第53回 初心者講習1日目
「おはよう。クウィ」
朝から声をかけるが、空間魔法内とは違い話すことはできない。
マキはちょっと残念だが、しょうがない。
「クウィ~」
でも、ちゃんと返事はしてくれる。
今日は冒険者ギルドの初心者講習の日。
ユキと一緒に、二泊三日のお手軽冒険旅行の日。
冒険者の初心者を集め、素材の採取や魔物の討伐、野営の仕方などレクチャー&実体験ができる。
気が合えば、冒険者パティーも結成できるし、一石二鳥の講習だ。
上級冒険者と一緒に近くの森の探索を行うのだ。
もちろん、両親には話してあるというか、両親が申し込んできた。
冒険者希望だったため、厳しい外の生活をすればあきらめるかと思ってさっそく申し込んだのだ。
マキは喜んだが、一人じゃ心細かったので、ユキにも声をかけたってところOKだったのだ。
兄は、去年参加していたのでまー連続で参加してもあんまりと思ったので今回はパスとなった。
ギルド前
朝からユキが待っていた。
「ユキちゃん。今日は早いね。?珍しい」
「私だって、早起きできるんだから、それより、その飛んでるの何?可愛い♡。」
「従魔のクウィだよ。初心者講習でも従魔もつれてきてもOK見たい。」
それはそのはず、従魔が承認されないなら、従魔師がただのお荷物になってします。
「ユキも欲しい。どこで貰えるの?どこで配ってったの?」
笑顔で、ちょっとずれていることを言っている。
「貰えないし、配ってないから!プンプン。卵から返して、育てたんだよ。相棒よ。」
「え~~。売ってないの!そっか、従魔師でもないのにすごいね。魔導士には、従魔は難しいか↓」
ユキは、本気で買えると思っていたのか、しょんぼりしている。
ギルド職員。
「第53回の初心者講習を始めます。参加者はこちらに集まってください。」
受講者はみな集まる。講習の手引きを参加者に配っていく。
「本日から、二泊三日の初心者のための初心者講習となります。
本日サポートしてくれるスペシャルメンバーをご紹介いたします。
Aランク冒険者パティーのナイトウォーカーの皆さんです。(拍手)」
「右から前衛戦士職のナイトさん、真ん中が後衛の回復職のヒリギさん、一番左が中衛の魔法職のサウザンドさん。
それぞれ、チームに一人ずつ入ってもらいますから、よろしくお願いします。
あと、バランスの良いチーム分けはこちらで決めておきましたので、パーティの連携にも役に立ててください。」
Aランク冒険者とあって、町でも有名。初心者の憧れとかもあり、歓声が上がっていた。
「ユキのチームは誰とかな?どれどれ。」
配られた説明資料を見ると、チームメンバは、マキとユキ、ロッフェ、そして、ナイトだった。
前衛二人と、後衛二人なかなかバランスの良い組み合わせ。ギルド職員グッジョブ。
その他にも2チームあり、Aランク冒険者がそれぞれ引率するといった感じになっていた。
この4名で基本行動し、この新緑の森で薬草の採取、マナ草の採取、スライム討伐、ゴブリン討伐、初級者の難関オーク討伐、
そして、野営の経験、見張りの経験など、冒険に必要な基本的なものを学ぶ。冒険者の生存率を上げるための基礎講習になっている。
リーダーは、Aランク冒険者のナイトが勤め、指示を出す。
冒険中に困ったことなど、ナイトに確認して上手く運ぶようにする。
ナイトは、基本補助に徹し、魔物に襲われピンチの時には助ける程度となっている。
野営も機材のテント、食料など自分で準備し、森にあるものなどで代用もOK。食べられるものや、やばい物を見分ける知識も必要になってくる。
講習では資料を渡してあり、ちゃんと目を通しておけば、丁寧に書いてある。(ギルド職員良い仕事してますが、いきがってる冒険者は見ないから困っている(-_-;))
