21杯目 例の人はハチャメチャで豪快で衝撃で
ハチャメチャで面倒くさいと言われてた人は、ゴロンニャ、リンコ、グリンナの3人を軽々と両脇に抱えて現れた。
燃えるような赤い髪。大柄で筋肉質な身体。それでもなぜか女性らしさを感じさせる身体をしているんだよね。なんでだろう。
「わっはっはっはっは。こんなところで飲んでたのか。みんな元気にしてたか?」
3人ともあなたの両脇であまり元気じゃなさそうにぐったりしてますよ。
「アンタがタクノミさんか。話は3人からうかがっているよ。アタシの名前はティーナ。よろしくな」
「よろしくお願いします。自分はタクノミです。お酒や料理を用意させてもらってます」
「おう。楽しみにしてたんだ。さっそく飲ませてくれるか」
とりあえず簡単なつまみをいくつかとお酒を運んでっと。
そうそう今まで使っていたちゃぶ台と同じものをもう1つ買ったんだ。
2つ並べてるから、ティーナさんが増えてもこれで何とかみんなが座れるよ。
みんなで飲み始めたんだけど3人はまだぐったりしてる感じがするなあ。
ティーナさんは珍しそうにきょろきょろと周りを見ている。特になんにもない部屋なんだけどね。
「ここにはサクラミテリオス様もいるって本当かい?」
『本当ですよー。いますよー』
「おおっ。声だけが聞こえてくるけど、あなたがサクラミテリオス様か」
『そうですよー』
「そうかそうか。ところでこの空間はどれだけ信用できるんだい?」
ぐったりしてた3人がティーナさんに顔を向けた。そんな素早い動きができたんだね。
『そうですねー。信用していただけた分だけ信用できると思いますよー』
「わっはっはっはっは。女神さんも面白いことを言うんだな。わかったわかった。アタシも信用することにするよ」
「ティーナは失礼なのだにゃ」
「すまんすまん。立場上、これくらいは確認させてくれ」
いきなり気まずいことになりそうだったけど、大丈夫かな。
というか立場上ってどういうことなんだろう。パーティーの元メンバーなんだよね。
「ティーナは冒険者ギルドのギルド長でござるよ」
え?ギルド長???一番偉い人ってこと?
「しかもね。ギルド長になるのが嫌でティーナはこのパーティーを作ったのよ」
なになに。どういうこと。
しかも、こんな偉い人にみんなは呼び捨てなんだね。
というか誰にでも殿ってつけてるリンコまでが呼び捨てだとは。
「パーティーに入って一番最初にティーナに教えてもらったことでござるよ」
「おう。仲間になるんだからな。お前らがアタシに遠慮しないようにな」
「呼び捨てにするのは怖かったにゃ。でも呼び捨てにしないほうがもっと怖かったにゃ」
「別に何にもしなかっただろうが。ただ優しくお願いしただけだ」
「とんでもないオーラが出てたわよ。初めて死を覚悟した瞬間だったわ」
なるほどね。そんなことがあったんだね。
話してみるとやっぱり仲が良いんだなってのがわかるよ。
みんなの仕草や表情が、凄く自然でお互いに信用しあってる感じなんだよね。
というかティーナさんはギルド長なのか。気さくな感じがするよ。
「本当にめちゃめちゃな人なのよ。副ギルド長からギルド長になるのが嫌で、パーティーを作っちゃったのよ」
「わっはっはっは。新人どもを仲間にすれば成長するまで見捨てるわけにはいかないからな。それまではギルド長にならずに済んだってわけだ」
「それで半年前にとうとう長引かせることができなくなって、パーティーを辞めてギルド長になったでござるよ」
なんか本当にはちゃめちゃというか豪快というか。
そうだ。そろそろ次のつまみを持ってこようかな。
今回の主役はニンニク。豚肉もかな?
ニンニクは皮をむいて1つ1つをほぐしておくよ。
1時間くらい水につけておいてからお尻のところを切り落とすと、そこそこ簡単に皮がむけるよ。
主役だからね。これでもかってくらいむいていくよ。
むいたニンニクがこちらです。飲む前にむいておいたんだ。
豚肉は焼肉用の少し厚めの豚バラ肉。バラ肉なのがポイントだね。脂が大切だから。
本来なら油でニンニクを揚げる料理を豚の脂で作っちゃおうってわけ。
まずは豚肉をシンプルに焼いてくよ。8割くらい火が通ったらいったんフライパンから取り出す。
脂がだいぶ出てくるから、そこにニンニクを投入。
人数が多いから脂も多めに出てくるけど、そんなに肉を焼かずに脂が少ないときはニンニクは薄切りにしといたほうがちゃんと火が通って良いと思う。
今回はカットしないでころんとした状態で。
ニンニクに火が通ったら取り出して、豚肉を再びフライパンに。これで豚肉にもニンニクの風味ががっつりつくんだ。
肉にも火が通ればニンニク味の豚焼肉とニンニク揚げの完成。
でも脂がまだ残ってるよね。これを使ってもう1品。
この中にご飯をドーン。しっかりと炒めて塩コショウと醤油で味をつけたら、ニンニクと肉の旨味をご飯が吸って美味しいガーリックライスができるよ。
ニンニクの臭いがとんでもなく凄いね。じゃあ飲み部屋に持って行くかな。
「おおう。さっきまでのものもいろいろと美味かったが、これはとんでもなく食欲をそそられる香りだな。食べたら味もガツンとくる。この肉と米も食べ応えがあるじゃないか」
ティーナさんは見た目通り豪快な食べっぷりと飲みっぷりだよ。
口いっぱいにお米を入れてモグモグしてる。
たくさん食べる人だって聞いてたから、ごはん物を用意していつもよりボリューム重視にしたんだよね。
ゴロンニャは何だか凄いことになってる。
いつものように座布団と一緒にゴロゴロ転がってるんだけど、ずっとその場に居続けてるんだ。
どうやっているのか不思議だけど、これで省スペースでも転がることができるね。
リンコはいつも通りジタバタダンスをしてるけど、ティーナさんの周りをぐるぐるしてる。大丈夫なのかな。
グリンナはさすがに落ち着いている・・・・・・かと思ったら自分の太ももを静かになでなでしているよ。
まだふにゃふにゃ感謝モードになってないはずなんだけど。もしかしてなでたいのを我慢しているのかな?
みんなそれぞれ喜んでくれてそうで良かった。
ティーナさんも・・・あれ?食べるのをやめて3人を静かに見ているな。
そういえば豪快に飲んでるけど、そんな感じで見ていることが何度もあったっけ。
すると、そのティーナさんから驚きの一言が。
「そうだそうだ。アタシはギルド長を辞めたぞ」
「「「え?」」」
今まで料理とお酒に夢中だった3人が一斉にティーナさんの顔を見つめたんだ。
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