0.引越し編 《テスト》
「あーー。寝た寝た。昨日は散々だったな。戻ってくるのにあんなに時間が掛かるとは思ってなかったな。」
ちらりと、時計を見ると8時前だった。
アルトリウスと約束している9時までには用意の時間を考えると丁度いい塩梅だ。
クローゼットに用意されている緋を基調とした制服に着替えて、飯を食べに1階へと降りることにした。
1階は朝から宿泊客と外からの客で賑わってるようだった。
「女将さんおはようー。飯食べたいんだけど、どっか空いてる席あるかな?」
「やっと起きたのかい、席ならここが空いてるから用意するからまってな。」
それから少しして、出てきたのは、スープとパンといった簡単なものだったけど、中々に美味だった。
そうこうしてるうちに、9時になり、アルトリウスが宿に来た。
「やっと来たか。待ちくたびれて、ミイラになるかと思ったよ。」
「そう言わない。用意は出来てるみたいで良かった。それでは学園に行きましょう。試験の内容は道すがらに簡単に説明しますよ。」
アルトリウスと2人で宿を出た。
「それで、試験って何すんだ?こういっちゃなんだけど、こっちの世界の歴史とかの試験だったら落ちる気しかしないぜ?」
「ふふふ。筆記試験はないので、安心していいですよ。基本的な試験の内容は魔力量だったり、魔法生成速度といった魔法に対する試験を行います。」
魔法生成速度というあまり聞きなれない単語が出てきたので、気になったから聞いてみた。
「なぁ、アルトリウス。魔法生成速度ってなんだ?」
「そうですねえ。簡単に言うと貴方がいつも使ってるあの球を作るのがどれだけ早いか。それを測定するためです。魔法を作る速度が早ければそれだけ次の行動に移りやすくなるため、学園ではその向上にも努めます。まあ、例外は多少いてますがね。」
「これも魔法になんのな。まあ、とりあえず行きゃあ分かるか。」
その後俺はアルトリウスと他愛もない話を続けていたら10分もしたら学園に到着した。
「なんちゅうデカさだ。」
俺は魔導学園を見ていた。建物が無数に存在しており、チラホラと学生も居た。
まだ学園は始まってないはずだが。
考えても分からないので、俺はアルトリウスに聞いてみることにした。
「なぁ。まだ学園は始まってないのに何で生徒が居てるんだ?」
「在校生ですよ、ここは寮もありますので、希望生徒は全て寮生活ということになります。もちろん入学してからはカズマにも寮に入ってもらいますよ?」
とまた他愛ない話を続けていたら、目の前に二足歩行のライオンが立っていた。
「…えっ?ライオン?」
あまりの驚きに声が出てたみたいだ。
その声を聞いて二足歩行のライオンは
「ライオン?何だそれは。理事長こやつが言われておりました推薦学生ですかいな?」
やべえ、ライオンが人語を解している。
ってここは異世界だから、そんな感じの種族なのか。
ってな感じで現実逃避をしたいたけど、まあ、その、何だ。理事長って言ったよなこのライオン。
周りを見渡してみたけど今この場にいるのは、俺・ライオン・アルトリウスということで、消去法で確定してしまったらしい。
「もしかしてだけどさ、アルトリウス。あんたって」
「理事長ですよ?言ってなかったでしたっけ?」
と食い気味に俺の言葉に被せてきた。
実際顔はニヤニヤしたいたので、こいつ確信犯だな。
腹が立ったので後で1発殴ってやろうと心に決めた俺だった。
「そうですよ、タイガー。この子が私の推薦学生です。この子を放置しているのは、我が国において損失でしかありません。」
えっ?タイガー?このライオンの名前がタイガーなの?めっちゃムズムズするんだけど。
とくだらんことを考えたいたらライオンタイガーが自己紹介をしてくれた。
「そうでしたかいな。俺はこの学園で武術教練を教えている タイガー・ベンウッドだ。そして、今日の試験官でもあるから、宜しくな。」
ライオンタイガーがいい笑顔で俺に握手を求めてくるので、それを握り返しながら俺も自己紹介をした。
「こちらこそ、カズマ・イチハラって言います。宜しくお願いします。」
ぶんぶんと力強く腕を振られたので、腕がちぎれるかと思ったのは内緒だ。
「それじゃあ理事長。早速試験に移らさせていただきますかいな。」
それなりに歩いていると、水晶が置いてある部屋に辿り着いた。
「ここで試験をするんですか?」
「そうだぞ。とりあえずは魔力量の測定から始める、その後は空気中のマナの変換最大量・魔法生成速度と調べていく。最後に体も動かしてもらうつもりだから、心しておくように。」
「あぁ、まあ色々気になりますけど、とりあえずはどうしたらいいんですか?」
俺はライオン先生に聞いてみることにした。
「とりあえずこの水晶に触ってくれ、そうすると水晶がお前の魔力量を感知する。」
なんか結構あるあるな装置だったから、とりあえず触ってみることにした。
触ってみないと先進まなさそうだしな。
俺が水晶に触ってみると、水晶が虹色に輝き始めた。
「な、なんだとこれは。り、理事長こいつはどういうことですかいな。」
「こういう結果が目に見えてわかっていたから、連れてきたんですよ?」
俺は何が何だか分からないという顔をしてアルトリウスとライオン教官を見回した。
「あ、ああ、すまない。あまりにも桁違いな魔力量だったんでな。お前の魔力量は12万だ。」
おおぉ。それなりに高い数字に俺は驚いた。けれども。
「12万ってそんなに凄いんですか?」
「凄いなんてもんじゃない。宮廷魔導師でも1万って所だ。こりゃ特待生扱いにも納得だ。」
「はぁ。とりあえず他にも試験はあるんですよね?」
特待生ってのは初めて聞いたけど、他にも試験があるらしいし、そっちもやってみることにするとした。