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人助けのその後

「おばあさん大丈夫ですか?荷物持ちましょうか?」

大きな荷物を抱えて階段を上がろうとしている所に声をかけた。



「ほんとかい?ありがとう甘えさせてもらうよ」

僕はおばあさんから荷物を受け取ると階段を駆け上がった。



歩道橋を渡り終え、おばあさんからお礼を言われると少し駆け足で学校に向かった。



僕は黒井学校に通う2年生の霧野(きりの) (とおる)

人助けが最近のマイブーム。

理由はなんであれ人助けは気持ちが良い。こうした自己満足のもと僕は成り立っている。



「ふぅ、今日もいい事した」

そう呟きながら席に着いた。



「あの、霧野君!これ、この間のお礼!」

見覚えのある女の子から何かの入った紙袋をこちらに突き出しながらそう言われた。



「ごめん、受け取れない。そういうの気持ち悪い」

僕は本心からそう言った。



「え!?気持ちわ…え!?どういう…え…なんで…そんな事…うわああぁぁん…」

女の子は泣きながら教室を飛び出してしまった。



「またそういう事言って泣かしてる。これで何人目だ。もう少し言葉考えろよ。透はそれでなくとも言葉足らずなんだから」

そう言ってきたのは僕の斜め前の席に座っている幼なじみで僕の親友の天道(てんどう) (あつし)だ。



「悪い…ああいうの貰うとどう言えばいいのかわからないしお返しとか色々悩むからそういうの考えると気持ち悪くなっちゃって…」

泣かしてしまった事に罪悪感を感じつつ、胃のキリキリする痛みに耐えながらそう言った。



「馬鹿。ああいうのはありがとうだけでお返しも何もいらないんだよ。って何回言ったらわかるんだよ」

こういう事がある度、敦は僕を叱ってくれている。



「頭ではわかってるんだけど…でも…やっぱり…気になってしまうんだ…」

別に敦に言われた事を忘れた訳では無く、単純に僕の心の問題、受け止め方の問題だ。



ー キーンコーンカーンコーン ー


「はい授業始めるぞー。席につけー」

チャイムと共に先生が教室に入ってきた。



そして放課後



ー ガラッ ー

授業が終わり少したった後僕が教室で1人でゆっくりしていると急に扉が開いた。



「霧野君。ちょっと来て。話があるの」

見た事の無い女子2人に校舎裏へ連れ出された。



「ちょっとあんた。朝のはどういう事!あんたにお礼してくるって言って帰ってきたら陽菜(ひな)泣いてたんだけど!」

どうやら朝の子の友達のようだ。



「あれは、悪気があって言ったわけじゃなくて…誤解というか…なんというか…」

急な事もあり少しテンパってしまった。



「陽菜の気持ちを無下にした上に二言目に気持ち悪いだなんて誤解も何も無いでしょ。あんたちゃんと陽菜に謝りなさいよ!明日までに謝って無かったらあんた許さないから」

そう言うと2人は帰って行った。



「ふむ…どうしようか…」

僕は嫌な予感がした。



部活の終わる頃に学校を徘徊しているとあの子を見つけた。

「あの…陽菜さんだよね。朝はごめ」

言い終わる前に彼女は走って逃げてしまった。



「普通はこうなるよなぁ…」

嫌な予感が的中してしまった。

その後も2回程見つけて声をかけようとしたがどちらとも声を発する間もなく逃げられてしまった。



ー 次の日 ー



今日は同じマンションの方がごみ捨ての途中、ゴミ袋の口が緩んでしまい、中の物がこぼれてしまっていたようのでごみ拾いを手伝い、今日も気持ちよく学校に…とはいかなかった。

昨日の事があるからだ。


僕は学校についてからというものずっとびくびくしていた。

しかし何事も無く放課後まで時間は過ぎていった。

そして



ー ガラッ ー



また教室に1人でいると扉が開いた。



「あんた、結局陽菜に謝って無いらしいじゃない。どういう事?」

僕の事を睨みつけながら問い詰めてきた。



「いや、謝ろうとはしたんだけど…話しかけようとする度逃げられてしまって謝るどころじゃ無かったんだよ」

僕はあったことをそのまま告げた。



「ふんっ!どうせ陽菜の事探しもせずそのまま帰ったんでしょ。この嘘つき!」

予想通り信じては貰えなかったようだ。

するとそこへ…



ー ガラッ ー



「その人の言ってることは嘘じゃない…あんなこと言われてつい、話したくないって思っちゃって逃げちゃったの…」

昨日の子がドアを開けてそう言った。



「あら、そうだったの…勝手に決めつけてしまってごめんなさい。でもそれとこれとは別。ちゃんと謝って」

ちゃんと謝罪をしつつ、しっかりと筋の通った事を言われてしまった。



「昨日はごめん。君を傷つけたかった訳じゃなくて、ただ僕がああいった物を貰うとどう反応してどうすればいいのかわからなくて僕自身の心の中が気持ち悪いってなっちゃったんだ…けして君に対して言ったことじゃ無いんだ」

僕がそう言うと



「あんたよく少し言葉が…いや、だいぶ言葉が足りないって言われない…?」

と少し引いた感じで言われてしまった。



「そうだったんですね。私に言われたものだとばかり思っちゃってました」

彼女はほっとした顔でそう呟いた。



「改めてこれこの間のお礼です。貴方に助けられなかったら今頃私はどうなっていたかわかりません。大した物ではありませんが受け取って下さい」

昨日と同じ紙袋をこちらへ突き出し、そう言った。



僕は少し前、彼女がボーッとしながら赤信号を渡りそうになっている所少し手を引いた程度なのでそんなに大袈裟には感じてなかったのだが彼女は違ったようだ。



「えと、その…ありがとう」

と一言いうと僕はその紙袋を受け取った。



「お礼のお返しはむしろ失礼なのでそういう時はそのありがとう一言でいいんですよ」

そういうと彼女は微笑んだ。



「じゃ、そろそろ私たちかえるから。あんたもし他の人にも同じような事言ってるんだったらちゃんと謝りなさいよ?後これからは気をつけるのよ」

そう言うと彼女たちは仲良く帰って行った。



「なんだか不思議な体験をしたみたいだなぁ…」

色々と初めての場面で少し放心状態となった。




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