63杯目 後悔とナレーションと仲良し
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今回のお話はナレーションから始めさせていただきます。
後悔。後で悔やむこと。
今、タクノミは凄く後悔していた。それは・・・・・・前回の終わりで調子に乗ってしまったこと。
あはははは。最高最高。もうね、全部ひっくるめて最高だよ。←これ
天に向かって落ちる壮大な滝を目の当たりにして、シラフなのにとんでもなくテンションが上がっていたのだ。
その後、先に一人で家に戻ってから飲む準備をしていたタクノミは、少しずつ日常のテンションに戻りはじめ、飲み始めるときには完全に後悔していたのである。
どれだけテンションが上がっていたのか。それはつまみを見てもすぐわかる。
お皿に食用花が盛りつけられているのだ!
普段は絶対に買わないような食用花。異世界からそのままのテンションで買い物しているときは良いアイデアだと思っていたものの、テンションが下がってから盛りつけることで後悔がどんどんどんどん膨らんでいた。
しかしタクノミには使わないという選択肢はない。もったいないから。
でもこの選択はおそらく正解。もし食用花を使わなければもったいなさから更に後悔の念が増し、後悔のスパイラルに落ちていったであろう。
そんな感じでその日の飲み会はスタート。
昼間の喜びようのままだと思っていたティーナと乾きの杯のメンバーは想像とは真逆のタクノミに会って、それはそれは心配して気にかけた。優しくされたタクノミはますます後悔の念が深まっていく。しかしあまりにも心配してくるみんなに対して後悔より申し訳なさが上回り、正直に自分の気持ちを吐露したのだった。
というわけで本編のはじまりはじまり。
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「わっはっはっはっは。そんなことで悩んでいたのか」
「そんなことって失礼よ。ティーナと違ってタクノミは繊細なのよ」
そんな風にグリンナに言ってもらえるのは嬉しいけど、ティーナみたいに笑って済ませてもらえるのもありがたいよ。
「ゴロンニャはタクちゃんが嬉しそうにしてると思ってたのにゃ」
「別に普段と異なるとは思わなかったでござるよ」
あれ?そうなの?
それはそれで自分の知らないうちに、みんなに偉そうなことをしちゃってたり・・・・・・
「花を食べるなんて悪魔的にめちゃめちゃカッコいいよね」
「お花は素晴らしいセンスだと思いましたわ。タクノミ様は芸術にも理解があるのかと思いましたわ」
普段の自分じゃ食用花なんて発想は絶対に出てこないからね。
完全に調子に乗ってたよ。
みんなには本当に申し訳ないとしか言いようがないです。みんなにも酷い態度を取ってたかもしれないです。
「タクちゃんは優しすぎるのにゃ」
「別にあれくらいは普通でござるよ」
「たまにはもっともっと強気になって、攻めてくれても良いのよ」
「悪魔的には距離がもっと近づいたと思ったよね」
「滝に感動してお花を添えるなんて、やっぱりタクノミ様は美術への理解が深いのですわ」
みんなそうやって受け入れてくれるのが嬉しいよね。ズィ姫は言ってることがちょっと違う気がするけど。
でもあまり調子に乗ると偉そうな態度を取っちゃいそうだし、良い感じのテンションの上がり方を覚えていかないとね。
「こいつらなんてタクノミに対してめちゃくちゃな態度をとってるだろ」
なんてティーナは言うけど、そんなことないと思うんだけどね。
みんな優しいし、はしゃいでるのも可愛らしいしさ。
「ゴロンニャなんて後悔しまくってるのにゃ。座布団と一緒にゴロゴロするときに、1枚くらい置いてけぼりにしちゃうことがあるのにゃ」
「拙者もたまに踊るリズムが悪くなってしまうときがあるでござるよ」
後悔するポイントが予想とちょっと違うね。
というかあの座布団ゴロゴロとジタバタダンスって適当にやってるわけじゃなくて、本人なりにポイントがあったんだね。
「ワタシなんて飲んでるといつも態度が変わるわよ」
そうだね。グリンナはふにゃふにゃ感謝モードになっちゃうもんね。
それはそれでグリンナの優しさが出てて良いと思うんだけどな。
「テトは悪魔になったことを後悔してないんだよね!」
それはまあ自称だし。中二病っぽいところもあったみたいだけど、そこらへんも含めてテトテトは後悔せずにテトテトなんだね。
「ワタクシはもっともっとタクノミ様と仲良くなりたいですわ。最後にお会いしたのでワタクシだけ距離が少し遠い気がして、滝をご覧になったときの感じを見せていただくことや今みたいにちゃんと話してくださることが本当に嬉しいですわ」
