7.黒の砦に着いたみたいです
訳の分からない騎士達の対応から、体感で二時間くらいが経過した頃、馬車の速度が急激に落ちた。
どうやら目的地に着いたらしい。
大きな門が開く音と、沢山の人の賑やかな声。
馬車はその中に入って行ったみたいだった。
それから暫く走って行った馬車は、嗎と共にピタリと止まった。
馬車の扉が開かれた私は、恐る恐る外に出て行く。
途端に、周りを取り囲んでいる人達からの文句が聞こえて来た。
「なんだ、あれ。きったねえな……」
「犯罪者だってよ」
「本当かよ。此処は牢屋じゃねえんだぞ!」
「良い加減にして欲しいわ!」
よく分からないけど、私への怒りと言うより、国への怒りの方が強いみたいだ。
ただ、牢屋じゃないと言う言葉が少し引っ掛かった。
私は、此処まで連れて来てくれた騎士の一人の人と一緒に、真っ黒な外壁の大きな建物へと入って行った。
建物の中も、殆どが黒色で統一されている。
黒の砦と言う名前だからなのだろうか。
そう言われてみれば、私が着替えさせられた服も、さっき集まっていた人達も、全員黒色の洋服だった。
皆んな真っ黒だと、まるでお葬式に来たかの様な、気持ちにさせられる。
私の前を行く騎士は、少し大きめな漆黒のドアをノックして、中へと入って行った。
「ヌェイリブさん」
騎士の声に、書き物をしていた中年の男性が手を止めて顔を上げた。
「ロッチア、お帰り。その子がそうなのか?」
「ああ。でも、どうするんだ?これ」
「どうもこうもない。此処に住まわせるだけだ」
「本気かよ……」
「カムネッカ王国からの命令だ。従わなければならない」
彼らの会話から、どうやら私は歓迎されていない様だ。犯罪者と言う嫌われ者なので、仕方がない事なのかもしれない。
「陛下から、私が面倒を見る様にと言われている。このまま家に連れて帰るぞ」
「ええ!!家に連れて帰るのかよ……」
ガッカリと肩を落とした騎士と、立ち上がった中年のおじさんと共に、私は歩き出した。
私の聞き間違いでないのなら、彼らは私を家に連れて帰る気でいるらしい。
それは一体どう言う事なのだろうか。
私は黒の砦に幽閉されに来た筈なのに。
何も分からない私は、兎に角、彼らの指示に従う事にした。
建物を出て、跳ね橋を渡る。
ふと後ろを見ると、大きな建物だと思っていたのは、漆黒の大きな洋風のお城だった。
ぱっと見の印象は、魔王城っぽい。
日が暮れて来た事もあり、お城のバックに赤い大きな夕日が見えて、ちょっとカッコいい。
お城に見惚れて足を止めてしまっていた私に、騎士の男が苛立ちを向けた。
「おい!早く歩けよ!」
私は慌てて前を向くと、急いで歩き始めた。
私を連れて来た騎士の一人、短髪で薄茶色の髪色をしたこの男性は、ロッチアと言うらしい。
年は私より少し年上だろうか。
此処まで来る旅の間、ずっと厄介者を見る目で私を見ていた人だ。
彼は、焦げ茶色の長い髪を後ろで束ねたヌェイリブという名前の中年男性と、談笑しながら街中を歩いて行く。
囚人の筈の私は、後ろからヒョコヒョコと二人に付いて行った。
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