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5杯目 異世界のぱっさぱさと日本のさっくほく

ゴロンニャが帰ってきてから1週間が経った。

それから毎晩リンコと楽しそうに飲んでいる。


リンコもゴロンニャといるとリラックスできるようで、自分との距離もぐっと近づいて呼び捨てにできるようになった。自分のことは殿をつけて呼ぶけれど、それがリンコのいつものことらしい。


でも、ゴロンニャが出かける間の留守番のために戻ってきたんだよね。そろそろソロ活動を再開しなくて良いのかなと思っていたら


「もう少しだけ居たいでござる。まだ出かけたくないでござる」


と言い訳していた。

出かけるとき駄々をこねていたゴロンニャのことを言えないね。


そんなこんなで二人と宅飲みすることになって、買い出しをするお金にほんの少しだけ余裕が出てきた。

ゴロンニャが一人だったときは1日あたり2000円、リンコと二人になってからは1日4000円。


料理のことだけを考えると十分すぎる金額なんだけど、お酒がね。お値段するよね。

ゴロンニャとサクラミはビールをガバガバ飲むんだ。リンコは日本酒がお気に入りだけどまずはビールから始まって途中で日本酒に切り替える。

とりあえずビールの精神が異世界にも芽生えてしまったようだね。


1日2000円だったときはビール代ですべて使い切っちゃってた。

毎日飲むのが決まってたから、自腹を切って大量に安く売ってる食材や料理をまとめ買いして冷蔵庫にも冷凍庫にも突っ込んでやりくりしていたんだ。


ゴロンニャもリンコももっと金額を出すと言ってくれた。

だけどサクラミによると、今の段階では神様ペイの振り込み限度額が一人2000円なんだって。どういう仕組みなんだか分からないけどそういうもんだって思うことにする。

神様ペイってのは日本で使える電子マネーのカード。どの決済にも対応しているんだよね。

カードの存在が不思議すぎるんだから、一人当たりの限度額とか気にしてもしょうがない。


だってもっと気になることがあったんだから。

神様ペイに入金されてるのは一日に一人2000円ずつだけど、向こうの世界ではこっちの価値で2万円も入金してるんだって。

この差額は何なのと思ったけど、そういう仕組みらしい。

サクラミはこの金額の差をなるべく減らして限度額も上げようと頑張ってるみたいだけど、すぐには解決しないそう。

サクラミもお金を払ってくれれば良いのにと少し思ったりもしたけど、この空間を作ったりいろいろと改善しようとしてくれているからね。仕方がないね。


てなわけで今は神様ペイでお酒を買っても数百円残るので、そのお金を少し料理に回せるようになった。

というか一人2万円も払ってくれてるプレッシャーがとんでもない。

実際に自分の方には2000円しか届いてないとはいえ、こんな素人の適当なもので大丈夫なのだろうか。


「向こうではあまり気楽に飲めないんだにゃ」

「周りの目が気になるのでござる」


二人とも可愛いし美人だから、お酒の席でのナンパがあったりするのかな。

そんなことを聞いたら、お酒のせいか二人ともいつもより顔が赤くなっていた。

まだいつもより飲んではいないはずだけど。


『二人とも向こうの世界では有名人なのですよー』


サクラミが二人のことを教えてくれた。

二人が所属するパーティーは向こうの世界では有名なんだって。

だから常に周りの目を気にしなきゃいけないみたい。

宿泊してる街でお酒を飲むにはお店に行くしか方法が無いんだとか。


「向こうじゃお酒を飲んでも酔った気がしないのにゃ」

「この言葉遣いをあまり聞かれたくないから気軽に会話ができないのでござる」

『タクノミさんは2000円分のことだけ考えて、残りの差額はこの場所に支払ってると思えば良いのですよー』


少し気が楽になった。

でもまさか、サクラミが差額を着服してるなんてことないよね。


『さすがにそんなことしませんよー。お金を作ったほうが早いですよー』


