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72杯目 再び生ビールとこれからのこと

「生ビールってやつを飲みたいのだ」


アルコルが急に言ってきた。ああ。そういえば生ビールを飲んだ昨日は居なかったもんね。

神様のほうの世界がどうなってるのかよく分からないからさ。催促されたら居るのかなーって感じ。

毎日のように催促されるかと思ったらしばらく全く居なかったりでアルコルは神出鬼没なんだよね。


『飲みたいのだ!飲みたいのだ!絶対に飲みたいのだのだのだのだ!!!』


どうしようかなあ。うーん。昨日の今日だしなあ。

って考えてたら、いつのまにか乾きの杯のメンバー5人とティーナが目をキラキラと輝かせてこっちを見つめてたよ。みんないつもそんな目をしてないでしょ。昔の少女漫画みたいな目になってるよ。


「しょうがないね。じゃあ最初の1杯だけは生ビールにしようか」

「いやっほーい!!!」


いつもなら、みんなそれぞれ喜び方が違うはずなのに、今日はみんなでそろっていやっほーいだって。

しかも砂浜で一緒にジャンプして写真を撮るポーズみたいに喜んじゃってさ。青春かよ。

そしたら今度はアルコルとサクラミの声が聞こえてきたよ。


『痛いのだー!頭が痛いのだー!!!天井に頭をぶつけたのだー!!!』

『飛びすぎるからですよー。ここは繊細な部分も多いのであまりはしゃがないでくださいよー』

『そんなこと言ってサクラミも一緒にジャンプしてたのだ。はしゃいでたのだ』


神様のほうは声しか聞こえないから姿をうかがうことができないんだけど、アルコルとサクラミも青春ジャンプしてたの?

アルコルは想像つくけど、サクラミはもっと落ち着いた感じなのかなーって思ってたよ。

それくらい生ビールに魅力があるってことかな。


ということで、二日続けて生ビールをテイクアウト。

今日はアルコルの分が増えて全部で9杯。こんな量をを買ったもんだから、もしかして明日も来るってお店の人に思われたかもしれないね。

じゃあみんなで飲みましょう。かんぱーい。


『美味しいのだ!!!美味しいのだ!!!美味しいのだ!!!美味しいのだ!!!美味しいのだ!!!喉ごしってやつが違う気がするのだ!!!』


うんうん。やっぱりアルコルも生ビールを気に入ってくれたようだね。良かった良かった。

一方の乾きの杯のメンバーとティーナはというと・・・・・・あれ?なんだかおとなしいね。どうしたんだろう。


「この1杯しか飲めないかと思うと悲しいのにゃ」

「一口ずつ噛み締めているでござるよ」

「これが幻の聖なるしずくに違いないわ」

「悪魔的には1口飲むごとに破滅のカウントダウンが進むよね」

「やはり生ビールは格別ですわ」


乾きの杯のみんなは生ビールをじっと見つめながら姿勢を正しているよ。

そしてときおり手に取って口にして。凄くお上品。


ティーナもじっとしてるんだけど、どんどん髪の毛が逆立ってきてめちゃめちゃ力をためているような感じになってる。大丈夫なのかな。


「ぐっ。飲みたいが飲むと減る。いっぺんに飲みたいがいっぺんに減る。こんな強敵はなかなか出会ったことないぞ」


ああ。一気に飲まないようにこらえてるのか。凄い迫力だよ。


というかさあ。みんなそんなに我慢して飲んでたら、せっかくの生ビールがもったいないよ。

ビールはちびちび飲むものじゃないし。喉で味わうものだからね。ぬるくなったら残念でしょ。

いつもの缶ビールだって十分に美味しいでしょ。でもみんな生ビールとにらめっこ。難しいねえ。


『なんでちびちび飲むのだ。おかわりすれば良いのだ』


ああ。アルコルは昨日居なかったから知らないんだね。

生ビールはお値段がねえ。お酒が足りなくなっちゃうんだよね。


『そんなのお金を増やせば良いのだ。ちまちませずにたっぷり使えば良いのだ』


うーん。そればっかりはサクラミさんにお願いしないと。

今でも異世界の価値で1万円分のお金を1人ずつ払ってるみたいなんだけど、日本円では1人あたり4000円分ずつしか入金されてないんだよね。換金ギャップは仕方ないのかな。


