッキーがリリーに近寄り、リリーの荷物を持った。
「この2人は今日からここで働くナンシーとルーシーだ。私の妹達だけど普通の新人として扱ってちょうだい。本人達もそれを望んでいるからね」
「挨拶しろ」
リリーが整列した女の子達を前にナンシーとルーシーに命令した。
「ナンシーです。よろしくお願いします」
「ルーシーです。一番下の妹です」
「パチパチパチパチ」
ベッキーが拍手すると全員が拍手した。
リリーが事務所に入って行った。
「ベッキー」
「はい」
リリーの後に続いてベッキーが事務所の部屋に入って行った。
「店の方はどう?」
「はい、クリスマスイブの日に来て頂いたお客様に渡すプレゼントのお菓子をランクを3つに分けて準備しました。女の子達も当日来ていただける様、アプローチしております」
「店で出すシャンパンを当日半額で提供してくれる」
リリーが言った。
「はい、わかりました」
「イブの日は特に同伴を推奨してね。その日のアフターは店として大目に見てあげる」
「それと、妹達は同伴もアフターも禁止だよ。初めは下働きからやらせておくれ。便所掃除からよ」
「いいんですか?」
「ユージの命令だよ」
「そうしなきゃ、あの子達が上に立った時に下がついて来ないだろうって、ユージが言ってた」
「わかりました、ベラにもそう言っておきます」
「それとこれ、私からのクリスマスプレゼント」
ベッキーがロレックスの箱を開けた。デイデイトの金無垢の時計だった。
「すごく嬉しいです。リリー姐様、ありがとうございます」
ベッキーが店のことで気を配っているから、彼氏を作る暇がないのを、リリーは申し訳ないと思っていた。
「リーダーの2人を呼んでちょうだい」
リリーからリーダーにデイデイトのコンビが渡された。
「リリー姐様、ありがとうございます」
チーママが集められ、デイデイトのステンレスが渡された。
「じゃあ、よろしくね、これから赤坂のベルのところに行くから」
「行ってらっしゃいませ」
店の幹部達がお辞儀をした。
「リリー姐って、すごく偉かったんだね」
「びっくりしちゃった」
「みんな、緊張してたよね」
ナンシーとルーシーが言った。
「おい、お前達」
「はい」
「今日からお前達の面倒を見るベラだ」
「はい、ベラ姐さん」
「よし、ついて来い」
ナンシーとルーシーが裏に連れて行かれた。
「これがお前達の制服だ」
ゴム手袋にゴム長靴、バケツの中に雑巾と液体洗剤が入っていた。
「はい」
「つけたら便所掃除だ。女性用だけじゃなく男性用もしっかり綺麗にしろよ」
「手洗いも曇りない様に綺麗にするんだ。鏡もだぞ」
「さあ、やるんだ、後ろであたしが見てるからね」
(ベッキー姐さんにあたしもやられたんだよね)
ベラは新人の時のことを思い出した。
ナンシーとルーシーは店の掃除が終わると、店内の女の子達のヘルプに入った。お客様の視線が集まる。
「こんないい女が、なんでこの店にいるんだ」
男達は思った。
ベッキーの指示で、ただ笑顔をしているだけでいいから、グラスにウィスキーを注でね、と指示された。
ナンシーとルーシーに指名が入り始めた。
ベッキーはこれはいい駒ができた。便所掃除を覚えたら早い時期から店に出そうと思った。
その日から、ベッキーとベッキーに育てられた鬼軍曹のベラ、2人の地獄の特訓が始まった。寝起きもみんなと同じ寮だ。朝も寮の掃除があるから、ほとんど睡眠が取れない過酷労働だ。
ナンシーとルーシーは2週間で便所掃除を卒業した。便所掃除の仕事はボーイに戻した。本格的にナンシーとルーシーの本領が発揮されていった。
俺は赤坂のベルの店に来ていた。寮にいるベルに電話をして早めに店に来てもらった。店のソファーの座った。ベルが会社の経理の女の子が作成している経営資料を持って俺の前に座った。
「店の方はどうだ」
「はい、ボスのおかげで三友(不動産)の人達で連日満席です」
