39杯目 4人目のパーティーメンバーと宅飲みしてみたところ
「我こそが魔族を統べる王の中の王。魔王タタンタであるぞ」
誰がどう見ても魔王だなって思える風貌の魔王タタンタが何故だか自分の家に飲みに来ているんだ。
「貴様がタクノミか。いろいろと聞いておるぞ」
え?どういうこと?
飲みに来てるだけでも何だかわからないのに、自分のことを知ってるだなんて。
「ふはははははは。我が威光に震えておるのか。それも仕方あるまい。長い魔族の歴史の中でも我ほどの魔王はそうはいまいからな。特別に我の前に存在することを許してやろう。そもそもなぜ我が偉大であるかと言うと、それは・・・・・・」
スパーン!!!!!!!!
え?魔王が思いっきり頭を叩かれたよ。そして叩いた女性が一言。
「パパ!そんなこと言ってると悪魔的に嫌いになっちゃうよ」
「テトテトちゃん。そんな。嫌いにならないでおくれ」
あれ?魔王の威厳がどっかにいっちゃったぞ。
それにテトテトちゃんって。やっぱりそうだよね。
魔王城に行ったときにいろんなところでグッズを見かけたもん。
本人を目の前にするとグッズよりとても魅力的だよ。
とても綺麗で美しくて色っぽい。大人気になるのもうなずけるね。
「あなたがタクノミさんだよね。話は聞いているよ。魔王の娘をやってまーす」
いかついパパさんとは大違い。
パパさんと似なくて良かったね。
「みんなとパーティーもやってるよ」
え?そうなの?
ゴロンニャたちを見ると3人ともうなずいてる。
本当に4人目のパーティーメンバーなんだ。
「そんなに緊張しないで。パパが偉そうなのも営業用だからね。悪魔的にはため口で話せるとうれしいな。名前もテトテトって呼び捨てで良いからさ。ねっ、タクタク」
タクタク?ああ自分のことか。
テトテトは人との距離をつめるのが得意なのかな。
初めて会ったし急な展開だけど、なんだか嫌な気分が全くしないんだよね。
こういうのが魔族に大人気の理由の1つなのかな。
でもね。魔王であるパパさんは自分に対してめちゃめちゃ厳しい目を向けてるんだけど。本当にこの威圧感は営業用なんだよね?
そんなパパさんこと魔王タタンタが思いもよらない質問をしてきたんだ。
「サクラミテリオスがここにいるというのは本当か?」
えええっ!?パパさんはどこまで知ってるんだろう。
「ティーナからここのことは聞いておるぞ」
ティーナから?何でだろう。
でも魔王とグリンナの2人から説明を聞いたら凄く納得したよ。
自分の家の存在は異世界では公にしないつもりなんだって。
そりゃ知られちゃったら面倒なことになりそうだもんね。
だけど逆に偉い人に伝えておけば、いろいろと便宜を図ってくれるだろうって。
魔王タタンタはパーティーメンバーのテトテトのパパさんだし、何より魔族で一番偉い人だから伝えておいた方が良いって判断だったみたい。
だから自分の家のことはだいたい把握してるんだってさ。
でも、今いるのは新しくできた第二の飲み部屋。
ゲスト用の扉で家に来てもらったから、サクラミと会話のできる元々の飲み部屋には連れて行くことはできないんだよね。というか連れて行くつもりもないんだ。ちゃんとそのことをパパさんに説明しなきゃね。
「あの。サクラミと話すことはパーティーメンバーのテトテトのパパさんでもできません」
「なぜだ」
「前に自宅を改造したときに、サクラミと会えるのはまずパーティーメンバーだけにしておこうと思ったんです。それ以外の人はゲストにしようと。自分は柔軟な発想も無いですし不器用なので、決めたばかりで急に変更することはできません。パーティーメンバーが5人そろってからどうするかを話し合って決めようと思っています」
ルールを変えるつもりはない。けれども魔王タタンタの威圧感がとんでもないよ。
会わせろって脅されたりしないかな。怖いよ。
でもね。そんなことはなかったんだ。
「そうか。じゃあ仕方あるまい。ではそろそろ酒と料理を持ってきてはくれまいか。楽しみにしておったのだぞ」
え?そんなあっけなく?
