スタンピードの兆候-1
いつも読んで頂き誠にありがとうございます。
まだまだ寒い日が続きますが、頑張っていきます。
新緑の森の奥、枯果てた森との境目あたりに、深緑のダンジョンがある。
その地域は、よく魔力溜まりが発生することで有名な場所。
その影響で魔物の出現が多いことで知られている。
しかし、初心者用の森と言われるぐらい弱い敵が多くオークぐらいしか現れた例がなく、オーガまで出現するのは稀であった。
そんな、静かな森の奥深くで、怪しい二人組がいた。
怪しげな道具をいっぱい持ち何かをやっている。
「師匠。ここですか?」
「こことあっちも設置しろ。」
老人のようなドワーフと青年が森のあちこちに、魔具を設置しているようだった。
魔具は等間隔に規則正しく設置している。
「早くしろ!!計算上どんどん生まれてくるぞ」
「はい。えっと、あっちとこっちと…」
老人は青年を急がせ、魔具を設置していた。
森のあちこちに設置する魔具。魔具には魔石がはめ込まれ怪しい光を放ち魔力を集めているようだった。
最初の魔具を設置して、30分ほど経過したとき突然、設置した魔具の近くに魔物が発生したのだった。
偶然かと思いきや、設置した魔具の近くで魔力を吸収しては連鎖的にどんどん魔物が発生し始めた。
魔具の周辺にどんどん魔力が溜まり漂って、空気が重くなっていく。
その魔力を見えない魔核が吸収し急激に成長し魔物を生み出しているようだった。
「ぐふふ、実験は成功のようだな。レン」
「はい。師匠。これで積年の恨みが晴らせる。どんどん発生しろ!」
青年は、さらに設置した魔具の近くに液体や結晶体を大量に撒く。
液体は、すぐに蒸発しそこから魔力が発生しているようだった。
結晶体は、魔力を具現化した結晶体のようだった。魔石を人工的に作った感じといったものだ。
そのためか、過剰の魔力を周辺に放出している。
魔物が発生してもさらに魔具を設置している。
どんどんその魔物の数が多くなり、過密になりあちこちで同士討ちをしたり、逃げる魔物もいる。
同士討ちして、生き残った魔物は、経験値を得たのか進化を遂げて上級の魔物になっていく。蟲毒の森と化す。
ゴブリンがグレートゴブリン、そしてエリートゴブリンといった感じに進化していったのだ。
数時間もしないうちに、上級の魔物があちこちで出現し始める。
出現した上級の魔物を筆頭に、下級の魔物を支配下に置き組織が出来上がる。
組織ができた魔物は、さらに組織的に連携し魔物を討伐し、組織全体のレベルや進化を促していく。
負のスパイラルが連鎖的にあちこちで発生し、魔物も徐々に強くなっていく。
こうなるとすでに個人では止められなくなってくる。
「師匠。そろそろやばいのでは、ここから離れましょう。ほっておいてもどんどん魔物は発生しますよ」
「お前だけは逃げろ。同じ方法で人類を苦しめるのだ。
わしは、ここに残る。今まで貯めた怨念を死して爆発させる。」
そういうと、老人ドワーフはあっさり自害した。
青年はひとり残り、あまり悲しまず、その場を立ち去る。
去り際に、師匠が一匹のエリートウルフに食べられた。
食べたグレートウルフは、苦しみだし、しばらく動かなかったが、次の瞬間負のオーラのようなものを身にまとい、新しい魔物に進化したようだった。
歩くだけで死をもたらすウルフ(カーズウルフ)となっていた。歩いたところの草木は枯れ果て呪いを与えている。
強い怨念をウルフが放つと今まで同士討ちしていた魔物は、争いをやめ魔物本来の姿なのかそのウルフを頂点に組織が組みあがり従い始めたのだった。
小さな森の魔王といったところだ。
「あれは、大成功だ。師匠。これで、ポータも全滅だ。その勢いで人類も全滅だ。ハハハハハ」
魔物の群れは、カーズウルフを筆頭に、ポーターの町に南下していく。
綺麗な新緑の森がだんだんと黒く染まっていく。
次回の投稿は、1月19日を予定しております。