「高山(三友不動産渋谷支店長)さんが、ここのお店を使うなら好きに行っていいと許可を出しているそうです」
業種にもよるが、サラリーマンの役職者は上司から毎月交際費の枠をもらって部下を飲みに連れて行っていった。いわゆる「飲みにケーション」だ。成績優秀者には一般社員では行けない鮨屋などの高い店やバーに連れて行っていた。高山も上司の山根常務から交際費の枠を決められていた。
「飛鳥(証券渋谷支店)の人達は三友のお客様が帰られる11時頃に来られるので、閉店時間まで混んでいます」
ベルだ嬉しそうに報告した。
「ベル、凄いじゃないか、俺の予想以上だ」
「よくやった」
「はい、ありがとうございます」
ベルの腕を見ると、リリーがプレゼントした時計ではなくて。カルティエのサントスをしていた。
「その時計は?」
「はい、三友の高山支店長から頂きました」
「毎日、部下の方々を連れてきて下さいました」
「食事に誘われまして、店のためを思って同伴しました」
高山支店長は45歳、中学生のお子さんがいる。飯田部長は41歳だ。
「アフターもしたのか?」
「はい、しています」
なんだか自分の女を取られた気がした。俺も自分勝手だと思う。だけど、男ってそんなもんだ。
「ベルの気持ちはどうなんだ」
「やさしい人で、いい人だと思います」
「寮に住んでいると言うと、マンションを借りて用意すると言ってくれています」
「そうか」
ちょっとムカついた。
「用意するマンションはホテルに使われるぞ」
「高山さんは住宅ローンに受験期の息子さんがおられる。毎日飲みに来れるのは会社の経費だからで、ご自分に余裕があるわけでじゃない」
「ベルはいい女だから高山さんがのめり込むのは分かるが、ズルズル行って家庭崩壊や会社での評価を落としてほしくないんだ、難しいかもしれないが上手くやってくれ」
「はい」
おそらく高山支店長の年収は2000万円強じゃないかと思う。住宅ローンや教育費が嵩んでいると俺は思っている。
「ボス、あたし頑張ったんです」
「初めはエマと私の2人しかいなくて、店は混んでくるし」
「私は店の仕事でくたくたなのに、高山さんから言われれば、断れないじゃないですか」
「同伴もアフターもたくさんして、頑張ったんです 」
「ボスのご褒美下さい!」
ベルが俺に抱きついてキスをしてきた。
俺はベルをソファーの上に押し倒した。
「ボス、好きです、好きです」
「ボス、わたしを捨てないで下さい」
・・・・・・・
ウィスキーを飲んでいた。俺の横にベルが寄りかかっている。
俺はカバンから赤坂の3LDKのマンションの資料と鍵の入った封筒を出した。
「開けてみろ」
「俺がお前のために用意したマンションだ」
「ボス、あたし・・・・」
俺は男としてベルの気持ちに答えた。
ニューオータニのラウンジで八島とランチをとっていた。
「八島の夢ってなんだ?」
「夢ですか?」
「うーん、いい女と一緒になる事っす」
「ああ、それもいいけど、空手家としての夢だよ」
「自分の流派を起こす、事です」
「そうだろうな、世界チャンピオンだもんな」
「でも日本じゃ難しいだろうな」
「お前、フィリピンに行かないか?」
「道場と住むところは俺が用意するけど、どうだ?」
俺は八島に提案した。
「でも自分、英語が喋れないっす」
「店の女の子、1人だったらつけていいぞ」
八島が言いにくそうだったが、思い切って言った。
「あの〜、できましたら、ルル姐さんをお願いしたいんですけど」
「ルル姐さんが来て頂けるなる、自分、フィリピンに行きます!」
「ルルかあ〜、ベッキーが怒るだろうな、店の稼ぎ頭だからな」
「お前、ルルのこと気に入ってるのか?」
「店でベッキー姐さんにシゴかれていた時、優しく面倒みてくれたんです」
「それに美人だし」
「言っとくけど、ルルって俺の女だけど、それでもいいのか?」
「いいです、逆にボスはいいんですか?」
「ルルが望むなら、叶えてやるさ」