『そんな設定はすぐに変えれば良いのだ。えーとどこなのだ・・・・・・いてててて』

『やめてくださいよー。絶妙なバランスでなんとか保ってるんですからねー』

『ちょっとくらい大丈夫なはずなのだ』

『そう言ってあなたの失敗を今までどれだけフォローしてきたと思ってるんですかー』


なんか神様同士で揉め始めちゃったよ。

まあまあそんな揉めずに。みんなも缶ビールがあるからね。

悩まずに楽しく飲みましょ。


形あるものはいつか壊れる。飲んだアルコールはいつか無くなる。

いつもより少し長めの1杯目を終えて、缶ビールに移行したよ。

なんだかんだでやっぱりみんな美味しそうに飲んでるし。


それからしばらくワイワイと飲んでたんだけど、話の流れでティーナがサクラミに質問をしたんだ。


「ガメちゃんってヤツはいったい誰なんだ?」


ああ。たしかにそれは気になったよね。

制御室の扉を開ける問題だったり、入口に書いてあった文字だったりをみると日本人なんだろうなって思うけどさ。


『私からは何も言えませんよー』

『ガメちゃん?ああ知ってるのだ。ダンジョンをつく・・・・・・もごもご』

『ダメですよー。それを伝えるのは良くないですよー。もっと言うようでしたらわかってますねー』

『うあああああああ。あれだけはやめるのだああああー。お口にチャックなのだ』


あれ?何だか聞いたらヤバイ感じの人なの?

ティーナも少し顔が険しくなってるし。


『ああ。気にしないでくださいねー。何か悪いことがあるわけじゃないんですよー』

「そんなやり取りを聞かされたら、悪いことがあるとしか思えねーけどな」

『いえいえ本当に何も悪いことはないんですよー。ただ神という立場から伝えるには今の段階では干渉しすぎになってしまいましてねー』

「干渉したらマズいことでもあるのか?」

『本当にみなさんに悪いことは何にもないんですよー。神の立場から伝えるとバランスを崩しかねないのですよー』

「バランスねえ・・・・・・何かあるとそればっかだな」

『ティーナさんたちの世界とタクノミさんたちの世界を繋いでいろいろとやってますからねー。その辺はお願いしますと言うしかないですねー』


サクラミとティーナのやりとりを聞いてたけど、これといって新しいことは何もないね。

でもまあサクラミが言うんだから、悪さするって人ではないんでしょ。


「まあタクノミが言う通り、ガメちゃんのダンジョンはこれまで実に有益だったからな。サクラミの話を信じるしかないか」

『ありがとうございますー』

「まあガメちゃんのことはそれで良い。ダンジョンを制御するダンジョンってやつと、トリセツってダンジョンは何なんだ」

『そちらも私の口からは・・・・・・』

『お口にチャックなのだ』


ティーナが頭をかきむしる。


「ちっ。わーったよ。アタシたちで何とかしてみりゃ良いんだろ」

『ありがとうございますー。ガメちゃん本人も私の口から言われるより、みなさんが探すほうが喜ぶでしょうからねー』


あれ?

さっきからガメちゃんの名前が出てきてるけど、1000年以上は誰も見たことが無いんだよね。

生きてるの?どういうことなんだろう?

その辺のことも含めて何も教えてくれないみたいだね。


この後、みんなで話し合ってどうするかを決めたんだ。


「まずは楽しく飲み続けるのにゃー!」


という意見は大前提。乾きの杯のメンバーとはこれまでの通り毎日のように自分の家で飲むことに。ティーナもしばらくは一緒に行動するって。


それでガメちゃんのダンジョンは・・・・・・たまに行く。

サクラミからもうちょっとだけ教えてもらってさ。ガメちゃんのダンジョンはいくつもあるけど、すべて悪さをするようには作られてないってお墨付きをもらったんだ。

だから無理してどんどん攻略する必要はないよねって。見つかってないトリセツのダンジョンもそう。


元々、異世界と自分の部屋を馴染ませるためにいろいろな場所に行こうとしていたんだから、これまで通りいろいろなところに行きましょうってこと。

そこにガメちゃんのダンジョンがあったなら攻略すれば良いし、なければないでそれもまた良し。


ティーナは最近増え始めた無茶な攻略をする冒険者たちを落ち着かせる方法を考えなきゃいけないって頭をガシガシやり始めちゃったけどね。


そして一番の決まり事は・・・・・・生ビールはたまの贅沢ってこと。

宅飲みなんだからね。その辺は忘れないようにしないとね。



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