「ここの主はタクノミであろう。主が決めたことならそれで良いではないか」
か・・・かっこいい。
さすが魔王なだけあって、パパさんはパパさんでテトテトとは違った魅力があるってことなんだろうね。
じゃあ、お酒とつまみを持ってこなきゃね。
とりあえずみんなにビール。あとは軽くつまめるものを出して乾杯。
「うむうむ。このビールとやらは飲みやすいうえに旨味とほどよい苦さがあって良いではないか。喉で味わうと聞いていたもののいまいちピンとこなかったが、こういうことだったのだな」
「この料理たちもとってもとっても美味しいよ。タクタクは簡単なものだけって言ってるけど、悪魔的にはどれを食べても口が喜んでるもん」
始めましてのお客様のパパさんとテトテトが気に入ったようで一安心。
「そうなのにゃ。タクちゃんのお酒と料理はいつでも美味しいのにゃ」
「しかもタクノミ殿はこれを毎日用意するのでござるよ」
「あなたたちも良いものを口にしているでしょうけど、魔王の食卓にも負けないはずよ」
ゴロンニャもリンコもグリンナもそんなに言うとちょっと恥ずかしいよ。
自分はたいしたことしてないんだってば。日本の生産者と企業に大感謝なんだよ。
普通に生活してるだけの自分でも美味しいものを手に入れる仕組みがあるんだから。
てなわけで今日のメインの一品を持ってこようかな。
これも日本の生産者と企業に大感謝するやつ。玉子とじ。
前にもフライの惣菜を玉子とじにしたけど、今回は普通に鶏肉を使ったやつ。
鶏肉はまずお皿に入れて日本酒を軽く振りかけてラップをしたらレンジでチン。
鶏肉って火の通り具合が難しいからね。まずはレンチンで酒蒸しするよ。
それができたら、フライパンに麺つゆを入れて火にかけるよ。
そこに玉ねぎとレンチンした鶏肉を汁ごと入れるんだ。レンチンしたときの汁は日本酒と鶏のエキスだからそこに旨味があるんだよね。
ちゃんとアツアツになったら溶き玉子を入れて軽く火が通ったら完成だよ。
不安な人は火を消してから溶き玉子を入れてフライパンに蓋をすれば安心。
1分くらい待って玉子の火の通りが緩いときは、再び火をつけて少し経てば固まるよ。
美味しい肉を手軽に食べられるし、味付けも簡単にできちゃうし、本当に日本の食に関する環境はありがたいばかりだよ。
それで、もう1つ。鶏肉を豚肉に変えた品物も作ったよ。
豚肉は薄切りバラ肉を使うよ。厚みがあると火の通りが難しいし。
脂が多くて甘みが強くなるから、玉ねぎじゃなくてぶつ切りにした白ネギを入れることにしたんだ。
バラバラの玉ねぎより火が通るのに時間がかかるから気をつけないとね。
斜めにカットするほうが火の通りは早いけど、ぶつ切りのほうが中のジュワり感とホクホクが楽しめるから、自分はぶつ切りで入れるよ。
それでね。せっかくだから少な目のご飯も用意したよ。
鶏肉はミニミニの親子丼。豚肉の方はミニミニの他人丼だね。
玉子とじだけでも良かったんだけど、やっぱりここはお米との相性も分かってもらわないとね。
お好みで七味唐辛子と山椒もどうぞ。
「うむうむうむ。この親子丼というのは美味であるな。玉子と肉と米の相性の良さが抜群ではないか。まるで我とテトテトちゃんの仲のようではないか」
魔王さんが喜んでいるみたいで何より。
最初の方から気になってたけど、娘を溺愛してるよね。
「こっちの肉のやつも美味しいね。他人丼って言うんだよね。悪魔的にはタクタクとの相性がバッチリってことじゃないのかな」
テトテトも喜んでるみたいで良いんだけどさ。
溺愛パパさんの視線が本当に怖いよ。大丈夫だよねこれ。
そんなこんなでゲストが来ても何とか普通に宅飲みができてるよ。良かった良かった。
そういえば、テトテトがパーティーに戻ってくるまでに3人より時間がかかってるよね。
何か問題でもあったのかな?
「うむ。テトテトちゃんが戻るのは、今でもまだ反対であるぞ」
魔王の威圧感がさらに増したんだ。
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