「実は、またフィリピンに行くんだが、一棟建てのビルとアパートメントをいくつか買うつもりだ」
「それで女の子の店か、飲食店を出そうと思っている」
「店の上で道場を開いてやるよ。八島流空手道だ」
「給与と住むアパートメントは心配するな、俺が用意するから」
「何人かお前の子分を連れて行かないとな」
俺は言った。
「10人位はいるんですが、道場を任されている者は無理ですから、その下となると3、4人ですかね」
世界チャンピオンの八島は空手の世界では後輩から憧れの存在だ。
「そいつらも、面倒見てやるよ」
「日本の給料があれば、フィリピンの物価は安いから、住み込みのメイドの2〜3人は雇えるぞ、夜のお供もしてくれるそうだ」
「ゴーゴーバーもあるから、女には不自由しないぞ」
「でもルルを落とそうと思ったら、遊びはほどほどにした方がいいぞ」
俺は言った。
「話は違うんだが、東京で運転手の男を3人雇いたい、お前の後任と女の子達の送迎にな」
「お前の後任は社員で、あとはバイトだ」
「それと別に、リリーの運転手兼ボディガードに女の子が1人欲しい、こいつは社員だ」
「すぐにでも欲しいが、頼めるか?」
「わかりました、高いバイト料なんで来ると思います」
「それとな、道場に来ている外人って、何人いる」
「支部を入れると20〜30人はいますね」
「どんな職業だ?」l
「男は、外資系のビジネスマン、英会話の先生、留学生、大使館の職員もいますね」
「女は留学生と外資系の社員ですね」
「ベルのところで働いてくれる子いないかな?」
「ボス、俺、無理です。自分から外人に話せないですよ」
八島は女にはシャイだった。
「そうだよな〜」
「わかった、じゃあ運転手の件は頼むぞ、相場の2倍出すから」
「はい、ボス」
八島は後輩から慕われているから、すぐに連れてきた。もっと早く八島に行っておけばよかったと後悔した。
麗子は他の誰でのない“俺”に支配され、征服され、陵辱され、犯されることに愛を感じている。俺は性格的にSなんだと思った。決してケガさせたり、傷をつけたり、痛い思いをさせたいとは全く思わない。小学校の時に好きな子にいたずらして困らせたり、わざと嫌がらせをしたり、そういう気持ちの延長じゃないかと最近思った。
愛人が増えてくると、前世ではできなかった王様気分を味わいたくなった。だから、どちらかと言うと、こんないい女に普通は命令できないこんな事をさせたい、こんないい女を服従させ征服したい、と言うような不埒な願望を持つようになった。俺はどちらかと言うと奉仕されたいタイプだとわかった。
一方の瑠美子だが、頭はいいし、仕事もできるし、外を連れて歩くににも自慢できるし、車の運転もうまいし、よく気がつくし、いい事だらけだ。
しかし、瑠美子は寂しがり屋で、いつもかまって欲しい甘えん坊だ。俺にどれだけ愛されているか、言葉を変えると、俺にどれほど奉仕されているかを、俺の愛情のバロメーターにしている感じがある。
(ごめんな、俺も自分が奉仕するより、奉仕させることが好きなんだ)
最近、瑠美子との距離間(距離感)を感じ始めていた。
ニューオータニのバーで瑠美子と麗子が飲んでいた。部下の8人と鉄板ステーキのコースメニューを堪能した後だった。
広尾ガーデンヒルズの間取りと内装工事が終わって、引越しの最中だ。会社が広尾に移ったことで、瑠美子と麗子に会社と同じ広尾ガーデンヒルズの別棟3LDKのマンションを会社名義で買って住まわせていた。
それとは別に、雄治からクリスマスプレゼントとして、瑠美子にはフェラーリ、麗子にはランドローバーが予め贈られていた。車は会社名義で買った。通勤で使用していると言うことで税務署に経費として認められた。またボーナスとして、それぞれ1000万円支給されていた。2人の年収は2400万円だが、使い放題の交際接待費、会議費、自家用車、マンションの家賃相当額を考慮すると、実質8000万円くらいになった。