本来は、自分で覚えたりする必要があるが、それは講習ということで優しくできていた。
チームメンバ同志それぞれ集まり、挨拶を済ませる。
「マキです。簡単な魔法が使えます。この子は従魔のクウィ。よろしくお願いします。」
礼儀正しく挨拶をする。
「ユキでーす。マキと親友で魔法が使えます。よろしく。」
ちょっとチャラいがよしとしておきましょう。
「俺は、ロッフェ、見ての通り狼獣人で、戦士だ。索敵を得意とし、速さにも自信がある。」
真面目系獣人もふもふ狼っ子のようで、索敵できるなら大活躍だ。
簡単な自己紹介をし、1日目に臨む。
1日目
新緑の森。
マキとユキのチームが森へ入る。
森は一年中、なぜか新緑に覆われ、緑が綺麗で小川などもあり、魔物が出ると思えない美しい場所である。
とはいうものの、弱い魔物がちらほら出る場所でもあり、新人冒険者は一度は行ったことがある場所でもある。
敵の出現率は低くあまり出ないで有名。薬草なの採取にはもってこいの場所だ。
新緑の森の最奥には、一応、ダンジョンもあり、奥に行けば敵も強く、出現率も上がってくるが今回の研修では奥まではいかない。
チームはお気軽に、森をひょいひょい歩いていく。
道中、マキは、薬草を採取、マナ草も採取そこらへんは問題なくクリアしていく。
ここで争ったのか、鳥の羽の素材やよくわからない獣の牙なども拾っていく。
食べられそうな、キノコや山菜なども見つけ、木に成る木の実、果物も見つけては採取していく。
お気軽に冒険しているとき
ロッフェが
「正面にスライム…さ、3匹…」
おびえた様子でいう。
「ん?」
マキとユキは、何故おびえてる?といった表情を浮かべつつも。魔法を準備する。
ユキは両手にアイスアロー、マキも片手にアイスアロー。森の中なので炎系の魔法はやめた。
スライムが姿を見せた瞬間。投げつけ、見事命中させる。
無事に、スライムを倒し、スライムの魔石をゲットするマキとユキであった。
ユキは、魔石をマキに手渡し、こそこそ言っていった。(利用してね♪)
しばらく歩いていると、今度は、ワームの群れに遭遇する。
今度は、5匹だ。
さっきと同じく、ユキは両手に、マキも真似して両手に、そして、クウィも真似して頭上にアイスアローを出して一斉攻撃。
はい。問題なく倒し、無事に魔石を回収っと。
「ロッフェ!戦士でしょう?なんで後衛なの?しかも、そんなに離れて。私たちを守ってよ」
ユキは怒り気味でいった。
「ユキ言い過ぎよ。最初だし怖いんだよ。」
マキは、優しい。
「だ、だって、戦士だって怖いものは怖いんだって…」
ロッフェは、おびえながら答える。
ロッフェは、初めての戦闘だったのか、かなりおびえている。
最弱と言われるスライムにここまで怖がっていたら、この先どうやって強くなるのだろうと思いながら、
初心者講習で、はずれを引いたとユキはすぐに割り切り、
「あ、っそ、邪魔だけはしないでね。」
強くいった。
ユキは、信頼できない仲間に頼るのは、命の危険もある。それを知ってか、すぐに怒りを抑え切り替えたのだ。
マキとユキ二人で、どんどん魔物を狩っていく。
ナイトもそれを見ているだけ。無理強いしても、パーティ全体の士気も下がり危険も上がる。ナイトは、ロッフェに気を配り死なないようにすれば問題ないと考えていた。
「それにしても、スライムとかワームとか、多いな。この森ってこんなにいたかな?」
ナイトは、一言こぼす。
初心者が良く訪れる森でこんなに敵に遭遇するのは稀であった。
休憩をはさみ、今度は、ゴブリンを探す。課題でもあったので、チームで探すが、今日はなかなか見つからなかった。
あたりも暗くなり始め、野営の準備に取り掛かり、食事を用意する。
