第10話(巨躯剛健との様式美)
「分からんなぁ……貴様のような奴にオサムネ様が負けるはずがない……っチュー」
部下の中で、頭一つ抜きんでた大柄なものが前に出てくる。
「おぉ、どんぐり傭兵団No3の巨躯剛健のアルゴチュだ!その巨体から繰り出される突撃は、同族どころか、ヤマネコさえ撃退したことがあると言うぞ!!」
オサムネの部下たちから歓声が上がる。
「お前の実力を見させてもらう……っチュー」
そう言うと、俺より二回りはでかいアルゴチュとやらが四つん這いになって、力を溜め始める。
「あーぁ、めんどくせぇなぁ。これ」
俺はとても面倒くさそうにぼやく。
「儀式、様式美ってやつですよ。グレン様」
「アニキ、一発思い知らせてやってください!」
「グレン様の強さを知れば、部下たちは一発で掌を返しますっス」
「グレン……」
俺はやる気なさげにぼやくが、オサムネの部下たちは大盛り上がりになっていて、とても納まりそうにない。
「仕方ねぇなぁ……来いよ、デカブツ」
真正面からの突撃で負かすこともできるが、ここは技で撃退するか……俺はヤレヤレといった感じで身体から力を抜きながら、挑発するように手招きする。
「その油断が命取りになる……っチュー」
そう言うとアルゴチュが力強く地面を蹴り、俺目掛けて猪の様に突進してくる。俺はあくびをしながら、その一撃を横目でチラリと見る。
「猪突猛進撃!!っチュー」
アルゴチュの突進が、俺を捉えようとした瞬間、俺は跳ねるようにバク転しつつ飛び上がる。
「弧月脚!!」
俺の蹴りが突進してくるアルゴチュの鼻先を強く蹴り上げ、上に飛び上がった事で突進をやり過ごす。
ドガガガガガッッッ!!
アルゴチュはそのままバランスを崩して突進の威力そのままに倒れ込み、大きな音を立てる。俺の弧月脚で鼻頭を蹴り上げられ、一瞬で気絶したせいだ。
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「わかったか!これがアニキの実力の一部だ!!」
「アニキの足技は最高っス!!」
何が起きたのかわからないのか、オサムネの部下たちは口を半開きにしたまま唖然とした表情を見せると、その部下たちに聞かせるように、オサムネとコジューローが声高に俺を持ち上げる。
「……」
「……」
「……」
「おぉぉぉぉぉぉぉっっっ!アニキっ!アニキっ!グレンのアニキっ!!」
しばらくの静寂の後、その事実を受け入れた部下たちは一斉に大声で俺を称え、その様子を見たオサムネとコジューローが誇らしげに俺に視線を向ける。
こうしてオサムネたちの部下をも取り込み、俺の配下が一気に増加するのだった。
「……っチュー」
誰か、目を回しているアルゴチュを気遣ってやれよ。
そんなすったもんだした後、オサムネのアジトで腰を落ち着けた俺たちだが……
「なんか狭くね?」
「間借りさせてもらっているのに文句とか……よくないですよ、グレン様」
「だってよぉ、フラン姫ともイチャイチャできねぇし」
「なっ!わ、私はそんなっ!!」
「姫のお身体には指一本触れさせぬぞ!!」
「な、こんな調子だからよ」
オサムネの拠点は仮だけあって、整備もされておらず手狭だった。依頼をこなすための前線基地として使っていただけで、居住性など二の次だったからだ。俺とランスロット、フラン姫とジェームズ全員が同じ部屋になってしまっている。
「とりあえず、疲れもとれたから、ここから出るか」
「また、あてもなく旅するんですか?」
「馬鹿野郎っ!!フラン姫との愛の巣になる場所を探しに行くに決まっているだろうがっ!!」
「あ、愛の巣?!」
「○○したり、××したり、△△△するのにいい場所をだな!!」
「○○……××?△△△?!」
俺が発言するたびに、フラン姫が顔を真っ赤にして右往左往する。
「この糞タワケがぁぁぁぁぁっっ!!」
ジェームズのジジイがそんな俺に突撃してくるが、俺は鼻歌を歌いながら、足だけでジェームズの顔を押さえて制する。
「で、何か、いいとこないか、レンスロット?」
「……私に聞かないで下さいよ。土地勘もないのに。ちなみに私はランスロットですからね」
「わ、私も城から出たことがほとんどないから……」
ジジィの相手をしながらランスロットに尋ねるが、わからんらしい。ちなみにフラン姫も同様だ。
「ジジィは……聞くだけ無駄か」
「呪怨がいた為に、使いたくても使えなかった住むのに適した場所なら知っておるが」
「ふんふん。やっぱり知っている訳……知ってんのかいっ!!」
俺は思わずジジィに突っ込みを入れる。
「呪怨を倒したことはまだ知れ渡っていないから、今なら専有できるであろう。ただ……呪怨を倒したとはいえ、ウルヴァリンの住処には近いので、危険には変わりないが……」
「よし、そこに行こう。ウルヴァリンはぶちのめそう!」
「ぶちのめそうって……呪怨の時は偶々うまくいっただけですが」
ランスロットは渋っていたが、俺はジェームズの知っている場所とやらに向かう事を決定したのだった。




