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10杯目 異世界人に納豆を食べさせてみた

猫の獣人のゴロンニャ。

サムライの竜人のリンコ。

頭脳明晰なエルフのグリンナ。

謎の女神のサクラミテリオス。


4人はいつも自分が出すものを美味しいと食べてくれている。

嘘はついてないと思うんだけど、本当にどれも美味しいと思っているのかな。

少しだけ不安になった自分は、日本人でも好き嫌いが分かれるあの食材を用意したんだ。


そう。それは納豆。

というわけで、異世界人に納豆を食べさせてみた。


サクラミ・・・・・・は大丈夫そうなので放っておく。

だって、納豆を食べた途端にいつもの早口の食リポが始まってすぐに催促がきたんだもん。

神様の世界の食文化は良く分からないし、とりあえず追加の納豆をお膳に置いといた。


気になるのは異世界から来た残りの3人。

クセがある納豆を普通に美味しく食べるのだろうか。


3人の前に納豆を出してみた。ゴロンニャが顔を近づける。

すると今までに見たことがないような顔をしたんだ。何か嫌そうな。

あ、もしかしてこれはフレーメン反応ってやつじゃないの?

この顔が見られただけでも納豆を出したかいがあったよ。


「なんだか怪しい臭いがするにゃ」

「・・・豆・・・でござるか?」

「もしかして食べてはいけないものじゃないわよね」


3人とも警戒している。これまでの食事ではなかった反応だ。

まずは納豆を混ぜてもらった。


「にゃんだにゃんだ。どんどんと白いネバネバが出てくるにゃ」

「不思議な豆でござるが、なんだか食欲がそそられる気がするでござる」

「リンコは正気なの?これどう見ても腐ってるわよ」


うんうん。それぞれ興味深い反応だね。

それでは実食。醤油をかけて召し上がれ。


まずはゴロンニャから。


「・・・・・・・・・」


まさかの無言。無反応。

かと思ったらあの顔が出た。フレーメン反応。

いつも美味しかったら座布団と一緒に転げまわるけど、これは美味しくないってことなのかな?


続いてリンコ。


「これは新たな美味しいでござる。他にはない独特の味と粘り気が最高でござる!」


おお。大好評。

静かなゴロンニャに対してジタバタダンスで喜ぶリンコ。

これはいつもとまるで違う光景だね。


グリンナはどうかな。


「不思議な食べ物ね。腐っているような身体が拒絶する味はしないわね。臭いはキツイのに不思議ね。それにネバネバした糸は何なの。混ぜれば混ぜるほど出てくるわね。混ぜ続けると腕が痛くなるくらいに粘り気が強くなるわ。まるで分らないわ。これまでの知識で解決できないなんて1つ1つじっくりと観察していくしかないわね」


眼鏡教師モードどころか学者モードになっちゃった。

パーティーの運用をすべて任されているグリンナは、普段からこれくらい真面目にいろいろなことを考えているのだろうか。

いつもの眼鏡教師モードも真面目だと思ってたけど、顔がそれ以上に真剣になってる。考えていることは納豆なんだけどね。


これはリンコだけに好評で、あとの二人にはイマイチだったかな。

と思ったらちょっと違った。リンコだけじゃなく、ゴロンニャもグリンナもおかわりしたんだ。

え?美味しくなかったんじゃないの?


「不思議な臭いと味だし口の中がネバネバだにゃ。でも嫌いではないにゃ」


と言いながらゴロンニャは納豆を混ぜては伸ばして混ぜては伸ばして、たまにパクリ。

ネバネバが伸びるのが気に入ったのか、納豆をつまんで自分の腕が伸び切るくらいまで糸を伸ばしまくってるよ。

嫌いじゃないってことはそんなに美味しくないのかな。無理して食べなくても良いんだけど。

そんな疑問に答えてくれたのがグリンナだった。


「これは凄く不思議な食べ物なのよ。少なくとも私はこんな食べ物を食べたことは無いわ。確かにここで食べさせてもらってる料理で比べたら他のほうが美味しいかもしれない。でも私たちの世界でなら、この納豆という食べ物は美味しい部類に入るわ」


異世界でも美味しいものはあるみたいだけど、ほとんどの食べ物は普通か美味しくないと感じるみたい。美味しいものは少ないんだってさ。

とはいえゴロンニャもグリンナもいつもより美味しいとは思ってないみたい。もっと二人にも美味しいと思ってもらいたい。そうだ。あれを作ってみよう。


出してみたら大好評。納豆だけのときより明らかに美味しそうにしている。


「にゃにゃにゃー!あの臭いがちょうど良いくらいになってるにゃ。味もこのふわふわと馴染んてて美味しいにゃー」

「なんてことでござる。さっきまでの美味しいと思ったクセが減っているのに、それでも別の美味しさが溢れてくるでござるよ!」

「同じ食材なのにもっと美味しくなってありがとうね。不思議な食べ物がこんなに変わるなんてもっとふ~し~ぎ~よ。わからないことがいっぱいでありがとうね」


自分が作ったのは納豆オムレツ。玉子と混ざって火が通ることで、納豆の別な美味しさが楽しめるんだ。

作り方は本当に簡単。玉子と納豆を混ぜて焼くだけ。

まずは溶き玉子の中に納豆を入れて、1粒1粒がほぐれるようにするんだ。

そこに納豆のパックについていたタレもいれる。味だけじゃなくて出汁としても役立ってくれるよ。


それを焼くんだけど、焦げ付かないフライパンで焼けばくっつかないで簡単に焼けるはず。

焦げ付いて油を入れなきゃいけないフライパンだと自分でも作れる自信はないよ。焦げ付かないフライパン偉い。


あと納豆オムレツは普通にオムレツを焼くよりも簡単になるんだよ。

納豆を入れるとただの玉子より火の通りが遅くなるんだよね。

すぐに固まってあわあわすることが無くなると思うよ。

あとは、お好みで醤油をかけてね。


サクラミは相変わらず早口で食リポしてる。


みんな何でも美味しいと思ってくれるのか。

それがわかって逆にやる気が出てきたんだ。

美味しいのなかでも美味しいを味わって欲しいと思うようになったんだ。

幸せそうな顔をする3人を見てるのが、自分の中でめちゃめちゃ嬉しいんだなって気が付いた。

あ、もちろんサクラミの早口の声もね。


でもね。少しだけ気になるよね。みんなが美味しくないって思う食べ物が日本にあるのか。



評価、ブックマーク、感想、レビューなんでもすべて嬉しいです。

めちゃめちゃめちゃめちゃ嬉しいです。


読んでいただけるだけでうれしょんするほど喜びますが、反応していただけるのは最大のご褒美です。

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