表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

クラスのマスク美人の素顔を拝みたい!

掲載日:2022/09/28

B級以下なおはなしですが、テキトーにお付き合いいただければ(*^^*)

 「ご飯を食べている姿を見るのが好きな人」の心理が、ボクには理解できない。




 食事は大事な行為だ。放棄すると、命にかかわる。生きていくうえで欠かせない日課の1つだ。

 そんな時間を、誰かに監視されている気分はどうだろうか。きっと、鋭い視線にプレッシャーを感じて、せっかくの美味しい食材の味もわからなくなってしまうことだろう。




 自分が行動を起こす前に、それをされたら相手がどう思うかを考えること。




 それはとても大切なことだ。

 ボクは、何かをする前には必ずといっていい。そういう場面をしっかりと想像してから、行動に移すことをモットーにしている。

 ま、その結果ボクが活動的というには程遠い日常を過ごし、放課後はいつも自室に引きこもっている陰キャであるというのは、また別の話。



 とにかくだ。食事中に監視されるのは、日々の楽しみが失われるに等しいことだとボクは思う。

 ただでさえ色のない生活を送っているボクからしてみれば、数少ない心のオアシスの時間にそのような目に遭うのは何が何でも避けたい。だから、ボク自身も、他の人の食事姿をジロジロ見るなんて、絶対にしないと誓っていた。



 あの日までは。




♢♢♢





 今日からボクは晴れて高校2年生となった。ついこの前まで、中坊だった気がする。


 それもそのはず。このご時世、学校行事はすぐ中止になるし、緊急なんちゃら宣言で登校禁止、学級閉鎖も経験したなあ。


 そんなわけで、高校1年のクラスメイトとの思い出は、これといって存在しない。



 まあ、ボクみたいな陰キャには平常運転だけどね!



 きっと普通の高校生活を送れていたとしても、ボクの日常は何も変わっていないだろう。むしろ思い出がないことは病気のせいにしちゃえば良いんだぜ!体の良い言い訳ができたってもんよ!




 …考えてて悲しくなってきたな。




 流石に今年は少しくらい、仲良く話せる友人を作りたいものである。



 そう思って、ボクはクラス名簿に目を通す。

 前に同じクラスだったメンバーは5人ほど。残りの30名ほどは、顔も名前も覚えがない。



 ボクはやっていけるのか…



 ふと、不安になる。


 しかし、よく考えれば、ボクは昨年度の1年間も無事、やり過ごしてきたのだ。それに、元クラスメイトといっても、顔に見覚えがあるだけでほとんど話したことがない他人だ。だから、問題ないね!



 …また悲しくなってきたなあ。



 いかんいかん、まずはクラスメイトの名前を覚えるところから始めたい。



 クラスでの最初の席は指定されていて、苗字の順になっている。

 ボクの名前は安住勇次郎。今回のクラスには赤城くんとかいないかな~と思ったが残念、いなかった。よってボクはいつも通りの右前最前列だ。


 いわゆる主人公席のちょうど反対側に位置するこの席は、休み時間のたびにクラスメイトが通過し、先生も真っ先に入ってくるので落ち着きのない面倒な席だったりもする。


『また…この位置か…』


 そう心の中で呟いて、ボクは後方を見渡す。


 先ほどまではまばらだった生徒たちもいつの間にか増えており、気づけばその多くは、早くもお互いに色々と会話をして、友達作りに勤しんでいるようだ。


『ボクも混ざらなきゃ』


 しかし、身体が机から離れない。長年染みついた陰キャ根性は、そうそう治るものではないのだ。


 春休みに読みふけっていた学園ラブコメ漫画。これまで空気のような存在として学園生活を送ってきたボクが、どうして今こんなにもやる気に満ちているのかといえば、その漫画が原因なのだが、やはりボクにはまだ早かったようだ。


 自室では日頃、漫画やゲームを通じて異世界ファンタジーの方がよく触れ合っているし、そんなボクにとっては剣と魔法と魔物の世界の方がリアルで、高校生活のラブコメのが異世界まであった。というわけで、ボクの魂の根幹となる部分が、今はまだこの机から動いてはならないと激しく訴えていた。


 …そもそもだ。ああいった漫画に出てくるヒロインのような、美人で可愛い女の子なんて同じクラスにいるわけがないのだ。フィクションにもほどがある。


 そう。ボクが今、机に固定された状態に陥っているのは、魅力的な学園ラブコメとしての環境がこのクラスに整っていないだけで、決してボクが怠惰だからではないのだ。


 その結論に至ったボクは、諦めて黒板のある正面へと向き直そうとしたのだが…




 ふと、1人の少女が目に留まった。




 教室のほぼ中央の席にすっと座った彼女は、佇まいは上品で、スタイルも良く清楚で色白で黒髪ロングのなびく陰キャ殺しなボク好みドストライク少女であった。




 …おっと。ちょっと興奮して早口でまくし立てる感じになってしまった。

 ズバリ、彼女の美しい姿に、うっかり一目惚れをしてしまったのだ。


 いや、そんなことはどうでもいい。それより、


『うう…ここからじゃよく見えない』


 彼女からにじみ出るオーラはどこかクールで、かつ可愛らしさを伴っている。が、ちょうどクラスの中央付近に位置する彼女の席とボクの席の間に座っている柿井くんが邪魔で、肝心のお顔がよく見えないのだ。


