28杯目 お風呂上がりの女の子がお酒を飲みながら着る服は
ゴロンニャたちの滞在時間を延ばしたいという願いはすぐに叶った。
自宅に温泉が出来た翌日には滞在時間が3時間半に延長されたんだ。
それからは温泉に入ってからお酒を飲み始めるという流れが出来上がった。
何だか自宅が健康ランドやらスーパー銭湯にでもなった感じだね。
そんなことを考えていたら、あることが思い浮かんだ。それは服。
健康ランドってなんだかダボっとした服とハーフパンツを履くよね。
いつもゴロンニャたちが着ている服は、なんというか地味。
生地は麻をもっとゴワゴワさせたようで、そこまで肌触りが良くないんだよね。
そんな服を着ていても、3人とも凄くきれいに見えるのは本当に魅力的だからだと思う。
それで、温泉もあるんだから服もこっちで用意したものを着てもらったほうがリラックスできるかなって。
こういうのは物語だったら、ナース、バニーガール、CA、巫女みたいないろいろな恰好をさせたりするんだろうなあ。でも自分はやらない。
そういうコスプレをするようなお金の余裕がないからね。
それに、自分は正直見たいと思うけどさ。見たいけどさ。見たい。だけど3人にのんびりしてもらいたいってのが本来の目的だから。
居心地悪そうにしながらそそられる服を着てるより、心を許してる感じで何でもない服を着てるほうが嬉しいもん。
ってことで風呂上がりのゆったりって考えたら浴衣?
いやいやそこまで本格的なのはやめておこう。
今は3時間半しか居られないけど、将来的には24時間ここに居られるようになるはず。
そしたら普段から着心地の良いラフな格好にしなきゃね。
いつか浴衣を着て欲しいなとは思うけどさ。
そんなわけでその日の夜は自分が準備した着替えを用意しておいたんだ。
「にゃー!動きやすいにゃー!」
「着心地も良いでござる。身体にしっかり馴染むでござるよ」
「肌ざわりも良いわ。とても丁寧で贅沢な品よ」
安い服のチェーン店で買ったんだけどね。こっちの世界ではそんなに高いものじゃないよ。
用意したのはTシャツ、スウェット、ハーフパンツ。すべて綿100%だから肌ざわりも良いし動きやすいと思うよ。
というかね。最高だよ。最高オブ最高。
コスプレ衣装のほうが良いって世間的には思うのかもしれない。自分でもそう思っていた時期がありました。
でもね、ラフな部屋着の女の子。本当に最高です。
コスプレの恰好ってどこか非現実的なところがあるじゃない。
でもね。ラフな部屋着の女の子が目の前にいるって、とんでもない充実感が得られるんだね。実際に一緒にいるよっていう安心感とか。
新しい世界が開けたよ。
「タクちゃんボーっとしすぎにゃ」
ああ。思わず幸せをかみしめすぎてたよ。今日も温泉で思いついたつまみを持ってこようかな。
そう。温泉卵。あっちね。半熟のほうね。
温泉卵っていうと、半熟玉子の場合と茹で卵の場合があるでしょ。今回は半熟玉子。
白身と黄身がとろとろしてるやつ。
温泉マシーンのツムラ君があったでしょ。
ああ、ツムラって書いてあったからツムラ君って名付けたんだ。
そうこれはただの名前なんだ。ありがとうツムラ君。
それでこのツムラ君が凄く便利で温度調節も簡単なんだ。
65度の温泉をお願いして風呂桶に入れてもらったの。
そこに生卵を入れて30分待てば温泉卵のできあがり。
それで温泉卵にちょっと一工夫。
麺つゆにワサビを溶いて、そこに拍子切りの長芋を入れて混ぜ混ぜ。
そこに温泉卵を乗っけて完成。
「とろっとしてる味が濃厚で美味しいのにゃ」
「このシャクシャクとした食感も素晴らしいでござる」
「ピリッとしたつゆが全てをまとめているわね。シンプルなのに満足感が凄いわ」
日本蕎麦にとろろも玉子も入れるでしょ。だから麺つゆとワサビと長芋との相性は良いんだよね。
酒の合間につまむには良いでしょ。でもさっぱりしすぎて他に濃いつまみも欲しいよね。
てなわけで、温泉卵の着せ替え開始!
すごく手抜きだけどね。レトルトを使うんだ。
でも美味しいんだから良いじゃない。
1人前のカレーのレトルトを5つに小分けするよ。自分、ゴロンニャ、リンコ、グリンナ、サクラミの5人だからね。
そのカレーをレンジでチンして温めてから、そこに温泉卵を入れて完成。
レトルトのカレーをソースやタレのイメージで使うんだ。
同じように他のレトルトを5人前に小分けして温めてから温泉卵を入れちゃうよ。
作ったのは他に4つ。
パスタソースのミートソース
パスタソースのカルボナーラ。
麻婆豆腐の素。豆腐は入れてないよ。入れても良いんだけど手抜きでね。
デミグラスソースのハンバーグ。細かく切って一人3切れくらいずつね。
最初のやつを一人当たり温泉卵を6個か。張り切って出し過ぎちゃったかな。
それでもみんなは、あっちを食べては酒を飲みこっちを食べては酒を飲みってやってるよ。
酒飲みにすると、こういう味の濃いものをちょっとずつ食べながら酒を飲むのも良いよね。
でもこれだと味ばっかりになるからクラッカーも用意しといたよ。
好きな味につけてポリポリと食べれば、味の濃さも気にならないでしょ。
と思ったら意外とクラッカーも好評みたい。
温泉卵につけないでもポリポリと食べてたりするよ。
そんな感じで飲み続けてると、ゴロンニャが服についてまた話題にしてきた。
「これを着たまま寝たいのにゃー」
でもこっちの世界に居られるのは3時間半だけだし、向こうの世界には持って行けないんじゃないかなあ。
「わからないのにゃ。行ってみるのにゃ」
そう言ったゴロンニャが飲み部屋から飛び出していったんだけど、すぐに戻ってきたんだよね。
「やっぱり駄目だったのにゃー!服が消えたのにゃー」
って一糸まとわぬ姿で。着て着て。服を着て。
探してみたら服は異世界に繋がる扉の前に置いてあったみたい。
持って行こうとすると、自然にこの家に戻ってきちゃうんだね。
てかね。どんな服が良いかって思うのがバカバカしくなるくらい何も着ていないのが一番だなって思っちゃったよ。
裸でのんびりしてもらえるならいっそ裸で・・・なんてちょっとでも思っちゃったのはお酒のせいってことにしておいて。
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