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僕は、ごくごく普通の人間だと思っていました。

作者: 七瀬








僕は、普通の人達に紛れている生き物だと最近気づきました。

僕の名前は、木野津慈 48歳、独身、未婚、兄の家族の家

に居候し、兄嫁は普段は優しいが怒ると怖い。

お袋も一緒に二世帯で住んでいる。

僕はお袋と一緒に一階で住んで、二階は兄の家族。

兄貴の娘は、現在25歳で彼氏と同棲して今は家を出ている。

もう一人、下に男の子がいるが部屋に籠って出てこない。

学校でイジメにあっているらしく、不登校が続いている。

兄貴も、息子にお手上げのようで息子の事は全て妻に任せて

いると僕に話してくれた。

兄貴は、子供の頃から勉強もできてそれなりの会社に就職し

て今は部長まで上りつめた。

僕達のお袋の為に、二世帯住宅を兄は建てたのだ。

親父は、僕達が幼い時に過労死している。

その後は、女手一つでお袋が僕と兄貴を育ててくれた。

兄貴は、お袋に恩返しをしようとこの家を建てた。

兄貴の奥さんも、お袋との同居に対して素直に受け入れてくれる。

ただ、僕も一緒にというのは聞いてなかったみたいで、最初は凄く

嫌な顔をされた。

僕は、ずっと小さな町工場で働いている。

一応、社員だがほとんど残業はタダみたいに扱き使われ。

休日出勤も多々ある仕事。

ボーナスも、年々少なくなり。

今年は、コロナもあってボーナスがなくなった。

僕は、給料日になると? パチンコ屋に並び朝から晩までパチンコ

をして過ごす事が当たり前になっていた。

負ければ、月の給料はその一日でなくなる。

まあ、勝つ気で行ってはいるが、負ける事の方が多い。

その度に、お袋にお金を借りるどうしようもない息子。

お袋からしたら? デキのいい兄貴よりデキの悪い僕の方が可愛い

のかもしれない。

頼りにしてくれているという事が母親からしたら、嬉しいのだろう。

こんな生活を、何十年も続けていると、、、?

誰も何も僕に言わなくなる。 

最初は、兄貴にも何度か言われたのが、、、。


【早く結婚しろ!】

【お袋に楽をさせてやれ!】

【もっといい収入の仕事はないのか?】



・・・こんな事を何度も言われたのに、月日がどんどん過ぎ行くと?

兄貴も、諦めたのか? 僕に何も言わなくなった。

兄貴の奥さんには、初めて僕と会った時から嫌われている。

未だに、自立もしないで兄に面倒をみてもらう僕に呆れているらしい。

僕は、その事を最近知った。





 *




・・・僕は、こういう事があって。

初めて、普通の人間じゃないんだと気づきました。

何十年ぶりかに、“高校の同窓会”があった時。

みんな結婚して、仕事も役職が付く年齢になって

家を建て、家庭を持ち、子供もそれなり巣立ってる。

どこかの教授や政治家になった者もいた。

女の子達も、随分と歳を取ったが子供は巣立ち、今では?

旦那さんと二人で幸せな時間を過ごしている人もいた。

みんな元気そうでなにより。

そこに、高校の時からお節介な【児玉】という男が僕にこう言った。



『木野! お前、結婚は? 仕事は何してんだよ!』

『・・・えぇ!?』

『えぇ!? 木野君? 随分と歳取ったわねぇ~ 私もだけど!』

『そんなの、皆お互い様だろう~』

『元気だったのかよ!』

『・・・まあ、ううん。』




根掘り葉掘りと、ずけずけと児玉が僕に聞いてきたので。

僕は、素直に答える。



『僕は、ずっと町の小さな工場で働いているよ 今まで彼女も

作った事はないし、結婚もした事がない! ずっと独身で

今は、兄貴の家族と二世帯で僕はそこに居候してるんだ!』

『・・・・・・』

『・・・へーえ! そうなんだ、まあ、元気そうで良かったよ。』

『出世や結婚だけが、人生じゃないしな~』

『そうだ! そうだ! 独身を楽しむのもいいよな~!』

『・・・あぁ、』




・・・一瞬! 場の空気が固まったのを感じた。

僕の話した事は、間違ってたのかな?

まるで、僕を見るみんなの目が、“バケモノ”でも見る様な目で

僕を見ていたのを感じた。

僕からしたら? ちゃんと仕事もしていて結婚からは程遠いかも

しれないけど? スナックや飲みに行くお店で女性ひとと話す

し女性慣れしてない訳じゃない!

ただ、付き合ったり結婚とまではいかないだけだ。

僕にとって、どうでもいい話が?

ここにいる人達からすれば、“大した話に変わる!”

48歳で、未だ独身で女性ひとと一度も付き合った事がない!

結婚もしていないし、仕事も町工場で働いていて。

何より、兄の家族の家に居候というのは?

【無職】よりもたちが悪いのかもしれない。

皆が僕を見る目が冷たく感じて、僕はサッと逃げるように家に帰った。




【僕は、ごくごく普通の人間だと思っていました。】




・・・でも、違いました。

それが今日! はっきりと分かりました。

大人になると? 誰も何も言われなくなると聞いていたけど?

こんな事なら、早く気づきたかったと心から思った事です。

もう、僕は普通の人間には戻れないんでしょうか?

この歳で、“独身は”ヤバい奴なんでしょうか?




最後までお読みいただきありがとうございます。

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