表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
31/60

31.困った人達

 明るい朝日の光に誘われる様に、ロッチアはベッドから体を起こした。


 大きく伸びをして体を伸ばし、そしてベッド横にあるサイドテーブルを見つめる。

 そこに置いてあった回復薬を手に取り、一気に飲み干した。


「……まずっ」


 相変わらず不味い。

 パァーッと広がっていく回復薬の効果を、瞳を瞑ってしっかりと感じ取った。


 あれから二ヶ月近く経ったが、サナには一切会っていない。

 それでも彼女を感じていたくて、サナの知らない友達を使って、自分の分の回復薬を買いに行って貰っている。


 友達が言うには、サナは元気そうだと言っていた。

 でも、サナに会った事がない人が見て元気そうに見えても、本当は違うかもしれない。


 自分の目で見て確かめたいけど、会いに行く訳にはいかない。

 まだ自分の心の中に、彼女を思う気持ちが残っているからだ。


 会いたいけど会いに行けない。

 葛藤の日々は続いている。


(あいつ、大丈夫かな。……マノアさんなら、分かるかも)


 ロッチアは服を着替えると、ダイニングへと向かって行った。


 用意されていた朝ご飯を食べながら、チラリと横に座るヌェイリブを見る。

 彼は朝食を終えており、身支度をする為に立ち上がるとダイニングから出て行った。


 それを確認したロッチアは、パパッと朝食を食べ終えると、使用人と共に後片付けをするマノアへと視線を移した。


「あ……あのさ」


「ん?どうしたの?」


「……あいつ、最近どう?」


「ごめんなさいね。私には、分からないわ……」


「あっ!いや、別に……。ちょっと聞いてみただけで……」


 ロッチアは慌ててその場から立ち去った。

 二人が自分の為に、サナの事を思い出させない様にしてくれている事は感じていた。


 だからなんとなく自分も、サナの事を口に出す事はなかった。

 マノアには会いに来ているのかもと思っていたが、どうやらそれすらない様だ。

 やっぱり少し心配になる。


「おーい、ロッチア。そろそろ行くぞ」


「あっ!ちょっと待って!今、行く」


 返事を返したロッチアは、直ぐに支度を済ませ、ヌェイリブと一緒に城へと向かって行った。


 もう少しで城だという時、嫌なものを発見する。

 ロッチアの眉間に深い皺が寄った。


「ロッチア!」


 駆け寄って来た女は、ロッチアの腕にその手を絡ませた。

 無言で顔を引き攣らせるロッチアの横で、苦笑いのヌェイリブが口を開いた。


「おはよう、レミナ。今日も学習院に行く前の挨拶運動かな?」


「おはようございます、ヌェイリブ様。ロッチアに挨拶をしたので、これから学習院に向かいますわ」


「ああ、そうか……」


「鬱陶しいんだよ。引っ付くな!」


 ロッチアは、掴まれている腕を無理矢理引き離すと、ズカズカと歩いて行く。


「いやん!婚約者に対して酷い!」


「誰が婚約者だ。勝手に決めるな!」


「ええ!ヌェイリブ様は、私とロッチアの婚約を認めて下さっていますよね?」


「うーん。それは前にも断った様な……」


「何度も断ってんだろうが!この女、妄想癖でもあるんじゃねえの?学習院に行く前に、病院に行け!」


 ロッチアはレミナを無視すると、サッサと城の中へと入って行った。

 見るからに機嫌悪く歩いて行くロッチアの背に、ヌェイリブは深いため息をつく。


(これはまたバーレス(レミナの父)に苦情を言わんとな……)


 困ったものだと、自分の家の馬車へと向かって行くレミナを見送った。


 バーレスはヌェイリブの同僚にあたる男なのだが、昔から自分の娘にはロッチアを!と言い続けている。


 それは、ロッチアが将来有望な騎士として城に仕え始めてからは、一段と酷くなった。

 お陰でレミナも完全にロッチア一筋で、いくら断っても諦めない。


 ロッチアはレミナがあまり好きなタイプでは無いらしく、どれだけレミナがアプローチしても気にも止めていない。

 とても鬱陶しい存在としてしか、認識していない様だ。


早く諦めて欲しいものだが、父親が焚き付けている為、これからもレミナの態度は変わらないだろう。


(それでなくても、恋愛関係の話は、今のロッチアにとって地雷でしかないのに……)


ため息をついたヌェイリブの頭に、ふとサナの姿が浮かび上がって来た。


あれからずっと、サナは姿を現してはいない。

マノアには会いに来ているかと思ったが、やはりそれすらない様だ。


少し心配になったので、お金を使って雇った者に調べさせたが、普通に薬を売って生活をしているらしい。

家と広場と市場への往復の毎日だと伝えられた事で少し安心した。


仕方がない事なのだと思う反面、若い二人の傷付いた心を思うと、ヌェイリブも辛くなってしまう。


だからこそ、暫くの間ロッチアをそっとしておいて欲しいものなのに……。


(一度、アイツ(バーレス)にはキツく言っておかないとな)


その瞳を険しくさせたヌェイリブは、執務室へと向かって行った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