ちょっと怖いことを言ってるけど信じよう。というか自分は信じることしかできないもんね。

自分が出来るのは神様ペイに入ってるお金でやりくりして、酒と料理を美味しく楽しんでもらうことだけだ。


そんな異世界と日本との違いを知って、気になったことが出てきた。

向こうの世界ではどんなものを食べているんだろう。


「・・・・・・芋だにゃ」

「・・・・・・芋でござる」


なんでも二人が居る街は砂漠の真ん中にポツンとあるんだって。

弱い魔物しか出ないダンジョンが砂漠の真ん中に出来たのが始まりらしい。

ダンジョン。なんて異世界っぽい響きだ。本当にそういうのがあるんだね。

そのダンジョンは弱い魔物しか出ないので旨味がほとんどない。でも放っておくわけにもいかない。


そんなこんなで、冒険初心者向けの街として整備したんだそう。

冒険家を目指す者たちがここで最低限の技術や知識を学んでからデビューするんだとか。

日本でいうところの自動車教習所みたいなものなのかな。


というわけで、この街は砂漠の真ん中でろくな食材が届かない。

冒険家になる前の人がほとんどだからお金もろくに持ってない。

だから安くてお腹がいっぱいになるように、街の周辺の砂漠でもなんとか育つ芋ばかりを食べるんだって。


「あの芋は口の中の水分をすべて持っていくにゃん」

「ぱっさぱさでござる。ぱっさぱさでござる」


お店によってそれぞれ独自のタレがあるみたいだけど、それでもあまり気に入ってないみたい。


「それに比べてこの芋はとっても美味しいにゃん」

「さっくほくでござる。さっくほくでござる」


冷凍の細切りのポテトフライがこんなに喜ばれるなんてね。

揚げるのは難しいから揚げ焼きという方法を試したら上手にできた。

フライパンに少し多めに油を入れて、揚げるとも焼くともなんとも言えない方法。

揚げるには油が少ないし、焼くには油が多すぎて下手っぴみたいに思えるけど、上手くいくもんだね。揚げたら塩をまぶして完成。

揚げ物は自分には無理だと思っていたけど、これだったら何とかできたよ。

毎日少しずつ出す定番のつまみ。


でも異世界での芋の話を聞いて、ちょっとアレンジしてみたくなっちゃった。

神様ペイのお金も少しだけ余裕ができたしね。

単なる思いつきでやってみたけど、予想以上に好評だった。


「美味しいにゃー!辛いにゃー!ライスよりもお酒に合うにゃー!」


ゴロンニャが座布団とともに転げまわって喜んでいるのはカレーポテト。

作るのは簡単。冷凍のポテトフライをレンジでチン。そのあとでレトルトカレーをかけて再びチン。それだけ。

カレーと言えばジャガイモだし、ポテトとの相性は良いに決まってるよね。


「ほくほくと濃厚が絡み合ってお酒が進むでござる!」


リンコが新たなジタバタダンスを披露して喜んでいるのはポテトバター。

これも簡単。冷凍のポテトフライをレンジでチンまでは同じ。そのあとでバターと醤油をかけて再びチン。それだけ。

なんちゃってじゃがバターだけど定番の味だよね。醤油を入れてみたのが和風な味が好きなリンコにハマったのかも。


『トマトの酸味と甘み、牛肉の旨味が絡み合って芋のレベルを一段あげています。しかもトロリとしたチーズがそれらを1つにまとめあげて最高の組合せになりました。まさに芋の宝石箱やー!』


サクラミがいつもの早口の食リポだけじゃなく最後に摩呂っちゃうほど喜んでいるのはミートソースポテト。

これも簡単。ポテトフライのレンチンの後で、パスタ用のレトルトのミートソースをかけてそのうえに溶けるチーズを乗っけてレンチン。それだけ。

オーブンを使うのは勇気がいるのでレンチンでやってみたけど、ピザみたいな味になったかな。


異世界の話を聞いて美味しく芋を食べてもらいたいと思ったから気に入った様子で良かった。

3人とも3種類それぞれ美味しいと言ってくれたし。


でもそれがこんなことになるなんて。


「困ったにゃー」

「困ったでござる」

『困りましたよー』



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