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51.隠されていた真実


次の日の朝。

泣き過ぎて瞼が腫れ上がった私に、城に来ていた回復魔導師さんが回復呪文をかけてくれた。


お陰で瞼は治ったけれど、私の心は重たいままだ。

しかもそれは、私の魔力にかなりの影響を与えてしまった。


精製する為の魔力が発動しない。

真っ青になった私に、他の調剤士さん達が落ち着くまで少し気分転換をと、作業の手を止めてくれた。


在庫は数日分あるので焦る事はない。だから安心して。と言って貰った私は、ホッと胸を撫で下ろしながら、部屋を出て城の中を歩き始めた。


行く宛の無い私は、城の中で寝泊まりしているマノアさんに会いに行った。

どこに居るのかと確認すると、マノアさんは調合部屋近くの大部屋にいるらしい。


そこへと向かった私は、マノアさんの姿を見つけて駆け寄って行く。

マノアさんは優しくホッとする様な笑顔で迎え入れてくれた。


大部屋には、マノアさんと同じ様に体に蕾が現れてしまった人達、二十三人が集められていた。

毎日一人二人と人数が増えていくが、今の所、症状が悪化した人はいない。


蕾が出来た事で、死の恐怖に怯え、顔を硬らせていた人達だったが、少しずつ笑顔をみせる様になって来ていた。


今日も薬の時間になり、皆んなグイッと一気に飲み干す。

そして顔を見合わせた後、私の顔を見ながらクスクスと笑い合った。


「何回飲んでも不味いな」


「ええ。本当にね」


「ええ!皆んな、酷い!」


不味い不味いと言いながらも、皆の顔が笑顔になる。

その顔を見られるのがちょっと嬉しい。

少し元気になった私がマノアさん達と談笑していると、マリク達が荷物を持ってやって来た。


「あっ。ねえちゃんだ」


声をかけられた私は、マリクの元へと駆け寄って行った。


「マリク!お仕事しているの?」


「うん。城での仕事って給料良いんだ。ずっといたいくらいだ」


マリク達はケラケラと笑い出した。


邪紋が消えた人達は、全員城に集められた。

あの時薬を飲んだ人達や、私の薬を飲んでいた孤児院の子供達も、全員避難させられて来ている。


どうしても下級層に戻りたい人は、絵師の人に、邪紋を体に描いて貰って帰るらしい。

しかし、戻る人は殆どいない。

衣食住が確保されているからと言う理由も有るが、一番の理由は身の危険を感じているかららしい。

邪紋が消せると言う確実な情報が出ない限り、下級層に戻るのは危険なのだそうだ。


そうと分かるや否や、マリクとその友達は、城の中での仕事をサッサと見つけて来た。

相変わらず、逞しく生きている。


「その荷物、どこに持って行くの?」


「これ?これは騎士団だよ。戦争になるかもしれないから、ちゃんと準備はしておかないとね」


「えっ?戦争?魔物との戦争が、またあるの?」


「はあ?何言ってんだよ。カムネッカ王国が、攻めてくるかもしれないって、皆んな言ってるだろ?相変わらず、世間知らずなんだから……」


マリクはやれやれと言った顔を見せた。

カムネッカ王国が攻めてくる……。

それは一体どうしてなのか。

そんな話を、私は全く聞いていなかった。


「どうして?なんでカムネッカ王国が攻めてくるの?」


「知らない。でも、この間来た第一王子が此処に攻めて来るんだろ?人気のある奴だから兵も沢山いるし、この砦は危ないんじゃ無いかって、街の人も皆んな不安がってたよ」


「第一王子?でも、リファイドは亡くなったって……」


「えっ?あの人、死んだの?あれ?でも第一王子が攻めて来るって、みんな言ってたよな?」


確信が持てなくなったマリクは、周りにいる友達の顔を見た。

彼らもまた、不思議そうな顔を見せる。


「うん。俺も第一王子が攻めて来るって噂で聞いてたけど……」


「俺も。街で結構な噂になっていたし……」


マリク達が嘘をついている様には思えなかった。

何がどうなっているのか分からない。

顔を上げた私は、大部屋に顔を出したロッチアの姿を見て急いで駆け寄って行った。


「ロッチア!」


「サナ……。昨日は、すまない。俺は……」


「ねえ、ロッチア。リファイドは生きているの?リファイドが砦に攻めて来るって噂を聞いたんだけど」


「あっ……」


目を泳がせたロッチアは、私から視線を逸らした。

その様子が、全てを肯定していた。


「……生きているのね。リファイドは生きているんでしょ!どうして……。どうして死んだなんて嘘をついたの?ねえ。何がどうなっているのか、ちゃんと説明してよ!!」


「それは……」


口を開こうとしたロッチアだったが、再び口を閉ざしてしまった。

私は周りにいた騎士の人達へと、視線を移した。

彼らもまた、私から瞳を逸らしてしまう。


「酷い……。皆んな知っていたのね。皆んなで、私の事を騙していたのね!」


「サナ!頼むから、落ち着いて話を聞いて来れ」


「嫌!!ロッチアの話なんか、もう聞きたく無い!」


私は、彼に掴まれた腕を強く振り解いた。

次々と溢れては零れ落ちる涙を拭い去る事も忘れて、私は彼らを睨み付けた。


「リファイドが死んだって聞いて、私がどれだけ悲しんでいたか、ロッチアも騎士の皆んなも知っていたでしょ?それなのに、私を騙していただなんて、こんなの酷い!」


「……ごめん」


謝られたって許せない。

側で見ていた癖に……。

ずっとずっと、見ていた癖に……。


「いっぱい泣いて、いっぱい後悔したのに。私の所為で、リファイドが死んでしまったって、毎日苦しんでいたのに……。それなのに、それが嘘だっただなんて、そんなの許せるわけないじゃない!」


「サナ!」


「大っ嫌い!皆んな、大っ嫌い!!!」


大声を出した私は、部屋の出口に向かって走り出した。



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