う、生まれるー
朝、スカイクジラの卵に異変があった。
何やら激しく揺れ、少しづつ亀裂も、今にも生まれそう。
マキは、いつ生まれるか、ドキドキして見守った。
「カタカタ、カタカタ。ピキッ」
「がんばれ、元気に生まれてきて!」
「カリカリ、クウィ~、ピッピキ!」
卵が激しく動き、亀裂も入る。
今にも生まれそう。
「凶暴な魔物が生まれて暴れたらどうしよう。あわわ」
マキは、生まれた後を気にしてカタカタしている。
「カタカタ、カタカタ、ピキッ、ピキッ!」
マキは息をのんで見守る。
10分ぐらいすると卵は縦に大きく割れ、中からクジラの赤ちゃんが出てきた。
体調は、20cmぐらいまだまだ小さな赤ちゃん。
「クウィ~ クウィ~」
スカイクジラの名にぴったりのスカイブルーの色。小さくても最初から飛ぶことを覚えていてぷかぷか浮いている。
マキを見た瞬間、マキの周りをぐるぐる回って嬉しそうだった。
ただ、そうしている間にも生まれたばかりの赤ちゃんクジラは、何か食べたいようだった。
「クウィ~ クウィ~」
「お母さん、ミルクある?あかちゃん生まれたよ」
秘密にしていたのに、マキは、うっかり大声で母を呼ぶ。
家中に響き渡り、家族は一斉にマキの部屋に向かう。
「それは魔物じゃないのか?」
父は武器を持ち出しけん制しながら言う。
「そんなことはいいから、早く早く。ミルク」
マキは、クールに言う。
赤ちゃんクジラに敵意はない。
「はい、はい。ミルクね」
母はマキの言う通りミルクを持ってきて、あかちゃんクジラに与える。
赤ちゃんクジラは暴れる様子も何もなかった。
「クウィ~」
「あら、かわいいね。ぜんぜん魔物らしくないじゃない」
母にもなぜかなついている。
母性が分かるのだろうか。
「そうなのか?」
「グ~ィ~ グウィ~!!」
父は武器を持ちながら近寄ると、小さいながらも威嚇しているようだった。
「こわいじゃないか」
「グ~ィ~ グウィ~!!」
「お父さんが怖いんだよ。武器を持ってったら誰だって嫌がるでしょう。
はい、武器を置いて置いて、赤ちゃんなんだし暴れても倒せるでしょう。」
「この子?どこで拾ってきたの?」
母は不思議そうに尋ねた。
「えっとね…」
マキは、この間の冒険のことを説明した。
空から、卵が落ちてきたこと、ずっと温めて寝ていたことなどを話した。
母親の直観なのか。
「だから、マキになついているのね。卵の時もマキの魔力で育ったから、お母さんだと思っているのよ。」
父は、さっそく鑑定で確かめる。
【スカイクジラ幼体(星獣)♀ レベル1】
【名前:未設定】
【HP200】
【MP500】
【スキル:飛行、4大魔法、時空間魔法】
【称号:マキの眷属】
「こいつは、すごいの拾ってきたな。星獣だよ。この星を守る星獣とは初めて見る。ただ、誰にも言えないな。
見つかると捕まって殺されるか、幽閉されるか、実験の対象になってしまう。
それに、スカイクジラなんか聞いた事もない。
ばれないように、ちょっと珍しい、スカイイルカってことにしておこう。」
スカイイルカは、飛翔哺乳類の一種で空に青いイルカをたまに見かける時がある。この町でも何年かに一度見かける。
有名ではあるが従魔にした話は聞かないが星獣よりかはいいだろうとなった。。
父は、ギルドに登録しに行くことを提案した。
従魔登録しておけば、町に魔物がいてもさほど問題にはならない。マキになついているようだし、暴れたりしないだろう。
マキは悩んでいた。
「名前は何にしようかな?」
「名前なんか必要あるんか?」
と父
「お父さん?プンプン」
マキは、父を殴る。
「そうだ。クウィって鳴くから、クウィだ。」
「クウィ~♪」
「可愛い名前ね」
母も賛成し、クジラの名前も決まった。
父の提案通り、さっそくギルドに向かう。
ギルドに着くと父はさっそく、従魔登録を行う。
「従魔登録したいんだが?」
「こちらの用紙に必要事項を書いてください」
テンプレ通り。
「ほら、書いたよ」
「確認します。珍しいですね。スカイイルカですか?なんかちょっと太めですね。個体差でしょうか。まぁ、いいでしょう」
マキの周りをぐるぐる楽しそうに回っている従魔を見て、ギルド職員もほっこりしているようだった。
「バイルさんの従魔ですか?」
「いや、違う。娘の従魔だ。外から拾ってきたみたいで懐いている。」
(懐いてるだけで大丈夫なのかと思いつつも)
「なるほど。じゃー問題ないでしょう。」
マキは、そこにいるだけ、クジラもマキの周りを飛ぶだけで、あっという間に手続きは完了。
物珍しさもあって、目立ってはいたが、何事もなく終わった。
しっぽに、首輪をつけて、従魔登録の完成!
「これから一緒だね。クウィ!」
「クウィ~♪」