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炎と永遠 1

 フィーアを奴隷にした張本人は我が君主だった。

 エルンストは絶望の深淵に突き落された気分だった。


 自室に籠り、君主への憤りを抑えられず苦しんでいた。 

 だがそれよりも――。


 フィーアはどうしているだろうか。

 泣いてはいないだろうか。

 辛い思いをしていないだろうか。

 

 営倉に一般人は入れない。やはり地下牢に入れられているはずだ。

 想像すると、居てもたってもいられない。

 

「どうする」


 カーテンを開き窓の下を見ると、屋敷の周りを見張りの兵士が巡回している。

 あれは俺の部下ではない。他の隊から呼ばれた連中だ。

 

 エルンストはベッドに座り込む。

 シーツに手をやると昨日の記憶がよみがえる。

 

 そうだ、たった昨日のことだぞ。

 エルンストはその切れ長の瞳を閉じる。

 フィーアの吐息。抱きしめた温もり。愛し合った肌。

 それが、まるで幻のように、俺の手からすり抜けてしまった。


「くそっ!」


 とにかくファーレンハイトと連絡を取りたい。

 ヘレナかルイーザをファーレンハイトの元に使いに出せないだろうか。

 それとも夜を待って、俺が屋敷を抜け出すか。


 今すぐにでも助けに行きたい。

 エルンストはその長い指で、ギュッとシーツを握った。


「ご主人様」


 ルイーザだった。


「どうした」

「あの・・・」


 戸惑いながらドアの陰に隠れていた青年を引っ張り出す。


「彼は?」

「この人は私の恋人です」


 こんな時に恋人紹介か?

 エルンストは怪訝な顔をした。


「わ、私はギルベルト・アンゲラーです」


 被っていた帽子を取ると、緊張した様子で自己紹介をした。

 貴族ではないのか。歳は自分より少し下。服装からして商家の人間だ。手には豆があるから思い荷物を運ぶ仕事だろう。

 素早く観察した。


「彼は城下町で父親が営む酒屋の手伝いをしています。このお屋敷にワインの配達で来ています」


 そう言えば、フィーアがルイーザには平民の恋人がいると話していたな。この男がそうなのか。


「いつもありがとう。ギルベルト」


 差し出した右手をギルベルトが取る。


「ご主人様、今すぐギルベルトと服を交換してくだい」


 エルンストはルイーザの言わんとするところを理解した。


「ギルベルトの酒屋は宮廷にもお酒を卸しています。ですからお城にも入れます」


 そう言うと、店の場所が書かれメモを差し出す。


「コンラートさんから聞きました。フィーア様をどうか助けて下さい。そしてお二人でこのお屋敷に戻ってきてください」

「ああ、必ず二人で帰ってくる」


 エルンストは着替えると、裏口へと向かった。

  

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