 ボクは体を左右にヒュッヒュと揺らし、柿井くんの巨体を交わそうとする。




 …それは、ボクが体育以外で最も活発に動いた瞬間であった。




 前のクラスでも一緒だった、ぽっちゃり体型の柿井くん。一瞬でも、顔見知りの人が近くの席にいて良かったと考えてしまった自分が恨めしい。彼の巨体はボクの視界を大きく遮り、柿井くんの友人である下山くんとオーバーリアクションで談笑していることもあって、現在は動く壁として、ボクの目の前で猛威を振るっていた。


 しかし、ボクも簡単には諦めない。尚も左右に体を動かし、一瞬の隙をついてやろうと意地を見せる。

 そんなボクの姿はきっと、まるで喫茶店で美味しそうなスイーツが運ばれてきたときの美少女や、レースゲームに夢中になって思わず体を左右に揺らしてしまう美少女のように、多くのクラスメイトからは可憐に映ったことだろう。




 そして、ついにその瞬間は訪れる。

 柿井くんの動きを読み切ったボクは、見事、彼の体の脇から、首を出すことに成功したのだった。ボクの視線の先には、麗しき彼女が…!


 ―――ヤバい、心の準備を!
















 マスク




 そうだった…


 ボクがいかに日頃、他人に興味を持っていないかということがばれてしまった…

 言わずもがな、彼女のお顔にはピッタリと、真っ白なマスクが張り付いていたのであった。


『学園ラブコメ漫画の世界と、このご時世は違うんだ!!!』


 ちくしょう




♢♢♢




 結局、初日は簡単な自己紹介と担任からの諸々の説明だけで終わってしまい、彼女のお顔を拝見する夢は叶わなかった。




 家に帰ったボクは、そりゃもう色々と調べた。


 彼女の名前は、クラス名簿によると 清水瑠衣乃 さん というらしい。ボクは、彼女の連絡先を知るために、今日は柿井くんに話しかけて生まれて初めて学級L○NEのリリース勢となったのである!(昨年度は「あれ、いなかったんだ」的なノリで2ヶ月後に参加)


 しかし、肝心の彼女のプロフィール画像は、ネコ。

 家で飼っているのだろうか。ふさふさの毛は綺麗に整っていて、クッションの上でスヤスヤと眠っている。


 可愛い…


じゃなかった。危うく目的を見失うところだった。


 とりあえずボクが裏でこそこそ調べているのがばれては恥ずかしいから、清水さんのことをこっそり友だち登録しないよう細心の注意を払って画面をタップし、ホーム画面に戻る。


 次に、彼女のSNSアカウントがないか検索した。ツ○ッターやインなんとかさんのことだ。


 しかし、どれだけ探しても、見つけることができなかった。どうやら彼女はそういったものをやっていないらしい。「うえーい(プ○クラ)」みたいな感じで自分の顔写真とか適当に掲載なさるのが今どきのJKだと思っていたが、現実世界にはそうでない子もいるということを知った。気がついたら、ボクの検索履歴は清水瑠衣乃で埋まっていた。ボク気持ち悪いね




 結局、手がかりを掴むことのないまま、ボクの貴重なゲーム漫画引きこもりタイムは消えていってしまった。

 履歴を一つずつ消去しながら―――ボクはやれやれ系主人公の如く、大きなため息をつくのであった。




♢♢♢





 翌日。


 本当は、彼女の一挙手一投足に注目したいところだが、流石にそれはやり過ぎだと感じる。このままじゃボクはストーカーだ。反省してます、はい。

 見知らぬ冴えない男子にジロジロ見られるのは、きっと気分の良いことではないだろう。最初にも言ったけど、ボクは他人にされて嫌なことはしないと決めているからね。その辺はちゃんとわきまえているつもりだ。




 そうは思いつつ、今日もボクは彼女を観察している。




 しかし…一向にマスクを外す気配がない!


 授業中、チラチラと彼女の方に視線を飛ばしてみたが、当たり前だけど彼女はその見た目通り、授業を受ける姿勢は真面目そのものであり、常にマスクを着用したまま黒板に釘付けである。

おかげでボクの視線に気づいていないのが幸いだが、この調子で授業中に何度も後方を振り返っていては、他のクラスメイトに不審がられるのも時間の問題だ。



 じゃあ、いつ見るチャンスがある?