「今年は麗子と2人っきりのクリスマスイブだね」
瑠美子がいった。
「そうね、いつもは雄治を入れて3人だよね」
「3人だから、夜は恥ずかしかったね」
麗子が言った。
2人に恋人がいない方がおかしい年齢だし、その美貌だ。街をあるいても、バーで飲んでいてもナンパされていた。
「もう来年25歳だし、両親が結婚しろってうるさいのよね」
「孫も欲しいって」
瑠美子は一人娘だった。
「私、あたしだけの恋人が欲しい」
瑠美子が言った。
瑠美子は寂しがり屋で、かまって欲しいタイプだ。いつも頭を撫でられて、胸に顔を埋めたいと思っている。
「麗子はどうなの?」
「あたしのところは弟がいるし、あたしってガサツだから親も諦めているみたい」
「何にも言ってこないよ、逆にそう言った会話を避けているみたい」
「そう」
「恋人は欲しくない?」
「あたしは・・・・ユージじゃなきゃダメなんだ」
麗子が呟くように言った。
クリスマスが終わってリリーの店も落ち着いてきた。広尾ガーデンヒルズを会社の事務所への改装工事が完了した。南青山からの引越しが行われていた。南青山は俺の自宅にするため広尾への引越しが終わり次第、自宅への改装工事が始まる。
今、俺はニューオータニのスィートルームにいる。改装工事で自宅が使えないのでマンスリーで宿泊契約をしたのだ。
「ピンポンー」
ベッキーが部屋にやってきた。俺が寮に電話をしていたのだ。
「忙しいところ悪いな」
「まあ。そこに座ってくれ」
「はい」
「リリーからプレゼントをもらったな」
「はい、頂きました。とっても嬉しかったです」
今もロレックスのデイデイトの金無垢をしていた。
「これは俺からのプレゼントだ」
俺は渋谷のマンションの資料と鍵の入った書類入れを渡した。
「4LDKのマンションだ、お前の好きに使ってくれ、それから家具も必要だろう、300万円ある、残っても返す必要ないからな、服でも買っとけばいい」
「お前は仕事の責任感が強いから、同伴やアフターしてないだろう。お小遣いをくれる男も作らずに頑張っているのは、リリーも俺も知ってるいるよ」
「あたし、なんと言ったらいいか、本当にありがとうございます」
・・・・・・・
「あたしはリリー姐さんの代理になれるように、ただ仕事をしていただけなのに、こんなに良くして頂いて、あたしどう言ったらいいのか」
「俺の気持ちだから、これからもリリーを支えてくれればいいよ」
「でもボスには何もしてあげてないのに、申し訳ないんです」
「あたしにできることは、・・・・」
「あたし、何にも持ってないんです。あたしにはこの身体しかないんです」
「だから、ボスの好きにして下さい。どんなに酷い事でもあたし大丈夫ですから」
(こいつ麗子と同じなのか?、Mなのか?)。ベッキーへの見方がガラッと変わった。
「どんな事でもか?」
「はい、どんな事でも、何をしても、奴隷にしてもいいです」
(やばいぞ、俺の欲望を抑えられない)
「わかった、ではシャワーを浴びてこい」
「はい」
ベッキーはナイスダイナミックボディだ。ブラジルのビキニコンテストで優勝できそうだ。なんでこの時代にデジカメがないんだ。
ベッキーをうつ伏せにした。尻の上の方にハートマークのタトゥーがある。タトゥーなんか不要で邪魔でしかない。俺にはイタズラ書きにしか思えない。
タトゥーを消すことにした。タトゥーの細胞を分子レベル分解して、皮膚から浮かび上がらせ、削った部分の細胞を修復した。皮膚の上に赤い色のした液をティッシュで拭き取れば綺麗になった。
「フーー」
一連の施術が終わって、サイドテーブルにある水を飲んで一息ついた。
「疲れた」
シガータバコのMOREに火をつけて、ウィスキーのオンザロックを口に含んだ。ベッキーは美人だが、裸になると数段レベルアップする。そういう経験は男ならあるはずだ。それなりに可愛いと思った娘がビキニになると妙に美人に見えたり、ビーチでビキニの若い娘がたくさんいると、可愛い女の子って結構いるもんだな、と思った経験は俺だけではないはずだ。俺はベッキーを抱いた。