ズィ姫はそんなこと考えていたんだね。自分はみんなと同じように仲良くしてるつもりなんだけどな。お嬢様だから少し身構えたようにしてるのが普通だと思ってたけど、本当は遠慮してるところがあったのかな。
「誰もタクノミが考えてたようなことは気にするどころか普通に受け入れてたってことだ。タクノミだってこいつらのことを全て受け入れてるだろ。ちょっと変わったところがあると思ってもこの料理みたいに食べてみると悪くないどころか良いじゃないかってなるもんだぞ」
ってティーナが言ってくれたのは嬉しいけど、その変わったところがあるって料理は花を飾っちゃったやつ。料理もおしゃれな感じにしようと思って、サーモンの刺身をカルパッチョみたいにしたんだよね。
カルパッチョみたいってのは本格的に作るのは自分じゃちょっとわからなかったから。
イタリアンドレッシングとレモンドレッシングを買ってかけたの。2種類の味を楽しめるように1皿で右と左に分けて。それにサーモンにかけるだけじゃなくて、スプーンをつかってお皿にドレッシングで線を描いたりしちゃってさ。そこに食用花を飾ってみちゃったんだよね。あー恥ずかしい。
でもズィ姫は
「本当に素晴らしいですわ。タクノミ様が滝を見たように、ワタクシは料理にお花を添えられたお皿を見てとっても感動していますわ」
って純粋に喜んでくれて。
そしたらテトテトがさ、色の薄いカクテルをグラスに入れて持ってきてってお願いしてきてさ。普段は缶のまま飲むのにどうしたんだろう。って思ったら
「お姫様どうぞ」
ってズィ姫にそれを渡したんだよね。食用花を浮かべて。やだイケメン!
そしたらズィ姫がテトテトに思いっきり抱きついてさ。
「最高ですわ。さすがテトテトは素晴らしい悪魔ですわ」
って。悪魔は関係なさそうだけどね。
と思いながら見てたらテトテトが自分の方を見てニヤッとしながら
「タクノミだってもう少しズィと仲良くすれば、こうやって抱きついてもらえるよ」
だって。
あのズィ姫の胸にある大きな果実が・・・・・・じゃなくてじゃなくて。
もしかしたらズィ姫は抱き着く癖でもあるのかな。
そんな感じでみんなと飲んでたら、後悔してたことなんてどうでも良く思えてきてね。
そもそもみんなと会う前なんて、こうやって誰かと飲んで楽しくすることすら後悔しそうな考え方だったような。
「そうなのにゃ。ゴロンニャなんて最初にタクちゃんと会ったときに警戒しまくったのにゃ」
「そうでござる。拙者もつまらぬものを切らずに済んで良かったでござるよ」
なんて言われて。でもそれは初めましてのときだから別にねえ。
「あの時に襲い掛からなくてゴロンニャを守ることを選んで良かったのにゃ」
「タクノミ殿がこんにゃくで本当に良かったでござるよ」
あれあれ。もしかして命の危険があったのかな。
というかリンコはやっぱり有名なあの川あの衛門みたいなこと言ってるね。というか自分がこんにゃくってことは、もしかして切られて失敗してたのかな。
「わっはっはっはっは。それくらいの後悔だったら何べんでもやれば良いんだ。やり直せる後悔ってのは幸せなんだからな」
ってティーナが笑いながら言ってる。相変わらず細かいところは気にしないね。
だけど目だけはどこか遠くを見ているような感じがしたんだよね。気のせいかなあ。
なんて考えてたら
「こういうのがやり直せない後悔だからな」
ってティーナがみんなの前にあるつまみを勢いよくあれもこれも食べ始めちゃって。
「なにしてるのにゃー」
ってゴロンニャの掛け声を合図にみんながティーナに飛び掛かってさ。
それを見てたら、みんないろんなことをさらけ出してくれてるんだなーって。これは自分もそこに飛び込んで参加したほうが良いのかもって思ったら。
「タクちゃんはティーナが食べちゃったつまみを作ってくるのにゃ!」
そっかそっか。そういうタイミングじゃないか。難しいね。
ってあれ、なんか引っ張られたぞ。
「タクノミももっと欲しがれよ」
ってティーナに言われて、みんなの中に引きずり込まれちゃってさ。
そのあとはもうほんと何だかわからない。しっちゃかめっちゃか。
みんなと一緒になってもみくちゃで。でも何だかそれが面白くて楽しくなってきちゃって。
それにみんなの柔らかさと良い匂いが・・・・・・って良くない良くない。
でもなんだかよく分からない感じでごっちゃごちゃになってると、もういろいろと悩むのも馬鹿らしいかなって思えてくるね。
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