58杯目 お酒の神様は懲りない
『今日も美味しいのだ。タクノミは偉いのだ』
お酒の神様ことアルコルテリオスは毎日のようにサクラミのところへ来てるみたい。
相変わらず姿が見えないで声だけしかやり取りができないから、どうなってるのか詳しくはわからないんだけどさ。
サクラミが忙しいこともあってアルコルも会話に参加してくることはあまりないんだけど、それでもお酒と料理はちゃんと2人前が消費されてるから飲んだり食べたりはしていると思う。
いや、そこそこアルコルは会話に参加してきてるかな。
いつも話し過ぎて邪魔になってるのかサクラミに叱られるまでがお決まりになってるね。
そうそう。アルコルに対してもすっかり呼び捨てが普通になっちゃって。
『アルコルも呼び捨てにするのだー。仲間外れは嫌なのだー』
ってごねちゃってさ。最初はぎこちなかったけど今では普通に話せるようになったよ。
それで渇きの杯のメンバーはというと、しばらくアルコルの街に滞在してるみたいだね。
アルコルのほこらにもちょくちょく行ってるようで。自分はそのときに呼ばれるよ。あんな大変な山なのによく何度も行けるよね。凄い。アルコルに許されたから自分は到着したら家から出るようになったよ。楽ちん楽ちん。
頼りなさそうなアルコルでもやっぱり神様らしくてね、アルコルのほこらはそれなりに異世界では神力の強い場所なんだって。自分には良く分からないけど。
だからその場所に自分が行くことで家が異世界に馴染みやすくなるらしいんだ。そういう仕組みだって納得するしかないね。
『アルコルがこうやって飲みにくることも馴染みやすくするためなのだ』
『アルコルの場合はちょっかいを出して邪魔をすることのほうが多いですよー』
なんてやり取りもあったりして。
ずっと居れば良いわけでもないらしいんだけどね。ただ今のところはアルコルと出会ったばかりだしほこらの近くにいるほうが馴染みやすいだろうって話でさ。
サクラミは他の神様も居るって言ってたし、神様をめぐる旅をすれば良いのかな。
『なははははー。サクラミが面倒くさそうな顔をしているのだ』
そんな顔をするなんて神様同士で仲が悪いのかなと思ったけどそんなことは無いみたい。でも神様が集まるとアルコルほどじゃないにせよ変にちょっかいを出されてバランスが崩れるのが嫌だとか。
それに
『神だけと結びつくのはそれはそれでバランスが悪いのですよー』
だってさ。
だからこれからもメインは普通に異世界を旅することになるみたい。
神様と会うことのほうがイレギュラーだって。そりゃそうか。歩いたら神様にぶつかるなんて犬が歩いてるようなことそうそう起きないよね。
『それでもこんなに美味しいのを独り占めしてるのはズルいのだ』
『安定しだしたら少しずつ招待する予定でしたよー。やっぱりアルコルが来ただけで修正するのが大変じゃないですかー』
『それは反省しているのだ。余計なことをしたらもう飲ませてくれないと言われたから、いつもおとなしく飲んでいるのだ』
だって。神様でも日本のお酒と料理の美味しさにはかなわないみたいだね。
『それだけじゃないですよー。アルコルは自分の仕事もしてないんじゃないですかー』
『仕事?なんなのだ?』
『そろそろお酒の種に祝福を与える時期でしょう』
『ののの!忘れていたのだ』
お酒の種ってのは異世界でお酒を造るときに必要なものみたい。
日本では酵母とかを使って発酵させてるみたいけど、異世界だとお酒の種なんてあるんだね。
そのままでもお酒はできるんだけど、アルコルに祝福された種を使うと良いお酒になるんだとか。世界の各地で祝福を受けることはできるけど、特にアルコルの街で祝福を受けた種は良いお酒ができるみたい。お酒の街だから普段からいろいろな人がやってくるんだけど、今の時期は街に酒を造る人たちが集まってきてるんだって。
『でも街まで行って祝福するのは面倒くさいのだ』
『それが仕事ですよー』
『タクノミが持ってくる酒は美味しいのだ。もう祝福を与えなくてもタクノミの酒だけで・・・・・・やっやめるのだ。祝福するのだ。だからそれだけはやめるのだああーーーー!!!』
本当にアルコルは同じことを繰り返すね。
何をされてるのかわからないけどあんなに嫌がるんだからよっぽどのことなんだろうね。
サクラミって怒らせると怖いのかな。
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