「ペシッ、ペシッ、ベッキー起きろ」
翌朝、ベッドの上で俺はベッキーの尻を叩いた。
「ウウウン〜」
ベッキーが顔を上げた。目が合うとニッコリと微笑んだ。
(ベッキーは俺しか男がいないんだよな。多分作らないだろうな)
俺はベッキーへの好意を持っているが、好きと言う感情はない。部下と言う認識だ。だからベッキーの事を不憫に思ってしまった。こいつには報いてやろうと思った。
俺はまたベッキーを抱きたくなった。
「今度フィリピンへの投資を始める。ビルを何棟か買う予定だ。そこでルルを派遣するつもりだ。ルルにも店を持たせて、ルルが選んだ女の子を東京に寄越させる」
「日本の男は英語を話す欧米の女に憧れとコンプレックスを持っている。アフリカや東南アジアの女の評価は失礼に当たるが低いのが実情だ」
「フィリピンはハーフが多い。スペインの植民地の後はアメリカの植民地だったからだ。外見が欧米人のハーフが多いいのはそれが理由だ」
「そういう女の子の店を増やしたいと思っている。例えるなら今のベルの店だ」
「ルルがチェックした女の子を日本に呼ばせるつもりだ」
「ルルが抜けて売上が下がっても気にするな。女の子が足りなければガールズバーを今の3店舗から2店舗に一時的に減らしてもいい、リリーと相談してくれ」
「はい、ボス」
「何かして欲しいことあるか?」
「いっぱい、いじめて、下さい、あたし、いつも待ってますから」
「えっ、そうか、いっぱいなのか、わかった」
ベッキーが遅刻して店にやってきた。ベッキーの顔がニヤけている。すぐに事務所に入っていった。ルルが事務所の部屋に入ってきた。
「遅れるなら連絡してよね!、何よ!」
「ボスのとこ、行ってたんでしょ!」
「ふざけないでよ!」
ルルが店の裏に出ていった。
「何でよ、何で、あたしだって頑張ってるんだ」
ルルは悔しくて涙を流して泣いていた。
82年年末のある日、ニューオータニのスィートルーム。ルルが俺が宿泊している部屋のやってきた。
「ボス、御用でしょうか?」
「ああ、実はルルに頼みがあってな」
ベッキーとナンシーにマンションが贈られて、リリーの子分3人組の自分だけが取り残された気分のルルだった。
「リリーの会社をフィリピンに作った。不動産開発を少しづつするつもりだ」
「年明けにもフィリピンに行って、アパートメントと商業ビルを購入しようと思っている。ルルには外見が欧米人に見える女の子をベッキーのところに送ってもらいたい」
ルルは16歳から日本に半ば強引に連れてこられて、フィリピンパブの経験しかない。その他の知識と経験がないのだ。
「ルルはどういう事をやりたい?」
「あたし、ボスの女になることしか考えたことなくて、どうしたらいいのかわからないです」
「ナンシーとルーシーに聞いたんだが、金になるのは外国人の旅行客とビジネスマンだそうだ」
「フィリピンのカジノは公営で、その近辺のホテル群は財閥に抑えられている」
「日本のようなパブやソープランドはない、女の子を集めるにはゴーゴーバーをやるしかないと思っている」
「ルルにはフィリピンでゴーゴーバーをやってもらいたい」
「あたし自信がないです」
「最初は誰でもそうさ、リリーと相談しながらやってくれ」
「はい」
ルルが自信なさげに小さく答えた。
「あとな、俺が考えているのは、日本人ビシネスマンへのメイド斡旋なんだ」
「うちの女の子は日本語ができるだろう?。日本からフィリピンへ派遣された日本人は英語が話せなくて困っていると思うんだ」
「うちの女の子は美人揃いだろう?、日本語も喋れるし、愛人にもなるんだ。日本人にしてみれば、夢の様な生活だ」
「顔とミニスカートの写真付きので身長と年齢、月の給料を載せたパンフレットを作る」
