1.明日はいよいよ
この春、高校を卒業したばかりの18歳、私こと御津月サナは、その日の夜遅く、自分の部屋で一人興奮していた。
「明日だわ!ついに明日、プリンス達に会えるのよ!!」
私は、コンサートチケットの入っている封筒を両手で高々と掲げた。
明日は私がファンとして愛し続けている五人組のアイドルグループ、LaLaLaプリンスのコンサートの日だ。
ファンクラブに入って、早四年。
ファンクラブ総数、数百万人と言われているこのアイドルグループは、日本国内において知らぬ者はいない程の不動の人気を誇っている。
コンサートチケットは、ファンクラブ会員限定でしか売り出されない為、毎回ファンクラブ内で抽選が行われている。
昔からクジ運が悪かった私は、惨敗続き。
しかし四年目にして、ようやく初めてチケットに当選したのだった。
当選のメールを貰った時、これは夢なのではないかと何度も見返した。
どうせ詐欺メールでしょ!とか言いながらも、期待しながら何度も何度も確認し続けた。
数日後、初めて手元に届いたチケットは、紛れもない本物のチケット。
興奮冷めやまず、家の中ではしゃぎ回っていたら、兄二人と両親にガッツリ叱られてしまった。
しかし、そんな事はお構いなし。
嬉しいものは嬉しいんだから仕方がないよね。
チケットを胸に抱いた私は、そっと目を閉じる。
(プリンス達に囲まれている明日の私が、目に浮かぶ様だわ……)
ちなみに当選したチケットは、かなり離れた二階席。
世の中そんなに甘くはない。
瞳を開いた私は、明日持って行く鞄を見つめた。
いつ当選しても良い様にと、ずっと作り続けてきた自作の応援グッズ。
ようやく日の目を見る事が出来そうだ。
「えっと……。忘れ物ってないよね。全部、鞄に仕舞ったよね」
さっき一つずつ確認しながら仕舞ったグッズやお財布等を、もう一度取り出して仕舞っていく。
しかし、そんな手間も全く苦にはならない。
さながら遠足前の小学生の様に、心はウキウキしっぱなしで、楽しくて仕方がない。
間違いない。
全部シッカリと持ちました。
あとは明日の朝に、スマホを鞄に入れるだけ。
ホッと胸を撫で下ろした私は、壁に掛かっている、ドレス仕様の可愛らしい水色の服に視線を移した。
これはお小遣いを注ぎ込んで買った、明日来ていく姫系のコスチュームだ。
彼らのコンサートでは、舞踏会の日、プリンス達の元へ、プリンセス達が駆け付けると言うコンセプトが掲げられている。
実際舞台で踊るのはプリンス達だけだが、プリンセス達の応援も踊っているように美しいという事で、舞踏会と呼ばれるようになったのだとか。
そして勿論、私も友達と一緒にプリンセスになって駆けつける予定でいる。
流石に家から着て行く勇気は無いので、会場近くの最寄りの駅で着替えてから行く事になっている。
私はその横に立て掛けてある鏡に映った自分を見た。
お風呂に入った後、適当に乾かしたボサボサの髪に、パジャマ替わりの高校の時のジャージ姿。
お前本当に女かよ!なんて、兄や弟に言われているが、私だってれっきとした女の子だ。
お世辞にも可愛いとは言えない私だけど、明日は……明日だけはプリンセスになって、愛しのプリンス達の元に駆け付けたいと思います!
気合充分の私は、時計を見て驚きの声を上げた。
「ええっ!もうこんな時間なの!?早く寝ないと、お肌がぁ!!!」
慌てて布団に入った私は、ハッとすると、もう一度ベッドから起き上がった。
ゆっくりと歩き出し、鞄のポケットにしまった封筒を取り出してみる。
そっと開いた封筒から、大切そうに明日のチケットを取り出した。
うん。間違いない。
やっぱり明日のチケットだ。
何度も確認しているけれど、不安になって、もう一度だけ確認をしてみた。
ホッと吐息を落とした私は、妙な気配に気が付いた。
「えっ?なに?」
辺りをキョロキョロと見回した私は、足元に描かれた魔法陣にギョッとする。
次の瞬間、私は魔法陣の中へと吸い込まれた。
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少しでも興味を持って頂けたのなら、評価等よろしくお願いします。
毎日一話、1500から2000文字くらいの更新を予定しています。
更新時間は未定です。
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この話は書き始めたばかりですので、お時間がある方はジャンルの違う他の話も読んでみて下さい。
※魔王よりも魔王らしい俺が転生して転生した話は、外伝までで一度完結しています。
その後、少し続きを書いている状態です。
※東の森の魔女は連敗記録更新中は、完結しております。
※最強の勇者が転生したら……の話は、書いていたものが全て消えてしまいましたので、途中でストップしています。
削除するか書き直すかで悩んでいますので、更新は暫くありません。
新しい話共々、よろしくお願い致します!