表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/20

第05話(呪怨との空中戦)

「ぬぅぅぅうぅぅ、がぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」

 空中に放り出された呪怨(ジュオーン)が憤怒の叫び声を上げる。


「許さん!許さんぞっ!!この矮小なネズミどもぉぉぉぉぉぉっっっ!!」

 呪怨(ジュオーン)は手の届く腹部に()り込んでいたランスロットを掴み上げる。


「ぐぅぅぅぅぅぅっっっ!!」

 呪怨(ジュオーン)の鋭い爪がランスロットに食い込み、ランスロットから悲痛な呻き声が漏れる。


「ふんっ!!弧月脚(こげつきゃく)!!」

 ランスロットを掴んでいる呪怨(ジュオーン)の手首目掛けてバク転蹴りを放つと、握り込む力が弱まりランスロットが空中に投げ出され、蹴りを放った俺も空中に浮く。ランスロットには、かなり深く爪が食い込んでいたのか、数箇所から血が噴き出す。


「グ、グレン様……どうか……」

「まだだ!まだ諦めるなレンスロット!!」

「……だから私は、ランス……ロット……だと、何回言えば……」

 噴き出す血と共に、身体から力が抜けていくのが見て取れる。


「うははははは。所詮はネズミよ。我の一握りで虫の息よ。所詮は矮小で脆弱な小動物だな」

 愉しそうに呪怨(ジュオーン)が、空中に浮いた俺たちを見ながら嘲笑う。


「この我に死の恐怖を与えたことは驚嘆に値するがな……だが運が悪かったな。このまま下に落ちたとしても、多少の怪我だけで済みそうだからな」

 チラリと下を見た呪怨(ジュオーン)が余裕の表情を浮かべる。俺の視界に映るのは、生い茂った木々だ。その木々をうまく使い、落下の勢いを軽減すれば、多少の怪我だけで済むかもしれない。でも、それではダメなのだ。ここで命を奪っておかなければ、また誰かが呪怨(ジュオーン)の牙にかかり、多くの犠牲者を生むだろう。

 そう考える俺の視界に、一角だけ木々も開けた場所が映る。そこには(やいば)の様に鋭い岩が隆起しており、そこに上手く落とすことが出来れば呪怨(ジュオーン)を倒せそうだ。

 だが、そこに落とすためにはタイミングが重要だ。早すぎれば気付かれてしまうし、遅ければ狙った場所に落とせない。


 空中に投げ出されている俺だけでは自由に動けないし、呪怨(ジュオーン)を目的の場所まで吹き飛ばすこともできない。

 俺は頼りのランスロットを見る。しかしランスロットは先程の怪我で意識を失いかけてしまっており、俺を手伝うどころか、このままでは落下の勢いも殺せずに地面に叩きつけられて、死んでしまうかもしれない。


「ランスロットッ!!」

「グ、グレン……様?やっと……」

「もう少しだ!もう少しだけ力を貸してくれ!!」

 俺はランスロットに檄を飛ばす。


「うはははは。これ以上何をするというのだ?死に掛けのネズミと空中で手も足も出ないネズミ。お前らにやれることなど、もうありはせんよ」

 呪怨(ジュオーン)が再びチラリと下を見て、確信した表情で告げ、身体を伸ばすと、勢いをつけて回転し始める。回転することで落下速度を落とそうとしているようだ。

 それを見た俺はニヤリと笑みを浮かべる。確かに回転すれば落下速度は落ちる。だが俺たちを見ることもできなくなるので、この先の俺たちの行動を奴は察知しにくくなるだろう。


 俺は身体を開き、角度を変えながら自分の位置を調整し、ランスロットの真下に潜り込む。


「ランスロットッ!!跳躍だ!!」

 俺の掛け声を聞いたランスロットが無意識に足を縮める。俺は身体を反転させ、ランスロットの足の裏に自分の足の裏を重ねる。

 俺の足の裏を大地と勘違いしたランスロットが、無意識で俺ごと力の限り蹴り出す。俺もそれに合わせてランスロットの足の裏を蹴り出す。


 跳びネズミ(ラニー)はその名の通り、飛び跳ねるネズミだ。その跳躍力は他にかなう者がいないといわれるほどで、自分の身長の10倍は簡単に飛び跳ねることができる。足の裏を重ね合わせてお互いが蹴り出せば、反発力により身長の20倍を優に超える跳躍力と化す。


撃発(シューティング)風嵐撃(ハリケーン)!!」

 弾丸の如く弾き出された俺は、余裕をかまして回転している呪怨(ジュオーン)に激突する。そしてそのまま彗星のように、尾を引きながら目的の場所へ向かって落ちていく。逆にランスロットは跳躍したことで落下速度を緩めながら、木々が生い茂っている方へ落ちていく。


「き、貴様っ!まだ、まだ何かをっ!!」

「ふははははは。逆巻く烈火のグレンと呼ばれる俺様が、この程度で諦めると思っているのかっ!!」

「ぬぅぅぅぅぅっっ!!死ねぇぇぇぇ!!」

 呪怨(ジュオーン)は大きく手を広げると、鋭い爪を俺に突き入れる。


「ぐあぁぁぁぁぁぁっっっっ!!」

 激痛が俺の身体を走る。だが、ここで折れる訳にはいかない!!もう少しだと俺は歯を食いしばりながら耐える。


「ぬぅっ!しつこいぞ貴様ぁぁぁぁっっっ!!」

 呪怨(ジュオーン)が爪を引き抜くと、左右の腕で更に爪を突き入れてくる。俺の身体には更なる激痛が走り、血が迸る。まだだっ!!あともう少し!!

 止めとばかりに再度大きく手を広げる呪怨(ジュオーン)


「ここだっ!襲爪脚(しゅうそうきゃく)!!」

 俺は身体を起こすと、呪怨(ジュオーン)の顎目掛けて、両足で数発の蹴りを叩き込むと、最後に両足を引き絞り、渾身の一蹴りをぶち込み、跳ねる!!


ズバシャァァァァァアッッッッッ!!!!


 落下の衝撃音と共に、鋭い何かに貫かれる鈍い音が混じり、その大きな衝撃に土煙が上がる。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