「フィリピン日本商工会議所と言う組織があって、フィリピンに進出している日本企業が参加している組織がある。そこの本部にパンフレットを置かせてもらえれば成功したも同然だ。」
「月の給料は現地の2〜5倍に設定して月々マージンを取る様にすれば安定した収益に成長するはずだ」
「フィリピンでやる店と日本人向けメイド斡旋、東京への女の子の派遣 これをやる会社をリリーとやってくれ、資金はフィリピンにある会社が出す」
「でもあたし、何にもできないんです」
「東京への女の子の派遣はできるだろう、フィリピンで一旦受け入れるのはアパートメントを用意するだろう。女の子の親の同意書だろう、パスポートと。飛行機の手配だろう。できるんじゃないか?、準備ができたらベッキーに連絡すれば、東京で受け入れるさ」
「ここでの店の準備だろう。あと経理をする事務員の手配、俺の仲のいい不動産屋を紹介するよ」
「ギャングのみかじめ料については、八島は用心棒だから、あいつに対応させればいい」
「八島は素手なら50人は1人で倒せるぞ」
「まあ、赤字で構わないから、やってみてくれ」
「来年早々、フィリピンに行って段取りをしてくるつもりだ」
「今すぐの話じゃないから、そのつもりでいてくれればいい」
「あの〜、一ついいですか?」
「あたしは八島の女になるんでしょうか?」
「八島はお前のこと気に入ってるぞ、嫌か?」
「嫌です、あたしはボスの女になりたいんです」
ルルもしたたかな夜の女だ。権力のある男、金持ちが好きなのだ。平凡な奥さんになることに興味がない。
「ああ、わかったよ」
「ベッキーやナンシーだけなんて、ずるいです」
「ちゃんと私もボスの女にして下さい!」
「それから、今日は絶対に店には行きませんから、私もメチャクチャにして下さい!」
・・・・・・
「わかった」
1982年平均金価格 (ドル/トロイオンス) 田中貴金属のデータ
375.85ドル/トロイオンス 平均TTS 250.15
1トロイオンス=31.103g
375.85➗31.103=12.08ドル/g 12080ドル/kg 3,021,813円/kg
※2016年時点の建築費の水準
日本 34.5万円/m2
フィリピン 9.1万円/m2
例、六本木ヒルズ延床面積約38万㎡(38万㎡×0.3025=約11.5万坪)で建設費は1,250億円程度。 坪単価にすると、1,250億円÷11.5万坪=約110万円/坪となります。
※名目GDP SMA国民経済計算マニュアルより 単位10億USドル
1980年 2023年 2023年/1980年(倍)
日本 1129.38 4212.94 3.73
フィリピン 37.08 436.82 11.78
日本/フィリピン(倍) 30.45 9.64
フィリピンは若年層の人口比率が高く、人口ボーナスが長く続き安定的に経済成長します。
昭和55年(1980年)当時のロレックス主要モデルの定価一覧
銀座エバンスより メンズモデル
モデル名 型 番 素 材 定 価
エクスプローラーⅠ 1016 ステンレス 280,000円
エクスプローラーⅡ 1655 ステンレス 340,000円
サブマリーナ 5513 ステンレス 270,000円
サブマリーナデイト 1680 ステンレス 380,000円
シードゥエラー 1665 ステンレス 390,000円
GMTマスター 1675 ステンレス 370,000円
デイトナ 6265 ステンレス 380,000円
エアキング 5500 ステンレス 147,000円
デイトジャスト 16030 ステンレス 370,000円
デイトジャスト 16013 18KYGコンビ 890,000円
デイデイト 18038 18KYG無垢×革. 1,920,000円
デイデイト 18038 18KYG無垢×ブレス 3,720,000円
当時の大卒初任給は約11.5万円