 打開策を見出せぬまま、昼休みとなった。






「おい、そこのきみ。東くんだっけ??」


 新しくクラスメイトになった、はじめましての鈴木君が、購買行こうぜと声をかけてくる。

 ボクは安住だから名前を間違っているのだけれど、こうやって普通に声をかけてくれるクラスメイトのことは大事にしたいと思う。


 おう、と返事をしたボクは、財布を持ったことを確認し、席を立った。




 授業が早く終わったうえに、早々に教室を後にしたからだろうか、売り場にはまだ生徒は1人もおらず、閑散としていた。

 購買のおばちゃんは、「暑いわね」と言って飲み物を飲んでいたところだったが、ボクがマスクを外してほしいと思っているのは、貴方様じゃないんだよなあ!




 ん…?待てよ??




 飲食中。


 それがあった!




 どうしてもマスクを外さなければならない瞬間。それはいつなのかを深く考えるべきだったと気づく。ボク、もっと頭がよければなあ。

 ダイエットが気になるお年頃とはいえ、まさかとは思うが昼食を一切とらないJKはいないだろう。

 つまり、清水さんがマスク越しにごはんを口に運ぶことのできる超能力を持っていない限り、絶対にチャンスは訪れるのである!!


 早く買って教室に戻らなきゃ


 隣であれでもないこれでもないと、熱心にパンを選ぶ鈴木君に、少しイラついたのは内緒だ。




♢♢♢




 結局鈴木君は、シャケ弁当にした。いや、なんでだよ!!

 更に箸を貰い忘れたとかで、もう1往復する羽目に。

 そして…


 お喋りしながら教室に戻ったころには、彼女はトン、と弁当箱を整えてカバンにしまっているところだった。勿論、マスクを着用した状態で。




 ボクは、その場で崩れ落ちた。






 …大丈夫。こんなオーバーなリアクションをしてしまっても、心配してくれるのはその場にいた鈴村君だけだってくらい、ボクの空気に溶け込むスキルのレベルは高いのだ。


 あ、間違えた鈴木君だった。これでおあいこだね。




♢♢♢




 気づけば今日の最後の授業も終わり、もうすぐ帰りのホームルームが始まる頃だ。


 いよいよ1日が終わろうとしているが、結局何の成果も得られませんでした。


「はあ…」


 ボクはクソデカため息をつく。しかし、まだ諦めたわけじゃない。授業が終わったからずっと、ボクの目は彼女に釘付けだ。


 というのも、彼女は先ほどからカバンの中をゴソゴソと探っているのだ。そして、手に取ったのは、1本のペットボトル。



 そう、昼以外にも、人間は水分補給をするものなのである!!!



 これ、すごい発見では??


 キャップを開ける。

 中身は紅茶だろうか。パッケージのラベルに見覚えがある。


 …いやいや。今はそんなことはどうでもいい。だけど、そんなどうでもいいことでも考えていないと、緊張して汗が止まらないのだ。

 そして、ついに彼女がマスクに手をかけた、その時だった。






「清水さん!」


 後方から近づいてきた、ボクと対側のいわゆる主人公席に座っている女の子である渡辺さんが、清水さんに話しかけた。


 すると、清水さんは…



 外しかけていたマスクを再び着用してしまった!






 おいーーーーー!!何やってくれてるんだ渡辺さん!!!


 今めっちゃいいとこだったじゃん!あとちょっとで、マスクはずしそうだったじゃん!




 …いや、そうだよね。話しかけられたら話さないとだし、そしたら飛沫のリスクがあるからマスクつけなきゃだよね。



 そして、絶望するボクの視界で、追い打ちをかけるかの如く、揺れる柿井くん。

 ごめん、正直今はどうでもいいわ。



 ちくしょう



 ここからだと会話の内容がよく聞き取れないのだが、見たところ渡辺さんは清水さんとは元から仲が良いわけではなさそうだ。きっと清水さんに興味を持って、話しかけてきたのだろう。その陽キャ特有の行動力は尊敬するけど…今じゃないよなあ。


 そこには、キャッキャウフフと楽しそうに会話する女の子2人を、遠目から観察するボクという、何とも気持ちわrいやありきたりの構図が、出来上がっただけであった。






 無情にも、もうすぐチャイムが鳴る。


 ボクは諦めて前を向き直し…

























てなかった!!



 渡辺さんとの会話中、ずっとペットボトルが机の上に置かれていたこと。


 このボクがそれを、見逃すわけはなかったのだッ!!


 ボクは、初めから紅茶の行方を見届けるまでは、彼女から目を離さないと心に誓っていた。


 そして、チャイムが鳴るまでの残りわずかの時間で、清水さんは再びペットボトルを開け、マスクに手をかけて…




「…!!」















 明日から学校へ行くモチベーションが爆上がりした

 ありがとう清水さん

最後までお付き合いいただきありがとうございました!


このご時世、一緒に過ごすクラスメイトの顔がしばらく経っても覚えられないってことありそうですが、どうなんでしょう??


今の学園のリアル、私気になります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 確かにマスクしたままだと顔覚えられないよなぁ。 [気になる点] このペースで主人公君は清水さんに声をかける事が出来るんだろうかw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