表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/154

46杯目 異世界の勇者と会ってみた

ゴロンニャ、リンコ、グリンナ、テトテトと順調にパーティーメンバーが再会して、残りの1人のズィ姫とも出会ったからこれで復活かなと思ったら、そう簡単にはいかなかったんだ。

ズィ姫の父親のグィ王が言うには、ズィ姫が勇者と結婚するんだって。それはおめでとうってことなのかな?


「うーにゃ。うー。それで良いかもしれないのにゃ」


何だろう。ゴロンニャの言い方だと、なんか駄目そうにも聞こえるけど。

でも飲みの場にいる誰一人として反対はしないんだよね。それはそれで良いのかな。


うーん。なんだかちょっと変だよね。

普段なら人に聞けるような性格じゃないけどさ、お酒の勢いで聞いてみたんだ。

そしたら、なんだかイマイチ納得できない話なんだよね。


ズィ姫はいろいろな権力者から結婚を求められてるらしいんだ。

そりゃ王様の娘と結婚できたならその一族の繁栄は確定するもんね。


そういう声を抑え込むために勇者と結婚するんだって。え?結婚ってそういうものなの?

いや、自分には相手すらいないけどさ。そんな機会はやってこないかもしれないけどさ。

偉い人たちの世界は知らないけれど、なんかちょっと違うなあって思っちゃったりする。


ズィ姫はどう思ってるんだろう。


「ワタクシは姫という立場がありますから、それでも仕方がないと思ってますわ。みなさんとまた一緒に旅をしたいという気持ちはもちろんありますわ。でもこれが最善策ですわ」


何だろう。しっくりとこないなあ。

結婚ってみんなでおめでとうって思うものじゃないの?

ズィ姫とは初めて会ったけど、ゴロンニャたちのパーティーのメンバーなんでしょ。

他人事とは思えないんだよね。王様だったら何とかならないのかな。

って気持ちが通じたのか、グィ王からとんでもない話が出てきたんだ。


「余が王といえど、むやみに力を使うのは良くないのだよ。それでも余の娘のために思うことがあるのであれば、タクノミが何とかしてくれるか?それなら考え直そうではないか」


え?自分が?何かできるようなことがあるとは思えないけど。


「わっはっはっは。面白いじゃないか。いっそタクノミがズィと結婚するのはどうだ」


は?ティーナがとんでもないことを言い出した。そんな冗談に乗っかる余裕はないって。


「む?面白いかもしれぬな。ズィよ。どうだ?」

「わかりましたわ。そこまでおっしゃるならタクノミ様と婚約すると勇者様に伝えましょう」


えー!なにが起きてるの。わからないわからない。そういうことじゃないって。

いやいや。急に結婚とか。初めて会ったわけだし。

それにその胸が大きいのが凄く良い・・・とかじゃなくて、何を考えてるんだそうじゃないそうじゃない。

パーティーの今後に左右する話であっておっぱいとが充実していて・・・じゃなくて。


そんな感じでわけがわからない頭をすっきりさせてくれたのはズィ姫だったよ。


「本当に結婚するフリをしていただけるなら嬉しいですわ」


ああそうだよね。フリだよねフリ。うんうん。ちゃんと冷静にならなきゃ。

するとグィ王から言われたんだよね。


「どんな形であれ、勇者と結婚せず、それでいて権力者どもから何も言われなくなるなら、ズィがまたパーティーに戻るのを許可しようぞ」


その日はそれで話がまとまっちゃったんだよね。

いやいやいやいやありえないでしょ。何もない自分とお姫様が結婚・・・・・・のフリをするなんて。

誰がどう見ても怪しいし。むりむりむりむり。


そんな自分の考えとは関係なく、数日後に勇者と対面することになっちゃったよ。

さすがに1対1で会うのは無理だから、パーティーメンバーの5人は一緒に居てもらうことに。

みんな頼むよ。自分は何もできないんだから。


魔王の王宮の中にあるめちゃめちゃ立派な部屋で待っているんだけどさ。勇者ってどんな人なんだろう。


「凄くイケメンなのにゃ」

「性格も良いでござる」

「人々からも愛されているわ」

「世の中のために活動しているよね」

「勇者として完璧なお方ですわ」


褒められまくっているよ。あれ?それなら結婚したほうが良いような気もしてきた。

でも本人がそこまで乗り気じゃないのなら止めたほうが良いよね。せめてお友達からみたいな。


そんなことを考えてる間に勇者がやってきたんだ。

うわっ。めっちゃめちゃイケメン。

室内なのにまるでどこからかさわやかな風が吹いてきたみたいだよ。


「あなたがタクノミさんですね。僕が勇者をやっている者です。勇者になったときから名前は無いので勇者とお呼びください」


凄く人当たりの良い感じだね。

なんだか安心する気がするのは勇者が持つ何かの能力なのかなあ。

ただ人が良いだけかな。


「初めましてタクノミです。ズィ姫とは・・・・・・」

「婚約なさるんですよね」


勇者の方から言ってきたよ。結婚する予定だったのに思ったより素っ気ないというか何というか。


「ズィ様が本当に幸せになるのでしたら、僕はズィ様の意思を尊重いたします」


これはすんなりといきそうだね。

ズィ姫の婚約者のフリって大変だと考えてたけど、これはなんとかなりそうかな。


「そ・・・そうですわね。タクノミ様と・・・・・・こ・・・婚約いたしますわ」


ちょっとちょっと。ズィ姫の演技が下手っぴすぎるよ。

いくらフリとはいえ、これじゃバレバレになっちゃいそうな。


「ズィ様。もしかして何か問題がおありですか?それなら僕との結婚を考え直していただいてもよろしいですよ」


ほらほら。こんなことになっちゃうよ。せっかく簡単にいきそうだったのに。


「ただし前からお伝えしてある通り、僕はズィ様のことを愛することはできません」


ん?


「幸せにすることもできません。特別扱いすることもございません」


ん?ん?


「ただあるがままに居てくれれば良いのです」


んんん???

なんかズィ姫のことを置物だと思ってない?

結婚ってそういうものじゃないでしょ。相手を大切にするのが当たり前なんじゃないの?


これまで婚約者のフリをなんとなくやってきたけど、しっかりとやらなきゃダメだ。

勇者にちゃんと言わなきゃ。


「勇者様には渡しません。自分がズィ姫を幸せにします!」



評価、ブックマーク、感想、レビューなんでもすべて嬉しいです。

めちゃめちゃめちゃめちゃ嬉しいです。


読んでいただけるだけでうれしょんするほど喜びますが、反応していただけるのは最大のご褒美です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