チートな俺が異世界で商売して荒稼ぎする～転生先は元勇者の従者～

作者：林勇気

闇に包まれた世界、そこは死者たちがたどり着く死後の領域。静寂が支配し、時折蠢く異世界の謎が辺りに漂っている。

主人公、ノーネームは、死後の世界で目覚め、自らの過去や名前を見失っていた。彼の周りには、勇者パーティーによって討たれた仲間たちや、意外な存在である魔王サタンと妻のルミナスがいた。彼らとの邂逅が、新たな冒険の扉を開くこととなる。

未知の領域に足を踏み入れたノーネームは、死後の世界に潜む謎や不可解な出来事に直面しながらも、新たな仲間たちとの交流や絆を深めていく。そして、彼の周りには不穏な気配が漂い始め、死後の世界に新たな冒険の扉が開かれることになる。

どうやら俺は転移した先で異世界にいるらしい。しかし、身体は死んだままなので魂と精神だけの存在となり、魂のみで生き永らえることになったようだ。そんな俺を助けてくれたのは、俺を殺した勇者パーティーの一員だった女戦士だった。彼女が言うには、どうやらここは死後の世界らしい。そして肉体は消滅してしまったが精神体となった俺の姿は生前と同じであるということ。

「それで、ここはどこなんだ？」

「うーん……まぁ、死後の世界ってことになるわね」

「死後の世界？じゃあ、お前も死んでいるのか？」

「えぇ、そうよ。私も死んでるの。だからこうしてあなたとお話できるわけだけど」

「…………」

「なにか質問はあるかしら？」

「いや、特にないけど……それより、どうして俺はここにいるんだ？」

「それは、私が助けたからよ」

「助けた？」

「えぇ、そうよ。あの時、私はあなたを助けるために全力で戦ったんだけど、結局あなたのことを救うことができなかったわ。本当にごめんなさい……」

「あぁ、そういうことだったのか……。でもさ、それならなんで俺は生きているんだ？」

「ふっ、その答えは簡単だぜ！オレたちがお前を生き返らせたんだよ！」

「なに！？」

突然聞こえてきた声の主の方を見るとそこには全身黒ずくめの男が立っていた。

「おいおい、魔王様に向かって『なに？』はないんじゃねぇか？これでも一応魔王やってんだぞ？」

「えっと……この人が魔王なのか？」

「おう、そうだぜ！オレの名前はサタン=ノーライフキング！よろしくな！」

「お、おう……」

まさかこいつが魔王だとは思わなかったな。それにしても魔王がこんなヤツとは意外すぎるだろ。もっとこう……いかにもラスボスですっていうオーラがあると思っていたんだが……。というかこいつ名前長すぎないか？

「ま、魔王様！？いきなり現れて何を言っているんですか！！」

「あ？別にいいじゃねえか。せっかく生き返ったんだしよぉ。なんか文句あんのか？」

「大ありですよ！！魔王様にもしものことがあったらどうするんですか！！」

「大丈夫だって。ちゃんと対策くらいしてあるからよ」

「もう！全然信用できないじゃないですか！」

「うるせえなぁ……。そんなに心配ならテメェも来ればいいだろうが。ほら、行くぞ」

「ちょっ……離して下さいよ！嫌だああぁぁぁ！！！」

魔王は喚いている女を無視してどこかへ連れていってしまった。

「あいつらは放っておくとして、とりあえず自己紹介でもするか！オレの名前はサタン！魔界を支配する魔王だ！そして隣にいるのがオレの妻であるルミナスだ！」

「妻ではないと言っているでしょうが！！」

「ぐおっ！？」

魔王の腹部には女の拳が深くめり込んでいた。

「まったく、いつもいつもしつこいんですよ！というわけで初めまして。私の名はルミナスと申します。以後お見知りおきを」

「あ、はい……」

なんなんだこの状況は……。

「そんでよ、お前の名前を教えてくれねぇか？」

「えっと、俺の名前は……」

あれ？おかしいな……。自分の名前が思い出せない。

「……」

「どうかしたのか？」

「いや、なんでもない……」

「そうか。それでお前の名前はなんていうんだ？」

「すまない。自分でもよくわからないんだ」

魔王サタンと妻のルミナスは、俺の答えに驚きながらも、興味津々な表情を浮かべた。

「なんだって？自分の名前も覚えてねぇってことか？」

「そうみたいだ。なんでだろう……」

「それはちょっと厄介だな。ま、いいや。お前、とりあえず名前が思い出せないなら、仮に『ノーネーム』って呼ばせてもらうぜ」

「ノーネーム……か。まぁ、それでいいか」

ノーネームと呼ばれることになり、俺は新しい仲間たちと共に死後の世界での冒険が始まった。生前の記憶が曖昧でも、新たな仲間や魔王夫妻との出会いに期待と不安が入り混じり、未知の冒険が続くのだった。

ノーネームは、死後の世界での冒険に慣れつつも、自分の過去や名前の謎に苦しんでいました。一方で、魔王サタンとルミナス、そして死後の仲間たちとの絆は深まり、不思議な仲間たちと共に新たな生活を築いていきました。

ある日、魔王サタンが突然現れて、不穏な空気が漂っていることを告げました。

「おい、ノーネーム。ちょっと用事があるんだ。ついてきてくれ」

「用事？何かあったのか？」

「まぁな、ちょっとだけ面倒なことになってさ。お前も関わってくれ」

ノーネームは不安げな表情を浮かべながらも、魔王についていくことに決めました。彼はサタンとともに、死後の世界での新たな冒険に身を投じることとなった。

途中、サタンは不気味な笑みを浮かべて言った。

「なぁ、ノーネーム。お前、死後の世界って知らないことが多いだろ？」

「そうだ。自分の過去もよく覚えていないし、この世界もよく理解できていない」

「じゃあ、これから覚えろよ。死後の世界だって、まだまだ謎だらけだ。お前にはそれを解明する役目がある」

「解明する役目？俺にそんな力があるのか？」

「あぁ、ないない。ただの冗談さ。でもな、お前の存在には何かしらの意味があるはずだ。それを見つけるのはお前次第だ」

ノーネームは再び不安と興奮の入り混じった気持ちに包まれました。彼の冒険は、新たな謎や過去の謎を解き明かしつつ、死後の世界での仲間たちとの絆を深めていくのでした。

この物語が終わりを迎える頃には、ノーネームという存在が新たな旅路を歩んでいることだろう。死後の世界の謎や自らの過去の謎に立ち向かいながらも、彼は仲間たちとの絆を深め、新しい生活を築いていく。

魔王サタンとルミナス、そして他の死者たちとの交流が、ノーネームの冒険に彩りを与えた。死者の中にも、それぞれの物語や思い出があり、彼らの存在は死後の世界を豊かなものにしていた。

読者の皆さんも、ノーネームの冒険に共感し、彼の歩む未知の世界に思いを馳せてくれたことでしょう。死後の世界という幻想的な舞台で繰り広げられた物語が、新たな気づきや感動をもたらし、何かしらの心に残ってくれれば幸いである。

物語の終わりが新たな始まりを告げるように、読者の皆さんの日常も新たな冒険へと続いていくことを願っている。さよならではなく、またいつかお会いできることを信じて。