38杯目 いざ魔王城へ
悠々とそびえ立つ魔王城。その周囲に集まる数多くの魔族たち。
目の前に広がるその光景は・・・・・・自分の想像するものとはかなり違っていたんだ。
「魔王の杖いかがですかー。本物そっくりの出来栄えですよー。勇者の剣もありますよー」
「お泊りはお決まりですかー。お泊りならホテル漆黒の闇へぜひお越しください」
「魔王城まんじゅう美味しいですよー。お土産には魔王城まんじゅうを」
え?どういうこと?
魔族ってもっと怖いイメージがあったよ。人間と戦ってたりとか。
ここって本当に魔王城とその周辺なの?
「人と魔族が戦ってたのなんて大昔だにゃ」
「今は魔族も普通に人と同じ扱いでござるよ。魔人とも呼ばれてるでござる」
ゴロンニャとリンコに説明されて目の前の状況に納得したよ。
見た感じは人っぽいんだけど頭に角が生えてたから魔族っぽいなーと思ったんだよね。
でも角が生えてない人もいるね。
「魔族だけじゃなくて他の地域から観光に来る人も多いのよ」
グリンナに言われてなるほどと思ったよ。本当に争いが無くて平和になってるんだね。
あっ。あの人は背中から黒い翼が生えてる。めっちゃ魔族っぽい。
「あれはお土産よ」
そう言ってグリンナが指さした先の店には背中につける黒い羽根が売られていたよ。
その横には魔王の杖と勇者の剣も。いろんなグッズが売ってるんだね。人気の観光地って感じ。
魔王城の周辺にはこれでもかってばかりにお店や宿があるんだけど、全て1階建てか2階建ての低い建物なんだよね。
だからどこからでも魔王城が目に入るし、ひときわ高くそびえ立ってるように見えるんだ。
そんな魔王城にのんびりと向かっているよ。
気になるものがあったら足を止めたりしつつね。
いろいろと珍しいものがあったけど、一番気になったのは観光客がみんな楽しそうにしてること。
魔族もそうだけど、それ以外の人種も笑顔ばっかりで。
争っていたは本当に大昔の話で、今は仲良くいろんな種族が生活してるんだなって感じたよ。
それは魔王城に着くまでずっと変わらなかったんだ。
でも1つだけ気になったことが。
とある1人の女性をモチーフにした商品の種類がめちゃめちゃ多かったんだよね。
観光客も最低1つは持ってる感じだったし。
商品から見て取れるその女性は赤紫色した長い髪でとってもセクシーだね。
かといって可愛らしくしたグッズもあるし、凄く人を惹きつける魅力があるように感じるんだ。
左右に1本ずつ小さな角が生えてるから魔人なんだろうね。
「それはテトテト殿でござるよ」
へー。テトテトって名前なんだね。
「テトちゃんは魔族に大人気なのにゃ」
やっぱりそうなんだね。ほとんどの観光客が何かしらのグッズを買ってるし。
「大人気ってレベルじゃないわよ。タクノミが想像してる何倍も凄いはずよ」
うーん。
街中に彼女のグッズが置いてあるだけでとんでもなく凄いと思うんだけどなあ。
あ、ちょっと気になることが。
魔族とか魔人って呼ぶはずなのに、彼女のグッズには悪魔って書いてあるように見えるんだけど。
悪魔って良い意味じゃないよね。
「それはキャラづけよ。テトテトが自分で勝手に悪魔って名乗ってるのよ」
グリンナから詳しく教えてもらったら、人と魔族が争っているころには悪魔という呼び方が一般的だったみたい。
人側からすると魔族は悪者だから悪魔と名付けたんだって。対する悪魔も自らが悪魔って名乗ったんだとか。
平和になってから悪魔という名称はすっかり無くなっていたんだけど、テトテトは自分のことを悪魔と名乗るようになったんだって。
あれだ。昔のそういう肩書が格好良いと思っちゃうあれだ。
「そうよ。テトテトはファッション悪魔なのよ」
でもそれって本当に平和だから言えることだよね。
もしも人と魔族がギスギスしてたら、悪い意味を持たせるつもりじゃなく使っても大問題になるでしょ。
そんな感じで魔王城に到着したんだけど、やっぱり観光地らしさは変わらなかったよ。
魔族の歴史や骨とう品が飾られていて。本物の魔王の杖もあったよ。
それにもまして多かったのがテトテトの展示スペース。全体の半分近くあったもん。
いや半分以上かもしれない。これは自分が思ってた以上に熱狂的なのかもしれないね。
見学してる人もだいぶ多かったから、テトテトについては軽くさっと回っておしまい。
あれ?目的地って魔王城だったよね。
普通に観光しちゃったけど、異世界を楽しむように連れてきてくれたってことかな?
充分に楽しめたから良かったんだけど。
「何を言ってるのよ。これからが本番よ」
グリンナの言う通り本番はこれからだったよ。
その日の夜。思わぬ人が自分の家まで飲みに来たんだ。
「我こそが魔族を統べる王の中の王。魔王タタンタであるぞ」
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