マキが色々採取していたので、食事の準備にはそんなに時間がかからなかった。
夜の見張り番を最初はマキとユキ、次にナイトとロッフェと順当に決めて、寝るのだった。
マキとユキの見張り
「ユキ!今日は楽しかったね。ロッフェはあんまりだったけど、化けるかもしれないし、優しく見守ろうよ」
マキは、言う。
「ユキ、あれ嫌い。もっと使えると思ってったのに、もし家の護衛兵だったら即クビよ。」
笑いながら話す。
「まだ初心者だしさ、ね。仲良くしてよ。こっちからちゃんと指示出して明日は動かしてみよう。
全部私たちで倒しちゃうからいけないのよ。危なくなったら、ナイトさんもいるし、私も本気だすからさ」
マキはいうと、5本の水の矢を出して見せる。
「え!マキそんなに魔法同時発動できるの?!驚きなんだけど、どうやるの?教えて。
私は、3つが限界よ。」
「えっへん。ユキと違って毎日魔法の練習してたからね。クスクス」
そんな話をしていたら、がさがさ森から気配を感じたら、スライムが一匹飛び出してきた。
「タイミングの悪いスライムきちゃったね。マキその水の矢でやっておしまい。」
なぜかちょっと偉そうに、ユキは言う。それと同時に5本の水の矢がスライムを襲う。
暗くてよく見えなかったからか、実は、アクアスライムだったようだった。
スライムは、5本の水の矢を吸収し巨大化した。グレートアクアスライムに進化したようだった。
「え~~~。ユ~キ~。どうすんのよこれ。」
マキも調子に乗っていたからしょうがない。
「あわわわ…」
ユキも慌てふためくが、
「マキ、今こそ本気を出すときよ。」
偉そうにユキは、まだ調子に乗っているようだった。
やれやれといった感じで、マキは表情を変え
「サンダーアロー」
と唱え、3本の雷の矢を出現させ、スライムを攻撃。なんらく撃破する。
「あれ?雷ってそんな属性ないけど?ユキ知らない。属性は、火、水、風、地じゃないの?」
「え?今、そこ突っ込むところ?敵倒したのよ?」
「ハハハハハ」
二人は笑い、グレートアクアスライムの魔石をゲットした。
ちなみに、雷は、風の同属性の魔法。氷は水の同属性の魔法。
火と地はないらしい。一部の学者さんは、地の同属性は鋼鉄?とかいう説もあるらしい。
見張りも交代し、マキとユキは眠るのであった。
ナイトとロッフェの見張り
「今日はどうだった?」
ナイトは、話しかける。
「僕、獣人族で戦士だから村では活躍できるって言われてたけど、魔物が怖くて。」
「魔物が怖いのは当たり前だよ。その気持ちは忘れてはだめだ。だけどね。怖がってばかりじゃもっと怖い思いをする。
怖がって何もできないんじゃ、家族は?仲間は?死んでしまったら、もう戻ってこないんだよ。それの方が怖くないかい?」
ナイトは、年の功かロッフェを諭す
うなづきながら、ロッフェは聞いている。
「何もせず、失ってからずっと後悔して生きていくのかい?今全力で立ち向かい、敵を倒して行けた方がずっといいと思う。
前衛だからといってすべて、攻撃を受ける必要はない。仲間を信頼し助け合ってこそ、より強く自分を高めていけるんじゃないかな。
今のままだと、あの女の子たちにバカにされ生きていかなきゃいけなくなる。それは目の前の敵よりもずっとずっと長い間ダメージが残ると思うんだ。
俺は、その方が怖い。ずっと見下され、信頼を置ける仲間もいない。それこそ、生きていけない。それって怖いと思わないかい?」
「確かに、目の前の怖さより、今後ずっと続く嫌な思い、後悔の方が怖いです。」
憧れの大先輩の助言を素直に受け入れロッフェは、答える。
「明日は、もう少し頑張れよ!」
ナイトは背中を押す。
「はい」
次回の投稿は、12月22日を予定しております。